このハザ   作:ひつまぶし太郎

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お久しぶりです。
実習を受けながら隙間時間でちょこちょこ書き進めていたので、短い上にいつも低いクオリティからさらに下がっている気がします。
すいません。
実習が終わったら文章を整えるかもしれません。



第十五話。ヴァン丈とカズーマ

 

 

 

「おや、久しいな。無駄に過去で誰得シリアスした割りに、お気楽に生きている純潔の番人よ」

 

 

「あ?」

 

 

その一言に僕が反応するよりも早く、そいつは口を歪めて言い放った。

 

 

「ぷっ『あなたをかぐや姫にはしません』だったか?」

 

 

「な、なぁ…!何で知ってんだてめえええええ!」

 

 

入店と同時に開幕煽りをしてくるゴミカス店員がいるので≪ウィズの魔道具店≫のレビューは星1です。

 

僕は仮面の悪魔に向かって飛びかかった────!

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…今日はこれくらいにしておいてやる…!」

 

 

「フハハハ!相変わらず我輩への相性だけはいいやつめ!あのポンコツ女神といい、なぜこうも攻撃的なやからが多いのか。我輩は悲しい」

 

 

「火種をばらまくテロリストの癖に何言ってんだよ」

 

 

入店から数分後。

店を破壊しないようにという互いの配慮のもとに行われたキャットファイトは、辛うじて僕がマウントポジションを取り、仮面に向かって火を灯した手をかざしたことで終了した。

 

僕の炎は悪魔にも有効。

これは王都で戦ったときに確認済みだ。

 

 

「ふむ、とりあえず互いに息をあらげて組伏せているこの絵面は何か不味いことになる気がするので、互いにせーので退くのはどうだろう」

 

 

「…だな、こういう見られたくないタイミングに限ってあの店主さんとかが入って───」

 

 

「聞いてくださいバニルさん!とってもいい商品が手に入ったんです!…あ」

 

 

知ってた。

入ってきたのはこの店の店主であり、リッチーでもあるヴィズさん。

店のお金を産廃商品につぎ込んで悪魔の頭を悩ませる、美人さんだ。

 

これ以上誤解される前に退こうと、慌てて立ち上がろうとしたぼくは、そこでふと動きを止めた。

僕はもうすでに人前で女装してたり、ホームレスしてたり、安楽少女ハンターとか呼ばれてたり、悪評が街に結構広まっている。

それらに比べたなら、悪魔を押し倒していたくらい、別にどうってことはないんじゃなかろうか。

 

むしろこの悪魔の方が僕とくんずほぐれつしてたという噂に辟易しそうなことを考えればむしろアドでは?…という悪魔の囁きが僕の頭によぎったのだ。

 

 

「待てポンコツ店主。これにはたいして深くもない訳が」

 

 

「分かってます。深い関係…だったんですよね」

 

 

「違うぞ?というか童貞男もいい加減退いたらどうだ。貴様のせいで話がややこしくなってるのがわからんか」

 

 

「…僕もう疲れちゃって。全然動けなくてェ…。ハァ…困ったなァ」

 

 

惚けた僕の下で、悪魔の血管が切れる音がした。

 

 

「いいから退け。我輩のロケットで星の彼方にぶっ飛ばすぞ」

 

 

「やーん、バニルさんのロケット(意味深)が接合されて昇天させられちゃーう」

 

 

「や、やっぱりお二人はそういう…!」

 

 

『バニル式殺人光線!』

 

 

ウィズさんが目を輝かせたその瞬間、僕とウィズさんはビームによって凪ぎ払われた。

 

 

 

 

 

 

あのあと普通に店を追い出されたものの、慰謝料として安楽少女の実を取ってこいという命令が僕に下された。

別に無視してもよかったのだけど、僕の嬉しくもない恥ずかしいだけの黒歴史エピソードをアクセルの街にばら蒔くと脅されてしまっては、聞かざるを得ない。

 

 

「それにしてもアクセルの街周辺の安楽少女狩りつくしちゃったんだよなぁ…」

 

 

そう、僕は春の前に課せられたペナルティ期間においてアクセルの街における塩漬けクエストを片付けてしまった。

故に安楽少女はアクセルの街周辺から一掃された。

さてどうするか、と困ったときに頼りになるのはやはりギルドだ。

ギルドは各地の情報をまめに交換しているので、モンスターの分布に詳しい。

 

 

「そんなわけで教えてくださいルナさん」

 

 

「うーん、最近だと紅魔の里とアルカンレティアの間にある街道での目撃情報がありますね」

 

 

「うわ遠い。めんどくさいな…」

 

 

「討伐してくださるんですか?」

 

 

「実の採取なんで別に必要はないですけど、適当に燃やしときますよたぶん」

 

 

めんどくさいけど、行くしかない。

あんな妄想日記みたいな内容を暴露された日には僕は死んでしまう。

鬼になるしかなくなってしまう。

 

 

「ルナさん、今日ってアルカンレティア行きの馬車ありました?なかったら広場に寄らずにテレポート屋に行こうと思うんですけど」

 

 

馬車を利用するというよりは、馬車の護衛任務をついでに受ければ、小遣い稼ぎにもなるという理由ではある。

が、高い金を払ってテレポート屋を使う方がやっぱり楽なので、その目的がないならテレポート屋でいい。

 

 

「今日ならちょうどアルカンレティア行きのが出てますよ。ふふ、それにしてもヴァン君って結構稼いでるんですね?」

 

 

聞きたいことも聞けたので立ち去ろうとした僕に、ルナさんがやけに胸を強調した形でしなだれかかってきた。

 

 

「ルナさん僕は故郷に好きな人がいるんでおっぱいしてください───間違えた、やめてくださいね」

 

 

 

 

 

 

「一番俺が腹立つところは!お前が自分の事を、授かった恩恵だと言い張ってることだよ!お前ふざけんな!何が恩恵だ!お前を返品して特殊能力でももらえるなら、とっとと返品してやるところだ!」

 

 

「わああああああーっ!カズマが言っちゃいけない事言った!ひゃめへ!ほおをひっはらないれっ!!」

 

 

なんだこれ。

もはや見慣れるレベルでのアクア様とカズマさんの喧嘩をしらけた目で見ているめぐみんに、僕は近寄る。

 

 

「なぁめぐみん。なんでカズマさんが外にいんの?なんかこないだはもう二度と外に出ない宣言してなかった?」

 

 

「おや、ヴァンではないてすか。あなたも馬車に?」

 

 

「ああうん。ちょっと紅魔の里の近くに用があって」

 

 

「奇遇ですね。私たちもちょうど紅魔の里に向かうところだったんです」

 

 

要約すると、紅魔の里に魔王軍からの襲撃があったという手紙が来たのがきっかけらしい。

それで、ゆんゆん含めてカズマさんご一行は、紅魔の里に向かうために馬車の待合所に来たんだとか。

 

 

「へー、頑張ってね」

 

 

「手伝ってくれないのですか?」

 

 

「や、めんどくさいし…」

 

 

「お客さん方ー!乗らないなら置いてきますよー!」

 

 

馬車の旅については割愛しよう。

長くなるし、護衛任務を受けていた僕は馬車の中での会話まではわからないし。

 

 

『走り鷹鳶が出たぞー!』

 

『カズマ、カズマ!来たっ!次が来た!今度こそはもうダメだ!ああ、ぶつかりゅー!』

 

『お前のせいかー!』

 

 

『うわああああ!ゾンビだ!誰か聖水を、早く!』

 

『私の寝込みを襲うなんてアンデッドのくせに生意気よ!あはははは!さあ片っ端から浄化してあげるわ!』

 

『すいません…!俺の仲間がすいません…!』

 

 

僕にわかるのは、ダクネスさんとアクア様がモンスターを引き寄せて、なんかマッチポンプ的に解決したということくらいだ。

あと、そのマッチポンプに感謝されてアルカンレティアの宿の宿泊券を受け取っていた。

 

…屋敷といい、犯罪にならないといいな。

 

 

目的地は紅魔の里なので、アルカンレティアはとりあえず一旦スルーして街道を進むこと少し。

僕の目的のモンスターがようやく視界に入った。

 

 

「…む、誰かいるぞ?」

 

 

「た、大変!怪我してるじゃない!待ってね、すぐポーションを…!」

 

 

「ふふ、ゆんゆん。ここは凄腕アークプリーストの私に任せなさいな!あなたももう大丈夫よ?私がちょちょいと治してあげるからね!」

 

 

それは一見怪我をして動けない幼気な少女のように見えるモンスター。

要するに安楽少女だ。

 

心配そうに駆け寄る女性陣と違って、敵感知を持つカズマさんだけが僕に目配せをして来た。

 

 

「とりあえず一旦離れません?そいつモンスターですよ」

 

 

「「「えっ」」」

 

 

「やっぱりそうか。植物型の擬態モンスターってことは…安楽少女だっけ?」

 

 

「そうだよ。ちなみに性格はくそだし、普通にしゃべれる」

 

 

僕はとりあえず手に炎を宿して、少女の顔に突きつける。

 

 

「ま、まさか殺したりしませんよね?こんな見た目をしたモンスターを殺したりなんか…」

 

 

「コロスノ…?」

 

 

僕の行動に殺意を感じたのか、安楽少女とめぐみんがすがり付くように僕を見上げてくる。

 

 

「相変わらず擬態がうまいな。普通にしゃべれ。じゃないと燃やす」

 

 

「エン、ギ…?コワイヨ、オニイサン…」

 

 

───燃やした。

 

 

「あっづぁ!こいつ信じらんねえ!バカじゃねえの!?ちょっとしたお茶目も許せねーのかこのクソガキ!バーカ!くたばれ人類!そこの女共も早く火ぃ消せや!役に立たねえな!」

 

 

「「「ええっ!?」」」

 

 

「そうか、クソガキな僕は火を消さないことにするよ」

 

 

「はいすいません。演技やめます!だから火を消してください!」

 

 

「う、うわぁ…」

 

 

少女を燃やして脅すという絵面に、後ろでドン引くような声が聞こえるが無視だ無視。

だいたい、こいつら一匹残らず性格悪いんだから、いちいち言動に構ってられるかってんだ。

どのみちろくなやつじゃねーんだ。見つけ次第やるくらいで丁度いい。

 

 

「まず先にいっとくと、目的はあんたの実だ。ちゃんと長持ちするように小細工せずに渡すなら焼却しないでやってもいい。お前らは経験値も豊富で知力のステータスが上がりやすいが、僕は得に困ってないしな」

 

 

にこり、と火を近づけ少女を怯えさせる僕の後ろで、カズマさんが急に口を開いた。

 

 

「───お前らが倒さないって選択肢を取るのは勝手だ。だがその場合、安楽少女の討伐は誰がやると思う?」

 

 

「どうした急に」

 

 

「ヴァン丈だ。

あいつは安楽少女ハンターと呼ばれるほど安楽少女の殺戮に手慣れてるからな。お前らがやらないなら、あいつはあっさりとやるだろう。惨たらしい死に方をするくらいなら楽にしてやろうと思わないのか?」

 

 

どうやら、レベルアップと知力のステータスの増加効果を知って、美味しいモンスターだと気付いたらしい。

しきりにアクア様の方を見ているけどどうなんだろう。

 

僕はもう安楽少女を倒してもかしこさは100から上がらない。

ステータスがカンストしてるらしいアクア様も同様に、効果はないと思うが。

 

と、そのカズマさんの様子よりも言葉に引っかかったのかゆんゆんが僕にとんでもない言いがかりをつけてきた。

 

 

「あ、安楽少女ハンターって…?まさかモンスターでもいける口なんですかっ!女にもてないからって血迷わないでください!」

 

 

はいライン超えた。

 

 

「おいゆんゆん言葉を慎めよ!僕の心は別に超合金なわけじゃねえんだからな!!あと僕にだって相手はいるんだよ!ちょっと今会えないだけで!」

 

 

ついでにその無駄に熱い体を治すまでは帰ってくるなとお預けを食らってるだけだ。

まぁあの人氷の魔女だし。

仕方ないね。

 

 

「ゆんゆん、この男は単にアクセルの街周辺の安楽少女を、女王含めて絶滅させただけですよ」

 

 

「な、なんだ…よかった。女装したり、バニルさん押し倒したりしたって聞いたから私てっきりそういう人なのかと…」

 

 

…やっぱゆんゆん喧嘩売ってるだろ。

いや、バニルにいらんこと吹き込まれただけか。

 

 

「ゆんゆんってむっつりだよな」

 

 

「み゛(絶命)」

 

 

ゆんゆんは死んだ。

羞恥心に耐えられなかったからだ。

かわいそうに…。

 

真っ白な灰となって崩れ落ちたゆんゆんから視線を戻し、僕は安楽少女に向き直った。

 

 

「僕の名前はヴァン。通りすがりの安楽少女ハンターだ。よろしくな!」

 

 

「ひっ」

 

 

「さぁ、燃やされるか。実を差し出すか。どっちがいい?」

 

 

 

────数分後。

実を十個くらい差し出した安楽少女は、カズマさんが討伐した。

 

 

見た目は少女だけど、モンスターなのでね。

仕方ないね。

それに約束通り燃やしてないし。

 

 

だけどなぜか、女性陣から冷たい目で見られるようになり、カズマさんと僕はちょっとだけ肩身の狭い思いをするのだった。

 

 




最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。
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