また、もしめぐ②と第十五話を少しだけ加筆しました。
そして、お気に入り登録、評価、ここすき、感想本当に有り難うございます。
※番外編を投稿したのでここは最新話ではありません。
「本当に来ないのですか?」
「行かない」
「本当の本当に?」
「絶対行かない」
「私の両親も会いたいといっていましたよ?」
「はい嘘ー!めぐみんは自分の誇張した自慢話以外手紙に書いてないだろ!」
安楽少女を倒したあと、モンスターを倒しただけだから表だって責めづらいけどうわぁ…みたいな空気を打ち破って、アルカンレティアに向けて帰ろうとしていたところ、僕はカズマさんたちに足止めを食らっていた。
「 ま、まぁまぁ二人とも一旦落ち着け。とりあえずこのまま向かって、紅魔族の誰かにテレポートで送ってもらえばいいと思うのだが…どうだろう?」
「とりあえずダクネスさんははよ下ろしてください」
「うむ、断る」
「いや断るじゃないが」
しかも、ダクネスさんに抱き抱えられる形の拘束なせいで、足がつかないからばたつくことしかできないのが恥ずかしい。
ぶらーんと抱き抱えられる自分の姿は、ちょっと省みたくないな。
見た目八歳児だから、端から見るとそこまで違和感のあるものではないのだろうけど。
「ふ…こうして抱いているとまるで収まるところに収まってるように感じるな。これが母性か…」
無駄に慈愛に満ちた目で見下ろしてくるダクネスさんにいらっとした。
「なんだコラ、母親気取りかこの野郎」
「照れ隠しはやめろ。そういいながらも振りほどかないではないか。案外まんざらでもないんじゃないか?」
「単純に筋力差があんだよ!カチカチの筋肉してる変態に、素の僕が勝てるわけないだろ!」
さっきから必死に振りほどこうとしているのに、びくともしないのは本当になんなのか。
こちらの世界でのレベル上げは、狙ったステータスをあげられないので、狭間の地でのように筋力と生命力に特化できていない。
そのわりにかしこさも幸運も上がらないんだけど。
ある意味で無駄のないステータスなのかもしれない。
…この世は理不尽でいっぱいだなぁ。
「やーい、カチカチ筋肉!走り鷹鳶にモテる女!ははは、自慢のアイアンクローも痛みを感じない僕の前では無意味だよなぁ!」
「こ、こら!カチカチ筋肉呼ばわりはやめろ!」
そんな風にダクネスさんに抱かれながらも暴れていると、千里眼と気配遮断で辺りを警戒していたカズマさんとその護衛のゆんゆんが戻ってきた。
若干、僕の足が地面についてないことに目をつぶればあすなろ抱きみたいな見た目になっていることに、意外と独占欲の強いカズマさんが物言いたげな目線を送ってくる。
「…嫉妬してないで助けてくれカズマさん。あんたこのパーティーのリーダーだろ?」
「べべ別に、妬いてなんかねーよ!」
「いいから。今そういうのいらないから」
「…いや、どのみちこっちとしてはまともな後衛のゆんゆんとまともな前衛のヴァンがいてくれた方がありがたいんだが」
ダメだこの男。
歩き疲れて他力本願モードに入ってやがる。
見かねたゆんゆんが、おずおずと僕に質問してくる。
「というかヴァンさんって悪魔が払える強さがあるんですよね?何がそんなに嫌なんですか…?」
「そりゃお前さん…オークに決まってるだろ」
「「「あ…」」」
ツイン紅魔とアクア様が、なにかを察したように呟いた。
逆に世間知らずなところのあるカズマさんとダクネスさんは、理解できていないようだ。
「いいですかカズマ。現在この世に、野生のオークのオスはいません」
「ええっ!?女騎士の天敵とされるあのオークが!?」
ダクネスさんはどうして残念そうな顔をするのだろうとゆんゆんが思案しているのが見えたが、僕は無視することにした。
一緒に行動していればそのうち化けの皮も剥がれるだろう。
馬車旅の間で結構本性を見せてた節もあるし、そのうち気付く。
「現在オークと言えば、メスだけで群れが構成されていて、縄張りに入り込んだ他種族のオスを捕らえては集落に連れ帰り、それはもうすごい目に合わせる男性の天敵なのです」
「そう、しかも混血に混血を重ねて、各種族の優秀な遺伝子を兼ね備えたモンスターに進化してるから、倒すのにも手こずる」
僕とめぐみんの説明に、カズマさんの顔がどんどん青ざめていく。
「なんて嫌な進化だ…」
「絆進化だな」
「きずな…?きずなってなんだっけ」
(いい男を共有するオーク同士の)友情、(男を強姦するための)努力、(強姦を成功させるという)勝利。
絆が芽生える代名詞すらも犯す、最低なモンスターこそがオークなのだ。
「強い男を常に求めてるからな。一度襲われたときは時間稼ぎで眠らせて逃げ切れたけど、また襲われたらたまったもんじゃない」
あとにも先にもこの世界で死を覚悟したのは、オークと目があったあの時の悪寒だけだ。
「まぁそんなわけだから。よわっちいカズマさんはちゃんとゆんゆんに守ってもらいながら里に行くんだぞ、マジで」
「仕方ないですね…魔王軍の幹部がいるらしい里に、戦力として来てほしかったのですが…」
それはちょっとだけ罪悪感が刺激されるからやめろ。
だけどどうせ紅魔族のことだから、簡単に撃退してるでしょ。
大丈夫だって。
安心しろよ。
「じゃあ僕、アルカンレティアのギルドでギャラ貰って帰るから…」
「あ、ああ。気を付けてな」
「───見つけた♡」
◆
僕はトレントに縋り付きながら、必死に逃げていた。
「───ふわあああああ!ひええええええ!?もっと速く頼むよトレントさん!どうかお願いします限界越えてください!あとでお前の大好きなロアの実でタルト作ってあげるから!」
後ろを振り返れば、いつぞやのショタベーゼとかいうオークを先頭に、オークの群れが土煙を上げながら僕に追い縋っている。
「待ちなさい!ふふ、さぁやりましょう!今、ここで!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!もうやだあ゛あ゛あ゛あ゛!」
「何が嫌なのかしら?男なら誰もが夢見るハーレムよ!うふふ、私たち全員で相手してあ・げ・る♡」
「ハーレム…?…!そういやカズマさんはどこだ!おいあんたら!僕以外にも男がいたはずだろ、そっちはどうした!?」
オークたちは走りながら顔を見合わせるという器用なことをしながら首を傾げる。
「あなた以外、女しかいなかったわよ?」
そこで僕は悟った。
僕は裏切られたのだ。
僕という囮によって、潜伏で気配を消したカズマさんたちは安全に里にたどり着けると、そういうことなんだろう。
「おぎゃあああああああ!ぜってえ許さねええええ!あのハーレム野郎!童貞ヒキニート!陰キャ戦法使い!運だけのカズマさんのバカやろおおおおおおおおおお!」
殺らなきゃ、ヤられるという危機感に急かされるように、僕は腰からショートボウと爆発ボルトを改良した矢を引き抜いた。
本当は巨人の火で凪ぎ払いたかったが、全力で走るトレントの足を止めずに使うには、ちょっとじゃじゃ馬すぎる。
かといって今トレントから降りるのは自殺行為だ。貞操的な意味で。
「僕の側に近寄るなぁぁぁあああ!」
小弓の取り回しの良さに任せて複数の矢をばら蒔いたことで、オークたちの足元で爆発が起こる。
無駄にハイスペックなオークたち相手では足止め程度にしかならないが、僕が群れから離れたのを見計らって、カズマさんと一緒に潜伏していためぐみんの爆裂魔法が、彼女たちをまとめて凪ぎ払った。
助かる。
オークの群れが一瞬で消し飛んだ。
爆裂魔法の威力気持ち良すぎだろ!
◆
僕がオークの群れを引き連れていたからか、逆に他のモンスターに襲われずに里の近くの森までたどり着くことができた。
…本当に危なかった。
「なあ、さっき俺のこと陰キャ戦法使いとか言ってなかった?」
「あと童貞キングカズマとかパルキアとかも言った」
「開き直ってんじゃねよ!あと俺はパルキアではねえよ!」
なんでこの人、ノイズ国で流行ってた娯楽のキャラクターを知っているんだろうか。
…そんな疑問も再び足止めを食らったことで、有耶無耶になってしまった。
「囲め囲め!散々煮え湯を飲まされた紅魔族の子供二匹だ!取り囲んで八つ裂きにしちまえ!」
現れたのは鬼だ。
耳がとがり、赤黒い肌をしたスリムな見た目をしている。
「んー?あんた見た感じ下級の悪魔モドキじゃないですかやだー!」
その耳の様子から普通の鬼じゃないのかと思っていたら、アクア様が急に好戦的になった。
この人、悪魔とアンデッド相手だと急に好戦的になるよな。
「下級悪魔にすら昇格できない、鬼みたいな悪魔崩れがなんですか?なんですか?あんたみたいな下級モンスター相手だと、破魔の魔法が効かないのよね。良かったわね、 悪魔の成り損ないで!プークスクス!今は悪魔崩れのモンスターに構ってる暇ないの。ちゃんとした悪魔に昇格できたなら相手してあげるわ。今日は見逃してあげるからあっちへ行って。ほら、あっちへ行って!」
「オラ───ッ!誰に向かって八つ裂きとか言ってんだあぁ。やってみろよ、おおっ」
とりあえず僕もガン飛ばして加勢するも、戦いは数だよ兄貴!という言葉があるように、このままでは多勢に無勢だ。
今も鬼の声でぞろぞろと魔王軍の下っぱと思われるモンスターたちが集まってきている。
「なっ…なんだぁっ。こいつら、柄悪いぞ!」
だが、さっきから紅魔族の気配がするので大丈夫だろう。
なぜかなかなか加勢してこようとしないけど。
どうせもっとピンチな瞬間に現れて、美味しい所を持っていこうとか考えているのだろう。
いかにも紅魔族が考えそうなことだ。
…だから、僕は森のなかだというのに巨人の火をぶっぱなした。
「う、うわぁ!待って待って!火事になるから!…みんな今だ!」
「くっ、仕方ない!」
「ああ、くそ!もっとかっこよく登場したかった!」
急に空間が歪んで飛び出してきたのは、ぶっころりーを筆頭とした紅魔の里のニート集団。
「ライト・オブ・セイバー!」
「「セイバー!」」
彼らは数百近くの魔王軍の軍勢を、たった四人で瞬殺した。
◆
魔王軍の集団を無事惨殺し、一件落着…のはずが、僕は今森のなかだというのに正座させられていた。
森を火事にしそうになったとかもっともらしいことを言っていたが、どうせ単にカッコいい登場を邪魔されたのが気にくわなかったのだろう。
「まったく…気づいてたんなら合わせてくれてもいいじゃないか。これだから勘のいいガキは困るんだよね…」
ほら、説教に織り混ぜてきた。
これは全然本題じゃないんだけどね、みたいな顔をしているが騙される訳ないんだよなぁ。
「ほらあれだよ…みんなの隠しきれないオーラが強すぎて、ね」
「うん、それならしょうがない」
チョロいなぁ。
「あとぶっちゃけオークの群れに追いかけられたばっかりでイライラしてたし」
「それは本当に大丈夫だった?」
「まぁめぐみんのお陰で」
「あ、そうだった!魔法使いの先輩として危なっかしい子供を導くのに夢中で忘れてたよ」
いけしゃあしゃあとぶっころりーがのたまいながらも、カズマさんたちご一行に向き直った。
「めぐみんとゆんゆん、なんでこんなところにいるんだい?手紙を出してくれたら、アルカンレティアまで迎えにいったのに」
「魔王軍が攻めてきてると聞いて、直接のテレポートはリスクがあると思っただけですよ」
「そ、そうです!私たち里がピンチって聞いて…それで…!」
「ピンチ…?まぁいいや。その人たちはめぐみんの冒険者仲間かい?」
わざわざめぐみんの、という辺りぶっころりーとツイン紅魔の仲がそれなりに良いのがわかる。
「ええ、私の、仲間です」
「うう…わ、私だってアクセルの街に帰れば知り合いくらいいるもん…」
めぐみんは無い胸を張り、ゆんゆんは若干涙目だ。
とはいえゆんゆんの性格を考えると、自ら知り合いと言える相手がいるだけでも十分大きな進歩なのではないだろうか。
───その相手がダストさんとかバニルさんなのが玉に瑕感はあるけど。
それに嬉しそうな優しい笑顔を一瞬だけ見せると、ぶっころりーはすぐに真剣な表情になる。
そして、ばさりとローブをはためかせると。
「我が名はぶっころりー!紅魔族随一の靴屋のせがれ。アークウィザードにして、上級魔法を操る者……!」
紅魔族としては普通の自己紹介を披露した。
「これはどうもご丁寧に。我が名は佐藤和真と申します。アクセルの街で数多のスキルを習得し、魔王の幹部と渡り合った者です。どうぞよろしく」
ぶっころりーの突然の自己紹介にも対応できるのは、さすがカズマさんと言ったところだろう。
飲みにケーションとかいって、知らないおっさんと肩を組んでつぶれるまで酒を飲んでるんだから、今さら紅魔族くらいどうってこと無いに違いない。
「「「おおおおーっ!」」」
そして、ちゃんと自己紹介が返ってきたことに喜ぶくらいならはじめから普通に自己紹介すればいいのに。
ゆんゆんなんて、自分の知り合いに将来自分が族長になる里の恥部を見られて悶えているというのに。
…まぁゆんゆんが族長になれば変わるのかもしれない。
あるいは普通に言うことを聞かないかもしれない。
だが、今は違う。
「うん、いい仲間を持ったねめぐみん。ここからだと里まではまだ距離がある。さぁ、案内するよ外の人。テレポートで送ってあげよう!」
アクア様の自己紹介が流されたり、羞恥心に悶えながらダクネスさんが自己紹介したり。
そんなこんなで。
「紅魔の里へようこそ、外の人たち!めぐみんもゆんゆんも、よく帰ってきたね!!」
僕たちはようやく紅魔の里にたどり着いたのだった。
今回も最後まで読んで頂き誠に有り難うございます。
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内容がなんちゃってシリアスと下ネタで構成された拙作は、今後も暇つぶしの域を出ないので上がったハードルはもちろんくぐっていきます。