皆様お久しぶりです。
待ってくださっている方がいるかはさておき、妄想が形になったので投稿させて頂きました。
番外編でもなく小噺でもなく後日談です。
前後編の予定なので短いですし、今回は中身のない前振りです。
次回はカズマさんたちが狭間の地を体験する話です。
※今話に若干の加筆というか、最後が抜けていたので文章を追加しました。
狭間の地体験クエスト・前
「『エクスプロージョン』ッ!」
「く、熊吉───!?」
エビに挟まれているアクア様を救出し、ルーンベアと戯れるダクネスさんに直撃しないようにめぐみんの爆裂魔法で気絶させたことで、場は一旦落ち着いた。
つーか熊吉て。
もっと他になかったのかよラニ様。
「うう…ぐす…生臭いよう…」
「お、おい…お前の仲間やばくないか?というかそこの金髪!その熊は私のなんだからつれてったらダメに決まってるだろ!?」
「なん…だと…!?」
…落ち着いたということにしておく。
直撃しないようにしていたとはいえ、ドラゴンを屠る攻撃を当たり前のように仲間に向かってぶっぱなす集団にラニ様が怯えたり、普通に煤けるだけですんだダクネスさんがふてくされていたりするが、僕はもう知らない。
妄言を吐いていた王女様は見なかったことにする。
エリス様は咽び泣くアクア様の世話をひとまず任せよう。
後輩らしいし。
とりあえず、やかましい問題児集団を集めて質問タイムだ。
「で。なんで来たの?こんな試される大地に」
狭間の地。
それは人的資源と将来性に乏しい世界。
デミゴットや古龍なんかよりも遥かに強い野性動物が跋扈し、あらゆる要素が住人を殺そうとしてくる過酷極まるマゾ向けな生態系をしている。
果たしてそんな場所に用があるように見えないが、カズマさんがここに来た理由はなんなのだろう。
犯罪者として追われてるとか?
「いやお前のせいだよ」
「僕?」
「そうですよ!あなたがあんな別れかたするから死んだと思ったんですよこっちは!」
「えぇ…妄想がたくましすぎない?」
なぜか若干涙目になってカズマさんやめぐみんが掴みかかってるが、本当に心当たりがない。
ごく普通に別れの挨拶を済ませたつもりだったのだけど。
「いやいやいや!消えるとか!さよならだとか露骨に遺言みたいな感じだっただろ!」
そうかなぁ。
◆
『なんつったらいいかな…?魔王を倒したから、僕消えっから!(一度天界に行きますの意)』
『…さよならって事!(一時的に)』
『勝手で悪いけどさ…これが僕の物語だ!(体が治ることに興奮している)』
◆
…思い返してみても普通だな。
「いや無理があるだろ!」
そうかな…そうかも…?
「つーかそもそもアクア様に体を治してもらうって話だったじゃん。隣で聞いてたでしょ?」
「なんかこう…不死身に苦しんでたキャラが死ぬことで解放されるって定番じゃん」
そう言われると確かにそうだが。
「でも普通に自爆戦法とか便利に使ってる奴がそんな殊勝なこと考えなくない?」
不死身は便利だ。
だけど黄金律のシステムだと世界が緩やかな滅びを迎えるとはいえ、世界から永遠を消し去った僕がいつまでも永遠を享受するのはちょっとずるいかなくらいには思っていた。
だけどそれだけだ。
ぶっちゃけ寿命は据え置きでいいから、今の再生力は残してほしいとさえ思っている。
…とはいえ、そんな美味しい話はないわけで。
僕は今後自爆戦法だけでなく、巨人の火に頼ると言うこともやめていかなくてはならない。
「ま、カズマさんの言い分はわかった。テンション上がってたとはいえ、勢い任せの挨拶ですいませんでした」
「お、おう…」
文句は言うくせに素直に謝られることに慣れていないカズマさんがキョドるが、僕はそんなことに構うことなくニヤニヤと口許を緩める。
「いやぁ、愛だな」
「おい変なこと言うなよ!」
そして、カズマさんをからかえる気配を感じたのか、ダクネスさんにヒールをかけ終わったアクア様が、とてててと寄ってくる。
「まったく。カズマはまったく。人の話をちゃんと聞いてないからそういうことになるのよ?」
「…!?お前が『あの子はあるべき所に帰ったのよ…』とか言うからこうなってんだよ!」
聞いた話だと、カズマさんは魔王討伐後のアクア様との話合いで、報酬は保留にしたらしい。
で、カズマさんだけが一度地上へ戻りアクア様は僕と一緒に天界の神殿へ。
そこで天界時間で半日未満、地上で言うなら半時くらいかけて儀式を実行。
僕は狭間の地へ。
アクア様は地上へと帰った。
そして、僕の行方を聞いたカズマさんや魔王城での殲滅戦を終わらせ合流した王女様に向かってアクア様は言った。
『あの子?あの子なら無事帰ったわ。帰るべき場所にね。私がしたのはその手伝いよ───』
…うん。
これ、僕は悪くないんじゃないか?
◆
互いにプロレス技を掛け合い始めたアクア様とカズマさんを放置して、後回しにした二人に僕は向き合うことにした。
めぐみん?
めぐみんはボックが持ってきたエビの料理に夢中だ。
…エビというかザリガニだけど、めぐみんは普段から食ってるしな。
「………」
…嫌だなぁ。
ヒロインだのなんだの言っていた王女様はある程度の好意はありつつ打算もある感じだし、クリスさんに至っては目は笑ってないのに満面の笑みを浮かべているせいで普通に怖い。
面倒事じゃないとありがたいんですがね。
「…それで二人は?つーか王女様は魔王城の別の場所にいたらしいけどなんでここに?」
「もちろん、愛するあなたのためですよ?」
「私はエリス様に任された監視かな!」
…エリス様が目線だけで、もし自爆をしようものなら分かってるよな?と訴えかけてくる。
信用ないな僕。
とりあえずエリス様の言葉に嘘はないのだろう。
だが、王女様のは絶対嘘だ。
「本音は?」
「父が勇者の血筋を取り入れるためにも首輪をつけてでも連れてこい、と。私としても何処ぞの軟弱者とより、あなたの方がいいなって」
この王女覚悟決まりすぎててこえーよ。
「ならお帰りください。僕はあそこで熊の手当てしてるお方の側をしばらくは離れるつもりはないので」
「まぁまぁ」
まぁまぁじゃないが。
「私としても無茶をいってる自覚はありますよ?ですが勇者な上に一国の主。顔も悪くない、年も離れていないという優良物件は諦めたくない…というのは建前で」
「建前ならなおさら帰って」
ゲンナリする僕を無視して王女様はとびっきりの笑顔で言い放った。
「ここにはドラゴンよりも強い敵がたくさんいるんですよね?───私、気になります!戦ってみたいです!」
「この人戦闘狂だよぉ~!」
「戦闘を!一心不乱の戦闘を!」
やっぱベルセルグって蛮族の国だわ。
◆
とりあえず女性陣は、カーリアの城館に頑張って作った大浴場に行ってもらった。
昔は指虫とかいう害虫がいたせいで、景観も安全もなにもあったもんじゃなかったが、王になったときに一掃した。
門番として優秀?
土に埋まってたり壁に張り付いてたり、這うように動き回っていたり、というか見た目が気持ち悪い奴が家の近くにいる方が嫌だわ。
あと、しれっとカズマさんがトイレからなかなか帰ってこないがどうせ覗きだろう。
僕しーらね。
ラニ様はここにいるし、見られてこまる相手もいない。
「やれやれ、やっと静かになったな…」
「まぁ嫌いじゃないですけどね。この地は賑やかさとは無縁ですから」
王家の月見場。
薄く水が張られた鏡のような円形の広場を取り囲むように椅子が並べられている。
その椅子の二つに腰かけて、何をするでもなく互いに肩を預け合う。
夜風が心地良い。
「明日はどうする?」
「とりあえず三年でこの国がどうなったかカズマさんたちを案内するついでに見て回りたいですねぇ」
狭間の地を出る前に計画していた一件が、完成しているらしいし楽しみだ。
「でも、それよりも前に料理したいです。ラニ様のために」
僕はラニ様の体温感じながら、そう呟いた。
◆
「年上の癒し系お姉さんウィズ、活発系の元気娘クリス、クール系お姉さんのセナに、幸薄いゆんゆん。あと、闇深系男の娘に王道ヒロインのエリス様に至るまで、俺には様々な美女や美少女たちと出会いがあった」
どうした急に。
「カズマさんカズマさん、私は?私は何系の美女になるの?」
「お前は色物枠かペット枠だな。こ、こらっ、今大事なとこなんだ、言いたいことがあるなら後にしろ!」
真顔で掴みかかっていくアクア様を振り払いながら、カズマさんは拳を振り上げながら叫んだ。
覗きがばれて女性陣にぼこぼこにされ、縛り上げているというのに器用なことだ。
「俺は魔王も倒したし実質勇者だ。なら、そろそろハーレムを築いても許されるんじゃないか?ましてや覗きならなおのことだ!」
縛り上げられながら熱弁するのは結構だが、女性陣の怒りはどうやらその程度じゃ収まらないらしい。
僕はテーブルに料理を運びながら、そっと被害がでないようにテーブルをずらす。
「こんなことを言っていますが」
「うーん、不敬罪ですかね」
「よしカズマ…そこに直れ。私が介錯してやる!」
中でも殺意の高いめぐみんとダクネス、冷静に目の前の罪人を処理しようとする王女様の言葉で、カズマさんの顔が青ざめる。
このままだと本当にカズマさんの首が泣き別れしてしまうので、助け船を出すことにする。
「…とりあえず料理食べません?カズマさんは明日狭間の地体験クエストで一番過酷なミケラの方の聖樹街に一人で放り込むってことで」
「なぁそれ本当に助け船か?」
呆れたように呟くラニ様に曖昧な笑みを返しながら、僕は配膳を終わらせるのだった。
うん。
明日が楽しみだ。
最後まで読んで頂き誠に有難うございます。
我ながら中身がないとは思いますが、供養も兼ねて投稿させて頂きました。
後編は何もなければ明日か明後日投稿します。