このハザ   作:ひつまぶし太郎

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後日談を読んでくださってありがとうございます。
感想や評価をしてくださった方もいらっしゃって本当に嬉しかったです。

今回は後編になります。
いよいよカズマさんたちが狭間の地を体験することになりますが、思ってたのと違ってたりしたらすいません。


狭間の地体験クエスト・後

 

 

カズマさんたちがこっちに来た翌日の午後。

僕はカズマさんとアクア様、ダクネスさんにめぐみんの四人をとある場所に案内していた。

 

午前中は湖や地下世界、火山に城と絶景スポットを見せて回っていたが、正直そろそろ眠い。

昨日の夜は亜人ボックと夜更かしついでに日が昇る前から打ち合わせをして、しっかり例のあれの準備ができていたことを確認し、実際自分の目で確かめていたのだ。

我ながら張り切りすぎた。

 

 

そんな眠気を覚ますべく、僕は大きく息を吸い込んでから声をあげた。

 

 

「───第一回!レアルカリア魔術学園攻略ゲェェェェム!バージョン1.0!魔界村方式ィィィィィ!」

 

 

「うわうるさ…って、魔界村ってあの魔界村?」

 

 

魔界村はノイズの研究者が作っていたゲームのひとつだ。

プレイヤーは敵の攻撃を避け、倒しながら先に進んでいくという王道なものながら、被弾すると着ているものが脱げるという仕様だった。

 

難易度はそこまで高くはなかったが、主人公のキャラがやけにセクシーなお姉さんで、脱げる度に露骨な一枚絵が表示される仕様だったせいで、まともにクリアした男が一人もいなかったという伝説のゲームだ。

 

 

『これはオリジナルゲームだから!パクリじゃねえし!?つーかキャラの見た目も難易度も違うんだから実質違うゲームでいいだろ!名前がおんなじだけで!』

 

 

とは、開発者の男の台詞だ。

まぁ、そんなことはさておいて。

 

 

「あの魔界村がどの魔界村かはしらないけど」

 

 

とりあえず僕はカズマさんをビンタする。

直後、カズマさんの服が弾けとんだ。

 

 

「ファ!?」

 

 

「ちょっとカズマ?あんまり麗しの女神様にその貧相なもの見せないでくれる?」

 

 

「いや俺が自ら脱いだんじゃねぇよ!」

 

 

ダクネスさんが一瞬で顔を赤面させ、アクア様がジト目でカズマさんの方を見る。

 

 

「とまぁこんな感じで、攻撃を受けると服が脱げる仕様です。まぁ安全装置ですね。一応女性陣は下着とインナー1枚残りますけど、男性は全裸までいきます」

 

 

「おおい、どこが安全?俺の股間が危険信号だよ!」

 

 

聖剣エクスカリバー(笑)のくせになに言ってんだ。

 

 

「ちなみにこの安全装置ないと、普通に血が出るくらい痛かったり死ぬので。あと潜伏もなしですからね?」

 

 

「クソゲーじゃないか!」

 

 

残基(服)あり。

リトライ可能。

各チェックポイントに補充用の服もある。

痛い思いも死ぬ心配もないんだから大概甘いと思うけどなぁ。

敵の数も減らしてるし。

転移して早々レベルもアイテムもまともにない状態で接ぎ木の貴公子と戦わせるわけでもないし。

 

 

「そんなわけで、行ってみよう!」

 

 

僕は唯一乗り気じゃないカズマさんを、他の三人と一緒に強引に学院の第一エレベーターに蹴りこんだ。

 

…あ、カズマさんのパンツが吹き飛んだ。

 

 

「お前ふざけんな!」

 

 

「ちょ、カズマ!その格好で暴れないでください!」

 

 

 

 

 

門番の魔術師二人につぶてを食らったり。

 

 

「あたたた!?階段の上から一方的に撃つのはずるだろ!?」

 

 

「くっ、こうなったらすでに被弾しているカズマを盾に突破しましょう!」

 

 

「いい考えねめぐみん」

 

 

「ふざけんな!俺が全裸よりひどいことになっちゃうだろ!」

 

 

建物のなかに入った瞬間に上から降ってきた人形兵にダクネスさんがインナー1枚にされたり。

 

 

「ああ!?私を盾にするのをやめろアクア!」

 

 

「ダクネスの鎧が一瞬ですべて脱げましたよ!?」

 

 

「おいおい最高かよ」

 

 

ラダゴンの赤狼に翻弄されたり。

 

 

「くそが!一人時間差とかやってんじゃねぇぞ!」

 

 

「バカねカズマ。こういうときは動物と心を通わせるのがセオリーなのよ。ほら、やっちゃいなさいなダクネス!」

 

 

「うむ、現状打つ手もないしな。…ほら、私は怖くなぶっ!?」

 

 

「二人とも遊んでないで動きを止めてください!狼に抱きついたらこの部屋はクリアらしいですから!」

 

 

討論室を抜けた先の広場で乙女人形に追い回されたり、床に潜んでいた蟹に足止めを食らったり。

 

 

「わー!わああああ!?助けてカズマさん!なんかおっきいアイアンメイデンに追いかけられてるんですけど!?カズマさーん!」

 

 

「バカッ、お前ってやつはどうしてピンチになると俺に向かってくるんだよ!」

 

 

「アクア今助け───蟹だと!?」

 

 

「『エクスプロージョン』!」

 

 

階段の途中で迫ってくる鉄球から必死に逃げたり。

 

 

「うおおお!?なんだあの鉄球!お前ら走れ!」

 

 

「おいカズマ!?この先なにもないぞ!」

 

 

「畜生!なんで階段が途中でなくなってんだ!?」

 

 

「配置に悪意がありすぎませんか!?…ありましたよカズマ、手すりの向こうに足場が!」

 

 

「でかした!」

 

 

 

 

 

そんな感じで、彼らは終始騒がしくしながらも魔術学院コースをクリアしたのだった。

もちろん、魔術学園のすべてを隅々まで攻略したわけではない。

メインストリートのみのコースだ。

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 

「ゴールおめでとうございますぅ」

 

 

とりあえず床に体を預けてへばっている四人の顔を覗き込みながら、水袋を渡していく。

 

 

「くそムカつく…」

 

 

「ちなみに難易度同じくらいの別のダンジョン『ストームヴィル城』に向かってたクリスさんと王女様はノーダメで最速クリアしてたよ」

 

 

「さすがアイリス様だな!」

 

 

「うちの国の王族はどうなってるんだ…」

 

 

被弾が等しく1ダメージの調整のストームヴィル城は、バリスタ地帯やらくそ鳥やらライオン、トロルなんかがいるから、魔術がそこかしこからとんでくるレアルカリアといい勝負の難易度だったんだけどなぁ。

 

特に鳥。

あいつら追い払っても追い払っても気づけば巣を作って繁殖してやがるのどうにかならないだろうか。

見つける度に戦技のグラビタスで掃除しているが、いっこうに減らない。

害鳥がよ。

 

 

そんな愚痴はさておき、遠見の魔道具で見ていた感じ、ダクネスさんが言うように王女様が強敵を一撃で消し飛ばすのもすさまじかったが、うまいこと視線を誘導して敵を翻弄していたクリスさんの上手さが光っていた。

さすが王都でも有名な義賊。

 

 

「どうでした?これがマイルド版狭間の地でしたけど」

 

 

「俺狭間の地嫌い」

 

 

湖やら遺跡やら、狭間の地の絶景スポットをめぐっていた午前中は、あんなに楽しそうにしていたカズマさんが、吐き捨てるようにそう言った。

 

 

「でもカズマさんにはおかわりもあるんだなこれが」

 

 

「うげぇ」

 

 

「まぁ次は潜伏使っていいんで頑張ってください」

 

 

ちなみにダクネスさんは満足していたし、頭が爆裂しているめぐみんも楽しんでいた。

 

 

「くかー……」

 

 

アクア様は酒を飲んだせいで苦労を秒で忘れていた。

四分の三で楽しめたなら、これはもうこの企画が成功したと行っても過言ではないだろう。

 

 

たぶん。

 

 

 

 

 

 

と、めでてしめでたしで終われたらよかったのだけど、残念ながら事件が起こった。

 

またカズマさんが覗きをしたとかではない。

カズマさんは覗きの罰として送られたミケラの聖樹街から帰ってきてそんな体力は残っていないからだ。

 

…潜伏ありとはいえ、よくもまぁ日が落ちる前に帰ってこれたもんだ。

オルディナの方でしろがねの射手の皆さんに、鍛練をサボって腕が落ちてないかの確認として揉まれていたが、それ以上の難易度だと思うんだけどな。

 

 

バトルジャンキーの王女様と心優しいエリス様がついていったのもあるだろうが、わらわら沸いてくる王族の幽鬼やら貴腐騎士、ハイマの魔術師、結晶人等々。

名前を上げ始めればきりがなく、ちょっとやってられないと眉を潜めたくなるクソ…じゃなくてゴミ…もとい強敵たちを相手に数多のスキルを使いこなして戦って勝てるのはなんだかんだ強者の証だ。

 

さすがカズマさんだぜ。

 

 

さて。

覗きでないなら何が起こったか。

 

 

「ただまー。お夕飯出来た?」

 

 

詐欺だ。

 

カズマさんを待つ間、『ちょっと外を見てくるわ!』と出掛けていったアクア様が帰ってきたとき、その両手のうちにはひとつの卵があった。

 

皆の視線が集まっているのに気付いたのか、アクア様は自慢気に胸を張った。

 

 

「あらあら、さっそくコレが気になる様ね?いいわ、教えてあげる!聞いて驚きなさいな、これは飛竜の卵よ!」

 

 

「「「飛竜の!?」」」

 

 

めぐみんやダクネスさん、王女様にエリス様が驚きの声をあげているところ悪いが、僕にはその卵に既視感があった。

 

睡卵。

そう呼ばれるアイテムで、梟が暖めている姿を確認できるものの、誰もその卵が孵っているところを見たことがない悲しいものだ。

永遠に目覚めない卵故に、最上の眠りの象徴として珍重され、睡眠対策グッズとして狭間の地では頻繁に利用されていたりする。

 

 

「さすが異世界よね。ハゲの悪人顔の男の人が、私の有り金全部と元の世界のドロップアイテムと交換で売ってくれたの!この子が孵化したらゼル帝の弟として私が教育してあげるんだから!」

 

 

すいませんその卵絶対孵らないやつです。

あとそのハゲで悪人面、聖職者とか大嫌いな僕の知り合いです。

 

 

「…また詐欺られたのか」

 

 

ゼル帝のことを思い出したのか、カズマさんが苦い顔をする。

 

ゼル帝は由緒正しいかはさておき、鶏だ。

アクア様が悪徳商人にドラゴンの卵として売り付けられ、今も元気にカズマさんの屋敷での生活を謳歌している。

こないだひよこから立派な雌鶏に進化した。

 

 

「…それでね?その人がエルデの王によろしく、火山館にも顔出してけよ。これは帰還祝いの天罰だ、だって!」

 

 

「お前はなんでそこまで言われて詐欺られてんの?」

 

 

「あんのハゲェェェェ!久しぶりの王の帰還に合わせてやってくれたなぁ!?焼いて湯がいてたこ焼きにしてやる!」

 

 

僕は、壁に立て掛けていたロングソードを引っ掴むと外に向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

「───ヘヘヘヘへッ。お帰り」

 

 

その男は、今頃久しぶりに帰ってきたお人よしの少年がどんな反応をしているか想像して、ニヤリと笑う。

きっと今ごろブチギレながら、自分のことを探しているのだろう。

 

 

「待ちなさーい!」

 

 

「お、来た…か…って。でっけえなおい!?」

 

 

懐かしい声に振り向いたパッチは、追ってきたやつの姿を見て目を見開いた。

 

 

「僕の恩人から騙しとったお金であこぎなことをするつもりよ!そんなの許せないわ!」

 

 

一人で二役しているバカさ加減にはもうなにも言わない。

一人寸劇など、痛みで頭がイカれていた頃にしているのを何度も見たし、その後も発作のように頭がイカれているのを知っている。

 

だが、あれはなんだ?

自分の後ろを追ってくる巨体に、パッチは顔をひきつらせる。

 

 

「なんだそれは!?」

 

 

「ゴーレムだよ。狭間の地にそこかしらに居るやつ」

 

 

「嘘つけ!」

 

 

それはおそらく改造されたのだろう。

それくらいは状況の飲み込めないパッチにもわかる。

黒くて、通常のゴーレムと違って流線型でスタイリッシュな機体。

魔力を背後から放出することで、馬よりも速くこちらに迫ってきている。

 

 

「うーん、デストロイヤーの資料が紅魔の里の研究所にあったからって言っても伝わらないだろうし」

 

 

もはや元の要素が腕のパーツくらいで、肩に巨大なバリスタを乗せ、四足の黒い別のなにかとなっているゴーレムが、中の人間に合わせてか首をかしげる。

モノアイはこちらを捉えたままなのが普通に怖い。

 

 

「言うなれば僕の外での冒険と狭間の地での冒険の集大成!僕の新しい翼!昨日の夜カズマさんの知恵を借り、アクア様に酒を振る舞い、ゴーレムのコアにめぐみんの爆裂魔力を注ぎ込んでもらい、アクア様に酒を振る舞い、ダクネスさんに的になってもらってはアクア様に酒を振る舞って完成したのさ!」

 

 

まるで意味がわからなかった。

ひとつわかるのは、相手が興奮状態でこちらの話を聞いちゃいないということだ。

あと、アクア様とかいうやつがずっと酒を飲んでいるくらい。

 

 

「名前はレイブン。意味は自分の意志で翼を羽ばたかせ、空を翔ける大きなカラス!さぁ産業革命の時間だ!」

 

 

ロボットに乗れてテンション爆上げのバカの掛け声と共に、漆黒の巨体が背中から魔力を放出し、飛び上がった。

 

 

「あぁぁぁいしてるんだぁぁぁぁこの世界をぉぉぉぉ!ハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 

このあとめぐみん製のゴーレムの核が爆裂して、狭間の地に一つの花火が咲いた。

狭間の地の文明レベルを大きく推し進めるはずだった機械産業は爆発するからと敬遠されるようになった上に、僕の頭にエリス様とラニ様からの雷が落ちたのは完全な余談だろう。

 

 

───こうして僕の後日談の後日談とも呼べる二日間は、いつも通りの爆発オチで幕を閉じたのだった。

 

…果たしてこの後日談に意味はあったのか?

あったとも言えるし、なかったとも言える。

ようはどう見るかだ。

 

少なくとも僕はわざわざ異世界まで追いかけてくれる彼らの気持ちが嬉しかったし、自分の国で遊んでもらえて楽しかった。

 

それだけが伝われば幸いだ。

 

 

 





最後まで読んでくださって誠にありがとうございました。
これにて後日談は一旦終わりです。
本当に妄想の塊のような作品ではありますが、今後ももし何か形になることがあればこのハザか、別の作品を新しく投稿してみたいと思っています。
いつになるかは分かりませんが、もし見かけた時は暇つぶしにでもご利用いただけると幸いです。
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