遅ればせながら「この素晴らしい世界に祝福を!」十周年おめでとうございます。
このすばのよりみち3!の後書きで知った不敬者ですいません。
でもやっぱりこのすば面白かったです。
そして、相変わらず中身なしで短い後日談です。
十周年を知ってから慌てて仕上げた間に合わせ(一週間遅れ)になってしまいましたがお許しください。
そこは果てしない広さを持つ宇宙。
暗くて静か。
恒星の灯りが優しく照らす、冷たくて過酷な空間。
そんな宇宙を横切るなんか宇宙船みたいなものがあった。
「ルビコンが近い。そいつを起こしてくれ」
作戦領域に入ったからか、ひとつの通信が交わされる。
「了解しました、ハンドラー・ウォルター。脳深部コーラル管理デバイスを起動。強化人間C4-621覚醒しました」
そして、あなたの意識は確かに覚醒した。
「んあ?」
「───621。仕事の時間だ。突入カプセルの電源を落とす。あとは合図を待て」
「え、ちょおい待て!なんだこの状況!?つーかこの声アクアだろ!ナレーションはヴァンか!?説明しろこのお馬鹿コンビ!」
おっと、あなたは待機時に見ていた夢のせいで混乱しているらしい。
あるいはコーラルのせいか?
だが、あなたは異世界転生~俺だけ無限に借金が増える件~の主人公ではなく、強化人間だ。
「おい人の人生に変なタイトルをつけんじゃねーよ!誰が無限借金編だ!こちとら大金持ちだぞ」
「621。夢を見て興奮するのは勝手だが、もうすぐ作戦開始だ。準備は良いか?」
「良いわけないんだが?」
あなたの準備は万端だ。
強化人間のあなたは冷静に言葉を返すと、静かにその時を待つ。
「おいナレーションも勝手に進めんな!」
「……うっさいわねーカズマ。良い?あんたは私の指示に従っとけばいいの!麗しの女神の手足となって働けるんだからむしろ感謝してよね!」
ああもうアクア様……!じゃなくて、渋めのおじさまハンドラー・ウォルターの指示は的確だ。
あなたは忠実に従うのが良いだろうと直感する。
「あれ?えーと、台本どこまで読んだかしら……ねぇめぐみんわかる?」
「ええ!?私はそろそろ出番と聞いて気合いいれてたのですが。あ、でもここじゃないですか?ここの今だってやつ」
「おいめぐみんもいるのか!?」
「なるほど……。おほん。今だ、起動しろ」
あなたの乗せられた宇宙船らしきものが噴射を開始し、着陸体制に入る。
あれ、違ったっけ。
まぁ、たぶんなんかそんな感じだ。
きっと。
「あやふやだなおい」
ああだがしかし。
なんということだろう。
あなたの宇宙船に、隕石が当たったことで軌道が変わる。
これはきっとぼ……ナレーションの言うことを聞かずに騒いだ天罰に違いない。
あなたの宇宙船はパーツを眼前の星へばらまきながら落下する。
「横暴だろ!おい待てほんとに墜落する気か!?ぶるぶるいってる!宇宙船がぶるぶるいってるぞ!悪かった!俺が悪かったから規定路線に戻してくれえ!」
───目覚めたとき、あなたは未知の大地にいた。
あなたの名前はキャプテン・カズマー。
宇宙を旅する途中で流星にぶつかり、その星に落ちてしまったのだ。
多くのパーツを失い無様な姿となった宇宙船を修理し、あなたは帰還しなくてはならない。
そう。
この星に住む原生生物である爆裂タイプの『めぐみん』、ドMタイプの『マゾみん』、そして水の女神『アクア様』の力を借りて、あなたは今後生活していくのだ。
「なんかゲームまで変わってるし、どう収拾つけるんだこれ」
ぼやくあなたの耳には、穏やかな波の音が聞こえている。
まるでこれから新しい生活が始まるかのような期待感に胸が膨らむことだろう。
「それじゃ案内しますので、ボクたちについてきてくださーい」
「楽しみなんだなも!」
あなたは小さなタヌキ二匹と借金を背負わせて来そうなタヌキに連れられて、足を大きく踏み出す。
【あつまれ、さいむしゃの島】
ここで陽気なBGM、という紙があなたの顔に張り付いた。
「舐めんな」
…。
……。
…………。
◆
「あ、おはようカズマさん。なんかいつも以上に変な顔してるけどどうかしたのか?」
「いやいや、夢オチはないわー」
「?」
今日のカズマさんはどうやらいつもよりおかしいらしい。
だが、どうせ暫くしたら戻るのだろう。
今日も今日とて、カズマさんはどうせ振り回されるのだから。
「それよりカズマさん。アクア様起こして来てくんない?そろそろフレンチトーストが出来上がりそうだし」
「しょうがねえなぁ」
頭を掻きながら二階へと上がっていくカズマさんと入れ替わるように、カズマさんより先に起きて顔を洗いにいっていためぐみんとダクネスさんがリビングに戻ってくる。
「お、相変わらず良い匂いですね。これならおかわり四回くらい出来そうです」
「ダメだぞめぐみん。こないだそうやってお腹を壊していただろう?」
「紅魔族はお腹を壊しません」
「こら」
そんな穏やかな朝の会話に水を指すように、叫び声が屋敷に響き渡った。
「ぁぁああああああ!やってくれたわねこのクソニート!今日という今日は決着をつけてやるわよ!そこに直りなさい!ゴッドブロー食らわせてやるんだから!」
「うるせえええええ!こっちは変な夢見てイライラしてんだよ!ああいいよやってやるよ!朝から全裸になる覚悟は良いかこの駄女神が!」
「うーん、平和」
僕は仲良く喧嘩する二人の声を聞いて、思わず微笑む。
狭間の地からアクセルへ遊びにきて二日。
実に模範的で愉快な朝の一幕だった。
●
「旅に出ようと思うの」
朝食を食べ終え、洗い物当番から解放されたアクア様が口を開いた。
割りと重大なことを言ったはずのアクア様を、カズマさんはソファーに寝そべりながら、呆れたように言葉を返す。
「旅に出るのは良いけどさ。お前今晩は料理当番だったろ」
「大丈夫よ。料理当番はヴァンに変わってもらったし、今日の晩御飯までには帰ってくるもの」
「ピクニックって言うんじゃないですかねそれは」
僕の呟きを無視したアクア様に、カズマさんがやれやれ、みたいな雰囲気を出しながら笑いかけた。
「それで、どうせ一人じゃ怖いから俺たちも付いて来いってんだろ?」
「今日はダクネスだけでいいわ。カズマとめぐみんは不合格ね。料理当番のヴァンは連れてけないし」
あーあ僕しーらね。
「よし、めぐみんは逃げられないように玄関を押さえろ。コイツ、ちょっとばかり世界が平穏になったからって、調子に乗ると痛い目に遭うって事を忘れてやがる」
「いいでしょう。人様を不合格呼ばわりするとどうなるか、その身に思い知らせてやりましょう」
「二人とも余計な事を言ったのは謝るわ。ごめんね?でも仕方ないじゃない。カズマさんは強欲で、めぐみんは目を離した隙に爆裂するもの」
案の定キレて腕まくりしてにじり寄るカズマさんとめぐみんにちっとも謝るつもりがないアクア様と目が合わないように、ついでに巻き込まれないように僕はそっと屋敷を抜け出した。
◆
「へいラッシャイ!」
「うーん鬱陶しい」
店の前を通りかかっただけで営業をかけてくるのはやめてほしい。
僕はこの道の先のパン屋に用があるのであって、廃品売り場に興味はないのだ。
「まぁ待て。やり直したい過去が山ほどあるお主にちょうど良い商品があるが、買っていかないか?これがあれば暇潰しもできる上に自分の可能性を知ることのできる素晴らしいアイテムだ」
「へー、じゃあ僕行くから」
「おおっと、こんなところにドジっ娘店主のブロマイドが」
「なんだよ僕とバニルとのなかじゃないか。そんな水くさいことしなくても話くらい聞いてやるよ」
「うむ、性欲に素直で助かる」
バニルがなにか言っていたが、僕はその雨に濡れたせいで体のラインが強調されてひどく扇情的になった店主さんのブロマイドを懐に厳重に保管するのに忙しくて聞き逃した。
「で、なんだよ話って」
「このマッチ箱を買わないか?という話でな」
「火付けには困ったことないんだけど」
巨人の火を少しずつ消してる最中とはいえ、普通に百年後まで消えない熱量のそれは、まだまだ健在だ。
なんならまだ自爆もできる。
「まぁ慌てるな。このマッチは元はやり直しすることのできる強力な神器なのだが、本来の持ち主以外が使うと火が燃え尽きると同時に記憶以外が戻ってしまう。そんなとっておきの暇潰しアイテムだ」
「過去の選択をやり直せるってことか。現実は変わらない辺り、良くできてるなって思うけどさ」
なぜだろう。
「過去の選択やり直してうっかり女の子になって、物語の進行が止まる気がするからいいや」
「で、あるか。仕方ない。これは今度あのポンコツ女神にでも高く売り付けるとしよう」
後日カズマさんが購入することになるのだが、結局三回やり直して、全ての回でアクア様やめぐみん、ダクネスさんとパーティーを組むことになったらしい。
あいつらは呪いのアイテムか?なんてぼやくカズマさんの顔はにやけていたことを、僕は忘れない。
最後まで読んでくださって誠にありがとうございます。
思いつくままに書いていたせいでだいぶまとまりがない文章で申し訳ありません。
いっときの暇つぶしになれていたら幸いです。
そして最後に、新作としてダンまちの二次創作に手を出してしまいましたことをご報告いたします。
文体がだいぶ違いますが、もしよろしければそちらも覗いて頂けたら嬉しいです。
懲りずにまた合法ショタです。
https://syosetu.org/novel/327505/