このハザ   作:ひつまぶし太郎

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そして、更新のスピードが遅くてすいません。
今のところほぼ週一投稿が精一杯ですが、これ以下にならないように頑張ります。


もしめぐ⑤

 

 

めぐみんの家に居候して約一週間。

家をぶち壊した賠償金以外、ただで雨風がしのげる場所を手に入れたはいいが、僕にとって少し困ったことになっていた。

 

 

「本当にいいのかい?うちは貧しいが、君のような女の子を外に放り出さなくてはならないほどではないよ」

 

 

「あはい。別にこの家が気にくわないとかではないので気にしないでください」

 

 

そんなわけで、出ていくことにした。

別れの挨拶を切り出した僕のことを、めぐみんだけではなく家主であるひょいざぶろーさん他家族の皆さんが心配してくれているが、ことはそう簡単ではないのだ。

 

 

「ヴァン…」

 

 

「いやほんと。深刻な話じゃないし、別に紅魔の里を出るわけでもないので」

 

 

「理由はどうしても言いたくないのですか?先程から言葉を濁しているようですが」

 

 

「……聞いても怒らない?」

 

 

「怒るわけないじゃないですか!私はまだ、付き合いは短いですが、その…と、友達と思っているんですから」

 

 

めぐみん。

なんていい子なんだ。

 

惜しいなぁ…。

こんな外見も中身も良くて、魔法の才能も素晴らしいのに入れ物に出来ないないなんて。

 

 

「…その、趣味に耽ると大きな声が出るから防音性の高い宿を探そうかなって」

 

 

「趣味?」

 

 

「そりゃ、オ───」

 

 

 

 

 

 

「めぐみんってば初心だなぁ」

 

 

≪普通、あの年頃の少女はそんな話に耐性があるわけないだろうに。本当にろくでもないなバカ弟子≫

 

 

「いやいや。僕より年上ですからね」

 

 

脳が僕の言葉を理解した途端羞恥の限界に来たのか、ほとばしっためぐみんの一撃によって出来た真っ赤な紅葉も、今はもうない。

便利な体だ。

 

 

≪それにしきりにあの少女を入れ物にしようとしているようだが、私の好みじゃないな≫

 

 

「えー?選り好みですか」

 

 

≪どうせならもう少し成熟した処女がいい≫

 

 

「どれも一緒じゃないですか!」

 

 

≪全然違う。これだから乗っ取り素人は…≫

 

 

なんだよ乗っ取り素人って。

適当にその辺の女の人の体にぶちこめばよくない?

もちろん、騒ぎにならないように気は使わないといけないが。

 

 

≪まさか私が他人の外付け良心になることになろうとはな…≫

 

 

極悪人がなんか言ってる。

 

 

「あー、その辺に悪いやつ歩いてないかな。悪人なら一ミリも罪悪感働かないのに」

 

 

少なくとも善人に手を出さない理性がある僕の方が、純真だった僕に手を出した師匠よりもマシだろう。

きっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

 

「めぐみん!分かってるわね、今日も勝負よ!」

 

 

朝の教室ではいつものように、ゆんゆんがめぐみんに絡みにいっていた。

 

 

「ゆんゆん今日も元気だなぁ」

 

 

「うんうん。私としても恋の勘違いを恥じてぎこちなかった状態が改善してほっとしているよ」

 

 

「まぁ僕らのせいだけど」

 

 

「それはそう」

 

 

あははは、と僕と一緒にひどく乾いた笑い声をあげるのはあるえだ。

 

彼女はクラスで一番のプロポーションを誇り、クラスで三番目に頭のいい紅魔族の女の子だ。

成績一番と二番がめぐみんとゆんゆんなことを考えると、普通の紅魔族として一番成績がいいのがあるえ、という言い方もできるかもしれない。

 

 

「いいでしょう。受けてたちます。ついでにこの子の朝ごはんもお願いします」

 

 

そういって、めぐみんは彼女の肩にへばりついていた黒い塊を持ち上げた。

にゃーと鳴くその黒い毛玉に、登校してきていた他のクラスメートたちが興味津々といった感じで集まっていく。

 

 

「猫…?」

 

 

「使い魔です」

 

 

「使い魔!?もしかしてめぐみん、そんな理由で先生を説得するつもり…?」

 

 

「当たり前です」

 

 

「可愛いし私たちは構わないけど先生がなんて言うか…」

 

 

「そうね。可愛いけど」

 

 

ふわふわもふもふ、とゆんゆん以外には素直に撫でられる黒猫は、めぐみんの手を離れ机の上で丸くなっている。

ふてぶてしいな。

可愛いけど。

 

 

「そんなことより!」

 

 

と、教室の注目が黒くてかわいいやつに集まっていたところを、めぐみんはぶったぎるように声をあげた。

 

 

「さっさと勝負しましょう。もたもたしていると担任が来てしまいます」

 

 

「ええ!?ほんとに私がこの子のご飯も用意するの!?」

 

 

「嫌なら別に構いませんが。自分で食いぶちを用意していたヴァンと違ってこの新しい居候はただの猫ですからね…。いずれは飢えるかこめっこの胃袋のなかにおさまることになるでしょう」

 

 

新たな居候、のところでめぐみんが僕の方をちらっと見てきたので、とりあえずウィンクしてみせる。

それにイラッとしたような顔をしながら、めぐみんはゆんゆんに向き直った。

 

 

「分かった…分かったわよ!それでもあくまでもめぐみんが勝ったからだからね!?それに、その要求を飲む代わりに私が勝負の内容を決めさせてもらうんだから!」

 

 

「…ゆんゆんって将来ホストに貢いでそう」

 

 

「そうならないためにもめぐみんとの百合ルートに入ってもらうしかないね」

 

 

「どのみちろくな未来じゃないな…」

 

 

あるえの膝に乗せられ、頭を撫でられながら事のなり行きを見守っていた僕は、ゆんゆんの暗い将来に静かに黙祷した。

 

 

 

 

 

 

結局、お約束と言うかなんと言うか、汚い戦法でめぐみんが勝利し、ゆんゆんは泣いた。

悲しいなぁ。

自家発電で照れる女の子の戦い方じゃない…。

 

 

「───不許可」

 

 

そして、そんな不毛な戦いのあとにやって来た担任の先生は、無慈悲だった。

 

 

「学校は使い魔禁止、おやつ禁止だということを忘れたか?飼えないならもといた場所に返してきなさい」

 

 

正論だった。

ジャスト一分もない、いい夢を見ることすら出来ない無慈悲な裁定は、しかして次のめぐみんの言葉でひっくり返ることになる。

 

 

「先生、これはもう一人の私です。私の力を宿した片割れなのです。我々は一心同体。そんな私たちを先生は離れ離れにするつもりですか!?」

 

 

「…もう一人のお前が、抱かれるのを嫌がっているが」

 

 

「反抗期ですね」

 

 

分が悪いと思ったのかめぐみんが床に下ろすと、猫はそのまま教室の壁に近寄り爪を研ぎ始める。

めぐみんと先生の攻防を見つめていたクラスメートたちは、一瞬で猫の方に心を奪われめろめろだ。

 

その視線に答えるように、少し尻尾を振る辺り、自分のかわいさを自覚していたりするのだろうか。

 

 

「自由だな、もう一人のお前」

 

 

「ええ。紅魔族としては何者にも縛られない強さを忘れてはいけないと思っているので」

 

 

「いいよ」

 

 

「ですからここは是非とも…え、今なんと?」

 

 

「だから、いいよ。面白そうなことになりそうだから」

 

 

僕から見てもろくでもない認定できる担任は、ニヤリと意味深に笑った。

 

 

 

 

 

 

「───ちょっとめぐみん、トイレはちゃんと決められた場所でしなさい!ほら、ここよ、ここ!」

 

 

めぐみんが、壁に向かっておしっこするのをクラスメートのふにふらが叱りつける。

 

 

「偉い、偉いわめぐみん!シーする場所がわかってきたのね!」

 

 

「………」

 

 

「ああ!ダメよめぐみん!いくらヴァンちゃんのことが好きだからって膝の上に甘えにいくのは!」

 

 

めぐみんがあるえの膝に乗せられている僕の膝の上に飛び乗ってきて、甘えるように頭を擦り付けてくる。

 

 

「良かったねめぐみん…。痴話喧嘩して居候じゃなくなったって聞いたときはどうなるかと思ったけど…」

 

 

…別にこれは僕がついにめぐみんをどうこうしちゃったとか、めぐみんが催眠にかかったり人格排泄されたりとか、そういう何かがあったわけではない。

 

 

「ああああああああーッ!!」

 

 

「きゃー!ついにニセめぐみんが怒った!」

 

 

「誰がニセですか!私が本物ですよ!」

 

 

…仕方ない。

我慢の限界が来たのか暴れだしためぐみんを僕はなだめすかすことにした。

 

 

「どうどう落ち着けよめぐみん」

 

 

「そこ!そっちは猫ですよ!」

 

 

膝の上にいるめぐみん…もとい、猫に向かって話しかける僕に向かって、めぐみんが食って掛かってくる。

 

 

「知ってる。でも、めぐみんの片割れなんだからめぐみんと呼ぶのが一番正しいと思わないか?」

 

 

「思いません!私以外の名前をつけてください!我慢の限界です!」

 

 

そう。

担任の先生が言っていた面白そうなこととは、これだった。

猫を片割れ呼ばわりしためぐみんが、猫の名前もめぐめんとなり、いつか我慢の限界が来るだろうという。

やっぱりあの先生ろくでもない。

 

 

「ええ…せっかくめぐみんって名前がなんだか可愛く思えてきたのに」

 

 

「ああー…私のかわいいめぐみんがあんまり可愛くないめぐみんに…」

 

 

「おい、その喧嘩買おうじゃないか」

 

 

渋るクラスメートにめぐみんが襲いかかるなどの一幕は決まったが、結局猫の名前はゆんゆんの考えた『クロちゃん』という名前に落ち着いたのだった。

 

 

尚、クラスメートたちからの評価は変わった名前で覚えやすい、であり、飼い主のめぐみんにいたっては変な名前呼ばわりしていずれ変えると言う始末で、やっぱりゆんゆんは泣いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、じゃあ家に来るかい?」

 

 

「そうする~」

 

 

「え、軽っ!?」

 

 

その帰り道。

めぐみん、ゆんゆん、あるえ、僕という四人組での道の途中。

僕が趣味に耽るためにも防音性の高い部屋のある住みかを探しているという話をしていると、あるえが誘ってくれたので拠点の宛が出来た。

 

ゆんゆんの驚きとは別に、じとっとした目線が僕に突き刺さったので、とりあえずそちらに目を向ける。

何を隠そう、というかここには四人しかいないのでもちろん普通にめぐみんであり、彼女はじとっとした目線を僕に向けていた。

 

 

「……どうかした?」

 

 

「いえ、別に。私の家を出ていったと思ったら次の日にはもう新たな居候先を見つけるとはとんだビッチですね?と思っただけです」

 

 

「僕はまだ処女だよ、経験相手は女性のみだからな。て言うかなに?嫉妬?え、めぐめん僕のこと好きなの?」

 

 

相手はもちろん師匠である。

 

 

「違いますよ!ただその、なんでうちではダメなのだろうと思っただけです」

 

 

「えー、だってめぐめん家こめっこちゃんいるし。あの子割りと頻繁に僕の部屋来るから、ちょっと…。夜中にしようにもめぐめん家壁薄いし」

 

 

新しくなったとはいえめぐみんの家は相変わらず壁が薄い。

なにせ僕は狭間の地を焼け出されてこの世界に来ているので、出せる財産も元々持っていたものに比べて半分もないのだ。

その程度の金額で立てられる家など、いくら魔法で通常よりもコストが格段に低いとは言え、元のあばら屋みたいな家よりマシ、くらいのものにしかならない。

 

 

「うん、私の家は鍵つきの部屋が余っているし。両親も宿泊費をくれるなら文句はないだろう」

 

 

「よろしくお願いしま~す」

 

 

 

数日後。

部屋から悲鳴のような声が聞こえたことを心配したあるえとそのご両親に、師匠の原輝石に体の制御を明け渡し、脳内に響き渡る言葉責めと寸止めでハッスルしていたところを目撃され、追い出されることになるのはまた別の話だ。

追い出されたというか、僕の顔見る度家族全員が羞恥に悶えるからいづらくなっただけだけど。

 

紅魔族って鍵開け魔法使えるのね。

便利だし、魔法の知識が増えたのはいいけど、さすがに事故すぎる。

 

 




今回も最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。

TS闇落ち?ヴァンさんですが、下ネタ言うのはあんまり変わってないですね。
とは言え、本編ヴァンさんなら、童貞なのでもっとしょうもない下ネタしか言わないし、猫めぐめん相手に全力でからかいにいったり、あるえの膝に乗せられるのも羞恥心から抵抗したりするので、そういったテンションの差というか人との距離感が表現できていればいいなぁとか思ったりしてみます。
たぶんできてないです。


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