このハザ   作:ひつまぶし太郎

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本日二話目の投稿です。
今日は本編も更新しています。

そしてこれは、息抜きに始めた番外編ががっつり設定が生えてしまったので、別枠の息抜きとして用意したものです。
狭間の地でのNPCとの思い出等を絡めた、短くてオチもない文章です。
今後、思い付いたときに投稿してみようかなと考えています。

今回の時系列は本編時空の最初に紅魔の里に落ちてきたとき辺りです。



短編。
小咄①“しろがねのラティナ”


 

 

今日の天気は豪雪。

 

夜辺りに吹雪いていたのでそんな気はしていたのだけど、朝目が覚めて、ひょいざぶろーさん含めて全員が入り込んできていた僕の布団からなんとか這い出し、なおもしがみついてきてるひょいざぶろーさんを蹴り払い…またにゅるんとしがみついてきたこめっこちゃんを引き剥がし…ゆいゆいさんに首に手を回され必死に抜け出し…最後にもう一度抱きついてきたひょいざぶろーさんをHA☆NA☆SE!と蹴っ飛ばして外へ出ると、外は一面の銀世界だった。

 

 

「…外に出るまでが長い。長くない?」

 

 

昨晩はひょいざぶろーさんとの晩酌に付き合ったり、僕が暖気を発していることがばれたりしたせいで、湯タンポとして従事するはめになってしまった。

 

 

「すごい、すごい!兄ちゃんこれ全部かき氷!?食べていい!?」

 

 

「やめとけやめとけ!かき氷ならあとで僕かしこたまつくってあげるから!ばっちいからほら、ぺっしなさい!」

 

 

記録的な豪雪を前にこめっこちゃんは大興奮していて、雪を食べようとして必死に止めるなんて一幕があったりしたが、僕は雪景色に関して特に思うことはない。

 

子供のようにはしゃぐほど、幼くはないのだ。

 

 

「それよりこめっこちゃん、雪だるま作ろうぜ!どっちがでかいの作れるか勝負だ!」

 

 

「余裕」

 

 

…幼くはないのだ。

むしろ、巨人たちの山嶺とか聖別雪原を思い出し、同時にいくつかのトラウマが甦るくらいだ。

 

テンション駄々下がりである。

 

 

「はっはっは!氷にまつわることで僕が負けるわけないんだよなぁ!」

 

 

いやほんとに。

 

 

 

 

 

───先の見えない一面の銀世界。

 

吹きすさぶ風と雪は、寒さを越えて痛みを運んでくる。

 

お前は人間ヒーターだから平気だろ!と言われるかもしれないけど、当時はまだメリナ姉さんが生きていて、僕に巨人の火が宿る前なので、寒さは他の人たちと同じように弱点だった。

 

そう、雪の地獄と書いて聖別雪原。

 

視界不良の世界で、突然現れる熊に巨人、騎兵たち。

視界の外から飛んでくる名前がよくわからない雷の玉からの狙撃。

松明もすぐに掻き消え、暖を取るために懐に忍ばせた火山石もすぐに冷たくなり、深い雪は愛馬のトレントの足を鈍らせる。

寒すぎて出てきた涙は即座に凍り、耳がいたいと思ったら冑と凍着していたときは、マジで死ぬかと思った。

 

狭間の地に平穏な場所など一つもなかったが、それでもやはりあのエリアは群を抜いて過酷だった。

厄介な敵というよりも、環境的な意味で。

 

食事をとるのも寝るのもままならないから、いちいち祝福から大祝福に移動する必要があるのだが、吹雪のせいで祝福をなかなか見つけられずに迷子になり、結局所持していたルーンを諦めて≪祝福の記憶≫を使って移動したこともあった。

 

 

『寒い寒い寒い!ラティナさん一旦帰ろう!あかんこれ!死ぬやつだって!』

 

 

『貴方、少しよいか?』

 

 

『よくねえって!』

 

 

力を貸してくれていた遺灰の一人、ラティナさんとの約束のため仕方なく足を運んだけど、もう二度と行きたくない。

 

オルディナとかいうしろがねの射手の皆さんがいる場所で、地獄の特訓を課せられたのも僕があそこを嫌いな理由に含まれるのは間違いない。

 

 

『ほら、せっかく動く足があるんだから走れ!』

 

 

『この雪の中の中で!?』

 

 

『違う!走りながらも矢は三本持って!必ず当たるという意思があれば、矢は勝手に追尾して当たるものだと言っているだろう!』

 

 

『あんたらそんな根性論であんな絶技やってんの!?詐欺だろ、その見た目で脳筋なのは!』

 

 

『この先に行きたいなら我々から放たれる矢をすべて躱しながら、三ヶ所に火矢を使って火を灯しなさい!私たちの矢に当たればやり直しだ!』

 

 

『ふざけんなー!僕ってしろがね人の恩人じゃねーのかよ!』

 

 

まぁ、お陰で僕はスキルや戦技でもなんでもなく、しろがねのラティナさんのような射撃が可能になったのは、ギリギリプラスの収穫だろう。

 

達成するまで何度も何度も、矢の先につけられたしろがねの凝血とかいう白くべたつくなにかで僕の顔をどろどろにされた恨みはあるけど。

 

 

『ふふ。なんというか官能的な見た目になったわねヴァン』

 

 

『メリナ姉さん今日の晩飯抜き』

 

 

 

 

 

 

さて、僕の忌々しい思い出の数々はどうでもいいが、雪が積もれば雪掻きの時間である。

 

僕みたいな近接バカよりも、魔法を使える紅魔族の方が手早く終わらせられるかと思ったけど、そう上手くはいかないらしい。

 

 

「おーい、誰か。お尻押してくれ!腹が引っ掛かって屋根に上れん!」

 

 

「ぎゃー!足首を挫きました!」

 

 

そもそも屋根に軽々登れる人間がそんなにいない。

 

…思い返すと師匠も普段エレベーター頼りなせいで、階段を使って一階上に上がるだけでも虫の息になっていたし、魔法の達人がフィジカルもエリートという不条理は、世界が認めていないのだろう。

 

 

とはいえそこは理不尽種族の紅魔族。自力で屋根に登ることも出来なくても、魔法で召喚した悪魔やゴーレムに任せていたり、風の魔法や熱の魔法を使って作業にあたったりと、とにかく力任せに動く僕よりもスマートにこなしていた。

 

 

…それだけならステータスが初期値になった僕よりも早く終わりそうなものなのだが、かっこいい台詞やかっこいいポーズをあれやこれや試しながらやるからとにかく効率が悪い。

 

あと火力高めな傾向にあるから自分の家を破壊しないように四苦八苦している人も見受けられた。

 

なんなら誰かが天候を変える魔法を使ったせいで、落ち着いていた天気が吹雪に逆戻りするなんて一幕もあったくらいで、結局そこにいるだけで周囲の雪を溶かせる僕の方が、早く終わるという結末に落ち着いた。

 

 

そんな訳でお世話になっているひょいざぶろーさん宅の屋根の上から雪を取り除いた後は、里の老人たちの家にお呼ばれして雪掻きを代わりにこなしたり、それも終わった後は大人たちが雪掻きしていて暇な子供たちの相手をしたりと、嬉しくない人気っぷりを見せつけ、馬車馬のごとく働くことになった。

 

 

…懐かしいな。

思い返すと狭間の地での僕は、メリナ姉さんに師匠、その他もろもろちょっと話の通じる人たちから、使いっぱしりにされてばかりだったように思う。

 

最初のうちは貴族相手でも『うっせー自分でやれ!バーカ!』とか文句を言いながらパシられてたのに、いつの間にか特に疑問も持たずにやるようになってしまった。

 

これも師匠の身の回りの世話をこなしてきた賜物だろうか。あの人、途中から全然取り繕わなくなったし、生活力が皆無すぎて僕に依存している節があるからな…。

残してきたボックが苦労してないといいけど。

 

 




今回も最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。

一番最初の思い出話はラティナさんでした。
固定砲台として強くて、しかも美人を守りながら戦うという美味しいシチュエーションに自然となるので、大変お世話になりました。

よろしければ評価や感想、ここすき等して頂けると作者が喜びます。
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