「よーし行くぞ!
ジ・アース、発進!!」
少年の叫び声と共に、暗い海の中で僕は目覚めた。
ジ・アース、というらしい、それが僕の名前か。
朧気ながら、体が勝手に動く。
体が海面へと浮上する。
少しずつだが、体の感覚もわかってくる。
巨大な躯体、僕の中にいる15人の子供たちと一つの小さな何か。
そしてそのうちの一人の少年から強いエネルギーが流れ込んでくる。
これは一体何なんだ?
だが、そんな疑問を他所に僕の体が動く。
「くっ、しょうがないだろ!
難しいんだよこれ!」
少年は僕に動けという念を送ってくるが、僕の体を操縦するのに慣れてないのか、僕は今海面を四つん這いで歩いてるような状態だ。
確かに、これじゃあまりにも不格好だな。
『…立てって、念じくれれば』
僕は思わず口にすると。
「…え?
なぁ?誰か言ったか?」
「私たち、何も言ってないけど?」
「聞き違いじゃないのか?
しっかりしろよ」
少年が僕の声が聞こえたことに困惑して皆に聞くが誰も聞いてないみたいだ。
…まさか。
『君、もしかして僕の声が聞こえるのか?』
「うわっ!?えっ!?
今度ははっきりと、頭の中に響いてきた!
だ、誰だよ!?」
「おい、どうしたんだいきなり」
他の皆が心配してるようだが、とりあえず、この少年だけが聞こえてるというなら、言うしかない。
『君が僕のことを操縦してるんだろ?』
「ま、まさかジ・アース?
俺に話し掛けてるのか?
というかお前、喋れるのかよ!?」
『どうやらそうらしい。
僕も今さっき目覚めたから、何とも言えないが。
…どういう状況かは知らないけど、とにかく立てって念じてくれれば、この体は立ち上がってくれるはずだ』
「おぉ、アドバイスサンキューな!
…立てっ、ジ・アース!!」
皆この少年がさっきから誰と喋ってるんだとばかりに眉を顰める中、少年からの立てという念により、四つん這いの格好だった体が立ち上がる。
全高が高く、周りを見ると、そこには山と海に囲まれた街があり、人々は避難したり僕の姿を見てはカメラで録画しようとしている。
だが明らかに異常だと思うものが前方にいる。
僕も人のことは言えない異形だが、そいつはカマキリ型のロボットだ。
しかも僕を敵と認識してるらしく、頭部を光らせる。
『あれは何だ?
穏やかなものじゃないようだが』
「見ればわかるだろ!?
敵だよ敵!
俺たちはアイツと戦うためにお前を操縦してんだよ!」
『…なるほど、わかった。
そういうことなら、僕も戦うよ。
だから、僕の体に強く念じてくれ』
「わかった!」
僕の体は止まると同時に、頭部に強力なエネルギーが集まってくる。
この少年がそう念じているんだ。
「…なぁ叫んでもいいか?」
「さっきから誰と話してんのか知らねぇが、まぁ好きにしやがれ」
少年が小さな何かに確認を取ると、改めて照準を合わせ。
「レーザー、発射ぁ!!」
頭部に集められたエネルギーはビームとなって、ロボットに向けて放たれる。
しかし、手の鎌に当たると、まるで鏡の反射のようにビームは角度を変えて、後ろにあった山を消し飛ばした。
『まずい、効かないみたいだ』
「山が…!」
「なくなっちゃった」
「ヤッベヤッベ…」
「おまけに効いてねぇし」
「ワク!やりすぎだよ!」
「来るぞ!」
山が消し飛んだことに呆然したり、ワクと呼ばれた操縦してる少年を非難したりと、子どもたちは騒ぐが、次はこっちの番だとばかりに相手のロボットが近づいてくる。
「おいどうするんだ?」
「ぼやぼやしてるとやられちまうぜ?」
『くっ、ワク!避けるんだ!』
ワクに言うが時既に遅く、近づいてきたロボットの鎌と足に、体が絡みつかれる。
「しまった…!」
ロボットが強い力で体を締め付けてくる。
ミシミシと音を立てて、潰れてしまうのも時間の問題だ。
「放せよこいつ!」
『おい待て!こいつにビームは撃つな!』
それでもワクはビームを撃つが効かない、周りの水面が水柱を立てるだけだ。
「くっ、コエムシ!
何か方法はないのか!?」
「俺に命令するな。
パイロットは、あくまでもお前なんだぜ?」
「くっ、チクショー!」
コエムシと呼んだ何かに助け船を出すが、彼はまるで他人事かのように答える。
その間も僕の体は潰されようとしている。
このままではまずいと思ったその時に、大人しそうな少年が何かを見つけたそうだ。
「ワク、敵の足の付け根の上の所、胴体に隙間が見える」
改めて見ると、ロボットの胴体に隙間が確かにあった。
「あれか!」
『どうやらそうみたいだな。
どれだけ硬くてビームを跳ね返せるボディをしていても、関節という動かすのにどうしても強度が弱くなる所があるからな』
「でもどうするの?
腕はもう使えないのに」
少女が心配そうにワクに聞く。
確かに、僕は今体を絡みつかれてるせいで腕が動かせない。
『…ワク、彼女の言う通り、今の僕には腕が絡みつかれて動けない。
一応、足の自由はあるが、行けるか?』
「へっ、足が使えるなら上出来だ!」
と、僕の足を思い切り後ろに振り上げる。
「腕は使わねぇ。
何故なら俺は…、サッカーをやってたんだからなぁ!!」
後ろに振り上げた足で、ロボットの胴体の隙間を膝蹴りする。
衝撃が強く、ロボットの体全体を軋ませる。
「うぉおおおおおお!!!」
ワクの叫び声と共に、僕の足はロボットに幾度となく膝蹴りを喰らわせる。
そして、勢いよく振り回した足が、ロボットの体をバラバラに吹き飛ばした。
中のパーツが周りに散乱し、その場で倒れた。
それでもワクは僕の足はロボットを踏みつぶし続ける。
「どこだ、急所は!?」
「やめときな。
見事に急所は潰れた」
「…え?」
『彼の言う通りだ、ワク。
もう今ので倒したようだ』
コエムシと僕の言葉に呆然とするワクだが、よく見るとロボットの頭部から光が消えた。
「…うそ」
「やっつけたの?」
ロボットを倒したことに呆然としてる子供たち。
「…ジ・アース、外へ出られる?」
『あぁ、だがかなり高いから気をつけろよ?』
ワクは皆を連れて僕の顔の前に出てきた。
巨大な躯体の僕の体から、海面に浮かぶロボットだった残骸を見た子供たちは安堵を浮かべる。
「うぉおおおおおお!!!」
そんな中で、ワクは叫ぶ。
それは勝利の雄叫びなのだろう。
『ワク、そんなに嬉しいのか?』
「あぁ、俺皆から目立ちたがりとか言われてるけど、こういう隠れたヒーローになりたかったし、あいつから皆を守って、やっつけれたのすっげぇー嬉しいんだ!
…ありがとな、ジ・アース!」
『君が僕を動かして倒したんだ。
ただ、その感謝はありがたく受け取るよ』
正直目覚めたばかりだから、それ以前の記憶はないが、こうして感謝されるのも、悪くないな。
「…じゃ、見つからないうちに戻ろっか」
「お前、恥ずかしいんだよ。
さっきから独り言多いし」
呆れた様子のメガネの少年がワクを軽く小突いた。
だがそこで思わぬことが起こった。
ワクの体が、まるで糸が切れたみたいに、僕の体から逆さまになって海へと落ちて行った。
『ワクッ!』
僕は思わずワクに手で受け止めようとするけど、1ミリも動かない。
ワクのような操縦者が念じてくれないと、僕は動けないから。
それだけじゃない、ワクから流れてたエネルギーが、なくなった。
あまりの出来事に、皆は呆然としながらメガネの少年を見つめる。
まるでその少年がワクを突き落としたと言わんばかりに。
「ち、違うんだ!
僕は軽く小突いただけなんだ!
信じてくれ!」
少年は皆を説得しようとしている。
もちろん、僕も彼がワクを突き落としたとは思っていない。
そもそも彼は小突かれた直後に、彼からのエネルギーが空っぽになったんだ。
『そんな…、ワク…』
これで僕は察してしまった。
ワクを殺したのは、他の誰でもない、この僕だ。
あの流れたエネルギーは、彼の寿命だったんだ。
それを動力源としながら、体が動いて、戦いが終わると同時に彼の命を空にしてしまったんだ。
この日、僕はジ・アースとして意志が目覚め、同時に僕がどれだけ最悪な存在なのかを、思い知ってしまった。
ジ・アースの見た目について
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