ぼくは    作:ガンダムラザーニャ

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家族との時間

チズの戦闘後、政府の人たちと話をしていた時、一人の少年が僕の顔を見るなり違和感を訴えた。

 

確か名前は門司 邦彦、皆からはモジと呼ばれた少年だ。

 

彼の話によれば、僕の顔にある光が、戦うごとに一つずつ減ってるらしく、それは皆の命の数を現してるんじゃないかと推測したらしい。

 

今回のカコ・チズの時に3つ減ったそうだ。

 

僕ら自分の顔を見れないから、よく分からなかったが、まさかそんなことになっていたなんてな。

 

でもそれなら2つ光が消えるのに、何で3つ何だと疑問に思ったが、そこへ太り気味の少年、切江 洋介ことキリエが、その3つ目の光は、チズの中にいた子供じゃないかと言った。

 

最初は皆も驚いたし、僕も驚いた。

 

だが最期に彼女が自分の下腹部を触っていたことから、すぐに納得した。

 

つまり彼女は、戦っていた時点で既に子供を身籠っていたんだ。

 

恐らく、彼女が襲った男との子供ではないかと思われるが、キリエもそこまではわからないらしく、言い淀んでしまう。

 

しかしそこでまた一つ、疑問が生まれてしまった。

 

それは今の光の数と皆の数が一致していないことだ。

 

これまでワク、コダマ、カコ、チズ、そして彼女が身籠った子供で光が減った。

 

彼らを除いて、今現在契約してる子供は全員で10人。

 

でも光の数は9つ。

 

つまり子どもたちの中に一人、契約していない子がいるということになり、残り11回の戦いに、あと二人足りない。

 

宇白 順ことウシロは、そばにいる自身の妹の可奈ことカナを契約させなかったのはわかってるが、カナ以外にも契約していない誰かがいるということだ。

 

僕には、その時にパイロットになった契約者しかわからないから、その未契約者は誰なのかわからない。

 

しかし、そうだとするなら、誰が何のためにそんなことをしたのか、それがわからないよな。

 

…何にしても、僕は皆を助けたい。

 

チズとの約束だからな。

 

皆の中で誰が契約してないのかという疑問はありつつも、政府側から二人契約者が出た。

 

田中という女性と、その同僚の関という男だ。

 

…すまない、君たちも巻き込んでしまって。

 

そうして数は合ったが、そこで次のパイロットが選ばれた。

 

日焼けと丸刈りが特徴的な少年だ。

 

名前は矢村大一、皆からダイチと呼ばれてる少年だ。

 

彼は最初、自分が選ばれたことに動揺し、膝をついてしまった。

 

僕もカコのことがあって、声を掛けていいのか、分からずにいた。

 

だが、彼はコエムシに、ある約束をした。

 

残された時間を家族と過ごしたい、自分から来るから強引に連れ出さないでくれと。

 

自分が亡くなったあとの遺体は、家族の前に出さないでくれと。

 

僕は彼がどんな気持ちでそれを言ったのかは分からないけど、きっと覚悟を決めて言ったに違いない。

 

解散してから彼は、新聞配達をしていた。

 

そんな彼の様子を見ていると。

 

「…ジ・アース、そろそろ話し掛けてくれても良いんじゃないか?」

 

『…っ、気付いてたのか』

 

「パイロットになった皆の様子から何となくわかるさ。

 

あれは皆が一人でぶつぶつ言ってたんじゃなくて、お前が話し掛けてたからなんだろ?」

 

『あぁ、でも僕にはそれしか君たちにしてあげられないけどね。

 

念じてくれないと、僕は動けないから』

 

「だろうな」

 

『…にしても、君がやってるのは新聞配達か?』

 

「叔父さんの所で仕事をさせてもらってるんだ。

 

3年前に親父が失踪して、妹たちの面倒を見なくちゃいけなかったから」

 

『…そうか』

 

「叔父さんからは、もう何度も家に来ないかと言われたんだ。

 

父さんはいつ帰ってくるのかわからないし、何より妹たちはまだ幼い。

 

…でも俺は、親父が帰ってこられる場所を残しておきたくて、それを断ってきたんだ」

 

『…君は、家族を大切にしてるんだな』

 

「あぁ、それにお前のパイロットに選ばれたことは後悔してないよ。

 

確かに勝っても負けても死ぬのは確かに辛いけど、家族を守れるなら安いもんだ」

 

『強いね、君は。

 

僕はこんな存在だから、君は僕を恨む権利もあるのに』

 

「恨まないよ。

 

お前、悲しそうな声してるし、何より本意じゃないんだろ?

 

だったらお前を恨んだりしない。

 

俺は、ただ家族を守りたいだけだ」

 

『……ありがとう、ダイチ』

 

それから新聞配達が終わり、新聞社へと戻ると、優しそうな男が顔を出した。

 

「ただいま戻りました」

 

「おうダイチ、お疲れ。

 

帰ってきて早々で悪いがちょっと来てくれ」

 

「は、はい」

 

『今の人は?』

 

「叔父さんだよ。

 

でも、どうしたんだろ?」

 

叔父さんと呼んだ男について行くと、通路の脇でここの従業員らしき男2人が紙を見て悩んでいた。

 

「それ、どうしたんですか?」

 

「あぁダイチか、おかえり。

 

これはこの地域の避難場所の地図だよ」

 

「全く、最近は怪獣が暴れ回ったりと、漫画みたいなことがあるんだな。

 

ダイチも見ておけ」

 

男たちが持つ地図を見る。

 

避難用のバスとその経路のようだ。

 

一目見てから、すぐに叔父について行く。

 

「ダイチ、これを持っていけ」

 

彼は奥にある部屋の机の引き出しを引くと、一通の封筒を取り出し、中身をダイチに渡した。

 

それは遊園地の無料チケット、しかも4枚分だ。

 

「叔父さんっ、これ営業用ですよ!

 

受け取れません!」

 

「良いんだ、それはお前にやる。

 

それで妹たちと遊びに行ってこい」

 

「で、でも…っ!」

 

「行ってきなさい、ダイチ。

 

たまには息抜きも必要だぞ?

 

それに、明日の夕刊も休みだ。

 

いいな?明日来ても、ここにお前の仕事はないぞ?」

 

「……」

 

『ダイチ…』

 

「…わかりました。

 

それと叔父さん、以前から家に来ないかって話、ありましたよね?」

 

「あぁ!

 

もしかしてダイチ、その話受け入れてくれるのか!?」

 

「はい、親父が帰ってきて欲しいという思いは、今でもあります。

 

でも、妹たちには辛い思いをしてほしくありませんから。

 

…急だとは思いますけど、今日からでも良いですか?」

 

「もちろんだとも!

 

俺は兄貴、お前の父さんと違ってできることは少ないが、よろしく頼むよ」

 

叔父は彼の肩を優しく叩く。

 

「そうだ、明日の晩ウチに来い、皆で一緒に食事をしよう!」

 

「…はい、ありがとうございます」

 

叔父に見送られながら、ダイチは家に帰る。

 

一人となったタイミングを見計らって、声を掛けた。

 

『ダイチ、あれだけ断ってた例の話を受け入れたのは、まさか』

 

「あぁ、俺は近いうちに戦って死ぬ。

 

家族を守って死ぬなら良いけど、残された妹たちが心残りなんだ。

 

だからせめて、妹たちを少しでも楽させてやりたい。

 

それが俺の願いであり、戦う理由だ」

 

『…君は、君はとても強くて、優しい子なんだね。

 

それは君にとっても辛い選択なのは、わかってるはずなのに。

 

それでも、ただ家族を守りたい一心で…』

 

「ジ・アース、俺はそんな強い人間なんかじゃないさ。

 

父さんがいなくなって、幼い妹たちの生活のため、いつか父さんが帰ってこれる居場所を無くさないために必死なだけの、普通の子供だ」

 

『ダイチ……』

 

「だから俺に力を貸してくれ、ジ・アース。

 

俺は妹たちを守りたいんだ」

 

『わかった。

 

僕に出来る限りのことをするよ』

 

ダイチの家に着くと、彼の妹と弟と思われる幼い子供たちが出迎えてきた。

 

「にーちゃんちゃんおかえり!」

 

「ダイチにーちゃんおかえりー!」

 

「おかえりー!」

 

「おぉただいま!双葉、三太、四詩。

 

いい子にしてたか?」

 

「うん!」

 

「してたよ!」

 

「してた!」

 

「そうか、偉いな。

 

さて、ご飯にするか」

 

ダイチは食事の準備に取り掛かる。

 

それを双葉と呼んだ少女が手伝って、三太と四詩はテーブルで退屈しながらテレビ見たりしている。

 

そして出来上がった食事を皆で取り囲みながら食べて、一区切りついてからダイチは話を持ち出す。

 

「皆、明日は一緒に遊園地に行こう。

 

叔父さんから無料チケットをもらってきただ」

 

「えっ!いいのか!?

 

やったやったー!」

 

「わーいわーい!」

 

「でも、明日だなんて、急じゃない?

 

にーちゃん、どうしたの?」

 

「んっ、せっかくもらったんだし、どうせならすぐ楽しもうと思ってな」

 

「そっか、じゃあ楽しみにしとくね、にーちゃん」

 

『ダイチ、良いのか?』

 

「あぁ、俺はもう覚悟を決めたんだ。

 

だから、最後の思い出作りくらいしてもいいだろ?」

 

『……わかった』

 

それから夜も更けて、妹たちが眠りについてる中、ダイチは眠れずにいた。

 

時計の時間は夜中の3時前だ。

 

「…」

 

「眠れないの?」

 

そんな彼を心配して、双葉が声を掛けた。

 

「…目が、覚めちまった」

 

「最近、にーちゃん変だよ?

 

何か困ったことでもあったの?」

 

「…」

 

「にーちゃん」

 

「…昨日、叔父さんと話をしたんだ。

 

それで、やっぱり俺たち、叔父さんたちと住むことにしたよ」

 

「そう…。

 

お父さん待ってても、しょうがないもんね」

 

「俺は今でも、親父が帰ってきてくれることを信じてる。

 

親父にはきっと、どうしようもない事情があったんだって」

 

「うん…」

 

「だから双葉も、兄ちゃんを信じてくれ」

 

「…うん」

 

「ちょっと外の空気、吸ってくるよ」

 

そう言ってダイチは、家の外に出て、伸びをする。

 

『ダイチ、君のお父さんは確か』

 

「あぁ、言った通り3年前出て行っちまった。

 

どこにいるのかもわからない。

 

『ちょっと、行ってくる』って、それっきりだ。

 

でも俺は今でも親父は帰ってくるって信じてる。

 

双葉にも言ったが、親父には何か俺たちに話せない、どうしようもない訳があったんだ。

 

だから、俺は親父を信じるよ」

 

『…そうか。

 

…っ、ダイチ、前を見ろ!

 

あれは!』

 

「っ!」

 

僕は前に現れた物をダイチに見るように促す。

 

距離的には遠いが、それでも大きく感じる、ドラム缶の見た目をしたものがあった。

 

あんなものはさっきまでなかった。

 

つまりあれは、敵だ。

 

「何で、今日なんだ…!」

 

『わからない、でももうすぐ避難があるはずだ!

 

皆を起こして避難を!』

 

「わかってる!」

 

ダイチは妹たちを起こして、荷物を纏め上げて指定された避難場所へと向かう。

 

改めて敵の大きさを見ると、その大きさがわかる。

 

僕と同じぐらいだろう。

 

やがて避難場所に着いたダイチたちは、同じく避難してきた叔父さんと合流した。

 

「ダイチ、こっちだ!」

 

「叔父さん!」

 

双葉と三太がバスに乗り、四詩を叔父さんに預けてから先に乗ってもらった。

 

だが、ダイチは乗らない。

 

いや、この場合乗れないのが正しいか。

 

これから、彼がしなくちゃいけないことがあるから。

 

「おいダイチ、どうした?

 

早く乗れ」

 

「…」

 

思い詰めた表情で俯き、改めて顔を上げる。

 

「叔父さん、妹たちを頼みます…!」

 

「な、何だって…?」

 

「にーちゃん、何言ってるの?」

 

双葉が動揺を隠せず、問い詰めてしまう。

 

「兄ちゃんは…」

 

震える唇を噛み締め、ダイチは言う。

 

「……兄ちゃんは、用事があるんだ。

 

だからちょっと、行ってくる。

 

だから双葉、二人を頼んだぞ」

 

それだけ言い残して、ダイチは走り出す。

 

「えっ、待ってよにーちゃん!

 

にーちゃん!!」

 

双葉の悲痛な叫びが響くが、彼は止まらずに走る。

 

涙を流さないように、震える唇を噛み締めながら。

 

…本当は君だって、家族と離れたくなかっただろうに。

 

家に戻り、居間へと足を運んだダイチ。

 

『…良かったのか?

 

もう、これが最後かもしれないんだぞ?』

 

「良いんだ。

 

もう十分一緒にいれたから。

 

だから、これで良かったんだ」

 

『ダイチ…』

 

覚悟を決め、自分の席の座布団へと座る。

 

同時にコクピットへと移された。

 

既に皆も集まっていた。

 

そこには同じく契約者となった田中と関もいた。

 

「随分と早かったじゃねぇか」

 

「…田中さん、街の住人の避難にあとどれぐらい掛かりますか?」

 

「そうね、最低でも20分」

 

「わかりました。

 

ならその間は動きません。

 

その後なるべく早く片付けて、被害を抑えます」

 

「…わかったわ、国防軍も、全力であなたをサポートするわ」

 

彼の意見は最もだ。

 

ここで下手に動いては、かえって危険だ。

 

避難できてない住人にも被害が出るしな。

 

ここは大人しく待機すべきだ。

 

しかし、しばらく待機してると、痺れを切らしたのか敵が動いた。

 

下から二本の足を生やして立ち上がり、こちらに一本前に出た。

 

『くっ、まだ20分も経っていないのに!』

 

「くそっ!」

 

そのまま横に倒れたかと思えば、そのまま街を壊しながら僕に向かって転がり始めた。

 

「えぇっ!?」

 

「何てやつだ!」

 

『こいつ、コダマの時の敵と違って、街を壊すことに躊躇いがない!』

 

「くっ、止めてやる!」

 

ダイチは敵を止めるために僕を動かす。

 

しかし近付けたのに敵が向きを変えて別方向に転がったので距離を離される。

 

『まずいぞ、このままじゃ街の被害が大きくなる…!』

 

「早くー!」

 

「くっ…!」

 

足元に気をつけながら敵を追い掛ける。

 

どうにか追い越して、前から敵の動きを止めた。

 

「捕まえた!」

 

『いやまだだ!』

 

抑え込んでるのに馬力が強いのか、中々止まらない。

 

動かずに止めた僕の手の装甲が削られる。

 

「おいおい、装甲が削られてるぞ?」

 

『ダイチ!側面から持ち上げろ!

 

そしたら敵の動きは止められるはずだ!』

 

「わかった、やってみせる!」

 

両側面から手で抑え込みながら、まるで俵を担ぐようにダイチは持ち上げると、敵の動きが止まった。

 

すると上空を飛ぶヘリから、点灯の点滅による信号を田中が確認した。

 

「ダイチくん、右後ろ方向に、全域避難完了した地域があるわ!」

 

「わかりました!」

 

敵を担いで、田中が指示した場所へと向かう。

 

いつまた動き出すかも分からない中、慎重にその場所へと足を動かす。

 

「あともう少し」

 

しかし、その指定された場所は。

 

「…っ」

 

観覧車、ジェットコースターなど、遊ぶための道具が見える場所。

 

つまり。

 

「遊園地…」

 

「ここはっ、ダメだ!」

 

そこは本来、ダイチが妹たちと遊びに行くはずだった遊園地だ。

 

そこで敵と戦うのに、躊躇いを覚えてしまっていた。

 

すると、担がれた敵が再び動き出して、肩と腕の装甲を削り始めた。

 

「うわっ!」

 

『ダイチ!』

 

敵が動き出したことで、僕の体が大きく横に傾き、そのまま山の上に落とした。

 

幸い、これで距離を取ることが出来た。

 

解放された敵はそのまま突っ込んでくる。

 

『ダイチ!

 

やつの装甲のつなぎ目目掛けて僕の手を突っ込め!』

 

「でも、そんなことしたらお前の手が」

 

『大丈夫だ!

 

やつが動きを止めないなら、それを弱点に変えてやればいい!』

 

「…っ、そういうことか!」

 

回転しながら突っ込んできた敵目掛けて、下から上へと突き上げるように、僕の手が突っ込まれる。

 

すると僕の手の装甲は火花を散らしながら削られるが、相手はそれ以上に派手に装甲が剥がれ落ちていく。

 

「…不思議だよな。

 

自分が全人類、全生物の運命を背負ってるなんて、俺にはピンと来ないや。

 

でも…」

 

モニターに映された一台のバス、そこにはダイチの妹たちが寝ている。

 

「コエムシ、約束頼めるか?」

 

「あいよ」

 

「ウシロ」

 

「…何だよ」

 

「カナちゃんくらい、優しくしてやれよ」

 

「…」

 

もう自分の言いたいことは言ったとばかりに、改めて敵を睨む。

 

装甲の大部分が剥がれ落ちたことで脆くなった敵は、動きを止めてしまった。

 

『行けるか、ダイチ』

 

「あぁ…。

 

行くぞっ!!」

 

ダイチの、覚悟を決めた強い念により、僕の手が敵を貫いた。

 

それによって、敵は完全に倒された。

 

だが、まだだ。

 

『…ダイチ、君にはまだ、やるべきことがあるだろ』

 

「…え?」

 

呆然とするダイチに、僕はあることをした。

 

敵が倒されてから早朝。

 

無事だった遊園地の前で双葉は帰ってこないダイチへの寂しさから、まだそんなことも理解できない妹たちを抱き締めていると。

 

「おーい!双葉、三太、四詩!」

 

「…え?」

 

泣き腫らした彼女が見たのは、ダイチだ。

 

「にー、ちゃん?」

 

「ダイチにーちゃんだー!」

 

「ダイチにーちゃん!ダイチにーちゃん!」

 

駆け寄ったダイチを、皆が抱き締める。

 

その中で双葉は、強く抱き締めた。

 

「にーちゃんのばかぁ!

 

もう会えないかと思ったよぉ!」

 

「ははっ、ごめんな。

 

でも、ちゃんと用事を済ませてきたから、もう大丈夫だ」

 

「……ほんとう?」

 

涙を拭いながら問い掛けた彼女に、ダイチは力強く答えた。

 

「本当さ。

 

だから、これからもずっと一緒だ!」

 

そう言ってダイチは彼女の頭を撫でる。

 

すると三太が笑いながら。

 

「あーっ、双葉ねーが鼻水垂らしてやんのー!」

 

「う、うるさい!

 

あんただって鼻水垂らすでしょ!」

 

「垂らしてねぇし!」

 

「あはは!」

 

「こらこら、喧嘩するなよ。

 

…さっ、今日は一日楽しもうか!」

 

『はーい!』

 

妹たちを連れて、ダイチは遊園地へと向かった。

 

ジェットコースター、メリーゴーランド、空中ブランコ、コーヒーカップ、お化け屋敷、他にも様々なアトラクションを楽しんだ。

 

そして最後に観覧車に乗り込んだ彼らは、窓の外を眺めた。

 

わがままを言う妹たちに振り回されながらも、彼は笑顔を絶やさなかった。

 

時間があっという間に経ち、日が暮れてから、ダイチたちは叔父さんたちと夕飯を取った。

 

これから一緒に暮らすという話が出てた事もあって、大盛りあがりだった。

 

そして夜になり、妹たちがお風呂に入って自分が一人になったときに、月を見上げながら僕に声を掛けた。

 

「…ジ・アース、ありがとな。

 

俺に、妹たちと過ごせる時間を暮れて。

 

おかげで俺は、何一つ悔いを残すことはない」

 

『僕が君にしたのは、契約を一日伸ばした程度だ。

 

上手くいくかの賭けだったし、この繋がりももう長くは保たない。

 

…すまない』

 

「謝らないでくれ、お前のおかげで俺は妹たちと最後の時間を過ごせたんだ。

 

それに、それだけあれば十分だ。

 

もう、満足だ。

 

俺の人生は、最高だった」

 

『……ダイチ』

 

「……でも、もしも、願いが叶うなら……」

 

その時の彼の表情は、まるで夢見る少年のように、子供のような純粋な顔付きをしていた。

 

「もっと早く、お前に出会っていれば良かったな。

 

そしたら俺たちは、友達になれたかもな」

 

『そんなことしたら、もっと早くに死ぬことになってたぞ?』

 

「そういう意味じゃないさ。

 

契約なんて関係ない、人間の姿になったお前と、普通に遊んでみたかったなって、思っただけだよ」

 

『ダイチ』

 

「まぁ、でも、それもあと少しみたいだな」

 

『…そうだな』

 

その後、ダイチは妹たちと最後の夜を過ごすために抱き締めながら寝た。

 

そして、早朝。

 

まだ起きてない妹たちに書き置きを残した。

 

『兄ちゃんは遠くで働くことになったから、一緒に暮らせない。

 

四詩、元気に育ってくれよ。

 

三太、姉ちゃんをからかうのも程々にしろよ?

 

双葉、二人を頼んだぞ。

 

じゃあな』

 

そう手紙を残して。

 

同じく早朝に起きた叔父さんにダイチは全てを話した。

 

その上で今はこのことを黙ってほしいと言って、家を出て行った。

 

そして、誰もいないところで、僕との契約が切れて、ダイチは息を引き取った。

 

満足そうな、安らかな笑みを浮かべて。

 

『…さようなら、ダイチ。

 

君は、とても強くて優しい男だったよ』

 

彼の最期を見届けると、コエムシによって遺体は隠された。

 

隠された場所はコクピットとは別に、僕の体の中で最も防御されている場所に安置された。

ジ・アースの見た目について

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