ぼくは    作:ガンダムラザーニャ

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誇りある責任

ダイチが死に、次のパイロットが選ばれた。

 

名前は半井 摩子、皆からはナカマと呼ばれてる少女だ。

 

僕は、そんな彼女の様子を見ていたのだが、どうやら彼女は学校では浮いてる存在らしい。

 

彼女自身は真面目に授業に取り組んだり、決められたことをちゃんとこなしてるけど、周りはそんな彼女のことを気に食わない様子で見ていた。

 

まるで嫌なやつを見るかのような目で。

 

皆でやるはずの教室の掃除を一人で行って、本来なら彼女と一緒に掃除をするはずであろうクラスメイトは彼女を見て笑うだけで何もしない。

 

それでもナカマはムッとしながらも最後までこなした。

 

学校が終わり、下校中に僕は話し掛ける。

 

『ナカマ、君は真面目に授業とかやってるのに、周りは君を嫌ってるみたいだけど、どうして?』

 

「…ジ・アース、私のことを心配してくれてるの?

 

別にあなたが気にすることじゃないのに」

 

ナカマは少し嬉しそうに僕の質問に答えてくれた。

 

「噂でしか聞いたことないけど、私のお母さん、昔体を売る仕事をしてたんだって。

 

それで、私を身籠ってからはスナックで働くようになったって、言われてるの。

 

…周りから後ろ指指されるような仕事をしてたからって理由で、皆お母さんのこと悪く言うのよ」

 

『でもそれはあくまでも噂なんだろ。

 

仮に本当だとしても、それは君のお母さんが昔そうしてたってだけで今はもうしてないんだろ?

 

だったら何も悪いことじゃないし、そういうことは君のお母さんの責任であって、君には関係ないはずだ。

 

それなのにどうして』

 

「お母さんの娘だからよ。

 

世の中なんて皆そう。

 

その子の家族が昔、後ろ指指されるようなことをしてたってだけでその子も一緒くたに敬遠される。

 

だから皆寄ってたかってお母さんのことを悪く言うし、私のことをいじめようとする。

 

私は、それが許せなくて、お母さんのことを悪く言われたくなくて、真面目な優等生として頑張ってきたの」

 

『…そうだったのか』

 

「ジ・アース、この話を聞いて、あなたは私のことどう思ったの?

 

あなたも私のこと、軽蔑する?」

 

ナカマの言葉に僕は否定する。

 

『軽蔑しないよ。

 

むしろ、君は良く頑張ってる子だと思ってる。

 

さっきも言ったけど、仮に君のお母さんが昔そんな仕事してたとしても、今はそんなことしていないならそれで良いと思うし、もしそれで責任が問われるのならそれこそお母さんだけだ、君じゃない。

 

だから君を責めることは無いんだよ』

 

僕の言葉を聞いたナカマは一瞬ポカンとした表情を浮かべたが、すぐに笑顔になった。

 

「ありがとうジ・アース。

 

そう言ってくれると嬉しいわ。

 

それにしても、あなたって優しいのね。

 

普通ならもっと色々言われると思ったんだけど」

 

『僕は事実と思ったことしか言ってないよ。

 

むしろ、君こそ僕のことを軽蔑しないのかって思ってるよ。

 

…僕は戦いのあとでパイロットの命を奪う存在で、次の戦いで、君を死なせるかもしれないっていうのに』

 

「確かに最初は驚いたけど、これまでパイロットになった皆の印象的に、あなたが悪い人じゃないって分かってるから大丈夫だよ。

 

それに、私は私にできる最善を尽くして死ぬから、後悔はない」

 

ナカマは微笑みながらそう言った。

 

その言葉に嘘偽りは無くて、ただ純粋に自分の役目を全うしようとしていることが分かった。

 

それから家に帰ると、彼女は自分の部屋で生地を手に取り、ミシンを使って何かを作り始めた。

 

『これは、裁縫?』

 

「うん、お母さんを支えたくて内職でね。

 

特に用事がない時でもこれをしてると落ち着くの」

 

彼女の部屋の周りを見ると、彼女が作ったであろう服が立て掛けてあったり、頭や腕がない人形みたいなものに服を着せてあったり姿見も置かれていた。

 

『もしかして、ここにある服、全部君が?』

 

「うん…」

 

ナカマの手は震えていた。

 

彼女もそれに気付き、すぐにミシンを止めた。

 

「あれ、おかしいな?

 

何で震えが止まらないの?」

 

『ナカマ…』

 

怖いんだ、すごく。

 

仕方ない、いつ戦いが始まるかもわからないし、戦いで僕を動かせば死ぬし、戦わなくても丸二日経過すれば世界が消滅して結局死ぬ。

 

「…うん、わかってる。

 

ダイチくんが守ってくれたものを守るためにも、ううん、ダイチくんだけじゃない。

 

ワクくんとコダマくんとチズが守ってくれたこの世界を今度は私が守る番だから。

 

でもだめっ、何かしていないと、頭がどうにかなりそう…!」

 

そう言って、周りに何かないかと探すナカマ。

 

そこで、人形に着せてた青い服に目をつける。

 

それにまち針を通して採寸し、棚の中から同じ色の生地を取り出した。

 

そしてまた作業を始める。

 

出来上がったのは、丈の長い青い服。

 

黄色のラインが入ったり黒い袖をつけてあったり、とにかくおしゃれというよりもスポーツに使われそうな服だ。

 

『これって、ユニフォーム?』

 

「…うん、ジ・アースのパイロットなんだから、地球を守る代表としてって感じで」

 

服の上からそれを着たナカマは姿見の前に立つ。

 

「ど、どうかな?

 

おかしくはないよね?」

 

『うん、似合ってるよ。

 

かっこいいし』

 

僕がそう言うと、マコの顔は一気に赤くなった。

 

「そっか、ありがとうジ・アース!」

 

喜んでると、彼女の部屋をノックする音が聞こえた。

 

「摩子ちゃん、いる?」

 

「は、はーい!」

 

慌てて脱ごうとするとその人が入ってきた。

 

見た感じは妙齢ながらきれいな女性だ。

 

「お母さん今日は夕飯いらないから一人で食べてね?」

 

「う、うん」

 

「どうしたの?」

 

とナカマが着てる服を見る女性。

 

「お針子の仕事?」

 

「えっ、あぁこれ?

 

文化祭で使うの」

 

「あっそうなの!

 

てっきりお針子の仕事かと思ってたわ。

 

…忙しいなら、断ってもいいのよ?

 

お金のために苦労することないんだから。

 

じゃないとジョーさん、どんどん仕事頼んじゃうんだから」

 

「でも私お針子好きだし、大丈夫」

 

「ふふっ」

 

と、優しくナカマの母親は彼女の頬を優しく撫でる。

 

「あんたはちゃんと、夕飯食べるのよ?」

 

「わかってる」

 

「そうすればきっと綺麗になるわよ?」

 

「そんなことないよ」

 

「何言ってんの。

 

私の自慢の娘よ」

 

「…うん」

 

「じゃあ行ってくるわね?」

 

「いってらっしゃい」

 

そう言って、彼女は家を出た。

 

一人になったタイミングを見て、僕はナカマに声を掛ける。

 

『優しいお母さんだったね』

 

「うん、だからこそ、ちゃんと支えてあげたいの。

 

私にできることなんて、それぐらいだから」

 

ユニフォームを作るのに使った生地を見て、ナカマは頭を悩ませる。

 

『もしかして、皆の分足りそうにない?』

 

「…うん、できてもさっきのも含めて4着が限界かな。

 

生地買うお金もないし、どうしよう…」

 

すると、チャイム音が鳴った。

 

「美子さん、いるー?」

 

「入って!」

 

知り合いなのか、すぐにその声の主に入るよう促す。

 

やってきたのは初老の男だ。

 

手には紙袋があった。

 

「よぉ、美子さんは?」

 

「お母さんなら仕事」

 

「そっか…、入れ違いか」

 

「仕事の話?」

 

「土産持ってきただけだよ。

 

それ、お針子かい?」

 

「うん、まぁそんなところ」

 

「摩子ちゃんはえらいねぇ」

 

男はお土産の入った紙袋をリビングに置きに行った。

 

『ナカマ、彼は?』

 

「ナベさん、お母さんの仕事先のマスターなんだ。

 

…もう、この際聞いておこうかな」

 

『聞くって、まさか』

 

「ナベさん!

 

お母さんが昔、体を売る仕事してたって話、本当なの?」

 

僕が止める間もなく、彼女が彼に聞いてしまった。

 

すると彼は。

 

「ん〜?そう聞いてるよ」

 

と、お土産のりんごを齧りながらそう答えた。

 

「…っ、やっぱり、そうだったんだ…!」

 

流石にショックだったこともあって、ナカマはその場で泣き崩れてしまった。

 

『ナカマ…』

 

「うぇっ!?

 

で、でもそれは昔の話であってだな…!

 

美子さん、昔は綺麗だったし…って、いやいや、今でもすっごく綺麗だよ!?

 

えーとこれ食うか?」

 

不味いことを口滑らせてしまったとばかりにあたふたしながら食べかけのりんごを渡そうとするが、逆にそれはないよなとばかりにすぐに引っ込めて、泣くナカマにどう話し掛けたらいいか困惑するナベ。

 

僕もどう慰めたらいいか分からず困っていると、ナカマは思い詰めた表情でナベに声を掛けた。

 

「…ナベさん、お願いがあるの!」

 

「な、何だよ?」

 

「わ、私に…、私に、お客さんを探して!」

 

『…は?』 

 

「え、えぇっ!?」

 

突然の彼女の発言に、僕もそうだがお願いされたナベも驚いてしまった。

 

夜になり、ナカマは高そうな服を着て喫茶店にいた。

 

緊張して、ソワソワしながらナベに頼んだお客さんを待っていた。

 

「…」

 

『ナカマ、本当にこれで良いのか?

 

いくらあの話が本当だったからって、こんなことしなくても』

 

「……いいの。

 

これは私のけじめだから。

 

……もしそれでダメでも、悔いはない」

 

『ナカマ……』

 

彼女の覚悟は本物だ。

 

だけど、それでも不安は拭えない。

 

「いらっしゃいませ」

 

その時、喫茶店に誰かが入ってきた。

 

初老くらいの、裕福でふくよかな男だ。

 

「…」

 

『ナカマ、本当にマズいと思ったら急いで逃げろ』

 

「う、うん…」

 

コツコツと歩いてくる男に警戒する僕たちだが、別のテーブルに席を着いた。

 

どうやら彼は違うようだ。

 

ほっと一息してると、また誰かがやってきた。

 

今度は金髪のガラの悪そうな男だ。

 

彼がその相手かと目を瞑りながら来るのを待った。

 

「待たせたね」

 

しかし目を開くと、そこには先程の男ではなく、齢は40程の優しげな男だ。

 

「半井摩子さんだね?」

 

「は、はい!」

 

「座っても、良いかな?」

 

「ど、どうぞ」

 

男はナカマの前に座った。

 

「初めまして、僕は多々良惣二。

 

せっかくだから、これから食事にしよう」

 

「あ、はい…」

 

男は、多々良はナカマの客として話をする訳でもなく、メニューを見せてくれた。

 

それから他愛のない話をしながら食事を取った。

 

覚悟を決めてたとはいえ、緊張が解れなかった彼女だったが、内心では少し安心を覚えていたそうだし、僕も何となくだけど彼のことを信用しても良いと思った。

 

喫茶店を出てから、彼は車を取りに行ってくると言って、その場を離れた。

 

すると、それとは別に向かいの停まってる車から人が降りてきた。

 

よく見ると田中だ。

 

どうやらナカマのことが心配でつけてたらしい。

 

「田中さん…」

 

「あなたたちの生活に干渉するつもりはないけど、今のはまさか…」

 

「田中さん、私は私の責任を取ります。

 

だからここから先は、何もしないでください」

 

「…ジ・アースは、パイロットになったあなたのことを止めなかったの?

 

あなたなら、ジ・アースの声は聞こえると思うけど」

 

「ジ・アースからは本当にこれで良いのかって言われましたけど、私が選んだ道ですから」

 

「そう……」

 

多々良の車が見えて、ナカマは田中にそれではと一言言ってからそれに乗り込んだ。

 

彼女が座る助手席の隣で多々良が車を走らせる。

 

「食事は美味しかったかい?」

 

「はい…、とても」

 

「それは良かった」

 

と、多々良は一息入れてナカマに聞いた。

 

「…どうして、お金が必要なのかな?

 

言いたくないのなら、良いけど」

 

「…自分の納得のためです」

 

「そうか。

 

なら、そのお金を私が見返りなしで用意してあげるってのはどうだい?」

 

「どうして?」

 

「自分の納得のため、かな」

 

にこやかで優しい表情で、車を走らせる多々良。

 

その言葉に嘘偽りがないようにも思えた。

 

だが。

 

「…ありがたい話ですけど、お断りします。

 

じゃないと、自分が許せないので」

 

「ふふっ」

 

そう断ったナカマの反応に、多々良は笑う。

 

「どうして、笑うんですか?」

 

「いやぁすまない!

 

ただ親子だなって。

 

美子さんにも昔同じこと言われたんだ」

 

「お、お母さんを知ってるんですか!?」

 

「あぁ知ってるさ。

 

もう十何年も前に、君のお母さんにプロポーズしたんだ」

 

「えぇっ!?」

 

「とはいえ、フラれたんだけどね」

 

「ど、どうして?」

 

「私に魅力がないからだろうねぇ」

 

「そ、そんなことないと思います!」

 

「当時、まだ製薬会社の新人だった私は、あまりにも美しかった彼女に会ったんだ。

 

愛するまで時間は掛からなかったよ」

 

「でも、フラれちゃったんですよね…」

 

「うん、君と君の子供の面倒を見たい、だから結婚してくれって言ったんだけど、丁度今の君と同じように断られてしまった。

 

この子は自分の力で育てたいからって。

 

…美子さんは、楽じゃない道を選びたかったんだよ。

 

君を身籠ってからは、体を売る仕事も止めたらしい。

 

私に甘えることもできたけど、彼女は男の力を借りたくなかったんだろうね」

 

「……そうだったんだ」

 

ナカマは知らなかった母親の事情に、俯いてしまう。

 

例え、後ろ指を指されるような過去を持っていたとしても、それでも自分の力でナカマを立派に育て上げようとしてきたのだ。

 

それがどんなに大変なことだったのか、僕には想像もできない。

 

それからしばらくして、多々良が車を止めた。

 

「着いたよ」

 

そこはスナック店のようだ。

 

ナカマは彼について行く形で中に入ると。

 

「いらっしゃいませ!」

 

そこにはナカマの母親の美子が働いていた。

 

彼女を見るなり美子は驚く。

 

「摩子じゃない!?」

 

「お母さん!?」

 

「どうしてここに?」

 

「スナックで働いてるのは聞いてたけど、ここお母さんの店だったんだ」

 

「やぁ、久し振りだね」

 

「どうしてあなたがここに、まさかこの子に」

 

「い、いや、そこで偶然見掛けて声を掛けただけさ。

 

君に似てとても綺麗だからね」

 

問い詰められそうになって慌てながらも、多々良は笑って誤魔化す。

 

そこへ、先程まで美子の隣りに座っていたナベが声を掛けた。

 

「よぉ摩子ちゃん!良く来たね」

 

「オーナー!

 

これってどう思う?」

 

「う~ん若いもんのすることだからな。

 

大目に見てやれよ。

 

どちらにせよ、親の責任は重いんだぞこういうのは」

 

元々ナカマに頼まれて彼を紹介したナベだが、そのことをはぐらかしている。

 

『まさか彼は、こうなることをわかってたから、君に多々良を紹介したのか』

 

「あはは…」

 

「摩子!本当のこと言いなさい!」

 

「えっ、えーと…」

 

「私は何もしてません?」

 

「それよりも摩子ちゃん、こっちおいで!

 

…おい、美子さんの娘だぞ?

 

美味い特製ミックスジュースを用意してやれよな?」

 

「じゃあ、私も一緒に」

 

言われた席へ行く途中、他の客が。

 

「ほぉ、美子さんの娘さんか!」

 

「綺麗だな!

 

ほら、ちょっとこっちに来てくれ!」

 

「は、はい…」

 

「ちょっと摩子!

 

ここはあんたが来るところじゃないの!」

 

美子は止めようとするけど、ナカマは客たちの席につく。

 

「うーん、やっぱり血は争えないなぁ〜!

 

美人だし綺麗だし!」 

 

「ひゃぅ!?」

 

「ちょっとそこのお客さん!?

 

うちの娘に手を出したら、タダじゃおきませんからね!」

 

「そ、そんなひでぇよ美子さ〜ん!

 

俺がこの子に手を出すなんてするわけないだろぉ〜!」

 

と、ナカマに話し掛けた男の客の一人が泣き出した。

 

「あ~もうわかったら泣かないで?ね?」

 

「お、俺はぁ!

 

俺がこの子に手を出すわけないじゃないか!

 

君とこの子の面倒を見たい、一生守ってやりたいと、真剣にプロポーズした時のこと、忘れたとは言わせないぞ〜!」

 

「ちょ、ちょっと!

 

今はそんな話をしてる場合じゃ…」

 

「え~何だよ!?

 

お前もプロポーズしてたのかよ!」

 

「えっ、もしかしてお前も?」

 

「あぁ、去年にプロポーズした時に、この子は自分の力で育てるんだって、フラれたんだ…」

 

「おいおい何だよ!

 

お前らも美子さんのこと好きなのかよ。

 

…好きなのは俺だけかって思ってたのに」

 

と、皆で美子への好意を言い合う客の男たち。

 

そこへナベが。

 

「これでわかってくれたか摩子ちゃん。

 

ここにいる皆、美子さんが大好きなんだよ。

 

君のお母さんは、とても素晴らしい女性なんだ」

 

「…はいっ」

 

と、嬉しそうにしながら泣き出したナカマ。

 

過去のことで周りから嫌われてる母親はとても強い人で、それでもそんな母に好意を抱いてくれてる人たちがいてくれたことが、ナカマは本当に嬉しいことだったんだと思う。

 

「どうしたの摩子?」

 

「あ~今度はこっちが泣いちゃったよ」

 

「オーナーが余計なこというからだ!」

 

「すまんすまん」

 

泣いてる娘を心配し、優しく抱き締める美子。

 

そこには、確かな愛情があった。

 

「お店も皆も大事だけど、私は摩子が一番大事よ!」

 

「…うん!」

 

『…良かったなナカマ』

 

それから、ナカマは店の皆に囲われて、一緒に乾杯した。

 

結局お金の話はなくなったが、ナカマは自分にできることをしようと、家に帰って夜通し残りの生地でユニフォームを作った。

 

そしてその日がやってきた。

 

窶れた顔でユニフォームを着た彼女は、出来上がった3着のユニフォームを抱えてコクピットに転送された。

 

既に皆も来ていた。

 

「えらく窶れてんなぁ。

 

寝る間を惜しんでの思い出作りか?」

 

コエムシの小馬鹿にした様子の言動を他所に他の皆は。

 

「これって、コスプレ!?」

 

「違う違う、ユニフォームだろ?」

 

と、興味津々にナカマの作ったユニフォームを見る。

 

「…素人洋裁だから、上手くできなかったけど」

 

「良い生地じゃない!」

 

「時間がなくて、4着しかできなかったの。

 

余計なことだったかもしれないけど」

 

「ありがとう!」

 

「良いじゃん!着ようよ!」

 

既に着てるナカマ以外の皆の中から三人が着た。

 

阿野万記ことマキ、往住愛子ことアンコ、そしてモジだ。

 

「似合うな!」

 

皆がそういう中でアンコはナカマに。

 

「ナカマ、あんた嫌なやつだって思ってたけど、案外そうでない感じ?」

 

と嬉しそうに言った。

 

そう言えば、アンコとナカマは同じ学校だったよな。

 

すると今度は田中が。

 

「元気になってくれたようで、良かったわ」

 

「はい、お騒がせしました。

 

…あのね皆、戦う前に言っておきたいことがあるの」

 

と、ナカマは覚悟を決めて、改めて皆に目を向ける。

 

「義務なんかじゃなくて、一人一人、自分のために戦おうよ。

 

コエムシはともかく、ジ・アースは少なくとも私たちの味方だから」

 

「ジ・アースが?

 

でも私たちの生命力を動力源にしてるんでしょ?」

 

アンコは不安げに言う。

 

「それはジ・アースがそういう存在であって、本人にとっては本意じゃないの。

 

きっと、これまでの戦いで皆の命を奪ってしまったことを悔やんでるし、少なくともパイロットになった私の身を案じてくれた。

 

これまでパイロットになった皆の時も、きっとね」

 

「…そうかなぁ?」

 

「今は分からなくても、いずれわかるよ。

 

ジ・アースがどんな存在かって。

 

だから皆も、自分のために戦おうよ。

 

ここには心強い味方がいてくれるんだから」

 

『ナカマ、君は僕のことをそこまで』

 

「事実そうでしょ?」

 

こんな、パイロットの命を奪う僕に、ナカマは微笑みながらそう答えた。

 

…君はすごいな。

 

「わかった! 私、自分のために戦う!」

 

「私も!」

 

「あたしも!」

 

「よし、じゃあ決まりね!」

 

ナカマや他の皆がそれぞれの席につくと、コクピットのモニターが展開され、周りの景色が見える。

 

そこは自然溢れる山々で、目の前に敵がいた。

 

ガッシリとした人型で、太い腕が特徴的だ。

 

でも、問題はそこではなく。

 

「ここ、どこだ?」

 

「おかしい、今までは人が住んでる街だったのに」

 

「コエッ、どういうことなの?」

 

皆が動揺する中でアンコはコエムシに聞くが。

 

「まっ、そういうこともあるんだろうよ」

 

とはぐらかされてしまった。

 

「…軍のヘリも来ませんね」

 

「…えぇ」

 

関と田中は周囲を確認しながら連絡を取ろうにも取れない様子だ。

 

「でも、人がいないのから、思う存分戦えます!

 

かえって好都合です!」

 

『…っ、来るぞ!気をつけろナカマ!』

 

敵が一歩一歩前進しながら近づいてくる。

 

ナカマも、敵を迎え撃つために僕を動かす。

 

僕と敵の拳が同時に振るわれるが、僕の拳が躱され、逆に敵の攻撃が僕の体に当たった。

 

「うっ!」

 

続けざまに殴られ、後ろに倒れそうになるが、何とか足で踏ん張った。

 

『ナカマ、この敵は強い。

 

気をつけろ!』

 

「いつまでもやられっぱなしって訳には、いかないんだからぁ!!」

 

僕の長い腕は敵を殴ろうとするけど、避けられた上にタックルされた。

 

「くっ、ジ・アースは腕が長すぎるんだ!」

 

「だから殴ることには向いてないんだよ!」

 

皆の言葉を聞き、ナカマはハッと、何かを思いついたようだった、

 

「…ジ・アース、ごめんね。

 

今からあなたの腕、半分切らさせてもらうから」

 

『ナカマ、一体何を?』

 

彼女の念が、肘から先の長い腕に集中し、自切するように念じたことで、腕の真ん中が切り落とされ、地面に落ちる。

 

『これは、まさか』

 

「うん、腕が長いから、短くさせてもらったの。

 

でも、絶対に勝つから、安心して?」

 

『ナカマ……』

 

短くなった腕を構えながら、僕を動かすナカマは独白するように僕に言った。

 

「…お母さんたちと話をして、思ったの。

 

自分で責任を取れるのなら、模範的でいる必要はないんだって。

 

だから私勝つよ、絶対に」

 

そういう彼女は気高く思った。

 

美子は、後ろ指を指されるような過去があっても、これは自分の責任だからと、例え周りに何と言われようともナカマを育てた。

 

彼女の娘であるナカマから、そんな彼女の高潔さが垣間見えた。

 

彼女は今、その誇りある責任を果たそうと、僕と共に戦っている。

 

「さぁ行くよ!ジ・アース!」

 

『あぁ、もちろん一緒に行くよ。

 

君は、僕のパイロットだから』

 

ナカマは僕を動かした。

 

短くなった僕の腕が、的確に敵の胸部を貫く。

 

そこに急所があったらしく、敵は停止した。

 

戦闘は終わったのだ。

 

『ナカマ…』

 

「ジ・アース、私…勝ったよ?

 

ちゃんと、責任取れたかな?」

 

『あぁ、しっかりと取れたさ。

 

君は誇り高い女の子だよ』

 

「…そっか。

 

ねぇジ・アース、皆のこと、お願いね?」

 

『わかってるさ』

 

「…」

 

返事こそしなかったが、ナカマは静かに目を閉じる。

 

もう間もなく彼女との契約が切れる。

 

彼女の命が、消える。

 

「お母さん…、ありがとう…」

 

ぷつりと、契約が切れた。

 

同時にナカマは、半井摩子は一生を終えた。

 

『ナカマ…』

 

安らかに眠るように死んだ彼女は、満足げな表情をしていた。

 

これが、責任を取るということなんだ。

 

ならば、僕は彼女を含むこれまでの皆を死なせた責任を取らなくてはならない。

 

たとえそれが、どんな結末になろうとも。

 

僕は彼女の遺体を見ながら、決意を新たにする。

ジ・アースの見た目について

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