不殺はあの日の約束へ   作:たかたけ

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俺、テスト期間中に一万文字書いたの?何してんの?勉強します。


ニセコイ 1

 

───────────────

 

─眩しい。

 

俺と少女は一緒に朧げに見える草原の中を走っている。俺とその誰かは笑っていて、側から見ても楽しそうにしていることが分かる。

 

─景色が変わる。

 

その少女は泣いていた。不器用に笑っている気もするが彼女の顔は霧がかかった様に朧げで見ることは叶わなかった。

 

─少女が言う。

 

その少女は何かの鍵を胸の前で握りしめて、

 

─私たちが再開したら、この「鍵」でその中のものを取り出すから、

 

少女は一息ついて、

 

─そしたら、

 

俺と少女は同時に言った。その言葉を。

 

─結婚しよう。

 

 

 

…………………。

 

─────────────

 

side幸

 

─眩しい。

 

俺は布団の上で目を覚ます。朝の日光はうざったいくらいに俺の体に降り注ぐ。俺は体を起こして目がしっかり覚めるまでぼーっとしていると、

 

「おーい、(ゆき)起きてるか〜?」

 

そう俺を呼ぶ声が聞こえるとほぼ同時に、俺の部屋の襖が開いた。俺はその方向を見ると、俺の兄である一条楽が制服をきた状態で立っていた。

 

「…。起きてる」

 

「ほぼ寝てるじゃねえか、昨日何してたんだ?」

 

「…。昨日は、何もしてない」

 

ただ、夢を見ていた。その言葉を出てくる前に飲み込んで、俺はゆっくりと立ち上がる。

 

「朝飯食えるか?」

 

「…。食う」

 

兄貴が作ったってことは和食か…。俺はそんなことを考えながら食堂へ向かう。俺は食堂の襖を開けると、

 

「「「「「おはようございやす!坊ちゃん!!!」」」」」

 

「はよ」

 

まだ眠たい俺にはこの男苦しさは辛い。ちなみに俺のことは坊ちゃんで、兄貴のことは二代目らしい。兄貴、どんまい。俺はそんなことを考えながら席に着く。すると、朝飯の仕上げに向かっていた兄貴がこちらに顔を出す。

 

「おーい、飯出来たぞ〜テメエら〜」

 

一斉に俺に挨拶した男どもは楽の方へ振り返って、

 

「「「「「おはようございやす!二代目!!」」」」」

 

「……」

 

そう言った。兄貴は絶句している。

 

ああ、言い忘れてた。俺の名前は一条幸、ヤクザの跡取り息子で、この絶句している兄貴…一条楽の双子の弟だ。

 

✴︎ ✴︎ ✴︎

 

俺は黙々と兄貴が作った料理を食べる。兄貴の料理…特に和食はプロ顔負けのレベルで美味くて食べるとついつい夢中になる。俺と兄貴は毎日交代で朝飯を作っており、俺の時は洋食、兄貴の時は和食と大体決まっている。 

 

───おてんとさんに顔向けできる様に生きてえんだよ!!!」

 

そう叫ぶ兄貴を尻目に俺は朝食を食べ終える。おー!と竜達が感動しているのを見て、俺はため息を吐く。

 

「やれやれ…毎日忙しねえな、テメエは」

 

そう言いながらこのヤクザの組長、俺たちの親父が階段から降りてきた。

 

「「親父」」

 

「「「「組長!おはようございやす!!!!」」」」

 

親父が口を開く。

 

「そうだ、楽、幸、ちけえうち、テメエらに大事な話があるから、覚えときな」

 

「大事な話?」

 

大事な話…か。いったいどんなことを言われるのやら。俺はこの先のことを考えて少し頭が痛くなった。

 

 

 

 

「では、坊ちゃん!いってらっしゃいませ!」

 

「ああ、お前らももう帰れ」

 

「あ!坊ちゃん!少しいいですかい?」

 

俺は竜へ振り返った。

 

「なんだ?」

 

「最近、見慣れねえギャングどもが俺らのシマ荒らし初めてやしてねえ……。坊ちゃんもきいつけてください!!!」

 

 

 

朗らかに笑う竜を無視して俺は歩き出す。ちなみに兄貴には自転車を押し付けた、ヤクザのことが嫌いな兄貴にこんな風にされるなんて気の毒だ。

 

ちなみに俺は特に苦手意識は無い。まあヤクザ云々というより、この集英組自体に嫌悪感はない…という感じだ。俺は学校までの道を歩きながら今朝の夢について考える。

 

─あの夢、久々に見たな…。

 

俺は首にかけた錠をいじった。俺はあの日の記憶がもう思い出せなくなっていた。何か、大切な記憶だったものを…。ちなみにこれと同じ様なものを兄貴の持っているんだが、兄貴もこのことについてはあまり覚えてないらしい。俺はその錠を手の中で弄びながら歩く。

 

そうして学校への道を歩いていると、道の左、学校の敷地を隔てる壁からダンっという蹴るような音が聞こえてそちらに視線を向けた。するとその壁の上から金髪の髪の女が降ってきて、俺に飛び膝蹴りを喰らわせようとしてきていた。

 

「は?(なんで女?と言うかどうやってこの壁を飛び越えたんだ?)」

 

俺はその非現実的な光景に一瞬呆けてしまう。だが俺は一瞬で冷静を取り戻す。俺はスッと一歩下がり、その女を受け止めれる様にする。

 

「よっと」

 

俺はその金髪の女をお姫様抱っこで受け止める。俺はその女に怪我が無いかを確認していると突然その女は顔を赤くして、ひゃん!と言う小さな悲鳴をあげる。俺は改めてその女を見てみる。

 

「…っ!(こ、こここ、これは!お、お、お、オッパ─「い、いつまで触ってんのよ!!!」─ぼはあっ」

 

俺はその女に顔面をぶん殴られた。いや、まあ当然の結果だろう、むしろ胸を触った対価にしては軽いくらいだ。どうやら俺は女を受け止めた拍子に胸を触っていた様だ。

 

殴った拍子に俺の腕から素早く離れた女は、胸を両腕で隠す様にしながら俺を睨んでくる。俺は苦笑いでその場を濁す言葉を考えるしか無い。

 

「…あなた、名前は」

 

その言葉の節々からは警戒心などのトゲトゲした感じが伝わってくる。

 

「一条、幸です…」

 

俺は彼女の圧に負けて敬語になる。

 

「そう…。あんた、学校で会ったらタダじゃおかないわよ!」

 

「え?は?ちょ─」

 

覚えてなさい!と言う言葉を最後にその女は学校に向かって走っていってしまった。よっぽど急いでいたんだろう。…とゆうか速。

 

✴︎ ✴︎ ✴︎

 

「ふう…」

 

俺は学校の席について溜め息を吐く。そうすると兄貴が話しかけてきた。

 

「どうしたんだ?ため息なんか吐いて、来る途中になんかあったのか?」

 

「いや、特に、何も?(女の胸触ったとか言えねえ……)」

 

俺が肘を突いて兄貴と話していると兄貴が驚いた様に俺を見てくる。

 

「お、おい!鼻血出てるぞ!?」

 

「え?ああ、マジだ(アイツに殴られたの鼻だったからなあ…)」

 

俺は鼻を抑える。兄貴がティッシュを探しているが見つからない様だ。

 

「あの、幸君良かったらこれ使って?」

 

「小野寺…さんきゅー」

 

小野寺から手渡されたティッシュを鼻に詰めた、とりあえずこれでいいだろう。

 

「もう…私のことは小咲で良いって言ったよね?」

 

「あー、そうだったな」

 

小野寺…小咲に俺と兄貴のことは名前で良いって言ってからずっとこんな感じだ。

 

「小咲…すまねえ、ティッシュ貰っちまって…」

 

「う、ううん!だ、大丈夫だよ!楽君!」

 

そんな風に2人がラブコメを繰り返しているのを眺めていると…。

 

「おーい、お前ら座れよ〜」

 

そう言う先生の声に従って生徒たちはゾロゾロと座って行く。

 

「よーし、転校生を紹介するぞ〜。入って桐崎さん」

 

「はい!」

 

そう先生が言うとガラッと教室の扉が開く。そうして入ってきた少女に俺は既視感を感じた。腰まで届く金髪に藍色の瞳、明らかに外国の血が入っていることがわかる美少女は自己紹介を始めた。

 

「初めまして!アメリカから転校してきた、桐崎千棘です!母が日本人で、父がアメリカ人のハーフですが、日本語はこの通りバッチリなので、皆さん!気さくに接してくださいね!」

 

そうしてにっこりと笑う。女男が美人やら脚長とか言っているが俺には死神が鎌を振りかぶった様にしか見えなかった。

 

「んじゃあ、適当に後ろの空いている席に」

 

そう先生が言うと彼女は後ろの席に座ろうと正面を向いたところで、俺と目が合う。

 

「あーーーーーーーーーーー!!!!」

 

俺は素早く目を逸らし、精一杯人違いをアピールする。しかしそんなものは彼女に通じずそのまま叫ぶ。

 

「あなた!さっきの変態!!!」

 

「ちょ!その言い方は語弊を生むだろうが!いや、確かにそれは悪かったと思うが…!」

 

「うるさいわね!!!アナタ、私の胸を揉んだでしょ!?早く観念しなさい!」

 

「だからそれは、お前がさっき校庭で飛び膝蹴りしてきたからだろ!?触っちまったのは悪いと思うが、変態はねえだろ!」

 

「胸を揉んだやつを変態と呼んで何が悪いのよ!」

 

桐崎は胸を腕で庇いながらそう言い合う。確かに揉んでしまったのは悪いと思うがあれは事故だったしそれで変態呼ばわりされる筋合いはない。

 

「あれは事故だっただろう!?そもそも、お前が壁を飛び越えなかったら良かったんだろ!」

 

「なっ、私の胸を揉んでおいて今度は逆ギレ!?認めて謝ることも出来ないの!?女々しい人ね!」

 

「悪かったって言ってるだろ!それに、お前を受け止めたことに感謝こそされど責められるのはちげえだろ!」

 

桐崎の言葉に俺もついムキになる。素直に謝るにもなんだかもうひけないとこまで来てしまっている。

 

「あなたがあそこに居なかったら良かったんじゃない!私のせいじゃ無いわ!あなたが悪いんだから被害妄想やめてよね!」

 

その言葉に俺の堪忍袋はプチンッと切れる音がした気がした。

 

「このっっっっ、猿女!!!」

 

「誰が猿女よっっっっ!!!!!!!!!」

 

堪忍袋が切れていた俺はその桐崎の行動に反応することができなかった。桐崎は一瞬で俺の顎にアッパーカットをぶち込んだ。

 

「ふべらっ!!!!!!」

 

「あ…」

 

俺は地面に伏した。

 

 

 

 

「とゆうことで、桐崎には一条弟に面倒見てもらうぞ〜」

 

「…(何がそう言うことだよ…)」

 

俺は机に肘を突いて心の中で悪態をつく。はあ…なんでこんなことになったんだか…。

 

「……。これ以上近づかないでよね。女々しさが移るから」

 

「ハッ、それはこっちのセリフだゴリr……なんでもない」

 

俺が桐崎に言い返そうとすると突然目の前に桐崎の拳が出てきたので俺は仕方なく引き下がった。

 

「(はぁ、なんでこうなったかなあ…。コイツにもう少し小野寺やあの夢の女の子みたいな思いやりを1割でも分けて欲しいくらいだ。それがあればもう少し良かったんだが…。コイツと話してるとなんかムキになると言うか、よくわかんない感じになるんだよな…)」

 

俺はそっと溜め息を吐いて首にかけた錠に触ろうとする。

 

─スカッ

 

…。

 

─スカッ スカッ

 

…。俺は胸にあるはずの錠を手で探すが、それは何回触ろうとしても見てもそこには無い。

 

「(無い!?いつ!?いつ無くしたんだ!???)」

 

俺は必死に記憶を呼び起こす。最後に持っていたのは確か…。確か…?……っ!

 

「(あの時だ!桐崎に飛び膝蹴りされそうになった時だ、絶対に!)」

 

俺は確信した。

 

そして俺は心に決める。許すまじゴリラ女。

 

 

 

 

 

 

「は?錠を無くした?」

 

兄貴はそう聞いてくる。それに俺は答えた。

 

「ああ、無くしたよ……あの女のせいでな!!!」

 

「はあ!???」

 

俺は桐崎に指を出しながら言うと、聞き耳を立てていたであろう桐崎は心外だと言う風に言う。

 

「あなたがしっかり避けないのが悪いんでしょうが!」

 

「あそこ飛び越えてきたお前のせいだろうが!!」

 

ガルルルルと、俺たちは威嚇する様に言い争う。

 

「わかった、その錠?っての探してあげる」

 

「なんで上から目線なんだよ、もとm「その代わり!」…おい」

 

「今後私と学校の中で話さないって約束してくれる?」

 

桐崎は俺を指差しながらそう言った。

 

「─なんだ、そんな事か。別に良いぞ」

 

「あ、そうだ!一つ言い忘れていたよ一条弟、桐崎に学校のこといろいろ教えてやって欲しいからさ、桐崎にお前と同じ園芸部にしておいたから!」

 

「え?ちょ、先生「よろしく〜」…」

 

なんでこうなるんだ…。

 

 

 

 

 

 

「なんでこうなるんだ…」

 

俺は頭を抱えた。

 

「ちょっと、話しかけない約束じゃなかったの?」

 

「俺との会話なしで作業出来んのか?さらに言えばここは学校の中じゃねえ」

 

そう言うと桐崎は怒った様に、

 

「細かい男ね!」

 

そう言って道具を取りに行った。あいつ…場所分かってんのか?

 

その後俺は迷子になった桐崎を探したり、加減の知らないことをされて色々大変だった。はあ…なんで俺がこんな目に…。

 

「ほら!残った時間はペンダント探す!」

 

「わーってるよ!」

 

 

 

 

「そう言えばペンダントってどんな形なのよ。私、知らないんだけど」

 

「ああ、こんな感じの…」

 

俺は身振り手振りで錠の形を再現しようとする。

 

「え?それって…」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「…なんでもないわ」

 

桐崎はそう言ってそのままそっぽ剥いてしまう。

 

結局その日は錠を見つけ出すことはできなかった。

 

 

 

─2日目─

 

side幸

 

─カチカチ、トットット

 

ペンを弄る音が小気味よく俺の隣の席…桐崎の席から聞こえてくる。俺は横目でチラリと桐崎を見てみる。

 

「……」

 

桐崎は肘を机に突きながらぼーっと授業を聞いている様だった。しかし桐崎のノートはペンを持っているにも関わらずほぼ真っ白で、ロクに板書を取れていないことがわかった。

 

「(やっぱり国語とかそう言うのは苦手なのか?)」

 

俺はそう思ったがとりあえず授業に集中するために板書を再開した。

 

 

─キーンコーン カーンコーン

 

「礼」

「「「あざした〜(ありがとうございました〜)」」」

 

授業が終わり横の桐崎に声をかけようとすると、もう教室を出ようとしているところだった。俺は慌ててその後を追う。

 

「おい、桐崎」

 

「……。何?学校では話しかけんなって言ったはずだけど?」

 

「いや、現国のノート全然写せてなかっただろ?ほれ」

 

俺はさっきまで書いていた現国のノートを桐崎に渡した。

 

「…余計なことしないでくれる?」

 

そう言って桐崎はそのノートを無視して歩いて行ってしまった。…。可愛げねええぇぇ…。

 

─3日目─

 

体育の時間。

 

「なあなあ、幸。お前桐崎さんといつの間に仲良くなったんだよ?」

 

「はあ?なんだそれ」

 

俺は集が言った全く知らない内容の話に反応する。

 

「だって、よく一緒にいるじゃん。放課後も2人でなんかやってるし、仲良くしゃべってるしよ」

 

「あれのどこがだよ」

 

「ほら、桐崎さんって美人だろ?気になってるやつも多いわけよ。なんでこの学校に?とか、なんでこんなへんなじきに?とか」

 

「ん〜まあ美人っちゃ美人だな……。性格以外はな!!」

 

その話題の中心人物を見ると、鉄棒で大車輪からの着地と言う大会とかなら満点が出そうな程の綺麗な大技をやっていた。

 

「(フン、ますます猿だな)」

 

そんなことを考えていると突然正面にダンベルが映った。

 

「うおっ!「ふぐう!」…あ」

 

俺がダンベルを避けるとそのダンベルは近くにいた兄貴に当たる。兄貴はそのまま気絶する。

 

「おい!お前兄貴に何すんだよ!」

 

「うるさいわねえ!あなたが避けたからでしょ!くらいなさい!!!」

 

桐崎は今度はタンクの様なものを投げてきた。これに当たると流石に洒落にならない。

 

「当たりなさいよ!もうペンダント探してやんないわよ!」

 

「横暴だ!!!─あ、へぶっ!」

 

絶対に避けられない位置にきたものに俺は当たってしまった。くっそ、イッテえ……。

 

─4日目─

 

「クッソ、あのゴリラ女め…」

 

まだ昨日ぶつかったところが痛む。俺はその痛覚を発している部分をそっと撫でながら家の廊下を歩く。

 

「アニキい!3丁目でまた、ギャングどもが!」

「何!?今週で三度目だぞ!!」

 

「─おい、お前らそれ聞かせろ」

 

「っ!ぼ、坊ちゃん!」

 

俺は龍達から話を聞き出した。要約するとこの前言ってたギャング達が俺たちのシマ暴れ回ってる、とのことだった。俺はふう…。と溜め息を吐いた。

 

「俺も行く。連れてけ」

 

「ええ!?しかし坊ちゃん…」

 

「良いから行くぞ」

 

「坊ちゃん!?……。おい、てめえら!車出せや!」

 

俺は竜達が準備している間に自分の部屋に行き、日本刀を取り出す。

 

─ 一刀 銘 国義 ─

 

刃渡り約70cmほどの刀で、日本刀といえば、みたいな見た目をしている。

 

この刀は業物として分類されている刀で俺の相棒だ。初めて刀に触れた時もこの刀だった。俺はその刀を腰に出して外に出る。

 

「坊ちゃん!車の準備できてます!」

 

「ああ、行くぞ」

 

俺は車に乗り込んだ。

 

 

………。

 

 

「ここか」

 

俺は車を降りる。座っていた時に少しずれていた刀の位置を調整しつつ周りを見回す。すると電柱に背を預けた状態で立っている銀髪の男を見つけた。

 

「お前が最近ここらで俺らのシマ荒らしてるギャングか?」

 

俺はそう問いかけた。すると男は突然内側の胸ポケットから銀色の銃─デザートイーグルを取り出す。

 

─ダンッ

 

突然発砲してきたので俺は身を捩って回避する。

 

「おいおい、随分手荒なご挨拶だな?それがギャング式の挨拶なのか?」

 

「─お前と言葉を交わすつもりはない。──不殺」

 

「げえ、その渾名そっちまで広がってんの?」

 

─不殺。いつの間にか俺についていた渾名で、まあ一見して弱そうに見える名前だが殺さずに誰でも圧倒できると言う畏怖の意味も含まれているんだとか。

 

─確か、300人くらいの組を1人で沈めた時についたんだっけか。

 

俺はそんなことを思い出した。とゆうか気になったんだけど、メガネクイってするの創作の中だけじゃないんだな。

そんなどうでも良いこと考えていると男はまた俺に発砲してくる。急所は外れているものの、当たったら確実に戦闘不能になる場所を正確に撃ってくる。

 

「うお、ちょ、アブね」

 

「……。やはり、銃弾を確実に避けられると言われるだけはあるな」

 

「…。それも知ってんのか(まあ渾名知ってるんならそれも知ってるか)」

 

男は俺に銃が通用しないことがわかったからか、銃をポケットに収納した。どうやら近接戦闘で俺に挑もうとしているらしい。

 

…まあ、俺にとっては好都合だけどな。

 

男は俺に向かって一気に距離を詰めてきた。

 

─牽制目的の右フック。

 

俺はそれを軽く流す。一瞬開いた右脇腹に左足で蹴りを放つ。それは素早く戻された右腕の肘によって防がれる。

 

─開いた腹に向かって右のストレート。

 

刀を持った反対の左の手のひらで拳を受け止め、右に持った刀に峰で殴ろうとすると、バク転した拍子に刀を蹴り上げられる。話はしなかったもののかなり強く蹴り上げられたので少し体が流れる。そこでようやく相手の狙いに気付いた。

 

─マズイ。

 

男は一瞬にしてさっき胸ポケットにしまっていた銃を取り出して俺に向けている。今までの攻撃はこの隙を生み出すためか、確かにこの状態から回避行動を取るのは普通の人なら難しい。

 

そう、普通の人なら。

 

俺はダンッと重く響く銃声音が聞こえた瞬間、─刀を振り下ろす。

 

─キィン。

 

金属同士がぶつかる甲高い音が辺り一体に響き渡る。

 

「……。銃弾を、切った、のか…?」

 

「ああ、今のはやばかったよ(いや、マジで)」

 

本当に危なかった、銃弾を逸らすことならやった事があるが銃弾を切るだなんて初めてやった。俺は刀を肩に担ぐようにして持つ。

 

「仕切り直しだな。どこからでもかかってきて良いぞ」

 

「…。いや、今日はここまでだ。お前の実力もある程度知れたのでな」

 

「はあ?逃すと思ってんのかよ!」

 

俺は刀で斬りかかる。こいつ相手に手加減してる余裕なんて俺にはなかった。するとこっちに向かって勢いよく何かが投げられる。俺はそれを思わず斬ってしまった。斬ったものの中から白い煙の様なものが一気に俺を包み込む。

 

「(煙幕か)」

 

俺は煙が晴れるのを待つ。晴れた時にはあの男の姿はなかった。

 

「逃げられたか…」

 

あいつは危険だ。今度会った時は必ずぶっ倒す、そう俺は心に誓った。

 

 

─5日目─

 

俺と桐崎は2人で錠を探す。これでもう5日目となったが未だにそれは見つかっていない。

 

「あー、もう!全然見つからないじゃない…」

 

桐崎はそう言って愚痴を吐いた。

 

「うっせえな、ぐちぐち言うやつ嫌いなんだろ?」

 

「…」

 

「そう言えばさ、なんでお前こんな時期に転校してきたんだ?」

 

俺は少し前から疑問に持っていたことを聞いてみる。

 

「え?何といきなり…。べっつに、親の都合よ…」

 

「ふーん、親って何してんの?」

 

「なっ、なんだって良いでしょ!なんであんたなんかに私の身の上話しなきゃいけないのよ!」

 

桐崎は明らかにいつもと様子が違った気がするが、俺は言いにくい仕事なのかな…と思った。すると桐崎は立ち上がり、

 

「私、あっち探してくる!」

 

「おう」

 

─ふわり。

 

桐崎は俺の前を通って行くと桐崎の髪がなびいて俺の鼻に懐かしい匂いが入ってくる。

 

「(なんだこれ?嗅いだことのある匂い…、ずっと前から知っている様な匂いだ)」

 

俺は一つの答えに辿り着く。─硝煙。銃を打った時に出る、火薬の粉末。その匂いが桐崎からした気がした。

 

俺はふと思いついて自分のの制服を匂った。

 

「(ああ、俺の匂いか)」

 

昨日例の男と戦った時の相手の銃の硝煙の匂いが俺についていた。俺は自分の気のせいに少し安心する。

 

「(思ってみれば、あんなザックンバランな女がギャングなわけないか)」

 

俺はそう納得し、錠を探すのを再開した。

 

 

 

─7日目─

 

俺は桐崎よりひと足先に錠を探す。すると後ろから俺に近づいてくる足音が聞こえてきた。

 

「おせえよ、桐崎早く錠を探すの手伝ってく「もーう!我慢できなーい!!!」…は?」

 

「やってられるか!こんなこと〜!」

 

「な、なんだよいきなり!」

 

そう俺が桐崎に聞くと彼女は渋々答える。

 

「さっきクラスの女の子に言われたの、

 

『ねえねえ桐崎さんと一条くんって付き合ってるの?』

『え〜、だっていつも楽しそうに話してるし、放課後もいっつも一緒に居るって聞いたよ?』

 

…って」

 

「……」

 

俺の顔は絶対今バカみたいな顔をしていると思う。

 

「|だーれふぁたのふぃふぉうにふぁなしてるって〜《だーれがたのしそうにはなしてるって〜》!?」

 

桐崎はハンカチをかみながらそう言った。よっぽど嫌だったんだろう…まあ俺も嫌だが。

 

「放課後一緒なのはこのバカの無くしものを私が親切に探してあげてるだけなのにぃ〜!」

 

「…」

 

桐崎の言葉に俺の堪忍袋はまた限界を迎えた。

 

「ふざけんな!お前の過失でもあるだろうが!」

 

「…。あんたがしっかり持ってなかったからでしょ」

 

「ふん、何よ大の男がペンダントひとつ無くしたくらいで、あんたお気に入りのくまさん無くしたら夜も眠れなくなるタイプ?」

 

「はあ?」

 

「どうせ昔好きだった子に貰ったものとかなんでしょうけど、何よ昔のことズルズルと引きずって女々しいったりゃありゃしない」

 

「!」

 

「どうせその相手だって、あんたにそんなもんあげたことなんて忘れてるに決まってんのよ!─本当ださ。バッカみたい!」

 

【ずっと大切に持っていよう】

 

何か、大切にしていたものがこの女に汚された様な気がした。心臓からドロッとした何かが染み出してくる様な不快感に包まれる。あの、女の子のことが蘇る。それが桐崎への不快感を増幅させる。

 

俺を貶されるだけならまだ我慢できた、だがそれだけは…ダメだ。

 

「うるせえな…」

 

「はあ?」

 

「うるせえっつってんだよ…!そんなに言うならもう探さなくて良いよ…。どっか行ってくれ」

 

今は、こいつのことを見たくなかった…。

 

─雨が降る。雷が鳴る。

 

しばらく雨に濡れているとようやく冷静になった。

 

「(やっちまったな…。女に怒っちまった)」

 

その日はもう帰った。

 

─11日目─

 

『どうせその相手だって、そんなもんあげたことなんて忘れてるに決まってんのに』

 

桐崎に言われた言葉がフラッシュバックする。俺は地面に生えている雑草を握りつぶす。

 

─クソッ

 

心の中で悪態をついた。

 

「─幸君!…桐崎さんが来て欲しいって…」

 

声の方を向くとある場所を指差した小野寺が立っていた。

 

 

 

 

「…。なんなんだよあいつ、こんなとこ呼び出して…」

 

俺は人気の無い校舎の近くに呼び出されていた。辺りを見回して桐崎を探すと、

 

「ん」

 

ようやく見つけた。そう思ったら桐崎は突然何かを振りかぶって。

 

「─うおっっっ!」

 

─パシッ

 

俺は顔面に当たるギリギリでそれを受け止める。手のひらに収まったそれを見てみる。

 

「これ…!」

 

俺が無くした錠がそこにはあった。

 

「……!それ…幸君の…?」

 

「ああ、でもなんであいつが…」

 

「…。桐崎さんね、あの後ずっとそれ探してたんだよ…」

 

「!」

 

「幸君に見つからない様に、…言うなって言われてたんだけど…」

 

そうか…、そうだったのか。……。ん?

 

「なんだこれ?」

 

俺は錠のチェーンについた紙を外して読む。

 

・訳せるもんなら訳してみろ!!

 

I fulfilled my duty.

So don't talk to me anymore scum bastard!!

『義理は果たした今後私に話しかけてこないことクズ野郎!!』

 

「……。俺が英語読めねえと思ってるのか?」

 

俺はふう、と息を吐いてその紙を胸ポケットにしまう。……。ムカつくやつだけど良いとこもあるんだな。

 

「…。それに、あいつの言ってることももっともなんだよな…」

 

「え?」

 

「俺も良い加減こんな約束、忘れたほうが良いのかな…」

 

「そ、そんな事ないよ!幸君、その約束覚えていたんでしょ?もしその人が幸君と同じ様に約束を覚えていたら、きっとその人も悲しむよ…」

 

「!」

 

「ご、ごめんね!変なこと言っちゃって…」

 

「いや、さんきゅー小野寺。そうだよな、もし今後その子に出会えなくても、俺にとって大事な約束に変わりはない。大事に持っとくよ……。後、そう言う事は兄貴に言うんだな」

 

「え!ええ!」

 

「じゃ、またな小野寺」

 

 

 

 

俺は家まで帰ってきて玄関を開ける。すると親父がそこで待っていた。

 

「どうしたんだ?親父」

 

「お、帰ったか幸、ちょいと俺の部屋に来な」

 

そう言われた俺は親父の後ろについて行く。部屋に入ったところで早速親父は本題に入った。

 

「てめえも最近のギャングとの抗争は知ってると思うが、それがいよいよ全面戦争になりそうなのよ」

 

「戦争か…」

 

「ああ、それを回避する方法が一つだけあってな、しかもてめえか楽にしかできねぇ事だ」

 

「俺と兄貴にしか?そう言っても兄貴は来ていない様だが?」

 

「まあまあそれはおいおい説明するさ…。実ァ向こうのボスとは古い中でな…。奴にもてめえと同い年くらいの娘がいるらしいんだが…そこで幸よ。おめぇそこの子と、恋人同士になって君ねえか?」

 

「はああああああ!?恋人お!?なんでそうなったんだよ!とゆうか兄貴は!?」

 

「なーに振りだけで良いんだ。互いの組みの二代目が恋仲とあっちゃあ若え連中も水刺すわけにゃいかねえだろ?」

 

「いや、だからって冗談じゃねえよ!その子が可哀想だろうが!」

 

「なんでえ彼女でもできたのか?」

 

「ちげえよ!!!」

 

俺の話なんかほぼ聞かない親父に少し苛立ちが募って行く。思い起こすのはあの時の約束。……。まあフリだけで良いのなら大丈夫か…。

 

「悪いが、こっちにも命がかかってるんでな、泣き言言ってもやって貰うぜ?」

 

「…」

 

「よし、それじゃあ入ってくれ」

 

「(もう来てんのかよ…)」

 

─俺はもっと早くに気づくべきだった、

 

「(あくまでフリだし、数ヶ月で落ち着くだろ)」

 

─ヒントはそこらじゅうにあった。それに気付いて最悪の事態を回避するべきだったのだ。

 

隣の部屋から言い争う声が聞こえた。

 

「………。だからまだやるって決めたわけじゃ…」

 

「……ん?」

 

「でも彼なかなかイケメンらしいよ?」

 

「え!?いやいやでも…」

 

あれ?この声……。

 

「さあ、この子がお前の恋人になる─桐崎千棘お嬢ちゃんだ」

 

目が合う、桐崎は完全に固まってしまっている。かく言う俺も完全に固まっているだろう。

 

ここで全てが繋がった。なぜこの時期に転校してきたのか、なぜ家のことを話したがらなかったのか、そして、こいつの匂いが懐かしくなったのか…。

 

あの時桐崎から硝煙の香りを感じたのは間違いじゃなかった。その前の日に戦いがなかったらその時わかっていた事、もうこれは運が悪いと言うしか他ない…。

 

「そして、明日から2人には3年間恋人同士になって貰う」

 

「「!!!?!?」」

 

こうして相性最悪な俺たちは恋人になった。この偽物の恋が俺をあの日の約束へと導いて行くことになるのだが。

 

俺たちはまだ、知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




幸君はリコリコの千束の様な目を持っています。弾道を線で見る奴です。間違ってたらごめんなさい。
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