ヤクザとギャングの抗争を止めるため、俺はそこのボスの娘と恋人のふりをすることになった──それは良いのだが…。
─相手がコイツだなんて聞いてない。
「お、お前、ギャングの娘だったのか…?」」
「あんたこそ…、ヤクザの二代目って…」
俺たちはお互いに指を差し合う。桐崎の表情は困惑などの困った様な表情完全に引き攣っている。
「おう、なんだもう面識はあるみてえだな」
「同じ学校に転入したからね」
「どう言う事なのパパァ!」
ギャングのボスの言葉に反応したのは桐崎だった。そんな桐崎をギャングのボスはまあまあと流している。
「改めて紹介だ幸。コイツがギャング組織”ビーハイブ”のボス、アーデルト・桐崎・ウォグナーと、桐崎千棘お嬢ちゃんだ」
「君のことはお父上から聞いてよく知っているよよろしくね幸君」
「あーはい。じゃなくて!コイツと恋人同士だなんて絶対に無理だ!そもそも親父は俺が学校でどう言う役割をしているのか知ってるんだろ!?」
親父は俺の学校でやっていることを知っているはずだ。そんな俺と恋人同士にさせるなんて何を考えているんだ。
「パパは知らないのよ!私たち学校じゃすっごく仲が悪いんだから!!なんでこんなもやし男と!!」
モヤシとは侵害だ。俺は元々筋肉がつきにくい体質なんだよ!!
「なんだとコラ!?……。だが、それについては完全に同意見だ!コイツと上手くやっていけるわけねえよ!」
「何よ!!あんたに言われる筋合いないってのこのケチ男!!」
「はあ!?それはこっちのセリフだ!ゴリラ女!」
「なんだ仲良いじゃねえか」
「「よくねえ!(よくない!)」」
俺と桐崎は同時に突っ込んだ。コイツと仲がいい訳がない。
「…。しかしなぁ、この戦争を止めるにゃ他に手はねえ…。それに…、このままじゃ大変なことになっちまうぜ?」
「は?」
───ヒュルルルル…ドガアアァァァアン!!!「お嬢ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「なんだ!?」
「…。見つけましたよお嬢…」
そう言いながらすっかり穴の空いた部屋を隔てる壁から爆炎と共に出てきたのは、先日戦った銀髪の男だった。
「集英組のクソ共がお嬢を攫ったと言うのは本当だった様ですね…」
「く、クロード!!!」
桐崎に名前を呼ばれた銀髪の男─クロードは桐崎に向かって微笑を浮かべる。…なんだコイツ、前会った時と別人じゃねえのか?
「お嬢を守るのがビーハイブ幹部としての俺の役目…。不肖このクロードめがお迎えに上がりました」
「いや、攫われてないから私…!!」
完全に勘違いをしているクロードに桐崎はツッコミを入れた。
「「「大丈夫ですか組長ーーー!!!」」」
さっきの爆音にゾロゾロとウチのヤクザが集まってくる。…これはやばいことになったぞ……。
「おぅおぅビーハイブの幹部さん…こいつぁちょいとお痛が過ぎやせんかね…」
「ふん…猿どもが…お嬢に手を出したらどうなるか教えてやる…」
おいおいおい、コイツらがぶつかったら俺が止める(物理)する前にこの街が全壊しちまうぞ…?
「あー君君、ちょっと誤解してるんじゃないかね若ぇの」
「ん?なっ…!ボ…ボス…!?それに不殺…!!!」
クロードはようやく俺とギャングのボスのことに気づいた様だった。
「貴様!なぜお嬢の横に立っている!!!お嬢、そいつは危険です!今すぐ離れてください!!」
「え…、ええ…???」
桐崎はクロードに危険と言われ訝しげに俺を見る『コイツが危険?ええ…?』とでも思ってそうな顔をしている。バカにしてるよなあ????
またキレそうになった俺だったが今回はなんとか落ち着く。なんか最近キレやすくなってないか?
「おい、若えの嬢ちゃんが幸の横にいるのにはちゃんと理由があるんだぜ?なんせ…」
「「コイツらラブラブの 恋人同士だからね」」
「「!!なっ…」」
「「「「「なぁあにぃいいいいいいいいい!?」」」」」
このクソ親父!!これにどう収集つけんだよ!!!日に油注いでどうするつもりなんだ!
「…。ボス…本当ですか…?」
「ああ、僕らが認めた仲だ…」
「「「「「そりゃすげーーーーーーーーー!!」」」」」
「坊ちゃんついに彼女ができたんですかーーーー!!!」
「いやーーずっと心配だったんスよーーーー!!この歳になって彼女の1人のできねえから…」「いやーコイツはめでてえ!!!」
「……」
もう…どうしたら良いんだ…?
「そう言うことなら話は別でさあ!!坊ちゃんの為ならこんな抗争すぐにでも手を引きやすぜ!!」「我々も同じですお嬢が安心して交際できる様に全力でサポートしましょう」
俺は覚悟を決めて言い訳をしようとする。
「ちょ、ちょっと待てよ!誰がコイツと恋人だって!?なんで俺がこんなゴリラ女と!」
「そっ…そうよ!!誰がこんなもやし男と!!」
俺がハッとした時にはもう遅かった。俺の脳天に目掛けて線が走るのが見える。俺はその線から逸れる様に体を捻る。
─ドゥン!!
銃弾が壁にめり込む音が聞こえる。俺は恐る恐るその球を撃った男を見る。その男は明らかに俺を睨んでおり怒りを全身で露わにしている。
「今のは聞き間違えか…?こともあろうにお嬢をゴリラだと…?ケツの穴に鉛玉ブチこまれてぇか…!!!」
先日よりもオーラあるんだけど、もしかして俺やばいことした?俺は完全に藪蛇だったことを理解する。
「テメェ!!!坊ちゃんに何しとくれとんじゃあ!!!」
俺に銃を撃ったクロードに竜は完全に頭に来ているのか勢いよくクロードに斬りかかる。しかし、それをヒョイっと避けたがそれが悪かった。
「え!?きゃっ!!」
俺が桐崎の近くにいたこと、竜がキレると周りが見えなくなること。それらが色々絡まり合いその斬撃はクロードを通り過ぎて桐崎にまっすぐ向かう。桐崎もあっけに取られて完全に縮こまってしまっており、これでは自慢の身体能力を発揮できないだろう。
「しまった!お嬢!!!」
─っっ!!!!
俺は桐崎の腕を強引に引き寄せ、そのまま庇うように抱きしめる。
「あ、ありがと─「俺に合わせてくれ」え?う、うん…」
「おい、テメエら」
side三人称
─ゾクッッッッッ
急に殺気を感じたヤクザとギャングはその殺気の主人に目線を向ける。そこには集英組の二代目、一条幸が千棘を庇う様に抱き締めながら立っていた。竜とクロードはその殺気をモロに受けて勢いよく後方に下る。
脂汗を滲ませた竜とクロードは幸に視線を向けた。
「お前ら、俺の恋人を傷つけようとするなら、どうなるか分かってるんだよな?」
ここにいる全員がゴクリと息を呑んだ。殺気に慣れているであろうヤクザやギャングが震えるほどの殺気。
「おい、幸もうやめてやれ」「ああ、少しやり過ぎだよ」
そう言ったのは集英組の組長─一条一征とビーハイブのボス─ アーデルト・桐崎・ウォグナーだった。
「親父…」
幸はそう呟いてから殺気を放つのをやめた。辺りの空気がようやく戻る。
「で、でも坊ちゃん達が本当に恋人ならさっきの言葉は…」
竜がそう幸に聞く。
「──ああ、さっきのはな、ゴリラの様に力強くて優しくて最高の女性だって言いたかったんだよ。なあ、ハニー」
「え!?─ええ!もう、ダーリンったら紛らわしい言い方しちゃダメじゃない!そんなとこも大好きだけど、もやしみたいに真っ白な肌のダーリン!」
ほぼ無表情でほんのり微笑を浮かべる幸と、笑顔を顔に貼り付けて可愛こぶる千棘は普通であれば演技臭く感じてしまうだろう。
─普通なら。
「なっ…なーんだ!!やっぱ2人はラブラブカップルっすよねー!!」
「…」
竜はガハハと笑いながら自分の勘違いを恥ずかしそうにしている。クロードはメガネをかちゃりと掛け直しているが何を考えているのかはその顔から伺えない。
「なあなあ嬢ちゃんどっちからどうやって告られたんですかい?」
幸と血棘は椅子に座らされ質問攻めにされる。その質問に千棘は考え込む。ほぼ無表情の幸はただ千棘を応援することしかできない。
「え…え〜〜っとそれは…かっ…彼から「一目惚れです付き合ってください」って…とか?」
千棘はボシュウゥ…と頭から湯気を出し、顔を真っ赤にしながら答える。幸は意外に初心なんだなと思ったが、側から見たら「告白を思い出して恥ずかしがっている彼女」の様な補正が入っていたので結果的には良かったのかもしれない。
「おおー!坊ちゃん一目惚れだったんですカー!!」「いいなー青春だなー!!!」
「……(うぅ…死にたい…)」
千棘の言葉に集英組のヤクザ達はおおー!!と盛り上がる。だがそこにクロードがヌッと顔を出した。
「ああ…そうだ。私も坊ちゃんに聞きたいことがあるのですが、良いですか?」
「……。ああ…」
幸はなんとなく嫌な予感がして返事を渋るが結局了解した。
「お嬢の好きな音楽と食べ物はなんでしたっけ、ラブラブなら当然答えられると思うんですが…」
「(コイツがやっぱり鬼門か、コイツをどうにかしないとこの状況を切り抜けることはできなさそうだな…)……。さあな、食べ物はまだ分からないな…それはおいおいデートとかをして聞いてみようかなと思ってたんだ。でも音楽はクラシックが好きらしいな」
「…ふむ、まあ良いでしょう」
「(…ちょ、ちょっと!なんであんたがそのこと知ってんのよ!あんたに言ったことはないはずよ!!!)」
「(クラスの奴と話してるの聞いちまったんだよ、他意はないぞ)」
「じゃあ次は〜」
「ちょ、ちょっと待ってよ質問責めなんて失礼じゃない!私もう恥ずかしいわ〜!」
「おおっとこりゃすいやせんでした!!あ!なら最後に一つだけいいっすか嬢ちゃん。大事なことを聞いてやせんでした…
─お二人はもうキスは済ませたんで?」
─ザワッ!!!「!!!!!!!」
竜がまずいとこを触れてきたことに幸は内心舌打ちをする。千棘に至っては口は引き攣ってぴくぴくと震えている。
「おい竜!おm「坊ちゃんは黙っててくだせえ…!」(クソッ、ここは桐崎に委ねるしかないのか…)」
「…………………し………──」
千棘は『した』と答えようとするが、千棘の中にある恋愛に対しての初心なところや、幸へのいつもの態度、感情からもなかなかその言葉が出てこない。
「─…し……し…─し、ってする訳ないでしょーーーーー!!!!なんで私がこんなぁ…!!」
「!!!!!」
「(……。仕方ない、こうなったら全員一回ぶっ倒すしか…)」
幸が次に起こるであろうことに備えて臨戦体制を取る。そして一気に飛び出そうと、
「「「「「…ブラボーーーーーー!!!!」」」」」
幸は膝から崩れ落ちそうになった。予想に反した反応に膝の力が抜けてしまった様だ。
「それでこそ青春の恋人同士だァ!!!」「ブラトニーック!!」「最高カップル誕生じゃーーーー!!!」「いや〜やっぱり青春の2人は清らかでなきゃ」
幸と千棘は完全にあっけに取られた顔で騒いでいる男どもを見る。
「いやー良かったよかったもしも2人が…10日でキスも済ませているような不純な恋愛をしているようなら血を見ることになってやしたよ」
「……(あっぶねえ!グッジョブ桐崎!!!)」
「しかしまぁお二方!!」
「「もし仮にウチの坊ちゃん(お嬢)を捨てるような事があれば…そん時ァ…責任とってもらいやすからね…?」
「まあこのお二人に限ってはそんな事ないでしょーけどね!」「そりゃそうだ!ギャハハハハハハハハハ!」
……………………………。
side幸
「…。ハァ何でこんなことになったんでしょうね…」
俺は疲れた様子の桐崎を横目で見ながら外を眺める。
「まあ、こうなったらやるしかねえだろ…まあ不本意だがな」
「なっ、それはこっちのセリフよ!!…あーんもう!!ようやくあんたと関わらなくて済むようになったと思ったらコレェ!?どーなってんのよホントに!!」
「…ホントにな」
俺は桐崎の言葉に頷いた。
「…ハァーーーーーー…カップルって言っても何をすりゃいいのよ」
「…、俺が知るかよ、誰かと付き合ったこともないしな…」
「あたしだってないわよ!そんな事!!」
俺が桐崎の言葉に答えるとなぜかキレられた。コイツ恋愛が絡むと変になるよな…。
「はっ、だろうな。お前と一般人が付き合うんだったら命がいくつあっても足りねえよ」
「そうゆう事じゃないわよ!!!!!」
グルルルと桐崎は俺に牙を剥いている、これ以上何かを言うと拳が飛んできそうだ。俺は悪かったと謝る。
「悪かったって…」
「………。恋愛とかそーゆーの得意じゃないし…、その…よく、分からないのよ…」
さっきの出来事でなんとなく恋愛に対して初心なことは分かっていたが、外面は良いからてっきり…。と思ってたんだが……あ。
俺はチャラと、錠を取り出す。
「コレ、見つけてくれてありがとう」
「ん…」
桐崎はチラッと俺が持っている今日を見てプイッとすぐに視線を戻した。
「ふん…!あのままじゃ気持ち悪かっただけだし…まぁせいぜい感謝しなさいよね!……それよりなんなのよそれ?」
「ん?」
「えらく大事にしてるみたいだけど…誰かの形見とか?」
「いや…これは…(コイツに言うと笑われそうな気がするが…まあ、いいか。探してくれた恩もあるし)…もらったんだよ昔…」
「昔?」
俺は昔のことを少し話し始めた。俺はあの日のことを思い出す。
「子供の頃、親父に兄貴と一緒に連れられた旅行先である女の子と仲良くなってな、『また会おう』って再会の印としてもらったんだ。…顔も名前も思い出せねえけど、その約束だけは鮮明に覚えているんだ。それからずっともしかしたらまた会えるかもとか考えてたんだ。………お前、そう言うの嫌いだろ?過去のことぐちぐち言うのって」
「……。私が嫌いなのは、過去の失敗やどうにもならないことをウジウジして考えている奴のことよ。そう言うロマンチックなのは私、嫌いじゃないけど?」
桐崎は微笑を浮かべながらそう言った。…コイツホント顔だけは良いよな…ちょっと、見惚れちまった。
「……。そう言えば、クロードはあんたのこと知ってたみたいだけど、どこで知り合ったの?」
「ああ、それは……」
俺は桐崎に先日あったことを説明した。
「へえ、あんたって意外と強いのね…。じゃあ不殺ってのはコードネームみたいなものなのね…」
「意外とは余計だな…、まあそうだないつの間にかついてたんだ」
「不殺ってことは誰も殺していないってことなの?なんでそんなことしてんのよ?」
……。話しにくい事を突かれたな…まあ錠のことも言ったし、もう良いか。
「あー、……その約束の女の子に会った時、自分に胸張れるようにしたいんだよ…」
「…それだけ?」
「………ああ」
桐崎はツチノコでも見たような顔で俺を見る。俺はこんな事を言った羞恥心今更ながらにが襲ってきた。
「あんた、やっぱり馬鹿なのね…」
「なんだよ!何か文句あんのか!?」
「…そんなので身を危険に晒す方が馬鹿って言ってんのよ!ハァ…なんで私がこんなこと言わなきゃいけないのよ!」
そのまま桐崎はそっぽを向いてしまった。と言うか今俺、心配されたのか…?
「あー。心配してくれたのか?」
「うっさい!」
顔を赤くしながら今にも噛み付いてきそうな桐崎から俺は二歩ほど後ろに下がる。
「と…とにかくこんな状況、早くなんとかするぞ!お前と恋人同士なんて堪えられねえよ!」
「ハァ!?こっちのセリフよアホもやし!」
俺は誤魔化すようにして恋人の話題に無理矢理戻す。
「ひとまずはみんな納得してくれたし、今日よりキツいことはないだろ…ただ、あのクロードってやつには注意だな…」
「まあそーね。でも、これ以上あんたの恋人役なんてやらされたらストレスで死んじゃうわ!」
その言葉にイラついた俺はベロを出して手で桐崎を煽る。桐崎も中指を立ててベロを出す。コイツ、やっぱ性格ブスだわ。
よりにもよって俺と桐崎が恋人を演じなきゃいけないなんて…とゆうか結婚するなら兄貴にさせたら良いのに…。いや、そうしたら小野寺が可哀想か…。
「……(と言っても基本的にはヤクザとギャングの前だけでフリをしとけば良いんだから、思ったほどやる事は無さそうだな)…はあ」
俺は布団の誘惑を振り切って起き上がる。着替えて顔を洗おう…などと今後の予定を軽く考えながらいそいそと着替え始める。
─ピーンポーン。
「坊ちゃーんお客さんですぜ〜」
「客…?」
俺は嫌な予感を抱えながら玄関に向かう。そして外に出ると、
「ご…ごきげんようダーリン!」
明らかに頬が引き攣っているのが窺える桐崎が立っていた。
「突然で悪いんだけど、今からデートに行かない??」
目尻に涙を溜めてそう言う桐崎はどこか無理してるように見える。
「おー!そっかぁ!!今日は土曜日ですもんねぇ…!!」「いいな〜坊ちゃん羨ましいぜ!」「え!?幸、いつのまに彼女をつくったんだ!?」
後ろの
「今日はいい日和です。こんな日に付き合いたてのカップルがデートに行かないはずありませんよね」
クロードがメガネをクイっとしながらそう言った。握りつぶすぞ。
─こうして、俺と桐崎は初デートに赴くことになったのである。
。
おやすみ