はこぶねのはいしゃさん   作:ニョホ

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副題
日本には古くから歯を黒く染める習慣が存在したが成り立ちは良くわかっていない。
お歯黒は江戸時代には既婚女性や遊女の化粧として定着した。
 
___化粧の始まりは呪術的な『魔除け』であるとされている。



1-8

 

 

 

カララクの朝は早い。

前日に残業や任務が無ければ遅くても6時半には既に目を覚まして同室の〇〇の目を覚さないようにこっそりと寝る前に装着したリストバンドを外し、寝る前に外した義足を装着する___うっかり義足を取り落として〇〇を起こしてしまうこともある。

 

カララクは基本的に3食全てを食堂や購買部で買って置いた食料で賄う。___時々思いつきで作り、大抵はハイビスカスの健康食並みに酷い味となる。ちなみに稀に有害物質が完成して大騒ぎとなる。そして全て自分で廃棄又は処理し、医務室のベッド送りとなる。

 

 

シトムベは前日に残業や任務があっても6時には起き出している。一人部屋なのでそこまで騒音には気を使わないが、長い間壁の薄い賃貸で暮らしていた為かそこまでうるさくはならない___またベットで寝始めたのはつい最近のことなので時々転げ落ちて目を覚ますのだが。

 

朝食はどうしているかというと基本的にシトムベは自室で摂るようにしている。

シトムベはお歯黒___つまり歯を黒く染めている。

シトムベの使うお歯黒は一つ一つの歯に丁寧に鉄の溶液を発酵させた鉄漿水(かねみず)とヌルデという植物の葉の虫こぶを粉にした五倍子粉(ふしのこ)を交互に塗っていくもので塗り終えるまでに時間が掛かる。

歯を染めてから朝食を摂ると染めた色が落ちやすい上、お歯黒と朝食の匂いが混ざるというのが主な理由だ。

歯を染めてから朝食を摂り、また歯を磨くことはシトムベは二度手間だと考えている。

 

シトムベは昼食と夕食を食堂で摂ることが殆どだ。そうなるとよくカララクと食事を一緒に摂ることが殆どのように思えるが、その頻度は昼食を週に2、3回程である。

 

カララクは多忙である。定期的に療養庭園の植物の手入れを行い、採取した植物から弾薬を作り、自分のものを含めた義肢の整備、調整、作成を行い、訓練に参加し、任務にも出撃する。休日には自分のコレクションの点検を行い、装備の研究を進める。

その上でシトムベを含めた友人との交流は欠かさない___この事実とカララクのとある習性___体質と言うべきであろうを知った〇〇はドン引きした。

シトムベはもとから知っていたが改めてドン引きした。

 

おそらくこの星で一番に人生を精神的に充実させている存在を挙げるとすればカララクは真っ先に候補に挙がるだろう。

 

 〜とある音声記録〜

 

Q.カララクさんの寝起きする時間が早過ぎます。夜中に起きて欲しい時はどうしたらいいですか?___〇〇

 

A.ベットの隅に置いてある赤いボタンを3秒間程押しなさい。カララクが就寝時に着用しているリストバンドが起動して電流が流れるようになっている___ケルシー

 

___

______

_________

 

「‥‥というようなやりとりがあの人と同室になってからあったのですが。」

 

「いいじゃないか、ボタン一つで済むのだから」

 

「それがね、シトムベさん。時々リストバンドが充電切れなんですよ」

 

「ふむ‥‥では〇〇。お前に特別製のクラッカーを渡しておこう。どうしても起きない時に使うといい。その時は絶対に耳栓をすることだ」

 

 

 〜後日、昼食の会話〜

 

フォリニックと向かいあって昼食を摂るシトムベ。フォリニックの隣には〇〇、シトムベの隣にはスズランが座っている。

 

「あの‥‥サイレンス先生やフィリオシプスさんのようにカララクさんの鉱石病の症状は睡眠に関わるものだと聞きましたが具体的にはどのようなものなのですか?」

 

もしかしたら自分が起こす手間を減らせるかも知れないと考えた〇〇がフォリニックに聞いた。

 

「カララク氏の‥‥?あの二人のように不定期に睡魔に襲われるのとは違って周期的に眠りが深くなり易いものよ。」

 

フォリニックは何故が聞いてきたのかと少し戸惑い、同室の人間のことは気になるものだろうと自己解決して快く答えた。

 

「‥‥夜になると急激に睡魔に襲われるのではなくですか?」

 

「ええ、そうよ、でも眠りの深い周期になると普通の目覚まし時計では目覚め難くなっているの。」

 

「じゃああのリストバンドは‥‥」

 

「大き過ぎる音で同室の貴方に迷惑をかけないようにする為の気遣い‥‥のはずよね。」

 

話ながら自信を無くすフォリニック

 

「普段の行動を鑑みると説得力が無いな。」

 

珍しくうどんを食べているシトムベ

 

「「そうね‥‥/そうですね‥‥」」

 

「あの‥‥」

 

「あら、どうしたの。リサちゃん?」

 

ここでようやく我らの光(スズラン)が話に加わった。

 

「いろいろ気になることがあるんですが‥‥どうしてシトムベお兄さんはお揚げを別の皿にしてもらったんですか?」

 

スズランの言葉通り、シトムベのトレーには

うどんのどんぶりとは別にお揚げの乗った平皿が存在した。

 

「熱いものが少し食べ辛くてな、こうして別皿に移して冷ましやすくさせてもらってる。」

 

「そ、そうなのね‥‥ええとリサちゃん、他の気になることって何かしら」

 

やや困惑気味であったがフォリニックが話を促した。

 

「前に〇〇お兄さんから聞いたんですが、カララクお兄さんは何も仕事が無いと8時には寝てしまうそうですが鉱石病とは関係ないんですか?」

 

「あ、僕もそれは気になりました。」

 

〇〇も同意する。

 

「関係ない‥‥むしろあれで改善された方だ。カララクは昔の方が酷くてな。下校中に日が沈むといきなり道端に倒れ込んで眠り始めることもあったぐらいだ。ちなみに朝は日の出と共に起きるから朝から遊びに行く予定を立てるとかなり早く起きる羽目になるから眠かった‥‥‥。」

 

最初は不貞腐れた表情で、ちなみに、の部分からはうんざりとした顔をしながらシトムベは答えた。

いつの間にかシトムベ達の周りのテーブルはシンとしていた。

恐らくはこの場にいて話を聞いていた人数のかなり多くの考えが一致したのだろう。

 

『嘘だろアイツ』といった具合に。

 

ちなみに話題の当人は偶然にも今日はロドスにはいなかった。

 

 

 

カララクの仕事量に対して現時点のシトムベはそこまで忙しくない。清掃員の仕事があるとはいえ、一部の施設は清掃員以外が掃除をする場合もあるため、掃除する場所はロドスの清掃員の人数も相まって一人当たりの面積は見た目ほど多くないのだ。

‥‥最もシトムベは空いた時間を前任者の書いたカルテの内容の把握や電子化に費やしている。

 

 〜また別の音声記録〜

 

Q.前任者がどの様な法則でカルテを並べたか不明です。流石に亡くなった患者さんのものと生きている患者さんのものとでは分けられていますがどちらもぐちゃぐちゃにしか見えません。ケルシー先生は何かご存知でしょうか___シトムベ

 

A.先に例え話をさせてもらう。君にはどう見ても散らかっていてどこに何があるか分からない惨状を注意されても『自分にはわかるから大丈夫!』などと反論して結局見つけられずに周囲の人間に泣きつくような事態に陥ったことはあるだろうか?注意した側や泣き付かれた側でも構わない。

‥‥注意したこともあれば恥ずかしながら泣き付いたこともある?そうか、両方の立場を経験したなら話は早い。君の前任者の話だ。

‥‥彼女___ブリジストロは自分の部屋の掃除やカルテの整理が苦手なタイプだった。

だか不思議な事に彼女がものを無くすことは盗まれたことを除けば一度も無かった。

‥‥彼女は自分の部屋のものや収納*1したカルテの位置を完全に把握していた。

試しに入れ替えることだけ*2は伝えた上で位置を取り替えたりしたこともあったが迷うことすらなく必要なカルテだけを持っていった。

 

(コーヒーを一口飲む音)

 

‥‥ふう、何故目的のカルテを見つけることが出来たかを彼女自身に訊いたところ『自分で手にとったもの全ての特徴を覚えていたから』だそうだ。 

‥‥結論を言おう。ブリジストロのカルテの仕舞いかたには法則性は殆どない。緊急性の高い患者のカルテやよく取り出すカルテを彼女の手に取り易い位置___中段から下段に置いてあることぐらいだろう。

‥‥どこか心当たりがある顔だな?そろそろ私の休憩時間も終わるから話はここまでだ。

‥‥もし君が彼女のカルテの電子化や整理をするのであればその辺りから終わらせておくことを推奨する___ケルシー

 

 

___

______

_________

 

 

「___休憩もそろそろ切り上げだ。君の仕事に必要な設備は来週に搬入される予定だが部屋の準備は出来ているのか?」

 

ことり、コーヒーの入ったマグカップを置きつつケルシーが尋ねる。

 

「出来ておりますが‥‥本当に子供達の入院スペースに近い部屋を使わせて頂いてよろしいのですか?」

 

「構わない、というより近い方が便利だろう?」

 

「それもそうですね。‥‥ああそういえばですが」

 

シトムベは再度ケルシーに質問した。

 

___恐らく貴女の部下のはずの赤いコートのループス、私の監視以外にも目的があるのですか?

 

 

*1
かなり苦々しい顔でそう言った

*2
日にちや入れ替える範囲は伝えていない。因みに移動されると困るカルテは事前に別の場所に移動させておいた





シトムベ
種族:ヴァルポ
本名の苗字は十字(とじ)  
両親を幼い頃に亡くし祖父母に育てられた。
歯医者を目指した理由は意味が分からない。

カララク『小学校の作文で口から炎を吐けるようになりたいとか書いてたね』

黒いキツネは日本では古来より平和の象徴とされていたがイギリスでは不吉の前兆とされている。

カララク
種族:リーベリ
本名の苗字は晴山(はるやま)


実家はガラス職人の長男、弟が楽しそうに父の仕事を見ているのを見て自分も弟のように楽しめるものを探した結果傭兵にまでなった。
体質はあまり気にしていない

シトムベ『頼む、気にしてくれ』

カラスは昼行性で夜明けより前に起きてねぐらを出て日の沈む少し前にねぐらへと向かう。強い光が苦手で嗅覚が弱く、辛いものも苦手。

ブリジストロ
種族:ザラック
本名の苗字は藁橋((わらばし))(実在の苗字では無い)

元ロドス所属の歯科医師のお婆ちゃん
ノイルホーン曰く怒らせると怖い。
苗字から極東出身?
現在は引退してレム・ビリトンで余生を過ごしているらしい。


ネズミの記憶力はかなり良いとされている。
体の重さにおける脳の割合は人間以上のもの

ネズミ→1:36 ヒト→1:41
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