ゲヘナ学園の新入生
こんにちは。有馬ウレイといいます。銀髪碧眼、ヘイローの形は三日月の内側に水晶みたいな形の立体的構造物、色は水色。種族は悪魔、学園はゲヘナ、学年は一年。所属している部活は今のところなし。というか入学したてほやほやの一年生なので、今はまだ仮入部の期間です。
さて、入学式も終えて、新しい家への引っ越しも終えて、新生活のはじまりは割と良い感じに切れたと思います。健康診断、身体測定、体力測定、それに、各種授業のオリエンテーションと部活動紹介が最初の2週間で行われますが、それもまあ、最初ですし。そこまで大変、というわけでもありません。
それはそれとして。現在同級生の間では、部活動や体力測定の結果で話題は持ちきりです。ここはゲヘナ学園、自由が校風、ということは、暴力が校風でもあります。トリニティみたいな陰湿集団ではないので、強さこそが明確なルールです。強い人は何しても構わないし、弱い人はとことんされるがまま。なので、体力測定の結果は割と死活問題です。幸い、私自体はそこまで弱くないので、その方面でスタート失敗……というわけではありませんでした。問題は部活動。女子高生、キヴォトスの華たる女子高生!期間限定の栄えある身分で、どんな学校生活を送るかが決まる、最も重要な時期といっても過言ではありません。
部活動紹介で印象的だったのは、万魔殿と、風紀委員会(風紀委員長や行政官など、役員は能力で決まるようですが、委員会には部活動感覚で在席できるようです)、美食研究会、給食部あたりですね。あとは……温泉開発部とか。
万魔殿はあの生徒会長に振り回されそうなのが嫌かな。演説中脇に居た部下っぽい先輩がめちゃくちゃ渋い表情でやばかった。風紀委員会は……まあ、ナシではないけどキツそうで多忙そうなのが……あまり好きではないです。キツいのは。美食研究会は良さそうでしたが、度々風紀委員会を振り回しているという噂があるので、様子見です。給食部はまともですね。ですが、そこまで料理に興味がないので、印象に残っただけです。温泉開発部は興味がありますね。温泉は好きですし、運動もできそうで。しかし、温泉開発部は大所帯。何百人単位での部活動は、私には向いていません。同級生は真面目な子が風紀委員会、運動ができる子がそれぞれの運動部、それ以外はおおむね帰宅部でした。帰宅部、とはいうものの、部活動をしないだけであり、バイトや個人的な活動をやるようです。
困りました。私は部活動がしたいというのに、全体的にイカレた部活か、アホみたいに忙しい部活動しかありません。かといって陸上部や水泳部などは、私のような運動神経平凡女が楽しみながら、と考えると無理です。性に合ってるからとゲヘナを選んだ私が間違いだったか、多少理系の勉強をしてミレニアム辺りに入った方がマシだったか、などと考えていたのは、つい先週の話です。転機は、モモトークから表示されたニュースでした。
先生って?シャーレ、とは何ぞや?色々調べてみた結果、「先生」とは、「連邦生徒会長から頼まれた大人の人間」のことで、「シャーレ」とは、連邦捜査部S.C.H.A.L.E、つまり組織の名前だとわかりました。公式HPによると、連邦生徒会直属の何でも屋さん。学園の垣根を超えた、キヴォトスの問題解決組織であり、「部活動」。シャーレの招集は超法規的措置になり、如何なる生徒であろうとシャーレに加わることができます。
「部活動」……これは、良いのでは?連邦生徒会と繋がりを持てば、何かとすごく都合が良いのでは?連邦生徒会所属の人たちは揃いも揃ってエリートばかり、すなわち、かの組織には権威があります。シャーレの実態はともかく、後々有利になりそうです。そして、シャーレの業務内容も簡潔です。生徒の問題解決……というのがどのレベルかはわかりませんが、もし合わなければ辞めて素直にゲヘナで部活動を吟味すれば良いですし……。とにかく、ここでシャーレを見逃すなんて、できるはずがありませんでした。
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シャーレ、開業1日目の出来事。
「先生」という大人は、経緯も何もわからないままにシャーレの顧問になった。キヴォトスの外から来た、弾丸一発ですら致命傷になりうる脆弱な生命が、強靭な生徒たちを相手にお悩みを解決する。何もわからなくとも、先生としてやるべきことは全力で全うする、という意気込みが先生にはあった。しかし、それはそれとして、不安はある。未来に対する、新しい生活に対する、誰もが感じうる期待の裏側。先生は、両手で自分の頬を叩き、「よし!」と一声。シャーレオフィス奪還の一件があっても、アロナやシッテムの箱の件も、全て先生になったという実感のないものであったが、自覚など後から生えるものと言わんばかりに、まずは殺到したお問い合わせに対応することにした。
実のところ、先生もシャーレについての知識は十分ではない。連邦生徒会の七神リンから教えてもらったものだけであり、その辺の一般人より少し詳しい程度のものだ。そもそも新設の部活動、どのような組織にするかは先生や連邦生徒会の意向次第である。その責任の重さに先生は武者震いしながら、生徒や企業に対する説明の文面を作成していた。
さて、お問い合わせの処理があらかた終わった午後4時のことである。早速、先生の元へやってきた生徒が一人。初日から訪れる生徒、おそらくあれから連絡を取り合っているユウカやチナツ、スズミ、ハスミといったあたりだろうと踏んで、先生は振り返った。しかし、その人物はそのうちの誰でもなかった。すこし長身の、スレンダーな体躯が特徴的な生徒が居た。制服に着られている様子は、明らかに一年生だった。
「あの、人員募集の情報を見てここに来ました、ゲヘナ学園一年の有馬ウレイです。……その、仮入部、良いですか?」