ゲヘナ学園、好きです。公式は早くゲヘナメインの話をしてくれ!!!!ヒナ夏と不忍だけじゃ満足できなくなってきてるんだ!!!!!
「お邪魔します……」
イロハ先輩のティーガーの中に乗り込むと、空崎先輩とイロハ先輩が車内に座していました。雰囲気が重苦しいです。空崎先輩もイロハ先輩も、学園の意思決定層。それにどちらも公務に忠実で、緊張をほぐすというところから最も遠い場所に居ます。なので……
「別に、これから逮捕というわけでも、尋問というわけでもないから、楽にして」
と言われても、無理なものは無理です。
「で、ででででは、お言葉に、甘えて……」
「……では、単刀直入に伺いますね」
尋問はしないって言いましたよね?イロハ先輩話聞いてました?
「最近、誰かに見られている、という感覚はありますか」
「……ないですね」
「そう、なら現状は問題ないわ」
「私を付け狙う人がいるってことですか」
「そうですね、あなたは最も先生と距離の近い人間です。『万魔殿』は要観察対象としてあなたのことを見ていました」
そう言われましても、シャーレの仕事で深く学校に関わるなんてこれが初めてですし、これ以前はテロリスト鎮圧、ヴァルキューレのお手伝い、猫探し、パトロール、その他諸々しかやっていません。
「そんな、私何も」
「シャーレというのは、連邦生徒会直属の超法規的組織。先生とは、このキヴォトスの中でも有数の政治的な切り札たりえる存在なのよ」
「先生、そしてシャーレが居れば、直接的にはいささかやりにくい学園の措置も、ハードルがかなり下がります。例えば、生徒会がシャーレを媒介にして気に食わない生徒を退学に追い込んだりするのは序の口ですね」
「た、退学!?」
「最終的には、学園間戦争の錦の御旗にもなり得ます。最悪の場合、これからのキヴォトスで起きる抗争は、『どちらが先に先生を獲得できるか』、というゲームになります」
これは想像ができます。現に、先生の指揮能力はすさまじく優秀です。味方に付けられさえすれば、実際に勝ててしまいます。いわば、シャーレは剥き身宙ぶらりんの戦略兵器。狙わない方が馬鹿です。でも、そうなったらキヴォトス全体の治安が先生を中心に悪化してしまいかねない。今でこそ強盗銃撃爆破テロが絶えませんが、「戦争」と呼べるほどの抗争は起きていません。しかし、これからは「戦争」が気軽に起きてしまう、先生がブレーキを破壊してしまうから。
「実際にそうした政治的行動を起こせるほど新生組織に構う馬鹿な学園はない。でも、どういった組織かはどの学園も注視しているはずよ。その点、そこの『万魔殿』の狸たちは、情報収集から行動まで、かなり速いわ」
「ウレイさんがいなければ、多くの学園と同じくらいでしたが……本題に入りましょう。ウレイさん。ここから先の要請はできれば聞いてほしいです」
イロハ先輩の顔は、いたって真剣でした。
「『万魔殿』はゲヘナ学園とシャーレの良好な関係を崩したくありませんが、ウレイさんの安全や、ゲヘナ学園に振りかかる面倒事の回避を考慮し、ウレイさんにはゲヘナ学園、及びトリニティ総合学園の問題に関係しないでほしいです」
「……すみません、なんで安全とか考えたらそうなるんですか?」
「『先生獲得ゲーム』を、なるべく起こさないようにするために、です」
「先生やシャーレには、完全に中立であってもらわなければならない。簡単に錦の御旗として持ち出せるわけではないことを証明しなければならない。そんな状況で、連邦生徒会ではないシャーレ専業の生徒が身内や敵対校の問題に取り組むということは、シャーレという組織に好感度というステータスを付与してしまう」
「好き嫌いがある中立組織など、中立組織とは呼びません。各校はこぞって好感度を稼ぎに来るか、先生を脅してでも味方につけようとするでしょう。その過程で、ウレイさんが危険な目に遭うかもしれません。ゲヘナも、そのあおりを受けざるを得ないでしょう。その後始末をするのは私なんですけど」
あの風紀委員会の行政官の考えも、同じなのでしょうか。
「そういう意味で考えれば、行政官のあの行動は、無理矢理だったとはいえ正しい側面もあります」
「そうね、でも、ゲヘナ学園の学風として、そんなことは許されないわ」
「ですので、こちらから最大限の妥協案をお願いするだけです。聞き入れるかどうかも自由です。そっちの方が報告書をいろいろ端折れて楽なので」
どうなんだ、という先輩方の無言。きっと言っているのは全て本当なんでしょう。私が軽率に行動すればするほど、風紀委員会やイロハ先輩にしわ寄せが行く。それは本意ではありません。
「……先輩方の言い分は、わかりました」
ですが、それに「はいわかりました」と従順に従うことは、違う気がするのです。
「ですが、私にもやりたいことがあります」
「それは?」
「シャーレを頼ってくれた人と、美味しいご飯を食べたい」
「……」
「とても、美味しかったんです。アビドスの皆と食べるご飯。アビドスの皆だからかもしれませんが、私はもっと、多くの友人と、シャーレを頼ってくれた人みんなと、食べたいんです。きっと皆も美味しいって思うだろうから」
「……」
「それを、所属する学園で選別したくありません」
「……そう。立派ね」
「委員長、そこ、褒めるところですか?」
「嘘を吐けって?」
「……いいえ」
なんか、嫌味の一つでも言われるかと思ったんですけど、穏便に終わりそう?
「でも、その立派な志を、誰もが理解するわけじゃない。それどころか、理解したうえで悪用する人間もいるわ。そうした人たちが、ウレイを害するかもしれないということは、留意しておいて」
「……はい」
----
気まずい雰囲気の中、ウレイを戦車から解放した。比較的物分かりの良さそうな子だったが、ウレイはわかってくれるだろうか。
……いや、彼女もひとりのゲヘナ生。理解できないことが多いし、そんなの知ったこっちゃないだろう。どちらにせよ、分の悪い賭けだ。
沈黙に耐えきれなかったのか、イロハが操縦しながら話しかける。
「……巡回中にいきなり虎丸に載せて欲しいと言われたときにはびっくりしましたよ。シャーレのゲヘナ生が風紀委員と衝突するのがマズいというのはわかりますが……それに、仲が悪いんじゃなかったんですか。私たち」
「そうね。風紀委員会の邪魔をするあなた達は、とても目障り。でも、あなた個人と仲を悪くする理由はないもの」
「はぁ……で、帰ったらどうするんですか。私は行政官の失態を見なかったことにはできません。公式に謝罪しましたからね」
「……何とかするわ」
「何とかって……うちの執務室を破壊するのは自重していただけると助かります」
「それは議長の判断によるわ」
「はぁ……めんどくさいですね……」
私たちの会話は、それきりだった。