という解釈の為、エデン条約編ウレイSideをやっていきます……!
intro
どうも、有馬ウレイです。最近はいかがお過ごしですか。私は勉強時間を増やし、シャーレでの活動時間をずらし、朝は少し遅めに起きるという生活が現実的になってきて、毎日に色々な楽しみと日常を見出せてきたものです。さて、ゲヘナに慣れてきた一年生全体の最近はというと……
「次の時間何だっけ」
「数A」
「だりぃ、トラック行こうぜ。そういえばウチの部活の先輩がさ~……」
はい、ゲヘナ学園はその生徒が余りにも勉強をしないことで有名です。というか、自由と混沌の名のもとに、「本当に勉強したいやつ」「勉強しないと流石にマズいと思っているやつ」以外は勉強しません。私ですか?私は「勉強しないと流石にマズいと思っている」です。真面目ちゃんとか言われますけど、先生からも「勉強しろ」って言われてますし、空崎先輩もイロハ先輩も行政官もナツミ先輩も勉強できる人なんです。私もできないと、シャーレが舐められる……!
さて、そんなある日のことです。勉強を終えて、これからシャーレに向かおうという時でした。私の携帯電話が震えています。電話を取ると、先生が申し訳なさそうな声をしていました。
「どうしました?私のプリンを間違えて食べたとかですか?」
『ああ、いや、そうじゃなくて……さっきトリニティのティーパーティーとお話してきたんだ』
「……別に、トリニティが嫌いだからって先生が行ったことも咎めるなんて子供じゃないですよ。何歳だと思ってるんですか」
『問題はそこからでね……』
「はあ」
『少しの間、トリニティの子たちの勉強を見ることになったから、その間、シャーレの業務を頼みたいんだけど、いけそう?』
「えっ、どのくらいですか?」
『うーーん、だいたい、一か月くらいかな』
「一か月……」
『もちろん、私がリモートでできることはやるよ。問題は、トリニティ自治区以外の現場仕事でね……』
もちろん、無理があるならシャーレはいったんお休みしておくよ。と、先生は言います。
「いえ、できる限りでやってみようかと思います」
『本当?ありがとう……あんまり無理しないようにね。ここ最近、風紀委員会とトリニティのいろんな団体がピリついてるし……ウレイの判断でその辺はどうにかして構わないから』
「はい」
『とはいっても、私が離れるのは3週間後だから、それまでに色々教えたい。帰りの時間は少し時間遅くなるから、頑張ろうね』
「事前に教えてくれて、ありがとうございます。今日はどうしますか?」
『今日は私にしかできないことしかないから、当番の人だけで大丈夫かな。ウレイは来たかったらおいで』
「了解です。では」
電話を切ります。
「お電話は終わりましたか?ウレイさん」
気だるげで落ち着いた声が、背後から聞こえます。この声を出せるのは、一人しかいません。
「イロハ先輩」
赤い癖毛の先輩は、教室のドアに寄りかかって静かに私を見ていました。
「こうしたことに巻き込むのは、本当に遺憾なのですが……いかんせん仕事なので巻き込まれてくださると助かります」
「いえいえ、イロハ先輩にはすごくお世話になっているので、私にできることがあれば何でも」
イロハ先輩は、一言「良かったです」と言います。そして、気の抜けた表情があり得ないほどに真剣になって、私へ呼びかけました。
「有馬ウレイさん。『万魔殿』がシャーレ所属の貴女に対して、正式かつ秘密裏に用があります」
『万魔殿』、その読みは「ばんまでん」ではなく「パンデモニウム・ソサエティー」。ゲヘナ学園の生徒会であり、ゲヘナの生徒からは記憶されない第二勢力です。武力は風紀委員会に劣るものの、振るえる権力の範囲はとても広く、その情報網も緻密かつ広大です。まあ、ほぼ誰も知りません。議長の名前はマコト、というんでしたっけ。イロハ先輩の口からちらちら聞こえるので。さて、そんなゲヘナの生徒会が、私に何かしらのご用命をしたいようです。
「『万魔殿』、ですか」
「ここでお話するには憚られるので、執務室まで案内します」
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ゲヘナ学園 『万魔殿』議会室兼執務室
「棗イロハです。有馬ウレイを連れて来ました」
「────入れ」
大きな扉、その先には、切れ長の目と整った顔立ちをした生徒会長が、広い生徒会室の奥の机で待っていました。
「待ちくたびれたぞ、イロハ」
「電話しているのを待っていたんです。それに、ちゃんと10分以内に連れて来ました」
「5分前行動というのを知らんのか……良いな。よし、次作る校則は『5分前行動』だ」
「先輩、それ、自分が守れませんよね」
イロハ先輩曰く「馬鹿」……そう称される生徒会長は、私にその視線を投げました。
「有馬ウレイ、だな?」
「はい、はじめまして。マコト先輩」
「キキキ……名前を憶えているとは、殊勝だな。イロハの仕込みか?まあいい……ウレイ。貴様には議長きっての命令がある」
「はぁ……」
この人、喋り方が大げさだな……そんなどうでもいい感想を抱いて、これから来るであろうろくでもなさそうな依頼の話を聞く準備に入ります。
「『エデン条約』についてのことだ」
「エデン……?」
この時、私は知りませんでした。この面倒事が、学園間戦争の火種になる本物の厄ネタだったなんて。