ゲヘナ1年生の連邦捜査部活動   作:watazakana

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色々な忙しさと人間関係の難しさでグロッキーしてました。世の中って難しい!


楽園の敵と有馬ウレイ-1

マコト先輩が示したエデン条約の敵は4人。いずれも議長選に投票していて、1人を除いて反マコト派で、エデン条約反対派。ノリと勢いで暴れるゲヘナ学園らしからぬ知性を持ち、重大な政治犯罪を犯しかねない人たち。

 

───とはいえ。イロハ先輩があれだけ気をつけろと言っている以上、マコト先輩が変なことを考えている可能性はいつも念頭に置きます。まあ、簡単に言えば、「話をしたら意外と分かり合えるかもしれない」という、某科学実験番組精神です。やってみなくてはわかりません。

 

話しかける1人目は、上山アキヨ。ゲヘナ学園2年生、成績優秀で学者気質。所属している部活動や組織はナシ。いつも第二校舎の図書室に篭っていて、何だかよくわからない本を読み込んでは不気味な声をあげている……自由混沌ではありますが、その方向が暴力に行っていないのは珍しいです。主な行動範囲が第二校舎内で、探す必要がないのはありがたいです。身体的な特徴としては……

 

「太陽みたいなオレンジのヘイローに、赤茶色のショートヘア、ごっつい制服のくせに低身長……」

 

……いやこれいちいち確認する必要もないですね。クヒッと抑えきれない笑い声の主が1人、どう見てもこの人がアキヨ先輩です。ヘイローも太陽みたいな形のオレンジ。確定です。

 

「君がウレイか」

「えっ」

「……反応が鈍いな、君がウレイかと訊いている。私が欲しいのは反応じゃない事実だ」

「……はあ、確かに私は有馬ウレイです」

 

本に笑顔を向けたまま話しかけられるとそりゃ反応も遅れますよ何なんですかこの先輩。

 

「……ん?ああ、立ち話も何だ。適当にかけたまえ。私は図書委員ではないが、当の責を負う人はサボタージュを決め込んでいる。そもそも利用者すら居ない状況だ。私が多少私物化しても問題はないし、騒がしくするにも問題はない」

「はぁ……ではお言葉に甘えて」

 

図書室、奥に居るアキヨ先輩の向かいに腰掛けます。

 

「君の要件は、推測するに『エデン条約に関する所感』を訊きに来たのだろう?」

「……あなたは『万魔殿』にエデン条約を脅かす敵として認識されてます。ですが、実際の程がわからず……アキヨ先輩は、エデン条約について何かしようと思っていますか?」

「君……」

 

先輩は本から目を離し、私に正気を問うような目つきで話しかけてきました。

 

「なぜそれを私に訊くんだ?常識というのが欠落しているのか?容疑者にテロを起こしたいですかと訊いてまともな答えが返ってくるわけないだろう」

 

アキヨ先輩は続けます。

 

「確かに、『万魔殿』から目をつけられているのは知っている。あの狸女において未知なのは馬鹿みたいに単純な思考回路と高度な政治戦が両立する仕掛けくらいだ。エデン条約の仔細についても、ああ、知っているとも。アレで知らないものはないとすら言って良い。だからこそ、狸女のことだ、『アキヨは思うことがあるに違いない』……そう考えているんだろう」

「あの……」

 

アキヨ先輩はすぐに本へ目線を戻し、呟く態勢に入りました。会話の雲行きが怪しいどころの騒ぎではないです。

 

「だとしてもなぜシャーレをここに寄越す?超法規的組織を介入させたところで感知したヒナに疑われるだけ。強権を発動させて何でもかんでも罪状をでっちあげて退学に処せば良いだろう。その方が体面も良い。おそらく容疑者の評判も風紀委員会からすれば良くはない。何かやらかしたという報告があれば疑うことなく処分するはずだ」

「アキヨ先輩?」

「間違いなく政治的な理由だろう。何だ、何があいつにシャーレ介入という発想に至らせた?イロハとウレイの交流だけではその発想には至らないはずだ。シャーレを噛ませるよりも簡潔かつ確実な手段はある。しかしそれを選ばなかった。狸女の趣味か?あり得るが……チッ」

 

舌打ち。不愉快極まりない、と言わんばかりの顰めっ面です。

 

「ウレイ、今日のところは帰ってくれ。私は調べ物の用ができた」

「え、あっはい」

 

本を閉じたアキヨ先輩は、図書室を出ようとズカズカ歩き出します。

 

「ああ、あとエデン条約についてだが……」

 

図書室を出る前に、わずかに立ち止まります」

 

「私は知りたかっただけだ。全て知っている以上、私は何も思うことはない。テロとか考える暇があったらネットで論争を見ていた方が何倍も有益だ」

「……」

「なんか文句でも?」

「いえ……言いたいことの一つや二つ、議長選に投票するくらいなんですから、出るものかと思っていたので」

「それとこれとは話が別だ。アイツは知識を奪う側の人間、嫌いだから反対してるだけ。エデン条約が締結されて、それで知識を得ることに邪魔が入るなら断固として戦うつもりだったがね。蓋を開けてみれば何のことはない、ただの平和条約だったよ」

 

ささ、と廊下を駆け出す音、蹴つまずいて転ぶ音、「誰だここを拭いたやつは!!!」という怒声が聞こえて、それから足音は遠くなっていきました。

 

「変な人だったな……」

 

先生、もし時間があったら、変人との付き合い方を教えてください。多分あと3人居るので。




ゲヘナ学園のうれい編は原作から大きく離れる都合上、原作の生徒が出る機会はあんまりありません。オリジナル生徒が生えちゃった……

人物紹介

上山アキヨ
ゲヘナ学園2年生、無所属。「知ること」に対して異常な執着を持っているが、得た知識については驚くほど頓着しない。
所持する銃種はHG。銃についても銘柄を取っ替え引っ替えしており、完全に扱えるようになった、構造を理解した、と思ったら次の銃を買う。
Middleポジションのアタッカー。時間経過とともに攻撃力、会心値、命中値が割合で上昇するNS持ち。
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