重装甲の爆発アタッカー(GL)。ストライカーであり、ポジションはBack。高い攻撃力とそこそこの防御力を持つ反面、HPが低いため意外に脆い。
アビドスへ行こう
近況報告です。
シャーレに仮入部を果たしてからというものの、他の学校の生徒さんとはすぐ知り合いになりました。ミレニアム学園の生徒会である「セミナー」の会計さん、トリニティの治安維持組織「正義実現委員会」の副委員長、同学園の自警団団長、あとはゲヘナ風紀委員会の書記さんも。逆を言うとそれくらいですが。
忙しさで言えば、四六時中忙しい、というわけではないです……先生はその限りではないですが。今のところキヴォトスはシャーレについて様子見の態度を示しているのだろう、というのは先生の言葉です。困ったことがあればいつでも応える、とはいうものの、実際に困った人を本当に救えるのか。超権限を持つだけのハリボテなら、という疑念を拭えていないのです。なら、今のシャーレに必要なものは実績です。こつこつ小さなことから積み重ねて信頼を勝ち取る、今はそういうフェーズだそうです。なので、最近のお仕事は「居なくなった猫の捜索」や「ゴミ拾い」、あとはたまに「混乱した情勢に乗じて暴れている不良の制圧」などですね。学園に関わるような大きな相談や、生徒自身に関する悩みなどはまだまだ遠い目標です。
というわけで、私こと有馬ウレイの近況報告でした。
----
二限目の終了チャイムが鳴り、授業中ずっと震えていた携帯端末を確認しました。
不在着信3件。モモトークの通知が1件。開けば、シャーレの先生からの連絡でした。
『ウレイ、お疲れ様。電話に出ないあたり、真面目に勉強してるようでよかった。今日のシャーレの業務は結構大変で、実地で行うこともあるし、今日は休みで構わないよ。もしどうしても同行したい場合のために、場所と業務内容は記しておくね。
↓以下リンク
http://……』
なるほど。今回の業務はアビドス高等学校で弾薬補給と……。アビドス高等学校って何?とその場で検索をかけると、画面に映るのは遠大な砂漠。どうやらゲヘナやトリニティとは程遠い田舎の学校のようです。連邦生徒会の統計によれば、全校生徒数は5人。5人!?SNSでアビドスあるあるとか喋ったら身バレ確定じゃないですか。いやそこは問題ではなく、そんな少人数でどうやって学校を維持しているのかとか、自治区とかあるのかなとか、そもそもこれ存在してるって言えるんですか、この学校。更に調べると、かつてのキヴォトス最大勢力のマンモス校だったようです。信じがたい。世界が私を騙そうとしている?そもそもそんな最強の学校が居たら鶴の一声で人口流出なんかどうにでもなったんじゃないですか?
アビドス高等学校の限界事情について逆に興味が湧いてきた私は、すぐさまありったけの弾薬を買い込み、アビドスへと向かっていました。
----
アビドス高等学校
「こんにちは〜……シャーレの者ですぅー……」
砂にまみれた閑静な校舎です。ゲヘナの生徒ではありますが、今はシャーレの部活動生という立場があります。それを意識して、敷地内に足を踏み入れます。誰も迎え出る様子はないので、おそらく留守にしているのでしょう。さて、どうしたものか。そういえば、先生はいないのでしょうか。モモトークには相変わらず連絡がなく、私の出発したことや到着したことの連絡にも既読がつきません。
忙しくしていらっしゃる、のでしょうか。しかし、先に向かっていた先生もここには居なさそうですし、少し嫌な予感がします……とはいえ、アビドスは余りにも広いです。下手に動くと迷子になってしまいます。ここは少し待つことにしました。
少し過ぎて、人の声がしました。複数人、先生とは違う声です。アビドスの生徒ですね。そういえば、暴力組織にたった5人で対抗って、すごいですよね。はてさて、そんなパワフルなアビドス生はどんな人たちなのでしょうか。興味本位で運動場まで出迎えることにしました。が。
「オイオイ、今アビドスの奴らはお留守らしいぜ!!」
「だろ!放課後の今ならもぬけの殻だ!」
「今の内だ、やっちまえ!!」
なんか、アビドス生にしては多くないですか?30人くらいいますけど。多分アビドスじゃないですよね?
「おい、一人なんか居るぞ!」
「ケガしたくねえならどっか行きなぁ、ここはこれからカタカタヘルメット団の居場所になるんだからよ!!」
「あ、やっぱアビドス生じゃないんですね」
「ああ?何だコイツ。その制服……ゲヘナか?」
「はい。私部活動でここを助けに来たんですよね。なので……あー、その、非常に言いにくいんですけど」
「敵じゃねえか!!お前ら撃て撃て、アビドスのオモリだコイツ!!」
当然、そうなります。迂闊に運動場まで出てきたのは良くなかったです。童話でも言ってました。不用意にドアを開ける愚かな子羊は死ぬと。
「やっぱり、戦うのかぁ……」
先制攻撃はヘルメット団。先ほどまで会話していた彼女が私に向かってショットガンを放ちます。弾がすごく痛い。私はド平地に居たおかげで隠れる場所もなく、右往左往しながら校舎へ向かいます。大丈夫、痛いだけ、頭にクリーンヒットしなければきっと気絶しません。私自身銃(GL)は一応持っているのですが、照準を合わせようとする時間もなければ取り出す時間もありません。
「追え!そのまま占拠だ!!」
逃げる逃げる逃げまくります、護身用の撒き菱で何とか場持ちさせることはできますが、流石に他校の校舎で破壊を伴う戦闘行為は無理です。教室から使えそうな障害物を存分に使って、道を塞ぎます。
「くそっ、コイツ攻撃しねえくせに逃げ足が早え!!」
「囲め、逃げられねえようにしろ!!」
私をこぞって追いかける様子だったのですが、散開してきました。人の流れが変わったのを見て、こっそり窓から外に出ます。よくよく考えたら、30人相手に私が校舎内で逃げ切れるわけがありません。アビドスの人たちが帰ってくるまでにある程度戦えばいいんです。キツイし面倒ですけど。では、戸締りと行きましょう。まずは玄関口と体育館への連絡路。重い非常扉を迅速に閉めます。この辺でヘルメット団は気づくと思うので、早めに運動場へ出ます。
「いつの間に外へ!」
「扉が閉まっても窓があるだろ、舐めやがって!!」
運動場の中央、スナイパーなら絶対に撃ってくる場所です。運動場には遮蔽がないので、地面に榴弾をぶち込みます。
「うおっ、何を!」
「砂埃が酷くて狙撃ができない!」
「結局相手は一人だ、狙撃なんかしなくても今なら全員で圧し倒せる!」
「皆、突撃だ!」
そんな声が聞こえてきたので、砂埃から抜け出して、声の方を撃ちます。榴弾は窓の中に飛び込んで、手ひどい爆発を引き起こしました。いやあ、壮観。窓には人が集中します。砂埃を適度に起こしつつ、そこから飛び出して敵の出てくる方を視認して撃ちます。もちろん、遮蔽から身を出した時は火力が集中するので、被弾は免れません。それでも頭への命中をなんとか避けつつ同じことをします。
「こいつ、砂を遮蔽に使ってやがる!」
「おい、マシンガン班、砂埃の中を徹底的に撃ちまくれ!」
「あいよ!」
でも、ヘルメット団も獣ではありません。遮蔽とはいえ、物理的な防御力は皆無。ただ視界を悪くするだけなので、砂埃の中をがむしゃらに撃たれると、多かれ少なかれ被弾してしまいます。そこは、我慢です。先生ならこの状況を何の被害もなく打破できたでしょうけど、私はそこまで切れ者ではないので、これが限界です。時間が経つうちに段々と疲れてきて、動きのキレが悪くなります。いや30人を気絶に追いやるの無理です。いくら破壊力のある銃器だとしても。こちとら一人ですよ。そろそろ限界です。早く来ないかな、アビドスの人たち。
そんな雑念が脳裏をよぎった時、ヘルメット団が適当に投げた手榴弾が目の前で炸裂します。身は爆風で投げ出され、激痛は意識を叩き落としました。あ、駄目です。今気絶してしまうと、補給品が……
----
「……するんですか?」
「…………かも」
「ええ?」
次の瞬間に聞こえてきた声も、複数。
「あ、瞼動いたよ~。起きたんじゃない?」
「本当ですか?」
「なら余計な憶測はやめ。本人に訊けばいい」
穏やかな声であるため、ヘルメット団ではなさそうですが……。目を開けるのが怖い。拷問現場だったらと考えると……
「ありゃ、頑なに目を閉じちゃったね。シロコちゃんが怖いこと言うから~」
「ん……ごめん」
「ほら、大丈夫だよ~、ヘルメット団は追い出したから。いや~、おじさんたち助かっちゃったなあ、一人で不良を12人もノしちゃえば十分すぎるよ~~」
「いやそれは良い感じに戦術がハマったからで……」
反射で謙遜をしてしまい、意識があることが露見します。いや、多分ヘイローでバレてるんだけど。目を開けば、桃色の小さな女の子が私の頭を膝にのせて寝かせていました。辺りはすっかり暗がりで、照明がとても眩しかったです。
「……」
「おはよ~、ゲヘナさん」
「……おはようございます」
とりあえず、事情を聴きました。私が多くのヘルメット団を倒したこと、私が気絶してから間もなくアビドス生である彼女たちが来たこと。ヘルメット団は完全に追い出されたこと、何故ゲヘナの人間である私がここでヘルメット団と戦っていたのかわからないこと……最後は完全に仕方ないことなので、私が説明します。
「ええと、まずは自己紹介しますね、私は有馬ウレイ、ゲヘナの一年生です。今はシャーレとしての立場で弾薬をアビドス高校に届けようとしたんですけど……タイミングが悪くて、ああなっちゃいました。弁償はできるだけしますから……」
「ああ、いいのいいの。シャーレの用事で来たんだねえ、ありがとう。弾薬も結構補給できたし、おじさんたちはまた戦えるよ~」
ずっと不良集団と戦っている限界高校、アビドス。その事情が気になりはしますが、シャーレからの連想で、今先生のことを思い出します。
「あの、先生は……」
「先生?」
きょとんとする一同。
「あの、えっと、先生っていうのは、シャーレの顧問の……皆さんと合流したはずでは」
「ううん、私たちは皆とずっと一緒だったけど、先生なんて人は見てない」
「……ホシノ先輩、もしかして」
「世話の焼けるったらありゃしない!」
「あはは……広いですからね、アビドスは……」
「あ~、アレだねえ。ウレイちゃん、だっけ」
「はい」
ふにゃっとした顔で、ホシノ先輩と言われた人は私を見る。
「多分、その先生って人、迷子」