東方仗助、異世界へ行く。   作:社畜松本

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一章
東方仗助、異世界へ飛ばされる


「どこだ……ここ……ッ!?」

 

 

 暗く、広い場所で仗助は目を覚ました。

 周りは完全な闇。何も見えなく、何も聞こえない。

 

 

「億泰ー! 康一ーッ!」

 

 

 友人の名を呼ぶが、応えが聞こえない。

 

 

「なんだっつーんだよ! 誰か……いねーのかッ……!! 承太郎さーんッ!」

 

 

 それでも返事は無い。

 

 

「くそッ……! 『クレイジー・ダイヤモンド』ッ!!!」

 

 

 不安に駆られ、己のスタンドを出そうとする───────が、しかし。いつもなら出るはずが、姿すら見せない。

 

 

「なんでだスタンドが出ねぇッ!? 新手のスタンド使いの仕業なのか……ッ!?」

 

 

 警戒しようにも、全方位が真っ暗で何も分からない。

 次の瞬間───────ッ! 

 

 

「え? ───────うおおおおおおおおッ!!!!!!」

 

 

 仗助が立っていたはずの地面は()()()()()ッ!! 

 そして、そのまま重力に従って落ちてゆく……。

 

 

 〜〜〜〜〜

 

 

「……み、……丈夫……い?」

 

 

 かすかに、誰かに呼ばれている。

 優しい声だ。子供の時、母親にあやされていた時みたいな心地良さを感じる。

 

 

「君、大丈夫かい?」

 

 

「──────わっ、びっくりしたっ……!?」

 

 

 今度ははっきり聞こえた。

 驚いて思わず飛び上がってしまう。

 目を擦りながら、声の主の方へと視線をやる。そこに居たのは──────

 

 

「こ、子供か……?」

 

 

「ボクは子供じゃなぁーいっ!」

 

 

「うわっ、すんません!」

 

 

 突然の大声に、反射的に謝ってしまう。それにしても、見た目は子供なのに出るとこ出てる体型をしている。

 とんでもなく不思議な少女だ。

 

 

「ったく、最近の若者は礼儀というものがだね〜……」

 

 

「あの〜……」

 

 

 不機嫌そうな彼女に恐る恐る声をかける。

 

 

「ん? なんだい?」

 

 

「ここ、何処かわかるか……?」

 

 

「へ?」

 

 

「え……?」

 

 

 二人が顔を見合わせる。

 そして二三秒ほど見つめあった末─────

 

 

「え──ーっ!? 君、もしかしてもしかすると記憶喪失なのかい!?!?」

 

 

 少女は大いに驚いた。

 

 

「うわーっ、声がでかい!!」

 

 

「す、すまないすまない……」

 

 

「オレは記憶喪失なんかじゃあねぇ。気付いたらここにいたんだよ」

 

 

「ふぅ〜ん……とりあえず場所を変えよう。ここで話してたら怪しまれてしまう」

 

 

 少女は一瞬考える仕草を見せると、そう言った。

 とりあえず、二人は場所を変えて話すことに決めたのだった。

 

 

 ・

 ・

 

 

 少女に連れられ、仗助はあるところまでやってきた。

 

 

「フッフッフ、じゃじゃーんっ! 見たまえ、ここがボクの(ホーム)さ!!」

 

 

 少女はその豊かな胸を張って言い放った。

 彼女が指さす方には、ボロっちい教会のようなものしかない。

 仗助は、『この少女はもしかするとすごく可哀想な子なのかもしれない』と、同情の念を込めてポンポン、と肩を優しく叩いた。

 

 

「や、やめるんだ! そんな可哀想な子を見る目でボクを見るんじゃなぁーいっ!」

 

 

「ハハ、わりぃわりぃ」

 

 

「ほら、さっさと来るんだ!」

 

 

 ぷりぷりと怒る彼女の後ろをついて行く。

 教会の中へと入ると、そこは思った通り朽ちに朽ちていた。

 

 

「よいしょっと」

 

 

 少女が地面の扉を開けると、地下に続く階段が見えたではないか。

 

 

「なんだこれ……スゲェ……」

 

 

 映画でしか見たことない様な光景が、今目の前にある。

 さすがの仗助も、感嘆の声を上げた。

 

 

「さぁ、入りたまえ」

 

 

「おじゃましまーす」

 

 

 中は思ったより綺麗だった。

 外観に反して生活感があり、ちょっとボロいがソファとベッドがあった。

 

 

「ここに座って待っててくれ。今お茶を出すから」

 

 

「ほ〜い」

 

 

 見るもの全てが興味をそそる物ばかりだ。まるで街全体が映画のセットのようで、自分が《違う世界に来てしまった》んだと実感するほどに。

 

 

「はい、おまたせ」

 

 

「あぁ、あんがと」

 

 

 出されたお茶を一口啜り、一息吐いたところで仗助は話を切り出した。

 

 

「──────ふぅ。とりあえず自己紹介しとくぜ。オレは東方仗助、よろしくな」

 

 

「ボクは神『ヘスティア』────この『ヘスティア・ファミリア』の主神だよ。まぁ、眷属は誰も居ないんだけどね」

 

 

「おいおい、そんなちゃちな嘘じゃオレは黙せないぜ?」

 

 

「嘘じゃないよ! 本当だってば!」

 

 

「じゃあ証拠見せてみろよ証拠を」

 

 

「しょ、証拠!? えーっと……えーっとぉ……」

 

 

 特に何も証拠になるものがなく、目を泳がせるヘスティア。一体何をすれば自分が神だということを信じて貰えるのか全く思いつかない。

 それを見かねた仗助が、照れくさそうに頬を掻きながら口を開いた。

 

 

「まぁいいや。アンタが何モンだろうと、こうして助けてくんなきゃ、オレは今頃野垂れ死んでただろうし。なんつーか……ありがとよ」

 

 

「〜〜ッ!!」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、ヘスティアの体はうち震えた。

 そして、勢いよく立ち上がって言った。

 

 

「ジョースケ君! ボクは今、『決めた』よっ!!」

 

 

「えっ、決めたって……何を?」

 

 

 不思議そうな顔をする仗助に、ヘスティアはビシッと指をさして揚々と言った。

 

 

「ボクは、君をボクの『ファミリア』にするっ! 絶対にだ!!!」

 

 

「ええええ──ーっ!!!???」

 

 

 〜〜〜〜〜

 

 

 ヘスティアのトンデモ発言から約1週間。

 仗助は既にこの世界での生活に慣れ、街を散歩したり、未知の料理を食したり、ヘスティアに連れられて冒険者登録なるものをしに行ったり。思いの外異世界生活を満喫していた。しかし、いまいち慣れないものがひとつ。

 ヘスティアの猛アピールである。

 

 

「ジョースケ君! ちゃんと顔洗って歯磨いて髪型キメたのかい!」

 

 

「うわーッ! 過保護すぎだろ! こっち来んなぁーっ!」

 

 

 歯ブラシ、タオル、櫛を持ったヘスティアが仗助を追い回す。決してヘスティア本人には悪気は無い(と思われる)が、仗助からすればいい迷惑である。

 

 

「『クレイジー・ダイヤモンド』! 神サマを抑えろ!」

 

 

 仗助の背後から幽波紋(スタンド)『クレイジー・ダイヤモンド』が現れ、ヘスティアを捕縛、拘束をする。

 

 

「ぬわあーっ! 離すんだ、ジョースケ君ーっ!」

 

 

 不思議なことに、この世界の人々は皆スタンドが見えるらしい。

 そのことを初めて知った時、仗助は『この世界のヤツら全員スタンド使いかよっ!?!?』と酷く驚いたものだ。

 

 

「ったく、毎朝毎朝飽きもせずよくやるなぁ、神サマよォ……」

 

 

「ぐぬぬ……ボクの『甘えさせて籠絡しちゃうぞ大作戦』がぁ……」

 

 

「はぁ……あれじゃ甘えたくなるよりも怖くて逃げたくなるわ」

 

 

 そう言っている間に支度を終え、仗助は入口の扉を開ける。

 

 

「夕飯前には戻るから、それまで大人しくしてろよ」

 

 

 それだけを言い残して、仗助は部屋を出ていった。

 それと同時に、クレイジー・ダイヤモンドも消失した。

 

 

「ボクは諦めないからなーっ! ジョースケくぅぅぅんッッ!!」

 

 

 閉じられた扉に向かってヘスティアの叫びがぶつけられた。

 

 

 ・

 ・

 

 

 仗助はある所へと向かっていた。

 そう、『ダンジョン』だ。モンスターを倒せば魔石や素材をドロップし、それを冒険者ギルドに持っていけば換金できる。いわゆる小遣い稼ぎができるのだ。

 

 

「っしゃ、行くか!」

 

 

 そう言って意気揚々とダンジョンへと入り込もうとした瞬間────仗助の頭に鈍痛が走った。

 

 

「『行くか!』じゃないでしょ。まずは冒険者ギルド(うち)に来て手続きしなくちゃダメじゃない」

 

 

「げっ、エイナさん!? どうしてここに居るんスか!?」

 

 

「あなたがまた無断でダンジョンに潜ることを見越してここで待機してたのよ。全く、何度言っても懲りないんだから……」

 

 

 この呆れ顔でため息を吐く女性は冒険者ギルドの職員、エイナだ。綺麗な顔立ちにメガネをしていて、その長く尖った耳が特徴的なハーフエルフ? というものらしい。

 

 

「そんなこと言って〜、ホントはおれに会いたかったんじゃないんすか〜???」

 

 

「ッ!!」

 

 

 仗助が揶揄うように言うと、たちまちエイナの顔はリンゴのように真っ赤に染まった。

 

 

「ジョースケ君っ!!!」

 

 

「イデデデデ! 耳、耳が取れちまうーっ!」

 

 

 未だに顔が赤いエイナは仗助の耳を引っ張ってギルドの方へと連れていった……。

 その際、周りの冒険者や職員からは『またやってるよ』と呆れの眼差しを頂戴したという。

 

 

 

 

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