私は確かに聞いた。「
何事もなく数日が過ぎた。偵察に出る部隊が居なかったのだろう。救援要請一つ入らなくなった。
「そういえば指揮官、昨日はお楽しみだったんですね。」
「……は?」
「AK-12さんから聞きましたよー。おふざけしてたら古参に先を越されたーって。整備しながら泣きついてきました。」
「えぇ……。」
明らかに指揮官が困惑している。私の証言で。でもこれは事実。聞かされた側の身にもなってほしい。面白かったけれど、やっぱりちょっとかわいそうでもあった。背後には気を付けて、指揮官。多分刺してくることはないと思うけれど、一応、ね。
「AK-12さんの側に行かれては?朴念仁指揮官。」
「朴念仁……。」
明確に指揮官の表情が「(´・ω・`)」になった。
「ああ、指揮官に関して朴念仁と発言したのはMG42さんの方ですので。私は悪くありません。」
「そっかぁ……。」
指揮官の表情が「(´・ω・`)」から戻らない。面白い指揮官。
「補給が終わったぞ。」
「確認しますね。」
エンジン、自動装填装置、FCS、IFF……何れも問題なさそうで安心しました。整備の腕はいいんですがね……もっとこう、女性の扱いと言うものを学んでください、指揮官。
あとで知ったことではあったけれど、AK-12さん曰くその日、指揮官の表情が「(´・ω・`)」から変わることはなかったらしい。面白い。
「よくそれで見えますよね?」
「無駄な計算を減らすにはこれが一番。」
「その割には指揮官の顔を見るときは目をひr……。」
「それ以上はダメ。」
「ちぇっ……。」
「楽しそうでしゅねぇ……。」
「これはこれは……MG42さん。」
「いつからそこに?」
「よくそれで見えましゅよねのあたりからでしゅよ。」
ほぼ全てじゃないですかヤダー。
「まあ、指揮官様のことを見れる見れないは、あたしには関係ない話でしゅね。」
「正妻の余裕ってやつかしら?」
「かくいうAK-12は指揮官様にどう思われてるか気にならないのでしゅか?」
「……。」
「まあ、詳しくは当の本人に聞いてくだしゃい。」
車体側面のシュルツェンを3回ノック。バンバンバン。パカッと砲塔の整備ハッチが。
「呼んだ?」
「噂をしゅれば……指揮官様、おはようございましゅ。」
「し、指揮官……!こ、これは……。」
「あーうん、全部アトラスの中で聞いてたよ。うん。」
「Sorry…….」
謝っておこう。居ないとは言わなかったからね。
「計ったなアトラス……!」
「まあまあ、そう怒らずに、ね?」
「ほら、指揮官様もそうおっしゃってましゅし。」
「それで、AK-12、私にどう思われてるのか気になってるのかい?」
「ええ、そうよ。」
「いつも信頼してるし、助かるよ。整備の腕も良いし。射撃の腕も高いから弾薬の消費が抑えられてコスト面でも助かってるよ。」
何かMG42さんの指揮官に対する目線がかなり変わった気がする……指揮官、それくらいにしておいたほうが賢明かと……。MG42さんが弾薬をかなり使う戦術人形なのは否定しませんけど、さすがに本人の前でそれを言及するのは殺されても文句は言えないかと……。
「指揮官様、あたしのことはどうなんでしゅ?」
明確に怒りを含んだ声。明らかに殺意を隠しきれてない。
あぁ……終わったな……。
「うん?愛してるよ?」
MG42さんの表情があれ?途端に明るく……もしかしてチョロい?
~~~~
深夜。およそ25:30。格納庫(と書いて宿舎と読む)の戸を静かに開ける音。
「深夜に失礼するよ。アトラス、寝てるか?」
「……指揮官?」
「まだ寝てなかったか。」
「どうしたんです?夜遅くに。」
「いや、ちょっと気になったことがあってな。」
「はぁ……。」
「ちょっとだけ失礼するよ。」
「どうぞー。」
砲塔の整備ハッチを開いて入る指揮官。
「お。あったあった。やっぱりここだったか。」
「何かあったんです?」
「いや、な。MG42が忘れ物をしてな。」
車内カメラオン。照明オン。
「助かるよ。砲塔内は暗くて見えにくいんでな。」
「これ、見えるか?」
「……布?マット?」
「MG42が忘れていった交換用銃身を置くマットだ。」
「あー。」
今日の砲撃演習のときの……。
「自動装填装置が故障!」
「了解!工兵を向かわせる!」
「MG42、失礼しましゅ!」
手際がとても良くて、あっという間に入って出ていったけれど……そんなおっちょこちょいな一面が……。
「まあ……がさつでやること為すこと粗雑な一面を垣間見てしまうこともあるけれど、しっかりとやるべきことはこなす、いい人形だと思うよ。」
「本人の前でそんなこと言っちゃ駄目ですよ?」
刺されちゃいますよ。もしくは背後から撃たれるか。
「気をつけよう。」
「ええ。」
指揮官が出ていった5分後にMG42さんが寝ぼけて格納庫に入ってきて指揮官が触ったもの全てを歩いたルートをなぞって嗅ぎ回って帰っていったのは特筆事項とするべきだろうか?なぜわかるんだろうか……。
翌日。今は11:00で市街地戦のVR訓練中。
「突入!」
「Go!Go!Go!」
「邪魔です!」
街道上のバリケードを砲撃で破壊。建物に立て籠もったHMGも
「……AK-12、背中は任せた。」
「あら、MG42じゃなくていいの?」
「彼女はアトラスの随伴のほうが向いているからな。」
「指揮官様、AK-12とお散歩は楽しいでしゅか?」
「散歩の割には中々ハードなんだけど……!?」
「冗談でしゅよ。早めに戻ってきてくだしゃいね、指揮官様。」
「りょーかい。12、走るぞ。」
「スモークを炊くわ。」
マップに白い区画。煙幕がこの区画に充満していることが解る。
「……!指揮官!」
「何だ……!あの四足歩行兵器!」
つい先日、トムスク-7で目撃した四足歩行兵器を参考にして再現された兵器がVR訓練のメニューにあったので……つい……。
「てったーい!撤退!」
「走れ!走れ!走れ!」
「殿は私が務める!アトラス、二人を乗せて反転、最大戦速!」
「指揮官は……!」
「時間を稼ぐ、いけ!」
車体側面後部シュルツェンの梯子に二人がしがみついたのを確認、180°右旋回、最大戦速。
「アトラス、100m走ったら180°右旋回。これは命令よ、アトラス。」
「え……。」
「AK-12、援護しましゅね。」
「助かる。」
「本気ですか……?」
「「指揮官(様)を見捨てられると?」」
息ぴったりですね……流石、指揮官Love勢(休憩中に見つけた言葉。ゲームが由来らしい?)……。
「3……2……1……ターンします。」
「撃ちます!」
まずはヘイトを稼ぐために支援砲撃。脚部に命中。
「何をやっているアトラス!逃げろと言っただろ!」
「それに関しては私から。」
「AK-12!」
「12と呼んで頂戴?」
「12……。」
「指揮官を捕虜に取られる、もしくは喪失するのは非常に非常に困るのよ。ねぇ、MG42?」
「まったくでしゅよ。指揮官様はもっと自分の存在を重要視してくだしゃい。」
MG42さんが静かに徹甲弾ベルトを装填するのが見えたし、AK-12さんも徹甲弾を装填している。
「撃ったら反撃が来る。ミサイルは私が墜とす。MG42は武装を。」
「了解でしゅ!」
「アトラスは……危険そうなら撃って!」
「了解。」
二人の連携攻撃により、四足歩行兵器は逃走。指揮官を回収して無事、撤収に成功した。
VR訓練から帰ってからというものの、指揮官は暫くMG42さんとAK-12さんにしがみつかれて動けなくなっていた。左腕に機関銃、右腕にアサルトライフルと、どこかの女子高生も真っ青な組み合わせに笑ってしまった。(まあ、実銃ではなく……戦術人形だったから重かっただろうなとは思いつつ。)
「二人に何か言ってくれないか?二人にしがみつかれてしまっては動けなくてね。」
苦笑いで助けを求める指揮官は少しまぶしく見えた。自分にも肉体が、戦術人形でもいいからあれば、あの二人のように指揮官に触れただろうか。
『肉体が欲しいか、お嬢さん?』
どこからか声が聞こえた、気がした。
人物紹介 No.2
MG42
指揮官の初恋。AK-12の良き友人。
原作「ドールズフロントライン」及び「少女前線」に登場するMG42に準ずる点が多いが、正確には彼女はMG42ではなくMG42Vである。諸事情によってMG42を名乗っているし、本人もMG42だと思っている……知っているのは射撃データの改竄を知る指揮官と、これを読んでいる貴方くらい。でも指揮官もMG42Vとは言わない。だから、時が来るまでMG42Vと呼んではダメですよ?
R-18編( https://syosetu.org/novel/316817/1.html )ではヤンデレ(もしくはストーカー)の影を覗かせた彼女だが、この基地にMG34は居ない。指揮官にだけ愛情の矛先が向くようになっていたが故と思われる。
指揮官の事を朴念仁と表現したのは昔から一緒にお風呂に入ったりもしたくせに一向に襲ってくれなかったから。誰かに奪われる前に自分の物にしてしまおうというメンタルはどちらも同じだった。どちらもヘタレだったが。
追記
戦術人形たちからのコメント
指揮官に愛してると言われるとチョロインになる、初心で幸せな奴。末永く爆発しろこの旧式MG(AK-12談)。
VR訓練でAK-12を12と呼んでから、42と呼ばないと反応してくれなくなった(指揮官談)……(´・ω・`)
関連:MG42V及びMG45