自分を上条当麻の彼女だと思い込んでる精神異常者と、記憶喪失故にそれを回避できない不幸な少年 作:名も無き二次創作家
学生寮の一室のベッドにグデりと腰かけて、冷房を浴びながら舐める安物のアイスキャンディーは、高級アイスとはまた違う“良さ”がある。
夏の暑さがそう思わせるのか、薄い財布がそう思わせるのか。
────あるいは“待ち人”の存在がそうさせるのか。
私は今日、第七学区のとある高校に転校した。
ようやくだ。
待ちわびたこの日がやってきたのだ。
今までは彼が恥ずかしがって表には出せず苦節約3年、今日からようやく私が彼の彼女だと公言できる。
「とうまが悪いんだよ!」
「はいはい、からかって申し訳ございませんでした────て、涼しい。まさか冷房つけっぱ!?」
お、帰ってきたか……ん?
女の声???
「お帰り当麻。ところで何その子。部屋に連れ込んで……まさかまた浮気?」
「どうえ!? ちょま、え、ちょっと、(俺んちになんか薄着の女の子がいる! え、泥棒? にしては堂々としすぎだし俺のことを知っている感じだ。知り合い? 俺とどういう関係? 兎に角俺が記憶喪失だってバレないようにしなきゃ。)色々言いたいことはあるけどとりあえずまずは服を着てください!」
「服? 着てるじゃない。ブラキャミソールとパンツ」
「下着オンリーは『服を着ている』とは言わねーよ」
「彼女がいるのに女の子を連れ込むのは立派に『浮気』と言うけどね」
「彼女!? あー、彼女ねはいはいはい……マジで!? あ、いやこれそういうんじゃないから。保護? みたいな」
保護って、犬猫じゃないんだから。
どこで引っ掛けてきたのやら、彼氏の本日お持ち帰りした女の子は中学、いや下手したら小学生くらいの背丈の寸胴少女? 幼女? だった。
これじゃあ当麻はロリコン性犯罪者だ。
「ムカッ。今とても失礼な視線を感じたんだよ。黙って聞いていればあなたこそ何者なの。とうまのカノジョってほんとうなの?」
睨みつけてくるその目線から、私を敵視していることがわかる。
それに『彼女』という言葉を聞いたときに動揺していた。
本人が気づいているのかいないのかは知らないが、間違いなく彼女は私の当麻に惚れているなこれは。
はあ、またか。
オーケーオーケー慣れたもんですよこんな状況には。
モテる彼氏を持つと苦労するねえ。
「失礼。自己紹介がまだだったね、お嬢ちゃん。私は
「え、お、おう」
「私の名前は
私と彼女────インデックスとの間に火花が散った気がした。
やはりこいつ、当麻を狙っている。
当麻は底抜けにやさしいし、モテる。あと鈍感。だから似たようなことは何度かあったので対処法も心得ている。
こういうときはなあなあにせずに、まずはお互いの立場をはっきりさせたうえで「当麻本人は近くにいることを許しても、彼女が快く思っていない」という意思表示をキッチリ行わなければいけない。
でないと勘違いした女が私の彼氏にベタベタしてくれるからだ。
間違っても相手の女と彼女である私とが同格などと思われることなどあってはならず、必ず『仕方がないからここにいるのを許可されているだけの身分』だということをわからせなければならない。
「当麻さん、当麻さん。これまた
「うぐ……怒った時に敬語になるの怖い」
「人助けはとてもいいことです。流石私の自慢の彼氏。好きです、惚れ直しました。ですがあなたはその都度女を引っ掛けてこられる彼女の気持ちも少しは考えるべきではありませんか?」
「(ええ、俺ってそんなに鈍感サイテー男だったの!? ひとまずここは変に言い訳せずに直ぐに謝るのが正解な気がする。)すみませんでした!」
「ん」
食べ終えたアイスの棒を右手に持ったまま、ベッドから立ち上がって当麻の眼前に移動して
「ん!?」
真っ赤になってしまった当麻と唇を合わせたまま、インデックスを横目に見る。
真っ赤になって震えている。
お子様には刺激が強かったかもしれない。
ここで舌を入れて追い打ちをかけるのもいいけれど、そうすると当麻が怒りそうだからやめておくとしよう。
私は見せつけたいけれど、当麻はそういうの好きじゃないからね。
「まあ私と当麻はこんな感じの関係だよ。逆にインデックスちゃんは当麻とどういう関係なのかな。あと当麻の全身についてる歯形についても聞かせてもらうよ」
まさか彼女を差し置いてこの女とそういうプレイを楽しんでいたわけじゃないよな。
なんか、うん。
思ったよりも壮絶だった。
私が転校手続きで忙しかった間に、この科学の街で魔術だの十字教だのと、にわかには信じがたい。
だが、当麻が嘘を言っているようには見えない。
正確には私を巻き込まないように嘘をつこうとしていたけれど、私には彼が嘘をついているかどうかなんてオミトオシ。
それに、彼が非日常に足を踏み入れているのに日常に置いて行かれる私じゃあない。
私の居場所はあなたの後ろではなく隣なのだから。
◇◇
「それで、やつは何者だ。アレイスター」
「
「なに?」
学園都市を統べ、学園都市の隅々まで把握している統括理事長アレイスター。
それが『わからない』というのは尋常では無い。
というか、そんな人間がこの街にいるはずが無い。
アロハシャツに金髪グラサンの男、土御門は思考を回す。
上条当麻の隣の部屋に住む彼は、『どこからともなく現れて何故か突然上条当麻の彼女を名乗りだした見知らぬ女』について悩んでいた。
身元不明。
存在記録無し。
この国のどのデータを洗っても、出生記録も役所での手続き記録も通院通学記録も、果ては監視カメラの映像ですら何も出てこない。
本当に”この世に突如生えた”かのような、不自然な存在。
唐突に現れて、唐突に上条当麻の彼女を自称し、そして何故か上条当麻もそれを受け入れている。
「(なんだ……、このおかしな状況は……。いったいなにが起きている!!)」
これは『自分を上条当麻の彼女だと思い込んでいる精神異常転生者と、たまたまタイミング悪く記憶喪失になってしまったばっかりに変質者を彼女として受け入れてしまった不幸な少年』の物語。
何故こんな話を書いたのかは自分でもわからない。