魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法少女とロシアの魔法少女

 司会の白橿さんとアロンガンテさんを残し、魔法少女たちが会議室を出て行く。

 

 残るのは俺とこちらをチラチラと窺うナイトメアだけだ。

 使えない訳ではないが、1人の方が楽なのは確かだ。

 

 ……まあ、転移後はオーストラリア内の魔法少女を纏めてもらい、俺は個人で動くとしよう。

 運が良ければ俺たち以外にも結界内に入れるかもしれないし、多少負担は減るだろう。

 

 それにアクマの見立て通りなら俺とナイトメアだけとなる可能性が大だが、一応オーストラリア内に魔法少女は沢山居る。

 流石にオーストラリア全域の魔物を俺1人で相手するのは無理があるので、防衛は頑張ってもらおう。

 

 いや、出来ない事はないが、無理をしてまで俺1人で戦う必要はない。

 

 それに俺の標的は破滅主義派のメンバーだ。

 

 流石に魔女が出しゃばって来る事はないと思うが、規模を考えれば幹部クラスは必ず来るはずだ。

 

「さて、イニーの考えは何となく読めますので、ナイトメアにやってもらいたい事を説明します。先ずはオーストラリア内の魔法局で情報の共有をお願いします。その後は市民の避難と防衛戦をお願いします。結界の破壊が出来た、又は他に侵入出来る魔法少女が居た場合は追って指示を出す流れになります。質問はありますか?」

「イニーはどう行動するのですか?」

「個人的には一緒に行動してほしいのですが、イニーにはイニーの目的があるのを知っているので、全て任せる予定です」

 

 アロンガンテさんと白橿さんが此方を見るので頷いておく。

 

「今は魔物だけですが、指定時間になった場合破滅主義派のメンバーが現れると思われるので、それらの対処に当ろうと思います。それまでは強力な魔物を優先して倒す感じです」

「つまりは遊撃ね。今オーストラリアに居る魔法少女でランカーは居ないから、S級やSS級はイニー任せになると思うけど、それで良いのよね?」

「ええ。構いません。ですが、全部は無理なので、そこはナイトメアに頑張ってもらうしかないですね」

 

 流石に今回は被害無しで勝つのは無理だろう。

 近くに居るならともかく、大陸となると流石に手が足りない。

 上空から見渡せる場所なら、魔力にものを言わせればなんとかなるが、そうすれば狙いが甘くなってしまう。

 

 狙えない場所は他の魔法少女にお願いするしかない。

 

 まあ、知らない人間が死んだとしても俺の知った事ではない。

 

「そうですね。ランキングも一番上なのはナイトメアになりますので、宜しくお願いします」

「ま、任せなさい! しっかりと役目を果たしてみせるわ!」

「イニーも無理をしないようにお願いします。出来る限り早く後続を向かわせますが、確約は出来ません」

「分かりました」

 

(集められる情報は集めといてくれ)

 

『了解』

 

「最後に、ナイトメアには渡す物があるので、出撃は10分ほど待ってください、イニーは……」

「喫茶店で待ってるので、終わったら呼んで下さい」

 

 ついて行っても良いが特に話す事もないし、出撃前に一杯珈琲を飲んでおきたい。

 それとトイレも行っておこう。

 

「分かりました。それでは後程呼ぶのでそれまで休んでいて下さい」

 

 何か言いたそうにしているナイトメアを放置して、再び喫茶店に向かう。

 

 先程会議室に居た魔法少女か数名居るが、話し掛けてこない事を祈ろう。

 

 この拠点に居るって事は最低限アロンガンテさんが信用している人間ってことだ。

 馬鹿な真似をすることはないだろう。

 

「いらっしゃいませー。空いてる席にどうぞー」

 

 なるべく端の空いてる席は……あそこでいいや。

 

「ご注文は妖精のデラックス気まぐれパフェで宜しいでしょうか?」

「日替わり珈琲をお願いします」

「承知しましたー」

 

 なんだよ妖精のデラックス気まぐれパフェって。

 さっき来た時そんなものメニューに載ってなかったぞ……やっぱりメニューに載ってないな。

 

『真面目系じゃない妖精はほっとくのが一番だよ』

 

(そうみたいだな。パフェは少し気になるが、忘れることにする)

 

 ファンタジー世界の妖精はいたずらが好きって書かれてるものが多いし、そんなものなのだろう。

 真面目なのも居るが、そちらの方が少数だと思う。

 

 少し待つと珈琲が届けられ、後は呼び出しが掛かるまで待つ……だけにはならないよな。

 

 一口珈琲を飲んだ所で、とある人物が向かいの席に座った。

 

 銀色の長髪に、切れ長の目。

 背は180位あるので、かなり高い部類に入るだろう。

 威厳のあるその姿は、少々気後れするものがある。

 

(ストラーフさんだったかな?)

 

『そうだよ。ロシアの1位で、分かりやすい強さで言えば、日本の1位2位7位以外は余裕で勝てる強さだね』

 

 さらっとブレードさんが除外されてるが、あの人は何かと規格外らしい。

 

「何か御用でしょうか?」

「一応礼をしておこうと思ってね。隠してるみたいだから詳しく聞かないけど、ナイトメアを助けてくれたんでしょう?」

「さて、私にはなんのことやら。それより、本題はそれですか?」

 

 流石にあのナイトメアも話していないと信じている。

 だが、それはそれでこれはこれだ。

 

 他国のランカーに絡まれるのは面倒なだけだ。

 

「あなたの事は一応調べさせてもらったけど、大体の事はタラゴンから聞いているわ。あなたとは取引を……いいえ、あなたにお願いがあるの」

 

 一体タラゴンさんはどれだけ話を広めているんだ?

 それは置いといて、ストラーフさんのお願いについてはおおよそ見当はついている。

 

 まあ会議室でのやり取りを見れば、誰でも分かるか。

 

「ナイトメアさんについてですか?」

「そうよ。あの子が生きて帰ってこられるように守ってくれないかしら?」

 

 守ってか……。

 気持ちは分かるが、俺にとってのメリットは全くない。

 それどころか、下手に気を逸らされる分デメリットでしかない。

 

 それに、確約することは不可能だ。

 

 隣に居るならともかく、ナイトメアとは離れ離れになる。

 オーストラリアなんて糞広い場所を俺1人でカバーしようとは思わない。

 

「勿論無理にとは言わないわ。お願いを聞いてくれるならそれ相応の礼をするつもりよ」

「礼……ですか」

「そうね。ロシアで開発中の魔導銃なんてどうかしら? 殺傷能力はないけど、拘束能力は折り紙付きよ。……ランカーとかには意味ないけど」

 

 最後はボソボソと言っていたが、しっかりと聞こえてるからな?

 

(アクマ)

 

『はいはい。魔導銃の話は本当だよ。魔法少女の制圧用に開発しているみたいだけど、費用と実用性の観点から試作品止まりだね。相手の魔力量によるけど、拘束自体はちゃんと出来るよ。当たれば』

 

 魔法少女の肉体能力なら下手な銃弾位避けられるからな。

 俺も第二形態なら剣で両断することも出来る。

 

 しかし、魔導銃という響きは心引かれるものがある。

 それと、確かに遠距離では当てられないかもしれないが、近距離や騙し討ちでなら当てられるかもしれない。

 

 実用性はあまりないが、いざという時の手札にはなるかもな。

 

「そうですか。因みにどんな銃ですか?」

「単発式のシングルアクションよ。弾が魔石を加工した特殊なものだから、リロードの手間があるわね。因みに中折れタイプよ。予定では渡せるのは10発ね。勿論どう使おうが構わないわ」

 

 悪くないが、戦闘で使うには少々不便だな。

 いざという時の護身用が関の山か?

 

 殺すことは得意だが、殺さないように倒すのは面倒だし、殺傷能力はがないなら使い道もありそうだが……。

 

「一応だけど、魔物にも効果があると検証結果が出てるけど、当てても動きを鈍らせるだけだし、SS級にはほとんど無意味だから、使うのはおススメしないわ」

「それで良いですよ。ですが、確約は出来ませんよ? 私が死ぬ可能性だってあるのですから」

 

 毎度の事ながら、死ぬ気はないが死にかけてばっかりなのだ。

 戦いに絶対などありえない。

 

「分かってるわ。別にあの子……ナイトメアが死んだとしてイニーを責める気はないわ。ただ、なるべく長く生きて欲しいとは願ってるの」

 

 親心か、はたまた姉心か。

 

「そうですか。なるべく善処させていただきます。ですが……」

 

 端末が鳴り、時間が来たことを知らせる。

 

 後少しで言いきれたのに、間の悪いことだ。

 

 少し気恥ずかしいので、立ち上がってストラーフさんに背を向ける。

 

「そちらも結界を壊せるよう頑張って下さい。そうしないと、全て私が終わらせてしまいますよ?」

「ふっ。本当に生意気な小娘ね」

 

 振り返ることなく、第一会議室に再び向かう。

 

 どうせ魔女の結界を壊して侵入するなんて不可能だろう。

 

 アクマが言っていたように、壊せたとしても周りに被害が出ては意味がない。

 それに、魔女が結界を壊される事を想定していないとは思えない。

 

 戦えるのはオーストラリア内の魔法少女とナイトメア。

 

 そして――俺だけだろう。

 

「来ましたか。一応確認ですが、イニーには遊撃。ナイトメアは防衛という形でお願いします。こちらも最善を尽くしますが、いざという時は2人で元凶となる存在を倒してもらわなければなりません。2人の肩に国の運命が掛かっていると思って下さい」

「分かりました」

 

 会議室に入ると、アロンガンテさんが声をかけてきた。

 白橿さんはナイトメアに何か話していたが、俺が入ってくるのに気づいて話を止めた。

 

 遊撃と言うが、実質1人で頑張ってねって話だ。

 下手に誰かと動くのは足枷しかならないので、ありがたい話だ。

 

「ナイトメアも先程話しましたが、オーストラリアのランカーが誰もいないのは魔女の策略だと思われます。指揮系統は譲渡してもらってますので、命令を聞かない場合は処罰して構いません」

「分かりました」

「私からは以上ですが、何か質問はありますか?」

 

 質問……一応しておくか。

 

「仮定ですが、もしもの場合は離脱してもよろしいですか?」

「っ! それって」

「許可します。状況が状況ですが、無理だと思ったなら引いて下さい。最終手段は用意してあるので、心配無用です」

 

 助けられないなら死ねなんて言うはずないが、確認しておくのは大事だ。

 これで憂いなく戦える。

 

 しかし、最終手段か……一体何をするか知らないが、まともな手段じゃなさそうだ。

 

「それではナイトメアは準備をお願いします」

 

 不満気な表情のナイトメアだが、文句を言わずに俺の影の中に沈んでいく。

 

「それでは健闘を祈ります。生きて帰って来て下さい」

 

 こういう真面目なやり取りはあまり馴れないな。

 俺にはアクマ程度の適当さが良いな。

 

「善処します」

 

(頼んだ)

 

『了解。少しは気を引き締めなよ?』

 

(善処します)

 

 適当にアクマに返事をすると浮遊感が襲い、拠点から転移した。

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