魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~ 作:ココア@レネ
どうしてマリンが此処に居るのかは分からないが、先ずは殲滅が先だ。
「アクマ」
「うん」
アクマが同化すると同時に愚者の能力を解放する。
『えっ? これって……えっ?』
アクマが困惑しているが、エルメスのせいだろう。
正直俺も困惑しているがさっさとやることをやらねば。
適当に魔法を唱え、辺り一面に氷の花を咲かせて魔物を殲滅して、話す時間を作る。
ついでにマリンの怪我も治しておく。
結構ボロボロだが、生きているならなんとかなる。
「イニー」
『マリンはイニーが倒れている間守ってくれてたんだ』
俺が聞く前にアクマが答えてくれた。
まあ時間がない時間がないと言いながら、結構話していたから、現実でもそこそこ時間が経っていたのだろう。
今のオーストラリアで数分も倒れていれば魔物に襲われるからな。
「助けてもらったようですね」
「いいのよ。私も昔助けてもらったんですもの」
「そうですか。お礼は後程。今は成すべき事があるので、マリンには……」
結界の外に送り返すと言おうと思ったが、その目には私も戦うと言外に語っていた。
「知り合いの魔法少女の所に送るので、そちらをお願いします。無理をしないように」
「イニーに言われたくはないけど、分かったわ」
失礼な奴といつもなら思うが、今回は平に謝る事しか出来ない。
エルメスとソラが居なければ、俺は間違いなく死んでいた。
「それでは送ります。それと、魔法少女の名前はナイトメアです。私の名前を出せば問題ないと思います」
マリンが一瞬だけキョトンとした表情を浮かべるが、直ぐに真剣な表情に戻る。
「分かったけど、後で何があったのかちゃんと教えてよね」
「教えられる事は教えてあげますよ。頑張って下さい」
(アクマ、頼んだ)
『……あっ、うん。了解』
マリンの肩に手を置き、アクマに転移してもらう。
これで邪魔者……と言うのは流石に失礼だが、1人になる事が出来た。
(色々と話したいこともあると思うが、今は魔物を倒そう)
『分かったけど、後でちゃんと話してよ』
(ああ)
時間をかける事は出来ない。
いや、被害が出るなら出るで構わないのだが、一応アロンガンテさんに頼まれている手前、ちゃんと助けよう。
普通に考えて、オーストラリア中に現れた
俺がアルカナの力を使える時間は5分だけ。
イレジュラーを瞬殺するのは流石の俺にも難しい。
5分で全てを倒せと言うのは流石に酷だろう。
しかし、ソラから栄養を奪い取り完全復活した今なら多少無理も出来る気がする。
愚者の能力は”可能性”。
恋人の能力は”形”。
悪魔の能力は”魂”。
十全に使いこなすのは無理だが、何とも狙ったような構成だ。
全てを解放など流石に出来ないが、今ならAプランを使う事が、出来る気がする。
(アクマ、Aプランを実行する)
『正気なの? 今の状態だって前代未聞なのに、そんな事をして大丈夫なの?』
(問題ない気がするんだ。それに今はかなり調子が良い。これ以上被害が出る前にやるぞ)
『本当にハルナは頑固だね……。何故だか分からないけど、恋人の能力は最初からハルナに最適化されてるし、どれでもいけるよ』
あいつは昔から俺に寄生してたからな。
封印もされていたが、色々と手を回していたのだろう。
俺の精神状態にも影響が出ていたとソラが言っていたしな。
「ナンバー0愚者。ナンバー15悪魔。
内臓が浮き上がる様な感覚を感じ、白いローブが瞬く間に変わっていく。
所々穴が空いた白と黒が交じったロングスカートに、臍辺りが出る様に広がった服。
黄色いマフラーが首に巻き付き、風に靡く。
出来れば服装は白いローブのままが良いのだが、なんで変わるのだろうか?
しかも愚者や悪魔は勿論、今回も少しだけ肌色が多い服装だ。
正直恥ずかしいが、戦うためには仕方がないと割り切るしかない。
愚者の時に現れた玉が2つから4つに増え、悪魔の時に使っていた鎌は少しだけ禍々しさが減ったが、相変わらず大きい。
痛みや違和感は感じない。
そう長く戦えないのは変わらないが、全体火力がアップしているので、魔物を倒す時間が短縮できる。
『魔力の供給が2本……魔力量もあり得ない位上がってる。なのに身体への負荷は少ないし、負荷以外の副作用もない……ハルナ君は一体…………』
(今は気にするな。それよりも、またマップを頼む。表示はイレギュラーのみで範囲は全部だ)
『あっ、うん』
これでよし。今なら自力で転移出来るし、都市に近い奴から倒そう。
「転移」
さて1体目は植物型か。
大量の眷属を使役して戦う魔物だったかな。
ビルには蔦が絡み付き、逃げ惑う人々の声が聞こえる。
魔法少女たちも戦っているが、負けるのも時間の問題だろう。
とりあえず魔法の感覚を確かめてみるか。
「灰炎」
都市に接近してくる魔物を炎の波で燃やし尽くす。
ふむ。愚者単体の頃より大幅に威力が上がっているな。
しかもこの魔法は、掠ってさえくれれば悪魔の能力で魔力を奪ってくれる。
C級程度なら直撃しなくても倒す事が出来るな。
「あなたは誰ですか!」
「助っ人のイニーフリューリングです。諸事情で遅れましたが、後は私が全て倒しますので、一般人の救助をお願いします」
「全てって……」
これだけの魔物を前にして一致団結して戦えているのは素晴らしい事だが、既に許容できない程の被害も出ているみたいだ。
「
都市全体に回復魔法の雨を降らし、生きている全ての生き物を回復し、魔法少女たちに魔力のお裾分けをする。
ついでに魔物の動きを抑制するので、街の中はこいつ等に任せても大丈夫だろう。
「これで当面は大丈夫でしょう。それでは失礼します」
さっさと倒して次に向かわなければならない。
一番酷いのは此処だが、他も時間の問題だ。
ボソッと何かを言っているのが聞こえたが、気にする程でもないだろう。
そう言えば、こいつは新魔大戦に出ていた新人か。
よく生き残れたものだな。
空を飛んで魔物の本体の近くまで飛んで行く。
俺が眷属を倒したのが分かっているのか、全ての魔物が俺に向かってくる。
4つの玉が4属性の光に輝き、様々な魔法を放つ。
魔物は俺に近づく事すら出来ず塵に変わっていき、その間に魔物の本体を射程圏内に納める。
魔法で倒すのがセオリーかも知れないが、植物系の魔物は生命力が強い。
なので、今回は対魔力特化の悪魔の能力が役に立つ。
ただ燃やすだけでは倒すのに時間が掛かるので、魔物の魔力を根こそぎ奪ってしまうのだ。
背負っている鎌を両手で持ち、上段に構える。
魔力を鎌に通す事により、空高く伸びて大きな刃を形成する。
数百メートル程あるので防衛している魔法少女たちにも見えているだろうが、相手が大きいので仕方ないのだ。
「滅伐」
鎌を薙ぎ払い、魔物を両断する。
うねうねと触手の様に蔦が向かってくるが、全て塵に変わっていき、魔物は姿を消した。
『街を襲っていた蔦は消えたけど、魔物はまだ残っているみたいだね。少し厳しいかもしれないけど、どうする?』
(そこまで面倒は見る気はない。それに、まだイレギュラーが居るからな。先ずはそれからだ)
再び転移すると、今度は浮遊要塞型の魔物が遠目に見える。
M・D・Wと違い使役する魔物は機械系であり、倒した際に爆発する事もあるが、一応常識の範囲での爆発をする。
見た目的にM・D・Wは科学で再現できそうだが、こいつは完全にSFの世界に出てきそうな見た目だ。
名前はアクマに聞けば答えてくれるだろうが、別に知らなくても良いだろう。
植物系の魔物が使役する魔物より数は少ないが、爆発物――ミサイル砲弾を撃ってくるので、現実ではかなり厄介だ。
既にあちこちで火の手が上がっているのは、この魔物のそのせいだ。
先程の街より戦っている魔法少女が少なさそうだが、魔物の使うミサイルとかは火薬ではなく魔力を爆発させているので、魔法少女にもダメージが入る。
直撃しなかったとしても爆風や飛んできた瓦礫とかでも怪我をするので、こんな街中では本当に厄介だ。
しかも魔物の殆どは空を飛んでいるので、空を飛ぶ手段の無い魔法少女には辛いだろう。
仮に何とか魔物を倒したとしても、本体を倒さなければ増える一方だ。
「
回復魔法の雨を降らせ、回復させるついでに鎮火もする。
『魔物から高魔力反応!』
浮遊要塞型の魔物から強力なレーザーが発射される。
最初からそれで全てを焼き払えばもっと被害が出せただろうに、そうしなかったのは魔法少女から魔力を奪うためだろう。
今更そんな攻撃をしたところで、もう遅いのだ。
玉から魔法陣を展開し、レーザーを全て受け止める。
単純な火力は俺の天撃以上神撃未満位だが、ここら一帯を更地に変えるどころか、大穴を空けるには十分だろう。
吸収した魔力と自分の魔力を玉に送り、4つの魔法陣を展開し、射角が上を向くようにする。
相手が浮いているから良いが、平行にして撃ったり、地上に向けて撃つとシャレにならない結果になるので注意しないといけない。
「マグナ・レイ」
4本のレーザーが浮遊要塞型の魔物を貫き、2本ずつ左右に広がって、他の魔物を次々に塵に変えていく。
勿論他の魔法少女に当てない様に注意するのは怠らない。
これで一番厄介な魔物を倒せたので、街に群がってくる魔物を倒してから次に向かう。
(ナイトメアとマリンの方はどんな感じだ?)
『今の所は大丈夫かな。2人で協力してSS級の魔物と戦ってるよ。勝つのは難しそうだけど、耐える事は出来そう』
流石に勝つのは無理か。
マリンも、ナイトメアも武器主体の魔法少女だからな。
マスティディザイアみたいに単体で強い魔物とはそれなりに戦えるだろうが、今回出現している眷属を多数召喚する魔物とは相性が悪い。
しかも防衛もしなければならないのだから、いつもとは勝手が違う。
俺だって出来ればあちこち爆発させて倒したいが、やったら最後、大量のクレーターが出来上がってしまう。
レーザーで地上を薙ぎ払ったりするのも魅力的だが、埋めるのが大変な、崖が出来上がるだろう。
(大丈夫そうなら最後に回そう。次へ行くぞ)
『うん。一応聞いとくけど、身体は大丈夫なんだよね?』
(今は問題ない。それどころかまだ調子が良い)
戦い始めた頃よりは多少違和感を感じ始めたが、まだ戦う事は可能だ。
この戦いが終わったら、沢山飯を食べるようにしないとな。
いざという時に奥の手が使えるのはありがたい。
回復魔法を撒いて敵を殲滅するのを繰り返し、最後の1匹となる。
仕方ないとはいえ、やり過ぎた感は否めない。
今日だけでイレギュラーを数十体倒し、それ以下は数えるのが面倒くさい程だ。
記憶が正しければ、始まりの魔物以来の大事件だろう。
他にも世界の危機は幾度とあったが、ここまで大量の魔物が出現したのは初めてだろう。
魔法少女が事件を起こしたりもあったが、単純な死者や被害でも今回の方が多いだろう。
(概算でどれ位被害が出てそうだ?)
『一般人で数万人。魔法少女も数十人位かな。魔女とは言え、ここまで大規模な事は何回も出来ないだろうけど、先が思いやられるね』
魔法局が実質崩壊したと思ったらこの騒ぎだからな。
一応魔法少女やその関係者で済んでいた話が、国の危機となれば話がもっと大きくなるだろう。
世界で纏まって戦いましょうとなるだろうが、そう上手くいかないだろうな……。
まあいい。
とりあえず今は魔物を倒そう。
再びシドニーに転移すると、2人が巨大な龍型の魔物と戦っているのが見える。
確かにあの様子では勝つのは難しいだろうな。
俺が倒しても良いが、折角だしあの2人に頑張ってもらおう。
今の状態で難しいだろうが、援護すれば勝つ事も出来るはずだ。
「
魔法陣から雨が降り、人々と魔法少女を癒していく。
「
4つの玉が空高く昇り、四方に展開して魔法陣を描く。
そこから追尾性のある氷の槍が降り注ぎ、次々と魔物を塵へと変えていく。
市街地戦は面倒なので他の魔法少女に任せたいのだが、2人の戦いを見る為にさっさと倒している。
ついでに都市外から迫ってきているのと新たに生み出されている魔物を倒しながら見物しよう……っと、その前に援護だな。
玉を回収した後、2人の近くまで移動し、龍を結界で閉じ込めて動きを止める。
「頑張っているようですね」
「本当に……ねえ……頑張ってるわよ……」
「他は大丈夫だったの?」
ナイトメアは結構ボロボロで息も絶え絶えと言った感じだが、マリンの方は怪我らしい怪我はほとんどないが、肩で息をしている。
「おかげで、ここが最後ですよ。折角ですから、このまま2人でこいつを討伐してみませんか? 勿論援護はしますけどね」
2人怪我を回復し、4つの玉の内2つを2人の近くに移動させる。
そして、玉とパスを繋ぎ魔力を供給する。
「これは……」
「これなら戦えるでしょう? それじゃあ頑張って下さい」
結界を解除し、2人の戦いが見える所まで転移する。
今回は晨曦を始め、沢山戦えたので衝動もかなり落ち着いた。
こうやって戦いを譲る事が出来る程度には冷静になっている。
街に攻撃が来ない様に結界を張っているので、この後は戦後処理だな。
まあ、俺の場合は全部丸投げする予定なので、アロンガンテさんに頑張ってもらおう。
そんな事を考えながら、2人の戦いが終わるまで、高みの見物を続けた。