魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~ 作:ココア@レネ
俺の事を非常識と言った氷水さんだったが、ジャンヌさんが治療している時はそんな事を言わなかった。
個人的にはジャンヌさんのやり方もどうかと思うのだが、この違いは何なのだろうか?
やはりランカーとそれ以外で見られ方は変わるのだろうな……。
まあ、そんな事はおいといてやっと飯の時間となる。
ついでに眠気が酷かったのでこっそりと魔法で飛ばしておいた。
「夕食は次の魔法局支部で摂る予定となっているので、よろしくお願いします」
そんなこんなでテレポーターに戻り、次の魔法局にテレポートする。
今回は食堂ではなく、会食用と思われる部屋に案内された。
場所自体は別に構わないのだが、問題は他のところだ。
人数は4人だ。席も一応4つある。
ただ、その中の1つがどう見てもベビーシートなのだ。
まあ、テーブルがそこそこの高さなので仕方ないのだろうが、この歳でベビーシートか……。
いっその事俺だけ別室の方がマシだったろう。
アクマが笑っているが、後でお仕置きしてやるか。
なに、確かに見た目はアレだが、飯さえ食えればそれで良いのだ。
これと言って問題も起きず、夕食の時間は過ぎていった。
多少脂っこいのが辛いが、それなりに食べることができたのは良かった。
終始フルールさんがニコニコ顔で、こちらを見ていたのが少々怖かったが、手出しをしてこなくて良かった。
それから再び治療となったが、問題らしい問題も起きず、治していった。
当たり前だが、普通はミグーリアの時のような問題は起きないのだ。
増える重傷者。魔法少女の突然の危機。特殊な毒による腐敗。
1回だけならまだしも3回だからな……。
今回は気兼ねなく治すだけなので、とても楽だ。
気を抜くと碌でもない事が起こる可能性もあるが、今回は氷水さんやフルールさんが居る。
それに、回復魔法が使えるジャンヌさんも控えているのだ。
仮に襲われたとしても、M・D・W程度なら問題ないだろう。
(怪しい反応はないよな?)
『今のところはね。流石に魔法局を直接襲う事は多分ないだろうし、心配しなくても良いんじゃない?』
アクマの言う通り直接襲われることは普通に考えてないだろう。
基本的に魔法局は常に複数の魔法少女が控えているし、防衛機構もあるのだ。
襲われたとしても、魔法局が吹き飛んだり全壊したりなんてならないだろう。
だが、物事がスムーズに進んでいる時こそ、警戒を怠らない方がいい。
(念には念をだ)
ミグーリアでは4つの魔法局で治療を行ったが、中国でも同じだ。
実際の魔法局はもっと数があるが、患者を集めることによってジャンヌさんの負荷を減らしている。
問題が起こることなく、3つ目の魔法局での治療を終え、最後の場所へ移動した。
テレポーター室では出迎えがあり、二言三言話して移動となる。
「警報? それもレベル3の……すみませんが、事実確認の為少々お待ち下さい」
それは廊下を歩いてる時だった。
けたたましい警報が鳴り、赤いランプが天井から現れて回転を始めたのだ。
ほら見た事かとアクマに言ってやりたいが、先ずは何が起きたかを確認するのが先決だ。
(アクマ)
『ちょい待ってね』
「確認も大事だが、先に怪我人や病人を治してしまおう。動ける人間は多い方が良いからね」
「……分かりました」
ジャンヌさんの判断は正しくもあるが、間違ってもいる。
一番重要なのは患者よりもジャンヌさんである。
患者も大事だが、先にジャンヌさんを逃がす方が先決だろう。
それでも氷水さんはジャンヌさんに従った。
葛藤もあったと思うが、選んだのなら従うまでだ。
そんなわけで、早足で移動を始めた。
『レベル3警戒態勢発令。職員並びに魔法少女は一般人をシェルターに案内して下さい。また、ランキング50位以上の魔法少女は第一指令室にお越し下さい。繰り返します……』
避難を呼び掛ける放送が天井から流れ、危機感を煽ってくる。
「急ぎましょう。このままでは患者たちも避難が始まってしまいます」
早足から走りに変わり、急いで部屋に向かう。
部屋の前まで来ると職員らしき人が入ろうとしていたので待ったを掛けた。
「直ぐに終わるので避難については少しお持ち下さい。それと、病人の部屋の方も待って頂けるように伝えてもらえますか?」
「しかし聞いての通り警報がなってますから、そんな悠長なこと……」
あーだこーだと職員は言い始めるが時間の無駄である。
職員の事を無視してフルールさんには部屋に入ってもらい、警報で戸惑っている魔法少女やその他の人を無視して、さっさと魔法を使ってしまう。
「氷水さん。終わりましたのでもう大丈夫です」
「ありがとうございます。このまま私たちは行くので、ここはお願いします」
「えっ? ちょっと!」
氷水さんは職員に見切りをつけ、俺たちを先導するように歩き出す。
「治療ありがとうございました。融通が利かなくてすみません」
氷水さんが謝るが、こればっかりは仕方ないだろう。
普通あんなに早く終わるとは思わないからな。
「気にすることじゃないさ。それよりまだ部屋で待っていてくれれば良いが……」
『原因が分かったよー』
(何があったんだ?)
警戒レベル3がどれ程のものか分からないが結構な危機なのは鳴りやまぬサイレンで分かる。
さて、原因はなんだ?
『魔法少女がSS級の魔物に負けたみたい。ついでに、運が悪い事に控えとなる魔法少女も居なくて相当慌ててるね。住宅街に現れるのもあって大慌てって感じ』
それはまたヤバいじゃないですか……。
しかし、だからと言ってそこまで慌てる必要は無い。
今回はフルールさんが居るからな。
(フルールさんの端末に情報を流してくれ。一応ジャンヌさんにも)
『了解。ついでに此処から20キロ位離れた場所に魔物は現れるからね。後1分くらいかな?』
廊下を走っている最中にジャンヌさんとフルールさんの端末が鳴り、2人は直ぐに確認をした。
「フルール」
「ええ。行ってくるわ。そっちも頑張ってね」
「どうかしたのですか?」
2人は特に会話もせず分かり合っていたが、何も知らない氷水さんは困惑していた。
「この警報の理由が分かったのさ。ほら、走った走った」
氷水さんとジャンヌさんと別れ、フルールさんと2人きりとなる。
「それじゃあ、私たちも行こうかしら。向かうのは第一指令室で良いのかしら?」
「そうですね。直接魔物に向かっても迷惑になるでしょうから、一度声を掛けた方が良いでしょう」
「分かったわ」
第一指令室に向けてフルールさんは走り出した。
途中で出会う魔法少女や職員が怪訝な顔をするが、フルールさんの顔を確認すると驚いて道を空けてくれる。
フルールさんの専門は指定討伐種。つまり魔法少女だが、その関係か結構名が知られている。
まあ、日本で名前を知られていないのはゼアーさん位で、それ以外は結構やらかしているらしい。
フルールさんは道に迷うことなく第一指令室に着き、扉を開けた。
中にはオペレーターや職員の他に魔法少女が6人居た。
魔法少女たちは俺たちを出迎えた人。ここの局長と話しているようだ。
あちこちで命令やなんだとやり取りしているせいで結構煩いな。
「緊急という事で来たわよ~」
「おお! あなたは日本ランキング6位のフルールさん! ジャンヌさんは大丈夫なのですか?」
「一旦はね。それより、状況の説明をお願いね」
「分かりました」
司令の説明はアクマが言ってたのと同じだった。
多少細かい事も話してくれたが、死んだのが1人ではなく2人だったこと位だろう。
今住宅街で暴れている魔物は巨人型で通称ギルゴデスと呼ばれている魔物だ。
個体によって身長は変わるが、大体60メートル程ある。
召喚する眷属の数は少ないが、大きさに見合ったパワーがあるので接近戦は避けたい相手だ。
だからといって距離を取ると、口から高出力のビームを発射される。
直撃すれば文字通り蒸発してしまう威力だ。
今回は運が悪いことに、このビームによって死んでしまった。
ついでに中国のランカーは丁度出払っているので、後20分は戻ってこない。
他の国や妖精局にも救援を出しているが、最低でも5分から10分は掛かる。
ミグーリアの時もそんなことを言っていたが、今回の状況はその時より悪い。
その5分もあれば都市の1つや2つは滅んでしまうだろう。
魔物が結界から出るまで後20秒程。
あまりにも時間がない。
「そうなのね。……私がメインをやるから他が援護。それで良いかしら?」
「今は四の五の言ってる余裕もないのでお願いします。あなたたちも良いね?」
局長は6人の魔法少女に確認を取り、6人とも頷く。
「よろしい。ところで、その肩の上に居るのはどうするのですか?」
先程まで真剣だったが、今度は困惑の色が強い顔で局長はフルールさんを見る。
そうだね。今回は別に俺が居なくてもなんとかなるだろう。ジャンヌさんもそしらぬ顔で見送ったが、俺も向こうについて行くのが普通じゃないだろうか?
「気にしなくて大丈夫よ。リリーちゃんは魔物の予定位置まで跳べるのかしら?」
「可能ですね」
「それじゃあ頼んだわ。時間も無いようだから」
やれやれ。
他の人たちは何を言ってるんだと思ってそうな顔をしているが、確かに構ってる暇もない。
「良いですが、私のことは映らないようにお願いしますね」
「了解よ~。タラゴンちゃんには怒られたくないからね」
(頼んだ)
『なんか心配だけど、了解』
良いように扱われているが、フルールさんの戦いを見られるのは面白いかもな。
さて、どうなるかな?