魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法少女は爆炎姫の妹

 景色が雪の白一色になり、反射する太陽の光で、目が辛い。

 フードで上からの光は防げても、下からはどうしようもないからな。

 

 軽く周りを見渡すと、見覚えのある宮殿があった。

 

「さてナイトメア。出現予定の魔物の事はちゃんと覚えてるかしら?」

「要塞型のオールドベースでしょ? 装甲が硬いから、内部から破壊するのが定石なんでしょ?」

「そうね。中には真っ二つにするのや、直接爆発させるのもいるけど、通常はそうね?」

 

(解説のアクマさんお願いします)

 

『はいはい。オールドベースは何度か呼び名が変わっているけど、名前の通り、かなり初期の段階で現れた魔物だよ。浮遊要塞型で分厚い装甲に、多種類の眷属。本体も色々と迎撃機能を持っているから、とにかく面倒だね』

 

 内部からの破壊とは面倒だな。

 特に俺なんかだと、内部で奇襲されたら簡単にやられてしまう恐れがある。

 ランカークラスなら問題ないだろうが、嫌な魔物だ。

 

 そして、真っ二つにしたのはブレードさんで、爆発させたのはタラゴンさんだろう。

 外部から壊せるなら、その方が楽だからな。

 

『大きさは多少バラつきがあるけど、大体1キロ位かな。とりあえず中に侵入しないなら大丈夫だと思うよ』

 

 解放すれば俺も簡単に倒せるだろうが、流石にそれは悪いからな。

 今回はこの2人の付き添いだし、露払いが妥当だろう。

 

「イニーはオールドベースがどんな魔物か知っている?」

「最低限は。かなりの大型で、外からの攻撃はほとんど効かず、内部の動力機関を壊すことで討伐をするんですよね?」

「大丈夫そうね。私とナイトメアで中に侵入するから、外で露払いをお願いしてもいいかしら?」

 

 そう来るよな。

 俺としても中に侵入するのは嫌だし、素直に受けておこう。

 

「分かりました」

「頼んだわ。それと、映像は撮らないように言ってあるから、何をしてもいいわ」

 

 それはありがたいが、今回は大それた事をする気はないので大丈夫だろう。

 ストレス発散程度に魔物を倒すだけだ。

 

「なんなら、私と代わってくれても良いのよ?」

「馬鹿言わないの。こっちの魔物なんだから、討伐はこっちで行うのよ」

 

 ナイトメアさんは、ストラーフさんに頭を叩かれて涙目になる。

 

 若干不安だが、ストラーフさんが居れば大丈夫だろう。

 戦いを見た事はないが、ランキング1位の人間が弱いはずないからな。

 

 漫才を見ている内に結界が展開され、SFチックな風景となる。

 結界の風景についてツッコムのは野暮だが、こんなのもあるのか……。

 

 少しすると地響きと共に影が差し、大きな要塞が姿を現す。

 形としては船と言った感じだが、船は船でも宇宙船といった感じだ。

 何故か脚……支え的なものが地面に刺さっているが、地響きはあれのせいか。

 

 オーストラリアにもこれ位サイズの魔物が現れていたが、もしも魔法少女がいない状態でSS魔物が現れれば、瞬く間に地球は蹂躙されてしまうだろう。

 

『個体の中でも結構強いタイプだね。本体の迎撃機能は実弾も魔法ありで、眷属も数種類いるみたいだね。見た目通り生ものじゃなくて機械系だからそこだけ注意だね』

 

 眷属といっても、本体より強いってことはないだろう。

 最低限本体からの攻撃に気を付ければ、俺が死ぬなんてことはないはずだ。 

 

「それじゃあ外は任せました。行くわよ」

「本当にやるんですか?」

「あんたも8位なんだから、シャキっとしなさい!」

 

 ナイトメアさんは、ストラーフさんに引きずられるようにして、オールドベースに向かっていった。

 

 第一陣として出てきた魔物はストラーフさんが一瞬で殲滅し、装甲の一部に穴を空けて入っていった……。

 

 ……分かっていたが、多分ストラーフさんもオールドベースを外側から倒す事が出来る魔法少女なんだろうな。

 

 だって、装甲ぶち抜いてるもん。

 

 普通は所々にあるカタパルトらしき所から侵入するんだと思うんだが……やはりストラーフさんも、ブレードさんやタラゴンさん側の人だな。

 

 さて、ストラーフさんが倒したそばから魔物が現れているので、そろそろ仕事といこうか。

 

 いつも通り白と黒の翼を生やし、四肢にも補助用の翼を生やす。

 

 適当に魔法を放つと、こちらを敵と認識したのか、魔物が押し寄せてきた。

 

 このまま戦っていても良いが、それでは面白くない。

 

氷よ剣となれ(アイスソード)

 

 翼の上下に各4本ずつ氷剣を出す。

 更に両手の先に小さな魔法陣を展開し、その先にも氷剣を出す。

 

 俺の筋力では剣を振るのは難しいが、剣を持たないで腕を振る分には、流石に問題ない。

 

 この状態で近接戦は自殺行為になるのだが、これ位の魔物なら大丈夫だろう。

 

「楽しいダンス(殺戮)といきますか」

 

 真っ直ぐに魔物へと突っ込み、右手の氷剣で魔物を斬り裂き、次に向かう。

 

 背中に展開していたのは基本迎撃用に使い、魔物の中を自由に飛び回りながら、両手の氷剣で魔物を倒していく。

 

 たまに翼からも魔法を出し、適当に魔物を吹き飛ばす。

 

 かなり速度が出ているが、魔物の動きは見ているし、身体の制御もしっかりと出来ている。

 

 瞬間速度はタラゴンさんに輸送されていた時と同じ位出ているが、これが中々に楽しい。

 

 気分的にはジェットコースターに乗っている気分だ。

 

『楽しんでるのは構わないけど、減る量と増える量が変わってないよ』

 

 確かにそれなりの速度で倒しているが、普通なら数人の魔法少女で戦わなければならない量だ。

 

 一撃一殺だが、せめて一撃十殺位ではないと、減っていかない。

 

 まあ増えたところで被弾することは早々ないし、本体からの迎撃も此方の速度に追い付いていない。

 

 更に10分程踊り、少しだけスッキリしてきた。

 魔法も良いが、男としては剣を振り回していた方が、やはり楽しい。

 

 たが、もうそろそろ……いや、折角の魔物だしこの際、あれを試してみよう。

 

(アクマ。3つ目を使うぞ)

 

『ああ、エルメスね。別に良いんじゃない?』

 

 懸念事項もないなら大丈夫か。

 エルメス……恋人か。

 正位置では出会いや喜びと言った、正に恋人同士の意味を持つ。

 

 逆位置では弱い意思や優柔不断等だ。

 これまでの愚者や悪魔と違い、これと言って連想できるものがない。

 

 恋人いない歴26年だったし。

 なんなら親しい仲の人もいなかったが、今は関係ないだろう。

 

 さて、どうなるかな?

 

 氷剣を粉々にし、周りに射出して、魔物を一気に殲滅する。

 

「ナンバー6(シックス)恋人(エルメス)解放」

 

 空いた時間で解放する。

 

 氷剣を使う関係で出していなかった杖が正面に現れ、その形を変えていく。

 

 そう言えばエルメスと契約してから、第二形態になっていなかったが、後で確認しておいた方が良いだろう。

 最近は魔物ばかりで、魔法少女を相手にしている暇がなかったからな。

 

 思考が明後日の方向に飛んでいるうちに、杖は少し変わった形をした長剣へと姿を変える。

 

 ローブも案の定変わり、赤と青が交差している感じのドレスになった。

 髪はポニーテールとなり、青から燃えるような赤に変わる。

 

 ついでに長剣を扱うのに適した身長まで、身体が成長したようだ。

 胸に重みを感じるが、成長した分、少し大きくなっているな。

 仕方ないことだが、少し恥ずかしく感じる。

 

 体の成長はソラから奪取したものではないので、解放の制限時間はそのままみたいだな。

 

 解放した事で何が出来るかのイメージが頭に流れて来るが、今回もどうしてこうなった、と言った感じだ。

 

 愚者と悪魔は俺の能力の延長戦に近い能力だが、恋人はその都度能力が変わるようだ。

 俺の心情に合わせて()が変わる。

 

 そんな感じだ。

 

 軽く剣を振ると炎が迸り、眼前の魔物を瞬く間に塵と帰す。

 

 今回は超火力特化みたいだ。

 身体の負荷は恋人の能力で軽減できているが、結局魔力消費が多いのでとんとん位だな。

 

灰の彼方(アッシュ・ペレンネ)

 

 周囲が灼熱……タラゴンさんがやっていたような、フィールドを展開する。

 

 正直この姿での戦闘をタラゴンさんには見せたくないな。

 今の能力は、俺の第二形態とタラゴンさんの能力を足したような感じだ。

 

 俺にとって一番近い異性……同性がタラゴンさんであり、その想いと、剣が好きと思っていた想いが混ざったのだろう。

 

 フィールドを展開した事により、魔物は俺に近づこうとすると、徐々に動きが鈍くなり、塵に変わる。

 遠距離からの魔法なども熱によって歪められ、俺には届かない。

 

 今の状態ならオールドベースを両断できるが、中に居る2人も両断してしまうので、そこは自重しておこう。

 

 今の俺の位置はオールドベースよりやや上空で、数百メートル程離れている。

 

 眷属の魔物も一定より近づいて来ないが、周りにはまだうじゃうじゃいる。

 つまり、縦方向の攻撃は駄目だが、横方向ならオールドベースに攻撃が、当たる恐れが無いのだ。

 

 剣を腰に添えて、居合いのような構えを取る。

 

願いは灰塵とかす(ダストリベリオン)

 

 赤く燃える剣で周囲を薙ぎ払うと、目に映る全ての魔物が塵となって姿を消す。

 

 オールドベースの艦橋の先が熱で溶けているが、多分大丈夫だろう。

 

 周囲の魔力を全て俺ので塗り替えたので、少しの間魔物が現れることはない。

 オールドベースは、中に居る2人にも対処しなければならないだろうから、尚更俺を襲ってくる心配もあまりない。

 

 恋人を解除して、建物の屋上に腰かける。

 やはり胸は無い方が落ち着くな。

 

 寛いでいると、オールドベースの一部が爆発し、時間を空けて違う場所でも爆発が起こる。

 

 最後は支えの脚も折れ、オールドベースは地面に激突し、徐々に塵へと変わっていく。

 

 オールドベースが倒れた衝撃で、周囲の建物は壊れ、俺の座っている建物も壊れたので空に退避する。

 

 オールドベースの近くまで行くと、砂塵の中から出てくる2人が見えた。

 

 ストラーフさんは無傷だが、ナイトメアさんはボロボロだ。

 べそをかいているが、一応元気そうである。

 

「お疲れさまです」

「そっちもね。おかげで思ったより中で苦戦しなくて済んだわ」

 

 ……苦戦しましたって感じの人が後ろに居るのですが、無視ですかね?

 ほら。驚いた顔しているじゃないか。

 

 そんなナイトメアさんはストラーフさんに睨まれ、直ぐにしょぼくれてしまった。

 

「怪我を治しましょうか? 勿論無料で」

「良いの? あなただって魔力を消費しているでしょう?」 

「怪我程度なら大丈夫ですよ治れ(ヒール)

 

 ナイトメアさんの怪我を治し、ついでに汚れも落としておく。

 ストラーフさんはその様子を見て驚きの声を上げた。

 

「汚れも綺麗に出来るのね」

「はい。結構便利なので重宝しています」

 

 なんなら服や靴も元通りに出来る。

 回復魔法というよりは修復、あるいは復元魔法と変えた方が良いかもな。

 

 何はともあれ、ストレスの発散兼恋人の能力を試すことができたので、結果としては良かったな。

 

「今日は助かったわ。報酬は折半で良い?」 

 

 折半とは大きく出たな。

 通常なら2割低程度が相場だと思うが、急に俺を呼んで、悪いと思っているのだろう。

 言い方が半分ではなくて折半って言い方に年代を感じるが、気にすることでもないだろう。

 

「報酬は結構です。どうしてもと言うのなら、アロンガンテさんに渡しといて下さい」

「本当に良いの? ……そう言えばオーストラリアの報酬も辞退してたわね。無欲だと損するわよ?」

 

 そう言われてもタバコも吸えないし、酒も飲めないだけではなく、車も乗れないのでは、金があったところでね……。

 

 普通に討伐した分は自分の懐に入れるが、それ以外は必要ない。

 

「あっても使い道がないですからね。最低限の生活が出来れば問題ないので」

「本当にイニーは良い子よね……ナイトメアも見習いなさい」

 

 俺とストラーフさんが話すたびにナイトメアさんへ飛び火している気がするが、この2人が師弟関係だから許されることなのだろう。

 

 アクマに教えてもらった事だが、現在強化フォームになれないランカーは複数人存在している。

 魔女たちのせいで空いた枠を急遽埋めるために仕方ないとはいえ、中々無茶をする。

 

 勿論そんな彼女たちはSS級なんて討伐できるわけがない。

 つまりデコイ要員だ。

 これ以上強い魔法少女がいなくなれば、魔物が討伐できずに、溢れる危険がある。

 

 それを防ぐためだが、要は身代わりになって死ねと言っているのと同意義だ。

 ストラーフさんはナイトメアさんが死なないように、こうして骨を折っているのだろう。

 

 ナイトメアさんで遊んでいると結界が解け、太陽の光が降り注ぐ。

 

「そう言えば、ストラーフさん。例の物は?」

「そうだったわね。これよ」

 

 ストラーフさんはごそごそと空間を弄ると、袋を取り出した。

 

「その中に約束の物が入ってるわ。使う時はなるべくこっそりとね」

「分かりました」

「えっ? 何よそれ?」

 

 何も知らないナイトメアさんがキョロキョロとするが、黙っておくほうが面白そうだ。

 

「それでは、私は帰ります」

「助かったわ。アロンガンテにも宜しくね」

「後でその袋の事教えなさいよ。それはそうとお疲れ。また今度ご飯でも食べに行きましょう」

 

 これ以上俺が居る意味もないので、タラゴンさんの家……実質の実家に転移する。

 お風呂に入ってアクマに洗ってもらい、珈琲を飲みながらだらける。

 一応最低限討伐はしたので、アクマは何も言わない。

 

 明日から忙しくなるだろうし、たまにはこんな日も良いだろう。

 

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