魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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無価値で無用で無意味な魔法少女の存在意義

「これは……予想外だったな」

 

 偽史郎はテレビを見て力なく笑った。

 

 彼にとってハルナとは可能性であり、希望であった。

 ……いや、そんな優しい感情など持っていない。

 諦めるためのライン。最後の悪足掻き程度の存在だった。

 

 ハルナと会った時は思わせぶりな事を色々と言っていたが、アルカナ1人。魔法少女1人で魔女に勝てるとは思えなかったのだ。

 

 最初の転機は愚者とマスティディザイアだった。

 俗に言うSS級以上のイレギュラー。

 

 当時のハルナではどう足掻いても勝ち目など無かった。

 偽史郎も内心やはり駄目かと溜息を吐いたりもした。

 

 ハルナは肉が弾け、骨が吹き飛び、致死量に近い血を流しながらも立ち上がり、マスティディザイアに挑んでいった。

 

 このまま終わるのか……そんな時に動いたのがフールだった。

 

 先に話しておくが、偽史郎にはアクマを助けられない理由があった。

 

 アクマは自らの意思で能力の大半を破棄し、逃げ出したのだ。

 たとえ後からちゃんと戦いますと言われたとしても、偽史郎側から手を差し伸べることはできない。

 

 そういう契約なのだ。

 

 契約の穴を突いてハルナに多少の助力は出来たが、それが限界だった。

 

 だが、フールが自らの全てをアクマに譲渡した事により、アクマは偽史郎との繋がりを再び結ぶことが出来た。

 

 結果として1人のアルカナを失ったが、史上初となるアルカナ2人分の能力を持った魔法少女が誕生した。

 

 しかし、あと一歩でハルナが死ぬところであったが、本人は相も変わらずだった。

 

 色の抜けた白い髪。暗く濁った瞳に変わらない表情。

 顔が整っているせいか、その眼から感じる圧力を不気味に感じる者もいるが、妙に人を引き付ける彼女の願いはただ1つ。

 

 死ぬまで戦い続けることだ。

 

 その途中で魔女も倒してみせると豪語したが、素のハルナは歴代のアルカナ契約者の中ではかなり弱い。

 

 偽史郎が期待出来なかったのも仕方ないだろう。

 

 様々な特異性があったとしても、必要なのは力だ。

 勝てなければ未来はないのだから……。

 

 しかし、偽史郎の思いなど知らないハルナは、本人が言った通りに戦い続けた。

 

 腕が吹き飛び、身体に穴が空いてもだ。

 

 周りの人に止められても、血反吐を吐きながらも……。

 

 もしかしたら彼女ならばと期待し始めた頃だった。

 ハルナが死んだのだ。

 

 晨曦(チェンシー)との戦いで、限界まで身体を酷使したイニーの心臓は止まり、倒れてしまった。

 

 その時の偽史郎は目を瞑り、全てが終わったと思った。

 

 ハルナが死ねば残りは行方不明の太陽(サン)恋人(エルメス)。そして、女教皇(イブ)だけだ。

 世界の命運は決したと言っても、過言ではない。

 

 その時の偽史郎はイブを呼び、倒れているハルナを見せた。

 イブも端からハルナが勝てるとは思っていなかったので、「終わりね」と言うだけだった。

 

 アクマは必死に声を掛けるが、血が広がるだけてハルナが動く事はない。

 もう終わったのだ……。

 

 なのに……。

 

「馬鹿な事を、もう終わったと言うのに……」

「でもおかしくない? 死んだら契約は切れるはずでしょう?」

 

 通常なら死んで直ぐにアルカナと魔法少女の契約は切れる。

 だが、アクマとハルナの契約はまだ切れていないのだ。

 

 そこにマリンが現れ、ハルナの防衛が始まった。

 既にオーストラリアの各地で魔物が現れ、人類への蹂躙をしている。

 

 大勢は決したのだ。仮にハルナが生き返ったとしても、アルカナの力を持った魔法少女1人では何もできない。

 ハルナの制限時間である5分では、到底足りないのだ。

 

「どうするのかしら? ここで座して待つの? それとも報告するのかしら?」

「そうだね。どうしたものか……」

 

 マリンは徐々に追い詰められ、ハルナとアクマに魔物が襲い掛かろうとしたその時だった。

 ハルナが光の繭に包まれ、その傷が瞬く間に治ったのだ。

 そして驚きはそれだけではなかった。

 

「ありえない……」

 

 偽史郎は見るからに動揺し、今まさに目を覚まそうとしているハルナを凝視する。

 

「一体どうしたの?」 

 

 あまり見る事のない偽史郎の動揺に、イブは心配になる。

 

「あそこに…………エルメスが居る…………しかも契約した」

「それってあのマリンって魔法少女と?」

 

 現状ハルナは何も出来ない。

 ならば、今戦っているマリンがエルメスと契約したと考えるのは妥当だろう。

 

 しかし偽史郎は首を横に振った。

 

「いや――ハルナとだ」

「そんな馬鹿な。既にアクマと契約していて、更にフールの力も使っているのよ? それに死んでいる人がどうやって契約するっていうのよ」

「それは分からない……私にも理解が出来ないのだよ」

 

 一体何が起きているのか。

 それは分からない。

 アクマがフールの能力を受け継いだこともそうだが、本来アルカナの契約は1対1なのだ。

 

 それは魔法少女の身体が魔力の供給に耐えられないのと、人外の存在であるアルカナとの契約とは想像を絶する負荷があるのだ。

 

 それを実質3人分。

 有り得ない事だ。

 

 それだけでなく、行方不明とされているエルメスが、いつどうやってハルナと合流したのかが分からない。

 

 遂にハルナは立ち上がり、相も変わらず無表情で周りの魔物を殲滅してしまった。

 その姿は晨曦(チェンシー)と戦う前と同じで、先程大量に流した血の後遺症は見られず、ただ静かに佇んでいる。

 

 マリンと話す様子から二重契約による体調不良も見られない。

 

 この時、偽史郎はハルナがどれだけ異質な存在なのかをようやく理解し始めていた。

 ただの魔法少女としては、確かに強い部類ではない。

 しかし唯一無二の存在であり、ハルナの様な存在が現れる事は、一生無いだろう。

 

 だが、生き返ったからと言って今のオーストラリアを救うのは不可能なはずなのだ。

 

『ナンバー0愚者。ナンバー15悪魔。同時解放(ダブルリリース)

 

「馬鹿な! 死ぬ気か!」

 

 アルカナの同時解放。

 1つだけでも制限時間がある力を同時に解放する。

 正に自殺行為だ。

 

 そんな事をすれば能力をその身に宿す過程で死ぬと、偽史郎は考えていた。

 そんな偽史郎の考えを無視する様にハルナは解放を終えて、愚者と悪魔の力を足したような姿になった。

 

 その力は凄まじく、都市1つを包むほどの回復魔法に、大型のイレギュラーを一撃で塵へと帰していく。

 魔女の指定した時間に、なる前に使用した魔法とは違い、まともに溜めてすらいない。

 その力は偽史郎や、その上位存在が想定していた力を逸脱していた。

 

 ――それは、魔女に並びえる力だった――。

 

「あんな事あり得るの? なんで生きていられるのよ……」

「無理なはずだ。仮に死ななかったとしても、動けるはずはない。それは、これまで戦ってきたイブがよく分かっているだろう?」

 

 制限時間があるアルカナの力。もしその制限を超えて使用した場合どうなるのか?

 

 死んでしまうのだ。

 死に方は様々だが、精神や身体が耐え切れず、悲惨な死を遂げるのだ。

 

 だが、ハルナはいつまでたっても死ぬ事は無く、魔物をいつものように倒していく。

 その量は数えるのも馬鹿らしく、おそらく時間単位で見た場合、全ての世界で一番魔物を倒しているだろう。

 

 2人はそれを呆然と眺めて、全ての魔物が倒し終わってしまった。

 

「本当に勝ててしまうのかしら?」

 

 何にとはイブは言わない。

 たが、その理不尽極まりない強さは、魔女に通ずるものがあった。

 

「分からない。だが上の……SYSTEMが言っていた評価が少しだけ分かった様な気がする」

「どういう事?」

「アクマが能力を無理矢理使ったあの日、SYSTEMはアクマに声を掛けていたのだ。”評価”するとな」

 

 SYSTEM。それは世界の意思の集合体であり、魔女と戦う為に作り出されたアルカナの生みの親でもある。

 幾多の世界の管理者が力を合わせる事によって生み出されたSYSTEMは独自の思考を持つが、上記の通り主に魔女を倒すために存在している。

 

 ハルナなどの契約者に魔力を供給したり、アルカナが世界間の移動をしたりするのに役立っている。

 更に魔女によって壊された世界の後始末なども請け負っている。

 

 偽史郎は中間管理者に近い存在であり、まだアルカナの人数が多い時はどの世界に行くか、どう戦うかなどの指揮を執っていたが、今はただ見守るだけだ。

 

「評価ねぇ……これを見越していたのかしら?」

「分からない。だが、今度は彼……いや、彼女をもう一度調べ直した方がいいみたいだな。約束の事もあるからね」

「そう……私も行ってくるとするわ。どうするにせよ、近くに居れば何かあった時に対処できるだろうし」

「そうか……どの道を選ぶか聞かないが、喧嘩だけはするなよ」

「はいはい」

 

 そう言い残して、イブは偽史郎の傍から去って行った。

 

 その直後だった。

 アルカナの力を解除したハルナは幼い見た目となり、縮んでしまったのだ。

 

「これは……予想外だったな」

 

 偽史郎は力なく笑い、行動を起こすのだった。

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