魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法少女と会議の前の打ち合わせ

 いつの間にか会議の日であるが、何気ない1日ってのは、濃い1日とは違った早さで過ぎていく。

 

 とは言ってもほんの数日だ。

 運悪くジャンヌさんとの都合が合わず、桃童子さんの件を話す事が出来ていないが、急ぎではないので慌てなくて良いだろう。

 

 本来なら魔物の討伐に精を出すのだが、イギリスで奥の手を使ってしまった為、当分の間奥の手が使えなくなってしまっている。

 

 なので、魔物討伐をする傍ら、いつも以上に栄養を取ろうと頑張った。

 頑張ったのだが、人間には限界と言うものがある。

 

 男だった頃に比べて、今の俺は食べられる量も減り、速度も遅い。

 

「もう無理です」

 

『3割って所ですね。少しの間なら同時解放出来そうです』

 

 会議と言えば普通平和なものだが、そこに俺が参加するとなれば、なにが起こるか分からない。

 物凄く無理をする事となったが、なんとか奥の手を使うことが出来そうである。

 吐きそうだが、頑張ったかいがある。

 

 時間は朝の7時。

 

 アロンガンテさんには9時くらいに来るように言われているので、余裕はある。

 

 ギリギリまで休むとしよう。

 

(会議について情報は集まっているか?)

 

『勿論。やばそうな情報は全部アロンガンテに横流ししてあるよ』

 

 分かっていた事だが、馬鹿な事をする奴が居るのだな。

 

(一番やばい情報はなんだ?)

 

『アロンガンテを殺害……って程ではないけど、一時的に動けないようにする計画だね。アロンガンテが動けない内に魔法局を乗っ取ろうって計画さ』

 

(一時的にって、何か方法があるのか?)

 

『前にストラーフがイニーに渡した、魔導銃の亜種を使う予定みたいだね。魔力を乱して一時的に魔法少女状態を解除させるみたい』

 

 手段としては悪くない。悪くはないのだが、アロンガンテさんには防御機構と呼ばれる糞固い魔法がある。

 仮に魔導銃の弾を当てられたとしても、俺なら治す事が出来るだろう。

 

 馬鹿なのだろうか?

 

(その計画を考えた奴は、俺やアロンガンテさんの能力を知らないのか? それに、護衛も居るんだろう?)

 

『自分の考えた作戦なら確実に成功する、と信じている馬鹿はどの世界にだって居るんだよ。ついでに、護衛は桃童子みたいだね』

 

 桃童子さんか……適任ではあるが、どう考えても過剰戦力だよな……。

 

 同時解放がほとんど出来ないとはいえ、通常の解放は問題なく使える。

 

 SS級の魔物が数体出現しようが、問題なく倒せるだろう。

 

 なんにせよ、これだけの戦力が揃って居れば、並大抵の事は問題ないはずだ。

 

(そんな阿呆みたいな計画以外では、何かあるのか?)

 

『うーん。後はハルナを自国に勧誘しようと裏工作している国があるけど、軒並みアロンガンテが潰しているし、噂を聞いて襲撃しようなんて魔法少女はグリントやフルールが対処しているね。新魔大戦の時みたいに魔女が動くこともないと思うし、流石に今回は何も起きないと思うよ』

 

 流石にとか、今回はとか何回か聞いているが、毎回何かしら事件が起きているんだよな……。

 アクマの何も起きない程、信用出来ないものはない。

 

 つまり、今回も必ず事件が起きるだろう。

 

 俺はそう思う。

 

(そうか。何も起きない事を祈るよ。さて、結構休んだし、もうそろそろ行くとするか)

 

 寝っ転がってアクマと話していたら、結構いい時間過ぎていた。

 もうそろそろアロンガンテさんの執務室に向かった方が良いだろう。

 

 まあ、5分も掛からずに着くので、焦る必要は無いがな。

 

『そうだね。その前にちゃんと歯を磨いておきなよ』

 

(それもそうだな)

 

 男の頃は結構雑な暮らしを出来ていたが、アクマが居るせいで規則正しい生活を強いられている。

 多少甘い所もあるが、身嗜みはとにかく煩い。

 少し位良いだろうと反論すると、微妙に拗ねるので少し面倒だ。

 

 お前は俺の母親か! と何回も思ったが、口に出すことは一度もしていない。

 

 いや、拗ねられた後に毎回ご機嫌取りをさせられているので、どちらかと言えば彼女とかそう言った類かな?

 可能ならば能力だけ頂いてポイっとしたいが、そうもいかないのが辛い。

 

 アクマに言われて歯を磨いた後に変身し、妖精界に転移する。

 場所はアロンガンテさんの執務室の近くだ。

 

 後で受付の妖精に何か言われるだろうが、既に慣れた。

 

「来ましたね。体調はどうですか?」

「問題ないです」

 

 インターホンを押してから執務室へと入り、ソファーに座る。

 相変わらずアロンガンテさんは大変そうだ。

 

「それは良かったです。それと、情報提供ありがとうございました。対策はしたので、テロの心配はないはずです」

「そうですか」

 

(だってさ)

 

『はいはい』

 

 この対策が吉と出るか凶と出るか……。

 

「まだ時間はあるので、飲み物でも飲んで待っていて下さい。多分ですが、もうそろそろ……」

「おや? 既に集まっておったか。待たせたのう」

 

 アロンガンテさんの言葉を遮るようにして、桃童子さんが執務室に入ってきた。

 

「来ましたね。今日はよろしくお願いします」

「うむ。なにも起きぬとは思うが、最善を尽くそう。イニーも先日ぶりじゃな。元気にしておったか?」

「はい」

 

 食う寝る戦うだけの、魔法少女としては普通の生活を送っていたので、元気といえば元気である。

 少し腹がきついが、体調は万全だ。

 

「それは上々じゃな。しかし、話は聞いたが、こんな時にも馬鹿な真似をする奴がおるのじゃな」

「世の常ですからね。それに、どうしても女性と男性では思考に差が生まれますし、魔法少女は短命になりやすいので、大人にとっては良い鴨です」

 

 魔法少女となった女性の平均寿命はかなり短いからな。

 平和のため、金のためと無理をして死んでいく。

 

 仕事上お金を稼げるが、魔法局に所属している魔法少女が死んだ場合は、国に接収される契約がされている。

 勿論遺族にも金は残されるが、接収される分と比べると僅かである。

 

 理不尽と思われるかもしれないが、そうでもしないと国が回らないのだ。

 国もそれ相応の便宜を図っているが、不平不満が出ないわけがない。

 

 そこら辺の政治的な話はノータッチだが、別に知らないわけでもない。

 

 俺としては、頑張ってくれとしか言えないのだ。

 

「政治のやり取りはおぬしら姉妹に任せるのじゃ。さてさて、ホットミルクでも頂くとするかのう」

 

 アロンガンテさんは栄養ドリンク。

 俺は珈琲。

 桃童子さんはホットミルク。

 

 見事にバラバラだな。

 

「改めて説明しておきますが、基本的な応対は私がやります。しかし、全てというわけにはいかないので、その時はイニーに直接答えてただく事になります」

「はい」

「イニーの事なのであまり心配はしていませんが、下手に裏取りの出来る言葉ではなく、意味のある明確な答えを返して下さい」

 

 通常なら遠回しな発言をしてお茶を濁すのが会議だと思うが、どうしてだ?

 

「どうしてでしょうか?」 

「下手に裏を掻かれる可能性のある発言をすると、反意だなんだと騒ぐ方が居るのです。肯定するにしても、否定するにしても、きっぱりと発言した方が有利になる可能性が高いのです」

 

 ふむふむ。

 言いたいことはよく分かった。

 

 仮に国の転覆を狙っていると言われた場合、通常ならそんな馬鹿なとなるが、魔法少女ならそれを可能とする力がある。

 

 世の中なんてのは多数決で物事が決まるので、そこで危険だなんだとなるのは面倒だ。

 

 仮に転覆の意思があったとしたら、明確にあると言った方が、面倒がないのだろう。

 

 まあ、11歳の少女に馬鹿な質問をするような奴がいない事を祈ろう。

 

「分かりました」

「わらわとしてはイニーを呼ぶ意味が分からんのじゃがな。アロンガンテだけでは駄目じゃったのか?」

「手は尽くしましたが、実際に話を聞かなければと、押し切られました。主にイニーの年齢と能力のせいですね」

 

 年齢……ね。

 

 馬鹿が考えそうなものだと、俺の後ろに何か居るって考えているのだろうか?

 

 M・D・Wから始まり、マスティディザイアやドッペルなど、11歳の少女が自発的にやるような戦いではなかったからな。

 

 あるいは、魔女の手先なんてのもあるかな?

 

 どちらにせよ、俺が自発的に戦っているとは考えていないのだろう。

 

 俺がタラゴンさんやジャンヌさんに話した嘘の話がどこまで広まっているか分からないが、会議の前に適当に考えた嘘の設定をアクマに聞いておこう。

 

「そうですか……」

「イニーの能力は、どの勢力も欲しがっていますが、当の本人は基本的に単独行動をしているため、接触する事が出来ない。なので、今回無理やり表舞台に引っ張り出してきたのです」

「わらわってアロンガンテの護衛と言うよりは、イニーの護衛と言った感じなのかな?」

「そうなると思います」

 

 桃童子さんの威光で、有象無象が近寄らないようにするって事か。

 一々話して追い返すよりは楽で良さそうだ。

 

「話はこれ位にして、もうそろそろ移動するとしましょう」

「そうじゃのう。さっさと無駄な会議など終わらせて、大福でも食べたいのじゃ」

 

 大福か。個人的には苺大福が好きだな。

 苺の酸味とあんこの甘さが合わさって美味しいのだ。

 

 まあ、食べ物の事は後にして、一緒に移動しなければならない。

 

「場所は新しく作った魔法局総本部の一室を借りる予定でしたが、念のため妖精局に変更しました。それでは付いて来て下さい」

 

 席を立ち、アロンガンテさんの後をついて執務室を出る。

 

 そう言えば、妖精局に行くのは初めてだな。

 

 本来野良の魔法少女は妖精局の所属となるが、俺はアクマのせいで、実は所属していない。

 アクマが自己紹介で妖精と名乗ったので騙されていたが、こいつは妖精局にハッキングして、架空の妖精を作り出していたのだ。

 

 その妖精のデータを使って、魔石を換金していた。

 

 この裏事情を知ったのは結構前だが、架空の妖精の事を問い詰められないと良いのだが……。

 

 まあ、困ったらアロンガンテさんに丸投げすれば良いだろう。

 

 

 

 

1

 

 

 

 会議が始まる後30分程前。

 ある一室に5人の男が集まり、会議に向けた打ち合わせをしていた。 

 

「場所の変更か……その程度は想定の範囲内だが、例の準備はどうなっている?」

「滞りなく進んでいます。妖精局で会議を行うとのことですので、逃走は出来ませんが、捨て駒は準備できています」

「そうか。例のイニーフリューリングはどうだ?」

 

 5人の1人が進行役兼説明役を務めて、会議が進んでいく。

 

 今回妖精局で開催される会議は、イニーやアロンガンテが懸念していた通り、裏で暗躍していたものが居た。

 

 主に、アロンガンテが魔法局を潰したことにより割を食った者たちや、イニーの能力に目が眩んでいる者だ。

 

 中には心から世界の行く末を案じている者もいるが、極少数だろう。

 

「専門家やこちら側の魔法少女の調査では、やはり操られている可能性が高いとの事です。また、噂では()()()の出身ではないかと言われています」

「孤児院か……それはあの計画のか?」

「はい」

 

 孤児院とは、魔法少女を人為的に作り出す研究をしている、研究所や施設の隠語である。

 何故孤児院と呼ばれているかだが、研究所から少女を引き取っている国や組織があるからだ。

 何をもって成功作とするかは研究所によって異なるが、失敗作でも使い勝手の良い駒となる。

 

 勿論非合法なので、表沙汰にすることは出来ない。

 

 なので、孤児院と呼んでいるのだ。

 

「なるほどな。イニーフリューリングの能力は何だったかな?」

「属性、一般的に四属性と呼ばれている魔法の使用と、回復魔法となります。また、強化フォームとは異なる方法で自身を強化できる様です。現在確認されていますのは接近戦特化と魔法特化。それと、両方を足したような姿となっています。ただし、全て映像での確認となりますので、本人ではない可能性もあります」

「そうか。しかし、オーストラリアで行われたあの回復魔法は本物だったのだろう?」

「はい」

 

 オーストラリアで起きた奇跡。

 

 1体だけでも人類を滅ぼす事の出来る魔物の複数出現。

 

 そして、それらの魔物を1人で倒し、傷ついた人々を治療した魔法少女。

 

「ならば価値はあるが、タラゴンの義妹なのだろう? 問題ないのかね?」

「表ではなく、裏に流せばそう簡単に見つけ出すことは出来ないだろう? それに、ジャンヌと同レベルとの噂もあるからな。リスクを背負う価値はあるだろう」

 

 男たち一番の目的は、アロンガンテを一時的に動けなくするのと、イニーの拉致であった。

 

 無論、そんな事は既にアクマに気付かれている。

 男たちも絶対に成功するとは思っておらず、最低限のリスク管理はしている。

 

「あの魔法少女は、中々姿を現さないからな。仮に駄目だったとしても、枝を付けておけば次の機会もあるだろう」

「そうだな。もうすぐ時間になるな。私は少し用事があるので先に失礼させてもらう。また」

 

 人は絶対的な脅威の前では協力するが、虫歯の様にじわじわと浸食してくる脅威には己を優先してしまう。

 

 自分だけは大丈夫だと信じて疑わないのだ。

 

 その考えがどの様な結果を招くのか……。

 

 魔女は密かに笑うのであった。

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