魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法少女桃童子の置き土産

 ――ああ、そう言えばテレポーターで倒れてしまったんだな。

 

 憎悪やイブなんかのせいで忘れていたが、結構危ない状況だったのではないだろうか?

 

 ……まあ、エルメスが何も言っていなかったし、大丈夫なのだろう。

 

 目を開けると、白い天井が見える。

 

(此処は何処だ?)

 

『ジャンヌの所だよ。全く、あれだけ無茶をするなって言ってるのに聞かないんだから……』

 

 ジャンヌさんの所か。

 運が良いのやら悪いのやら……。

 

(確かに桃童子さんとの戦いは俺のエゴだが、桃童子さんが自殺する前に暴れる可能性だってあっただろ?)

 

『それはそうだけど、相手はあの桃童子だよ? あのシミュレーションでの戦いを見た限り、私を使っても勝てるなんて確率は1割未満なんだよ?』

 

 確率論で言えば、俺が勝てる確率は0に等しいものだろう。

 だが勝てるとは分かっている戦いより、勝てるか分からない。むしろ勝てる確率が低い方が燃えるものだ。

 

 ……桃童子さんとの戦いは、憎悪のせいで、無駄な事を考えている余裕はなかった。

 どう戦い、どうすれば一撃入れられるか。集中しなければ一撃で殺され、気を抜けば憎悪が乗っ取ろうとしてくる。

 

 ――だが…………なんだ。ブルーコレットや破滅主義派とは違い、お世話になった人をこの手で殺すことになるとはな……。

 

 後悔はないが、この事はしっかりと報告しなければならない。

 

 特に、ミカちゃんに桃童子さんの形見を渡さなければならないのが、面倒だが……頼まれたからには仕方ない。

 

(身体が鉛のように重いんだが、どんな調子だ?)

 

『血液の量が、生きるのにギリギリだよ。それと、ハルナは輸血出来ないから注意してね』

 

(もしかして身体のせいか?)

 

『うん。そんな気はしてたんだけど、適合する血液が無いみたい』

 

 似たような世界でも、全く一緒ってわけでもないのか。

 そりゃあ異世界産の身体なのだから、何かしらこの世界で不都合があってもおかしくない。

 

 これまで何度か死にかけているが、ここまで酷いのは新魔大戦の時以来かな?

 まあ血液が存在しないタイプって言うなら、施設生まれについても、信憑性を持ってもらえるだろう。

 

(了解。それと、俺が倒れてからどれくらい経った?)

 

『まだ3時間だよ。会議に出席していた人たちは全員病院に運ばれて、アロンガンテは拠点に居るみたいだね。魔女は反応らしい反応はないね。ただ……』

 

 流石魔法少女と言ったところだが、少しは休んだ方が良いんじゃないか?

 いや、3日間いなかったせいで仕事が溜まっているのか……。

 休むにしても、仕事を終わらせてからじゃないと休めないのか。

  

 魔女もこれだけの事をやっておいて動きを見せないのは、やはり俺で遊んでいるのか?

 だが、使っていた魔物や、場所を考えるともうそろそろ終わらせようとしている感じはするな。

 

(ただ? なんだ?)

 

『北極に封印されていた魔物が魔女の手に渡ったみたい。ついでに楓が破滅主義派の構成員を結構な数捕まえている…………いや、殺しているね』

 

 その場で封印が解除されたのではなく、奪われたのなら時間的な猶予はまだあるか……。

 倒すではなく、封印を選んだのか、倒せないから封印したのか。

 それすら教えてくれないが、相応にヤバい魔物なのだろう。

 

(治るのが先か、魔女が動き出すのか先か。先は暗いな)

 

『この段階まで来れていることが、快挙ではあるんだけど、勝たないことには意味がないからね……』

  

 試合なら負けたとしても次があるが、死合には次はない。

 文字通り負けたら死んで終わりだ。

 

 とは言ったものの、俺が生き残れているのはアクマからしたら驚きであるのだろう。

 本来なら他のアルカナと一緒に戦う相手に、たった1人で挑んでいるのだ。

 

 毎回ボロ雑巾みたいにされているが、それはそれだ。

 

(そうだな。だが、今は休むしかない。戦いの途中ならともかく、最初から不利な状態で戦うのは馬鹿がやることだからな)

 

 起き上がれないこともないが、どうせ戦うことはできない。

 数日は食って寝る生活を続けるしかないだろう。

 

(寝るから、誰か来たら起こしてくれ) 

 

『了解。おやすみ。ハルナ』

 

 

 

 

 

 

 1

 

 

 

 いや、そんな気はしていたが、寝たからと休めるとは限らなかったな。

 

「私に隠し事は無理ですよ?」

「右に同じく」

 

 エルメスとソラが巣くっている深層心理。

 前と変わらない、花が咲き誇る広い空間。

 

 憎悪やイブと話していた場所とはえらい違いだ。

 

 しかし、イブの事は何も考えていなかったはずなのだが、即バレとは笑えない。

 とりあえず鎌をかけてみるか。 

 

「隠し事とは一体何ですか?」

「イブ」

 

 間違いなくバレているな。

 

「一応向こうから口止めされていたもので、何故分かったのですか?」

「普通に魔力が残留していたです」

 

 イブの情報にポンコツの四文字を刻んでおこう。

 自分で言っておきながら、まさか証拠を残していくとは思わなかった。

 

「ついでに、会話は私が全部聞いていたわ」

 

 あの時はエルメスのせいで忘れていたが、ソラも居るんだよな。

 今はちんちくりんなチビだが、俺が奥の手を使ったせいだ。

 またしっかりと栄養を取れば、もやしの様な成長をするだろう。

 

「一応イブって、参謀的な存在だったんですよね?」

「戦いについてはエキスパートですが、日常ではポンコツです」

「そうですか。内容を知っているなら、特に隠す必要もないですね」

 

 話した内容は無理をせず戦えってだけだ。

 それと、行方不明の(囚われている)サンが見つかれば改善の見込みがあるが、よくよく考えれば、契約者がいなければ能力を十全に使うことはできない。

 

 俺ではもう契約できないし、誰か新しい魔法少女が必要となる。

 見つかったところで、どうしようもないのだ。

 

「律儀に約束を守ろうとするのは良いですが、イブはポンコツな癖に、偉そうにするのであまり信用しない方が良いですよ」

「改めて会話を振り返ったので、言いたいことは分かりました」

「話を聞いている感じ結構しっかりした感じだったけど、エルメスから話を聞いたら納得したわ」

 

 容姿的には可愛いソラがドヤ顔で頷いているが、何故か不快な感情が込み上げてくる。

 なんとなく脳天にチョップをしたくなる。

 

「次に会えるかは魔女との勝敗次第ですね。ところで、私を呼んだ理由はなんですか? 浮気現場について問い詰めるためだけではないでしょう?」

「イブの事はついでですね。本題は憎悪の能力です。こっちで解析したので教えておこうと思ったです」

 

 能力ねえ。

 第二形態自体が憎悪の能力だと思っていたのだが、違うのだろうか?

 とりあえず話を聞いてみないことには判断できないな。

 

「私が知っている能力と違うのですか?」

「史郎が第二形態と呼んでいる姿と、憎悪をフル開放した際は少し変化しているです。とりあえず分かりやすく資料を纏めたです」

 

 エルメスはどこからか紙を取り出し、渡してきた。

 

 そこには俺がこれまで変身した時の能力が分かりやすく纏められていた。

 こうやって改めて確認すると、魔法少女として非常識な能力だなと思う。

 

 とりあえず目的の項目を見ると、興味深い事が書かれていた。

 

 第二形態。一番初期だと暁たちにお灸を据えた時だが、あの時の能力は身体強化と障壁のみだ。

 

 そこから色々あり、修復と双剣術が追加さた。

 

 魔法少女としては破格の能力だが、ここに憎悪が入ることで変化を起こす。

 

 能力は適応と感情による戦力の変化。

 そして吸収だ。

 

 この吸収がアクマやエルメスの意識が無くなっていた原因だろう。

 

 吸収と言ってもそんなに便利なものではないが、ここに適応の能力があるせいで問題が起きた。

 

 適応は文字通り、最も戦いへ適した状態に身体を維持する能力だ。

 維持するとは書いてあるが、実際は作り変えられていたのだ。

 

 しかも適応するには丁度良い素材があり、能力が勝手に行っていた。

 適応も吸収も少しややこしいので省くが、互いに作用していた結果、身体を頑丈にするため、アルカナ由来の成分。

 正確にはアクマやエルメスと契約した時に繋がった魔力パスから変換前の魔力を身体に行き渡らせ、最適化していたのだ。

 

 そして、アルカナ由来と言うよりは、変換前の魔力を使うにはアルカナと同じ状態にならなければならない。

 その結果が細胞の変異だったって事だ。

 

 もしもこの細胞が身体に行き渡れば、魔力の心配がなくなり、配給元の魔力が無くならない限り、魔力が使い放題となる。

 更に出力できる魔力も改善され、更に高火力の魔法が使えるようになる。

 

 ……たしかにこれは駄目だな。

 イブが言っていた注意も頷ける。

 

 因みに攻撃の度に身体が壊れていたのは、俺が欲している力に適応しようとして壊れていたようだ。

 まあ、壊すレベルで戦わないと勝てなかったので、致し方ない。

 

「大体理解できました。ですが、どうすれば良いんでしょうか?」

「能力がパッシブなので、ぶっちゃけどうしようもないですね。変異が終わる前に、魔女に勝てる事を祈るしかないです」

「因みに、私の身体と入れ替えても意味ないからね」

 

 なるようにしかならないって事だな。

 人間死ぬ時は死ぬのだし、その時は諦めるとしよう。

 だが、話を聞く限り、変異したら誰かが俺を殺しに来るのだろう。

 

 その誰かと戦うのも、面白そうだ。

 

「忠告ありがとうございます」

「先ずは魔女を倒さない事にはどうしようもないですが、この世界は他と比べておかしいです。なるべく注意した方が良いです」

「男が魔法少女になっている時点で大概だと思うけど、応援はしているわ」

 

 男と言っても身体は他人のものだからな。

 少々語弊のある言い方だ。

 

「どうやら丁度良い時間みたいですね。ジャンヌが来たようです」

「そうですか。それじゃあ、またいつか」

「ちゃんと沢山ご飯食べるのよ」

 

 徐々に意識が遠のき、それから浮上を始める。

 なんとも変な感覚だが、嫌いではない

 

『起きろー!』

 

(叫ばなくても聞こえている)

 

 現実に意識を戻されると、まだまだ不調だと思い知らされる。

 再びゆっくりと目を開けて、身体を起こすと、丁度扉が開き、ジャンヌさんが入ってきた。

 

 少し驚いた顔をしているが、俺が起きるとは思っていなかったのだろう。

 

「おはよう」

「おはようございます。運んで頂きありがとうございます」

 

 さてと、報告をしないとな。

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