魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法少女タケミカヅチの呼び出し

「意思ね。それはただの弟子ではないってことかな?」

「ああ。さっきの話の続きになるが、桃童子は自分の武器をタケミカヅチに渡して欲しいと、イニーに頼んでいたんだ」

「……まて、桃童子は転移させられた洞窟で死んだんだよな?」

「そうだよ」

「あいつは本当に非常識だな……」

 

 グリントは桃童子が行った事があまりにも非常識で馬鹿げた事と分かり、首を振った。

 

 魔法少女が死ねば、発動していた魔法や装備している武具は一緒に消える。

 だが、桃童子は死んでも武器を残し、継承して見せた。

 

 タラゴンもグリントと同じ感想だが、桃童子ならやれてもおかしくないと思っている。

 

「どれ位の強さなの?」

「シミュレーションの桃童子に、負けることはなかったね」

 

 ミカと一緒に、シミュレーションに付き合っていたジャンヌは、ミカの戦いぶりは、在りし日の桃童子を思い出ささせるものだった。

 何より、ミカが見せたとあるモノにより、ランカーに推薦するのも面白いと考えた。

 

「それ位なら良いと思うけど、大丈夫なの?」

「ああ。中々の覚悟を持っていたよ。おそらくマリンの方も大丈夫だろうね」

「私からは特に推薦はないし、好きにすれば良いさ。だが、何故そのふたりなんだい?」

 

 強さで言えば、今ジャンヌが挙げたふたりよりも、強い魔法少女は居る。

 新しい風と言っているが、それでもふたりをジャンヌが、推薦する意味が分からなかった。

 

「タラゴンは察しがついているかも知れないが、ふたりともイニーの元学友だよ。イニーの紐として、利用価値があると思ったんだ」 

「相変わらず腹黒ね。やっている事が他と変わらないじゃない」

 

 ロシアや一部の国は、わざと使い道の無い魔法少女をランカーに添え、破滅主義派の被害を抑えようとしていた。

 この作戦はそれなりの実績を出してしまったせいで、今度はランカーになろうとする魔法少女が減り始めたりと、害も出ていたりする。

 

「どちらが入ったとしても、日本の最低ラインであるSS級の討伐は直ぐに出来る様になるし、実質的にランカー以上に働くイニーが居るから問題ないさ。それに、魔女に勝つにしろ負けるにしろ、先を見据えなければならないからね」

 

 勝つにしろ負けるにしろ、楓が死ぬだろうとジャンヌは考えている。

 その為に、若くて有望な魔法少女を育てようと思ったのだ。

 

 それだけではなく、イニーが隠している事についても探りを入れようとしていた。

 将来的にイニーが居るのならば、日本だけではなく、世界的に平和な時期が訪れる。

 

 それはありがたい事であるが、もしもイニーが戦死。あるいは姿を晦ますならジャンヌは当面魔法少女を辞める事ができなくなる。

 

 楓が居るから魔法少女を続けているジャンヌは、楓が居なくなれば直ぐにでも魔法少女を辞める気である。

 

 イニーを引き留める紐として、ふたりの内どちらかをランカーにしたいのだ。

 

 イニーならば、ジャンヌの代りとして問題ない働きができるのだ。

 

 その事もあり、ジャンヌはイニーを借りだの暇つぶし等と言いながら、自分の仕事を手伝わせていたのだ。

 

「……あんた。イニーを自分の代わりにする気ね? そして仲の良い友達を逃げられないように繋いでおくと」

「イニーが何を考えているか分からないが、タラゴンだってイニーが居なくなるのは嫌だろう? 外堀を埋める程度は許してくれ。さっき話した通り、ふたりとも、ランカーを名乗れる程度には強くなれるのは間違いないしね」

 

 日本のランカーの中で一番非情なのはジャンヌだ。 

 今でこそ普通に話しているが、昔は酷いものだった。

 

 それを知っているのは楓だけだが、使えるモノは何だって使うのがジャンヌだ。

 イニーの境遇には同情する面もあるが、自分の代わりはイニーしかいないのだ。

 

 早めに後任を見つけておかないと、アロンガンテの様になるのは目に見えている。

 

「――あまり気乗りはしないけど、その通りね。それで、あんたはどうなると考えてるわけ? それと、どこまで私たちに隠してるの?」

「出来るなら私も聞きたいね。不文律とはいえ、状況が状況だしね」

 

 ジャンヌはおやおやと困ったような顔をするが、タラゴンとグリントは視線を逸らさない。

 

 ジャンヌとて全て知っているわけではないが、その情報量はかなりの物だ。

 態々世界各国を訪れて伝手を作り、回復魔法をダシにして交渉などもこっそりとやっている。

 

 更に楓から本当に危ない情報も貰っている為、これから起こる事について大体の予想がついている。

 

「結論だけで言えば、楓は死ぬだろうね。そして、イニーが負けた場合、文字通り人類は終わりとなるだろう」

 

 ジャンヌの考えでは、魔女は星喰いと共に魔物や手下となっている破滅主義派を使い、何かを仕掛けてくると考えている。

 

 魔女の強さは未知数だが、イニーの目標が魔女であるので、そちらはイニーに任せることとなる。

 

 ジャンヌは昔、楓と星喰いの能力について話した事がある。

 強さもさる事ながら、高濃度の魔力は空間を汚染し、魔法少女すら死に至らせる。

 

 そして、星喰いを倒した後に起こりえる、被害についても話し合っていた。

 

 予想される魔力量や、戦闘時の被害。

 どの様に戦い、倒すか。

 

 結果、犠牲無しで倒すのは不可能だと結論を出した。

 

 桃童子の限界突破を使える魔法少女が現れれば良かったのだが、現れる事はなかった。

 桃童子の能力を継承したミカなら可能性はあるが、流石に間に合わないだろうとジャンヌは諦めた。

 

 ならばイニーと楓の役割を別にすれば良いのだが、これは楓が断った。

 未来ある魔法少女を死なす位なら、自分が死ぬと……。

 

 魔女の強さが未知数な以上、同じく未知数であるイニーを戦わすのが最善だろうとも話した。

 

「あれだけの魔物を操れるんだもの。そうなるわよね……」

「破滅主義派の幹部もまだ残っているし、一度に攻められれば、厳しいか……」

「アロンガンテからの報告書を見る限りでは、こちらが束になってもどうなるか分からない。だが、封印されている魔物と魔女さえどうにかなれば、後はどうとでもなるはずだ」

「上手くいくと良いんだがね」

 

 アクマが誤魔化しているせいで、楓とイニーが居れば大丈夫だと思ってもいるが、これまでどれだけの世界が滅んできたかなんて知る由もない。

 ジャンヌの言う通り、負ければ人類滅亡となるのだが、勝てるだろうと思っている。

 

 世界の命運は、イニーの頑張り次第となる。

 

 

 

 

 

 

 

 1

 

 

 

 

 スターネイルとマリンは魔物の討伐を終え、拠点に帰ってきた。

 

 イニーがイギリスで山を穿とうが、洞窟で死闘を繰り広げていようが、魔法少女がやることは変わらない。

 変わらないと言っても、魔女の宣戦布告以降は討伐の回数は増え、壊れた建物や荒れた土地を直す依頼も増えている。

 

 一応マリンは、アロンガンテたちが帰って来るまでは、プリーアイズと交代で待機していたが、事件らしい事件は起きなかった。

 

 帰ってきたふたりは、拠点内にある食堂でご飯を食べながら、午後どうするか話していた。

 

 ふたりの待遇は特殊なものとなっており、管轄がアロンガンテ直属となっている。

 いつもはアロンガンテや姉である白橿から依頼を受けるのだが、ふたりとも忙しいため、会う事が出来ない。

 

 午後も討伐をするかと話していると、マリンの端末が鳴った。

 

 一体誰からだと思いながら端末を見たマリンはニヤリと笑った。

 

「誰からなの?」

 

 珍しいマリンの反応にスターネイルは気になり、誰からなのかを聞いた。 

 

「沼沼で一緒に食事をしたタケミカヅチと言う魔法少女です。のじゃとか言っていた子です」

「ああ、あの子ね」

 

 スターネイルの記憶では、イニーを取り合って喧嘩していたのが印象に残っている子だ。

 

「もしもし、何かあったの?」

 

『うむ。少し用があってのう。午後から空いているかのう?』

 

「午後からね……」

 

 マリンはスターネイルを、チラリと見る。

 スターネイルと討伐に行こうと言ったばかりであり、それを止めにするのは少し憚られる。

 

「それは午後じゃないと駄目なの?」

 

『うむ。イニーにも関連する事じゃ……』

 

「空いてるわ。今からでも大丈夫よ」

 

 マリンはミカが話し終わる前に了承し、話を聞いていたスターネイルは苦笑いを浮かべた。

 

「あっ、ひとり連れが居るけど、大丈夫?」

 

『構わぬ。アルブヘイムまで来てほしいのじゃ。詳細は会ってから話すのじゃ。それではのう』

 

 通話が切れ、マリンはスターネイルを見る。

 

「確認取る前に言っちゃったけど、来るわよね?」

「うん。マリンちゃんをひとりで行かせるのは心配だからね」

 

 マリンは顔をしかめるも、イニー関係では暴走していると分かっているので、なにも言わない。

 

「しかし、アルブヘイムね……。とりあえず向かいましょう」

「前に、イニーちゃんのお見舞いに一度行ったけど、あそこってランカーの人たちの施設だよね?」

 

 一般的に、アルブヘイムは各国のランカー専用施設として、知れ渡っている。

 ランカーではないミカが、アルブヘイムで待ち合わせをするのはおかしいのだ。

 

 ふたりは食器を片付け、少し休んでからアルブヘイムに向かった。

 

「急に呼んですまんのう」

「構わないわ。それより、用事って?」

「わらわと戦ってほしいのじゃ。シミュレーターの使用許可は貰ってある」

 

 アルブヘイムの入り口で待っていたミカと合流したマリンたちたが、マリンは内心で首を傾げた。

 

 何故かミカが大きく見えるのだ。

 身長が伸びたとか太ったとかではなく、存在感が増しているのだ。

 

 急に戦ってほしいと言われたことにも戸惑いはあるが、それ自体は別に構わない。

 

「良いですけど、何故私に?」

「ジャンヌさんは知っとるかえ?」

「名前だけは……」

 

 話の意図が分からないが、許可を出したのはそのジャンヌだろうとマリンは思った。

 

 そもそも日本に居て、日本のランカーを知らないなんて事はないだろう。

 

「わらわとマリンを、次期ランカーに推薦すると言っていたのじゃ」 

「――どういう事?」 

 

 ランカーである桃童子が亡くなったのは、ニュースになっていたので知っているが、何故まだまだ新米である自分と、ミカが候補に選ばれたのか。

 

 強化フォームにも慣れ、SS級の中でも弱い部類の魔物となら戦える様にもなったが、まだまだ強いとは言えない。

 

 ランキングも上がって来ているが、ランカーを目指すにしても後数年は必要だと思っていた。

 

 それはミカにも言えることだが、強化フォームにすらなれないミカが候補に挙がるなど、おかしいのだ。

 学園に居た頃、何度か戦ったが、到底ランカ-になれるような強さではない。

 

「不思議に思うじゃろうが、先ずは戦ってからじゃ。そうすれば分かるはずじゃ」

「とりあえず戦ってあげれば? 一応友達なんでしょう?」

 

 色々と思うこともあるが、マリンは頷いて、アルブヘイム内のシミュレーターに向かった。

 

「戦うのは良いけど、大丈夫なの?」

「心配するのも分かるが、逆にわらわに負けても、むくれるでないぞ?」

「ふーん」

 

 学園でミカが勝てたことは一度もない。それどころか、学園に居た頃に比べて、マリンはかなり強くなっている。

 

 今更ミカが強化フォームになったとしても、マリンは勝てると思っている。

  

 だからこそ、何故こんなにも自信満々なのかが分からない。

 

 マリンはミカの言動のせいで忘れてしまっているが、ミカにはイニーに関係することがあると言われて呼ばれている。

 

 この事を思い出していれば、この戦いは始まらなかったのかもしれない。

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