魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法少女のちょっとお手伝い

「分かって貰えたなら大丈夫です。報告は以上ですか?」

「はい。続いて相談なのですが……」

 

 アロンガンテは報告のインパクトで忘れそうになっていたが、報告と相談があると言っていたのを思い出した。

 

 報告の内容が内容のだったため、相談も突拍子のないものなのではないかと身構える。

 

「お仕事……手伝いましょうか?」

「――はい?」

 

 仕事を手伝う?

 イニーが本当にそう言ったのか、アロンガンテは思わず聞き返してしまった。

 

 仕事。外に出なければならない仕事は姉にやってもらっているが、それ以外の事務仕事はアロンガンテがひとりでやっていた。

 

 仕事を手伝っていたゼアーは、いつの間にか姿を晦まし、楓は私用……仕事で出掛けてしまった。

 

 幸い洞窟から帰ってきて1日だけゆっくりと寝ることが出来たが、それだけである。

 

「……失礼。本当に手伝ってくれるのですか?」

 

 一瞬だけ呆けてしまうが、直ぐに気を取り直した。

 

「はい」

 喜ばしい事であるが、11歳の少女がパソコンの操作や、書類仕事が出来るのか疑問が湧く。

 

 アロンガンテも必要に駆られて勉強したが、勉強を始めたのは17歳の頃だ。

 それも魔法少女としての恩恵と、自分の魔法をフルに使ってだ。

 

「パソコンは使えますか?」

「人並みには。簡単なものならマクロ等も組めます」

「……漢字はどの程度まで読めますか? それと、英語は読めますが?」

「漢字は最低高校卒業レベルまでは問題ないと思います。英語は読むだけならほとんど問題ないです」

 

 何故そこまで出来るのか?

 

 そう思わずにはいられないが、施設の出身だからなのだろう。

 

 前にアロンガンテが見た資料には、施設で作り出そうとしていた魔法少女の仕様が、書かれたものがあった。 

 

 その仕様のひとつに、事務等の雑務に付いても一定の水準で出来るようにするのはどうだろうかと、記されていた。

 

 つまり、そういうことなのだ。

 

 出来ることならば、イニーには手伝ってもらいたい。

 だがその行為は、イニーを作った施設の者の思惑に乗る行為だ。

 

 自分が楽をするために、イニーの尊厳を踏みにじる……。

 

「――直ぐにテーブルを用意しますので、こちらのマニュアルを読んでおいて下さい」

 

 アロンガンテは、欲に負けた。

 

 一体誰がアロンガンテの事を責められるだろうか?

 

 日本のランカーの雑務を一手に引き受け、魔法局関連もほとんどひとりで受け持っている。

 

 仕事の増える量と減る量はほとんど変わらず、肉体は勿論心が休まる暇もない。

 

 手伝ってくれるなら、悪魔だろうが天使だろうが誰でも良いのだ。

 

 イニーがアロンガンテから渡されたマニュアルを読んでいる間に、アロンガンテは妖精に連絡を入れて、テーブルやパソコン等を執務室に運び込ませた。

 

「イニーには書類の誤字脱字のチェックと、期限別に並べ替えて下さい。それ以外の優先順位はマニュアルの通りに。電子書類も回しますので、紙の書類とは別に精査をお願いします」

「分かりました」

 

 イニーの身の丈を超える量の書類が、イニーのために用意されたテーブルの上に置かれ、一本のメモリースティックを渡された。

 

 あまりの量にイニーはアクマにどれ位終わるかと聞くが、アクマはただ笑うだけだった。

 

「出来る限りで良いので、無理はしないようにして下さい」

「分かりました」

 

 手伝おうと言ってしまったのだから、今更撤回するのは無理だ。

 

 イニーは椅子へと座り、黙々と仕事を始めた。

 

 

 

 

 

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 仕事。それも社会の歯車としてではなく、フリーランスとして仕事をする場合、一番重要なのは信頼関係だ。

 

 …………嘘だ。一番重要なのはコストパフォーマンスだ。

 

 通常の仕事だけではなく、打ち合わせや確定申告などの、雑務をひとりでやらなければならない。

 

 専門家に頼めば仕事量は減るが、その分金が掛かる。

 自分でできる仕事を他人に任せるのが嫌だったのもあるが、やれることは全て自分でやっていた。

 

 流石にアロンガンテさんから渡された書類の量には面食らったが、やれるならばやるだけだ。

 

(電子書類の方はお願いしても良いか?)

 

『仕方ないなー。アロンガンテはこの様子だと世界に必要そうだし、一肌脱ぐよ』

 

(なんなら全部脱いで裸踊りしても良いぞ)

 

『怒るよ?』

 

 適当に謝りながらパソコンを起動してメモリースティックを差し、後はよろしくとアクマにお願いする。

 塔になっている書類を手が届く程度の山に分け、スタートだ。

 

 基本は最初に読んだ、マニュアル通りに分けていく。

 

 30分程経ち、ローブの裾から例の栄養バーを取り出し、齧りながら書類分けの速度を速めていく。

 

 男だった頃に比べると、読解力や集中力が上がっているのを感じる。

 

 時間が経つに連れて速度は上がり、4時間程経つ位には終わりが見え始めた。

 

「休まなくて大丈夫ですか?」

「あと少しで終わるので、やってしまいます」

 

(そっちはどうだ?) 

 

『とっくに終わってるよ。アロンガンテに全部送信して、今は暇つぶしにネットサーフィン中』

 

(終わらせてくれたのならば文句はないさ)

 

 仕事さえ終わらせくれれば、何をやろうと構わない。

 流石に此方を手伝わせるのは、俺の良心が咎める。

 

 追加で1時間程経ち、全ての仕分けと処理が終わった。

 チラリと時間を見ると夕飯に丁度良さそうな時間だ。

 

「終わりました」

「……終わるんですね」

 

 アロンガンテさんは呆れとも、驚きとも取れる表情をしていた。

 

 当たり前だが、杜撰な仕事はしていない。

 

 アクマの方はエキスパートだし、俺もこのような仕事は慣れっこなのだ。

 

「少々驚きの量でしたが、夕飯の前に終わってよかったです」

「正直終わるとは思っていませんでしたからね。本当にありがとうございました」

「いえ。それでは失礼します」

 

 軽く頭を下げ、軽く身体を解しながら執務室を出る。

 

 身体を使い、頭も使い。

 中々濃い1日だったな。

  

 しかし、書類仕事は疲れるな。

 こんな仕事をアロンガンテさんひとりがやっているのは酷だとは思うが、今の情勢では仕方のない事なのだろう。

 

 アロンガンテさんに使える部下や、弟子などが居ればこんな仕事も溜まらないと思うが、時すでに遅しってやつだ。

 

 若干疲労を感じるが、回復魔法を使う程ではないな。

 

(たまには外で飯でも食べるか?)

 

『構わないけど、商業区に行かないで此処で食べる位にしておいた方が良いよ』

 

 まあ色々とやらかしているからな。

 下手に人前に出れば、攫われるまではなくても人が押し寄せてくる可能性があるからな。

 

 第二形態になれば問題ないかもしれないが、そこまでして外食したいとは思わない。

 

 確か喫茶店の他に食堂もあったはずだが、どっちで食うかな……。

 

 いや、迷う必要もなく喫茶店だな。

 

 食堂は人が多そうなので、嫌だ。

 

「いらっしゃいませー。待ち合わせですか?」

「ひとりです。個室でお願いします」

「承知しましたー」

 

 思っていた通り、喫茶店にはほとんど人が居ない。

 案内されるまま個室に入り、メニューを適当に眺める。

 

 沼沼もそうだが、料理と名前が一致しないものがある。

 残骸風ステーキや、黒くて大きくて良い感じなケーキなどは、まだ良い方だ。

 

 友達の置き手紙。希望を乗せて。

 酔った時に考えついたなんか。

 

 ここら辺は仕事を舐め腐ってるのかと、呆れてしまう。

 

 普通のメニューもあるが、若干気になってしまう俺が居る。

 場所的に利益は考えていないのだろうが、遊びすぎるのも良くないと思う。

 

 とりあえず、親子丼と珈琲で良いか。下手に冒険をするような歳でもないしな。

 

「お待たせしましたー。ごゆっくりどうぞー」

 

 客が居ないせいか、思ったよりも早く料理が運ばれてきたので、ゆっくりと食べる。

 魚介類は魔物のせいで高騰しているが、鶏豚牛は庶民でも手が出せる値段で出回っている。

 食べ物の変化は時代の変化とは言ったものだな。

 

 昔は魚と言ったら日本だったらしいが、今は見る影もない。

 

 小ぢんまりと養殖はしているが、大海原で漁をしようものなら、魔物にパクリと食べられてしまうだろう。

 

 流石の魔法少女も、海の中では分が悪い。

 それに、魚自体が魔物に食べられているので、危険な割に得られるメリットはあまりないだろう。

 空を飛べる魔法少女はそれなりに居るが、海に潜れる魔法少女はほとんどいない。

 

 そんな海だが、潜れない、戦えないからと、魔物を放置することは出来ない。

 そこで登場するのが、あの魔法少女フリーレンシュラーフだ。

 長いのでレンさんと呼んでいるが、今日整理していた書類の中に、レンさんの奴があった。

 どうやらレンさんは、定期的に海を凍らせて魔物を討伐しているらしい。

 

 その討伐数は俺すらも凌駕していて、あの楓さんよりも多い。

 公式サイト上は非表示となっているが、裏ではちゃんとカウントしているそうだ。

 あまり公になっている情報ではないが、2位になっている理由が分かり、納得できた。

 

 俺も似たようなことは出来るだろうが、レンさん程効率良くは無理だ。

 

 どこから生えてきたか知らないが、レンさんもブレードさんと同じく突然変異な気がする。

 

 書類で見た情報を頭で整理しながら食べていると、いつの間にか食べ終わっていたので、追加で珈琲と食後のデザードを頼む。

 

 こんな一時もたまには良いものだ。

 

 戦いの後には休養が必要であり、休養の後には戦いがある。

 

 誰も彼もが必死に生きようとしている中、自己の理由だけで戦う。

 

 それもまた乙ってものだろう。

 

 

 

 

2

 

 

 

 

 

「此処も空……ですか」 

 

 孤島にポツンと建つ屋敷。

 

 楓は魔女の残した魔力の残滓を辿り、幾つかの候補をワザと見逃して網を張っていたが、全て空振りしてしまった。

 

 襲来して直ぐに屋敷を破壊したものの、出てくるのは指定討伐種に登録されている魔法少女だけ。

 

 破滅主義派の主力メンバーは誰ひとりとして見つからなかった。

 

 

(私の失敗とはいえ、動き出す前に魔物だけでも処理したかったですが……一体何を考えているのでしょうか?)

 

 魔女が楓の防御網を突破し、封印されていた魔物を奪取してからそれなりに日が経っている。

 

 ただのテロが目的なら奪取などせずに、その場で封印を解いて倒してしまえばいい。

 

 そうすれば汚染が広がり、最低でも地球の半分は人が住めなくなるだろう。

 

 そうしなくても適当な場所で封印を解除すれば、それこそ人類滅亡もあり得る。

 

 なのに、今の所魔女は沈黙を保っている。

 

 それどころか、主要メンバーは倒せなくても下部メンバーは今もこうして倒されている。

 

 魔物の脅威は今も健在だが、魔法少女を相手にするよりは気持ち的に楽だろう。

 

 楓は破壊した屋敷に解析の魔法を使うが、欲しい情報が何一つ手に入らず溜息を吐く。

 

 次はどうするかと悩んでいると、端末が鳴った。

 

 緊急回線以外は繋がらないようにしている楓は不思議に思いながらも、相手を確認してから通話に出た。

 

「どうかしましたか?」

 

『やあ、忙しいところすまないね』

 

 相手はジャンヌだった。

 

 声の感じから焦りは感じられないので、急ぎではないのだろうと察することは出来る。

 

「いえ、先程用事が済んだので大丈夫です。それで、どうかしましたか?」

 

『桃童子の抜けた穴を埋める人員だが、ふたり候補を用意したよ。それについて明日にでも決めたいのだが、大丈夫かね?』

 

 ふたりとはマリンとミカであり、最終判断は楓がしなければならないので、ジャンヌは魔法のデメリットが終わって直ぐに連絡を入れたのだ。

 

「分かりました。今から戻ります」

 

『私は自分の執務室に居るから、今日中ならいつでも大丈夫だよ。それじゃあ』

 

 ジャンヌはイニーが仕事を代わってくれ、二日予定の仕事を一日で終わらせてくれたので、現在ゆっくりと休んでいた。

 

 楓はそんなことを知らないので、珍しいと思いながらも、帰るために通話を切った。

 

「帰りますか……その前に」

 

 楓は魔法で翼を生やし、空を飛んで孤島を見下ろす。

 

 印を切る様な動作をすると、孤島の上に禍々しい魔法陣が現れた。

 

「胤滅ノ烙印」

 

 孤島全体に魔法陣から出た黒い霧が広がり、全てを消滅させていく。

 

 最後には孤島自体が無くなり、海の水が一気に押し寄せた。

 

「こんなものでしょうか。さて、帰りましょう」

 

 屋敷を壊した程度では、もしかしたら再利用されるかもしれない。

 なので、島自体を滅ぼす。

 

 言葉にすれば簡単な事だが、実際にやるとなると、正気を疑う行動だ。

 

 魔力量に、出来るだけの魔法……そして覚悟。

 

 楓だから出来る、出鱈目な行為だった。

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