魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法少女武御雷

 魔法少女ブレード。

 

 タラゴンやジャンヌの様な悲惨な過去を持たず、戦うことのみで頂に登り詰めた異端の魔法少女。

 

 桃童子を秀才とするならば、ブレードはただの馬鹿だった。

 

 魔物や魔法少女との戦いに明け暮れ、桃童子程ではないが、死にかける事はもザラにあった。

 ただ強くなりたい。ただ自分の限界を知りたい。魔法少女と言う名の殻を打ち破りたい。

 

 その想いは、いつの間にか世界すら騙す力となった。

 

 魔法少女でない通常の肉体での訓練を積み、いくつか流派を学んだりもした。

 

 そして空間すら斬り裂き、次元を繋ぐような事も出来るようになった。

 何かを守りたいとか、誰かを倒したいなどの想いを、ブレードは持ち合わせていない。

 世界が変われば、破滅主義派になっている事もあれば、若くして死んでいることもある。

 

 味方となれば頼もしいが、敵となれば最悪の相手となる。

 

 そんなブレードをもってしても、魔女の薬を使った魔法少女。

 それもランカークラスとなると少々分が悪い。

 

 ブレードの慢心が生んだ結果だが、当の本人は多少苦い顔をするが、この状況を楽しんでいた。

 

 だが既に周囲の被害は、尋常ではないものとなっていた。

 

 人の住んでいない場所だから良かったが、草木どころが建物の破片すら消し飛び、何も残っていない。

 

 ミカも限界ギリギリまで離れ、目を強化して眺めていた。

 

 最初は真っ二つ。次は四等分。その後は輪切りにするが、ノートレスは何度も復元し、ブレードを殺そうと様々な武装で襲い掛かる。

 

 魔力をあまり使わないように戦っているブレードだが、イニーの様な例外ではない限り、魔力には限界がある。

 

 神斬りなどはその性質上かなりの魔力を消費するが、ブレードは神斬りを連発していた。

 下手に足を止めるような戦い方をすれば、全方位からビームやらが飛んでくる。

 

 殺傷能力は周りに空いたクレーターが証明し、防御すれば魔力を奪われる。

 

 どうすればノートレスを殺すことが出来るか考えるが、解は見出せていない。

 

(これは厳しいが、どうするかな)

 

 手札はまだあるので遊んでいるが、これ以上遊んでいては後々アロンガンテに怒られてしまうと危惧する。

 

 かと言って、ノートレスをどうすれば殺せるかの見当はついていない。

 

 おそらくコアの様なものがあるのだと当たりを付けているが、それがどこなのかわからない。

 

 ノートレスを木端微塵にすれば問題ないだろうが、そこまでの大技を使うにはブレードと言えど溜めが必要になる。

 

 会議の報告書にあった、戦う際にはふたり以上で挑むことと書いてあった意味を、今更ながら理解した。

 

 そんなブレードの内心とは裏腹に、戦いを見守るミカは胸から溢れ出てくるモノが何なのかを、理解し始めていた。

 

(これが、お姉ちゃんが感じていたものなのじゃな……)

 

 ミカはどちらかと言えば戦いが嫌いだ。

 

 だが、今目の前で起きている戦いを見て、憧憬を感じてしまった。

 

 自分もあのような戦いをしたいと、思ってしまった。

 

 だからなのだろう。

 

 桃童子から受け継いだ籠手が、ミカの想いに応えるようにして、その意思を伝えた。

 

 お前なら出来ると。わらわの戦いを、意思を受け継いだ弟子であり、妹であるお前ならと……。

 

 招雷・鬼神喪衣の後遺症でボロボロな身体に活力が湧き、魔力が回復する。

 どうして回復しているのか疑問に思うが、今は関係ない。

 

 しかし、いくら回復したところで、今のミカではふたりの戦いに介入することは出来ない。

 

 だから…………介入できるだけの力を、()手に入れる。

 

「我が身を焦がせ……”武御雷”」

 

 雲一つない空からミカ目掛けて雷が落ち、身体の中で滞留する。

 

 黄金を纏った様に一度光り、光が落ち着くと、ミカの姿が変わっていた。

 

 円月輪はミカの手から無くなり、籠手から半月を描くように飛び出ていた。

 

 額からは2本の角が生え、在りし日の桃童子を彷彿とさせるものだった。

 

 身の丈を超えた力は、ミカ自身を焦がし続ける。 

 

 しかし、今は。今だけはそれでも良かった。

 

 雷の如き速さでブレードの近くまで接近し、周囲のロボットを粉砕した。

 

「桃……いや、ひよっこか?」

「周囲はわらわが相手をする。首級は任せるのじゃ」

 

 額の角以外は桃童子と似ても似つかない。だが、ブレードが勘違いしそうになるほどに、ミカには桃童子の様な気迫があった。

 

 ブレードは新しい玩具が出来た事に嬉しくなり、やはりこの世界も捨てたものではないと、改めて思った。

 

「そうかい。なら任せるぞ」

「うむ」

 

 ブレードは真っすぐにノートレスへ向かっていき、ミカは周りのロボットの破壊を始めた。

 

 ロボットは徐々に強くなり、今はSS程の強さがある。

 

 それをミカは一撃で粉砕し、籠手から伸びた刃でビームを斬る。

 

 そしてブレードは周りの憂いが無くなり、ノートレスと一騎打ちを始めた。

 

 八つの剣と二振りの剣。合計十本の刃による剣舞。

 

 ノートレスも装甲から銃を乱射し、大剣などで対抗するが全て躱され、破壊されていく。

 

「お前……お前位は!」

 

 ノートレスは最後の自我を振り絞り、胸部に砲身を作り出し、ブレードに向けて発射する。

 ブレードは光に呑まれ、その様子を見てノートレスは笑みを浮かべた。

 

 何度もブレードに斬られたせいで、身体の再生能力は限界を迎えようとしていた。

 最後に一矢報いたと、ノートレスは自我を手放し、魔物に…………。

 

「悪いが、その曲芸は体験済みだ」

 

 ブレードはいつの間にかノートレスの背後に回り込み、居合の構えをしていた。

 

 だが、その居合は刀と西洋剣の二刀流での構え。

 

 現実を捻じ曲げる魔法少女だから出来る荒業。

 

「我流・比翼天羽々斬」

 

 ブレードの刀が鞘から解き放たれ、次の瞬間には鞘に納まっていた。

 

 ノートレスが居た場所には、僅かな塵だけが残っていた。

 

 その塵が、そこにノートレスが居た証なのだろう。

 

 ミカが戦っていたロボットも塵へと変わり、全てが無へと帰っていった。

 

 戦闘の余波で現れていた魔物も姿を消し、ミカは少しだけ気が抜けて強化フォームが解けてしまった。

 

「ひよっこ……大丈夫か?」

 

 無理矢理強化フォームとなり、この戦いに参戦できるだけの力を手に入れたミカだったが、反動で身体中の筋肉が断裂し、そのまま倒れてしまった。

 

「無理じゃあ……」

 

 涙ながらに訴える姿に、ブレードは苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

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「やってくれますね……」 

 

 最後の最後で今までと違う行動を起こした魔女。

 

 唐突な地球と妖精界の断絶に、アロンガンテは持っていたペンを折りそうになる。

 

 現在妖精界に居る日本のランカーはタラゴンとレン以外の全員だ。

 

 レンはもしもの場合に備えて、アロンガンテが地球側に捨てておいた。

 

 レンを上手く使うことが出来れば、大体の状況に対応出来るが、レンひとりでどうこう出来るとはアロンガンテも思っていない。

 

 今のところ妖精界側からは結界と思われるもので遮断されている事だけだ。

 オーストラリアの時のように映像を見ることすら今は出来ず、妖精局が一丸となって解析にあたっている。

 

「おう。来たぜ」

「お待ちしていました」

 

 アロンガンテは執務室に入ってきたブレードに、用意しておいた資料を渡した。

 地球へのテレポートや魔法での転移は今のところ出来ないが、ブレードは問題ないと答えた。

 

「これをタラゴンさんに渡して下さい。あの人なら読めば理解してくれるはずです」

「了解。何か懸念事項とかあるか?」

 

 ブレードは戦いでの状況判断は得意だが、大局となるとあまり良くない。

 そっち方面はタラゴンやアロンガンテにいつも丸投げしているのだ。

 

「間違いなく魔女による策略だと思うので、破滅主義派のメンバーと戦う際はひとりで戦わず、最低でもランカークラスをもうひとり用意してください」

「了解」

 

 この時のブレードは軽く考えていたが、実際に戦ってみた結果かなり苦戦することになるのは、もう少し先の話となる。

 

 ブレードは資料を懐にしまうと、西洋剣を鞘から抜く。

 

 アロンガンテが気づいた時にはブレードの姿は消えていた。

 

 これで一先ず日本は大丈夫だろうが、他国についてはまだ心もとない。

 

 出来る限り戦力を送り込みたいが、結界を越えることが出来る魔法少女はほんの一握りだ。

 そんな事を悩むアロンガンテを嘲笑う様な事態が、妖精界で起こる。

 

『緊急警報発令。只今妖精界は魔物の襲撃を受けています。魔法少女各位は指示に従い、避難誘導を願いします。繰り返します……』

 

 魔物による妖精界への攻撃。その数は地球に現れている魔物よりも膨大な数だった。

 流石の妖精女王でも対処に困る数が現れ、一部の魔法少女は手伝いに駆り出されていた。

 

 現状アロンガンテが取れる手はほとんどない。

 地球側に魔法少女を送り出せるならまだしも、それすら出来ない。

 

(後は……あのふたり位ですか)

 

 アロンガンテはふたりの魔法少女に連絡を取り、早急に執務室に来るように通達した。

 

 その間に、妖精界に居る主だった魔法少女にも連絡を取り、取れる手段を模索する。

 

 最後の最後に現場にすら出られない歯痒さ。それを嚙みしめながら、呼んだふたりの事を待つ。

 

「待たせたね」

「どうも」

「お待ちしておりました。ふたりにはお願いしたい事があります」

 

 アロンガンテが呼んだのは、グリントとジャンヌだった。

 

 実はグリントもブレードと同じく、通常の転移とは違った方法で結界内と行き来する方法を持っている。

 

 少し使い勝手は悪いが、頑張れば自分以外も運ぶことが出来る。

 

「どうせ私たちに、向こうに行ってほしいのだろう?」

「はい。現在地球側で回復魔法が使える魔法少女はほとんど居ません。なので、危険なのは重々承知していますが、行っていただけませんか?」

 

 ジャンヌは特に気負うことなく、頷いて答えた。

 

 此処に来た時点で、こうなる事はわかっていた。

 仕事である以上、死を恐れて断るなんてことはしない。

 

「私はジャンヌを運べば良いのだろう。その後はどうする?」

「アメリカを拠点にして動いて下さい。現在ランカーがふたりしかいないので、崩壊の恐れがあります」

  

 アメリカはふたりのランカーが殉職し、不運な事に今は現在1位のリリウムナイトと5位のジャガーハニーしかいない。

 

 他にも普通の魔法少女は多数いるが、もしもSS級などが多数現れれば流石に荷が重い。

 

 グリントならSS級を多数相手にも出来るし、殲滅力は魔法少女の中でも上位に入る。

 

 それに、もしもの場合は逃げる事も出来る。

 

「なるほど。有事の際はどうする?」

「離脱していただいて構いません。日本にはタラゴンさんとブレードさんがいますので、そちらの指示に従って下さい」

「分かった。それじゃあ行くとしよう」

「よろしくお願いします」

 

 アロンガンテはふたりに頭を下げて見送り、再びひとりきりとなる。

 

 やるべき事は全てやった。

 

 アロンガンテも戦いに出向きたいが、自分の価値がどれ程高いかを理解しているので、戦いの場に行くことは出来ない。

 

 後は、荒廃した世界の事後処理を今から始める事くらいだ。

 

 滅んで無くならない限り、いくらでも立て直しは可能だ。

 

 だが……もしも。もしも全てが無となるのならば……。

 

 最後くらいは満足に寝たいと、アロンガンテは思った。

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