魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法少女の狙撃(味方諸共)

 舘の中に入った筈なのに、入ってきた扉はいつの間にか消えた。

 

 普通ならエントランスになると思うのだが、天井は晴れ渡る空となり、周りには木々や廃墟がある。

 

 つまり、舘の中に入った筈なのに、外にいるのだ。

 

 パッと見日本ではななさそうだが、一体どこだ?

 転移させられたような感覚はなかったし、幻影か何かだろうか?

 

『此処は……そんな!』

『あー。これはもしかするともしかするかもね』

 

 アクマだけではなく、珍しくソラが反応している。

 

(一体どうしたんだ?)

 

『……此処は○○が死んだ世界だよ』

 

 一瞬ノイズが走って聞こえなかったが、ソラの反応から理解出来た。

 前に名前を対価にしたとか言っていたので、そのせいで聞き取ることが出来ないのだろう。

 

 アクマが発言できているのはおそらく権限的なものだろう。

 

 だが、何故そんな世界に?

 

(とりあえず説明を頼む)

 

『……あっごめん。おそらくだけど、あの館を触媒として、入った者の心象風景を投影してるんだと思う。だけど……』

 

 ……なんとなくだが、魔法が誤作動した気がするな。

 本来なら俺の心象風景を映し出す筈が、何故かソラのを映し出したのだろう。

 

 原因などどうでも良いが、とにかく此処から出なければならない。

 

(なるほど。この魔法の解き方は分かるか?)

 

『一定の条件。何かを成し得れば解けるけど、なんか術式が所々壊れていて正確には分からないね…………』

 

 本当に事故なのか、それとも故意なのか分からんが、なるようにしかならんな……。

 

 あまり使いたくない手だが、魔法である以上力業で破ることも出来るだろう。

 

 とりあえず移動しよう。こんな何も無い所に居ても意味はないからな。

 

(転移は出来るか?)

 

『駄目だね。魔力供給は問題ないけど、座標の取得が出来ないね。目で見える範囲位なら転移出来るけど、飛んだ方が早いかな』

 

 とりあえず飛んで、人が居る場所まで移動するか?

 

(因みにだが、この世界での最後の戦いはどうなったんだ?)

 

『この世界には私と愚者(フール)。それから死神(メサイア)の3人が居たんだけど、破滅主義派のメンバー5人の襲撃を受けて負けてしまったんだ。そして魔女が星喰いを解放して滅んだよ』

 

 イギリスで薬を使った破滅主義派の3人と戦ったせいで少し感覚が麻痺している気がするが、ただアルカナを解放しただけでは一人を相手にしても辛い。

 強化フォームを併用すればおそらく勝てるのだろうが、他の契約者の事など何も知らないので、あくまで仮定だ。

 

 ふたりでひとりを相手にするならば良いが、5対3は厳しいだろう。

 

(なるほど。戦いは結界の中でか?)

 

『この世界では結界の技術は無いよ。なにせ妖精が居ないからね。その代わり科学が特殊な進化を遂げているけど……って関係ない話か。最後の戦いはハルナの世界で例えると、カナダ辺りでだよ。魔力と特殊なエネルギーに汚染された死の大地だね』

 

 特殊なエネルギーね。世界が変われば色々と変わるか。

 この世界が存続している以上まだ戦いは行われていないはずだ。

 

 人の居る場所に行こうかと思ったが、最後の戦いが起きる場所に行くとしよう。

 

 ソラの心象風景であり、これが魔女の魔法であるのならば、きっとその戦いが何かしらのトリガーとなるはずだ。

 

(なるほどね。その死の大地は魔法少女になっていれば問題ないのか?)

 

『ハルナの世界で例えれば高濃度の放射能みたいなものだから、長居は駄目だけど多少なら問題ないよ』

 

(ならそこに向かうとしよう。お前やあいつの心残りはそれだろう?)

 

『……ハルナ?』

 

 おっと。そう言えばアクマには、俺の中にソラが居ることを話してなかったな。

 まあいいか。

 

(ナビは頼んだぞ)

 

『――了解』

 

 白い翼だけを出して、アクマのナビで死の大地とやらに向かう。

 

 見える建物や景色は俺の知っているものとは違い、本当に異世界なのだと実感させられる。

 

 だが、この世界は既に滅んでいる。

 全て偽物であり、過ぎ去りし過去なのだ。

 

『見えてきたよ。そこの禍々しくなり始めている所が境目だね』

 

 体感で30分程飛んで、やっと目的地が見えてきたか。

 

 見るからに汚染されてますって感じだが、この世界も業が深そうだ。

 

 変な粒子的なものも飛んでいるし、放射能より酷そうだ。

 

『……魔物と魔法少女の反応あり』

 

 いつもよりも暗いアクマの声。

 昔の事を思い出しているのだろう。

 

『あの日。私とアクマはフールの誘いで魔物の討伐に赴いたの』

 

(……それで?)

 

 ソラの語りが唐突に始まった。

 

『SS級の魔物を倒し、帰還しようとしたところ瀕死のメサイアと破滅主義派の魔法少女が現れたの。メサイアの怪我は直ぐに治したけど、5人を相手にするのは厳しかったわ。途中でフールが契約を解除して離脱。メサイアは魔法少女と一緒に死亡。そして……』

 

(死ぬ間際に身体を残したと? 今更だが、何故そんな事を?)

 

『どうしてかしらね……。未練があったのか、アクマと形だけでも良いから一緒にいたかったのか。今となっては正直分からないわ』

 

 分からない……か。

 

 意識が無かったとはいえ、死んでからかなり経っているらしいし、仕方ないか。

 

 ざっくりと何が起こったか分かったが、もしかして勝利条件はその5人に勝つことだろうか?

 

 …………4対5。人数的には多少マシになったが、勝率は相変わらずだ。

 此処での戦いだけなら良いが、最低後3回残っている。

 

 切れる手札はほとんど無いだろう。

 

(アクマ。魔物の数と魔法少女の数は?)

 

『魔法少女2.魔物は1だよ』

 

 居るのはソラとフールの契約者か。

 

 今のアクマは愚者の分のリソースがあるので、この世界に居た時よりも索敵能力が上がっているが、その内向こうの索敵に引っ掛かるだろう。

 その前に軽く作戦会議だ。

 

(魔法の解除条件は戦いに勝つことだと思うが、どう思う?)

 

『私もそう思うけど、その場合物凄く不味いよ……』

 

(相手は誰だ?)

 

 先程ソラから教えて貰ったが、知らない体で聞く。

 

『薬を持っている魔法少女。ランカークラスが5人。アルカナの同時解放をすれば勝てるだろうけど……』

 

(その手札を切るのは流石に早すぎるよな)

 

 困ったもんだ…………いや、待てよ。

 

(確認だが、薬は最初から使っていたか?)

 

『……いや、途中からだね。最初は強化フォームのみで、途中から飲んでたよ』

 

 ふむ。ならまだ可能性があるな。

 

(決まりだ。アクマ、今すぐ俺に出来る限りの隠蔽を施してくれ)

 

『良いけど、どうするつもり?』

 

(決まってるだろう? 遠距離から仕留めるんだよ)

 

 今はまだ魔物と戦っていて、その後に破滅主義派がメサイアと共に現れ、戦いとなる。

 

 時間はそれなりにあるので、やる事はひとつだ。

 

『それってもしかして……』 

 

(最後の照準は任せる。皆殺しになるか、破滅主義派だけを殺せるかはアクマ次第だ)

 

 地上に降り立ち、杖を地面に突き立てる。

 

 最低目標は5人中3人を殺すこと。

 

 出来ればこの世界の契約者には生き残って欲しいが、ふたりだけなら俺ひとりでもどうにかなるだろう。

 

 再び悲劇が起こるかどうかは、アクマ次第だ。 

 

『普通協力して戦うとか、先にひとりで戦うとかじゃないの?』

 

(そんな漫画みたいな展開する位なら、確実な方法を取る。幸い殺したとしても、元々死んでいる人間だしな) 

 

 現実ならばソラが言う通りに犠牲が出ない方法を取るが、此処は心象風景であり、幻想だ。

 多少悪辣な手だが、仕方ない。

 

 さてと、一番は火の魔法だが、間違いなく巻き込むことになるだろう。

 事故ならともかく故意でやると流石に怒られそうだ。

 

 氷は命中に難があるし、範囲指定で薙ぎ払うのが無難か。

 

 範囲内に入らないことを祈ろう。

 

 アクマが隠蔽用の結界を展開したのを確認し、詠唱を始める。

 

「湧き上がる願いは世界を覆い、震える想いは世界を流す」

 

 おそらく、これまでで一番長い詠唱となるだろう。

 

「矮小なる身で示すは四元の希望と七曜の法則。悠久の時を廻り、真の理を造り出さん」

 

 アクマが展開した結界内に無数の魔法陣を展開し、魔力供給と同じ早さで魔力を流していく。

 

「火より生まれ。水より生まれ。風と共に生き。土に生き。森羅万象は廻り、光を照らす」

 

 魔法陣の元となる魔法陣。

 無数に広がる魔法陣一つ一つがパズルのピースであり、これらを繋ぎ合わせることで放つ魔法。

 

「ささやかな祈りは天へと届き、朧気な苦しみを黒く広げる」

 

 扱う魔力が増え、俺のキャパシティを超え始める。

 頭痛や目眩。吐き気が襲ってくるが、魔法さえ発動できれば治すことが出来る。

 

『魔物の討伐完了。それと、破滅主義派が現れたよ。薬を使ったのは戦闘開始から約5分後。その前に一度距離を取るから、その時がチャンスだね。念のため誤差はこっちで修正するけど、タイムリミットを出しておくよ』

 

 なるほど。時間までは後3分程度か。

 

 結界を解除されてから魔法陣を組み立てるのに約5秒。

 到達までは1秒も掛からないだろう。

 

 だが、結界が解除された瞬間俺の事が露見する。

 

 今は俺と言う不純物が居ないので記憶の通りに進んでいるが、露見した後はどうなるか分からない。

 

「気高き翼は地へと失墜し、抗えど訪れる死の足音。神秘と幻想の境目に嘆きの慟哭が響く」 

 

 鼻の下から温かい液体が垂れてくる。

 不快感があるが、この程度気にしてはいられない。

 

 詠唱時間約20分。作り出した魔法陣は約千。

 

 威力は大体イギリスの時に使ったのと同じ位だろう。

 

『後10秒後だよ。座標を送るから、ミスらないようにね』

  

(任せな。時間はたっぷりと貰えたんだ。確実に消し飛ばして見せる)

 

「地を這う屍は骸に変わり、新たなる世界が幕を開ける。月が陰り太陽が欠け、空は裂け地は凍る。嗤え鳴け叫べ。救いは潰えて希望は消え失せる。法則は乱れて黄昏が姿を現す」

 

『残り6秒!』 

 

 ――何とか準備が整ったな。

 

 何度かさっさと発動させようとも思ったが、これで終わりだ。

 

 結界が解け、全ての魔法陣が空へと広がり、意味のある1つの魔法陣を作り出す。

 

 杖を地面から引き抜き、最後にありったけの魔力を込める。

 

 座標良し。魔法陣に綻び無し。魔力障壁は破滅主義派と隔てる1枚だけで良いだろう。

 

 さあ、この姿で放てる最強の魔法だ。

 

 最低3人。出来れば全員倒されてくれ。

 

 「永劫たる時は全てを併合する。――白き花畑に佇む失われた少女(クロノ・ジ・ヴァニッシュメント)――」

 

 指定した範囲を塗りつぶし、全てを焼き尽くし凍り付くし切り刻み吹き飛ばす魔法。

 

 魔法である以上防ぐことも出来るが、本来地上に向けて撃ってはいけないレベルの魔法だ。

 

 空が焼け、飛んでいた粒子は全て吹き飛び、俺も飛ばされそうになる。

 

 10キロ位離れているはずなのだが、最低限こちらにも防御用の障壁を残しておいた方が良かっただろうか?

 

(報告を頼む)

 

『ちょっと待ってね……4人の死亡を確認。ひとり生き残ってるね』

 

 撃ち漏らしか……いや、4人を犠牲にして生き残ったのだろう。

 

 全員殺せれば良かったが、ひとりくらいなら問題ない。

 

 鼻血を拭い、自分に回復魔法を使う。

 

 頭もスッキリしたし、魔力は少なくなったがその内回復するから問題ない。

 

(行くぞ)

 

『大丈夫だとは思うけど、私たちにも気を付けてね』

 

 本来ならあり得ない現象が此処では起きているからな。

 もしも取り付く暇もなく攻撃されるなんてことがあれば、切りたくない手札を切ることになる。

 

 一応正義側だから無いだろうが、アクマが忠告する以上は気を付けておいた方が良いだろう。

 

 一歩間違えれば殺していた可能性もあるしな。

 

 三点セットの翼を展開し、最速で爆心地へと向かう。

 

 そこには驚き固まる魔法少女が3人と、倒れ伏す魔法少女がひとり居た。

 

「誰!」

 

 見覚えのある魔法少女が、俺を睨み付けてくる。

 少々髪の色や見た目が違うが、こいつがソラだろう。

 

「助っ人ですよ。ご覧の通りね」

 

 廃墟や汚染された大地が吹き飛び、深々と傷跡の残る大地。

 落ちたら普通に死ぬ程度まで抉れていて、凍っていたり煮えてたりしている。

 

「それを信じろと?」

「生きていることが証拠ですよ」

「待って! こいつ、契約者だよ」

 

 この世界のアクマがソラから分離して、睨み付けてくる。此方も見た目は俺が知っているアクマと違うが、こいつがアクマなのは分かる。

 

「うわ、本当だね。でもなんかおかしいよ?」

「助けてはもらったけど、あわよくば……なんて気がする」

 

 フールにメサイアか。

 フールじゃない方がメサイアなので、分かりやすい。

 

 だが、雑談は後だ。

 

「雑談の前に、そこの生き残りを殺しましょう。どうやら薬も服用したようですからね」

「あっ! ○○ちゃん!」

「うわ、全員死んだと思ったのに」

 

 残ったひとりはこれまで俺が戦ってきた魔法少女同様に化け物となり、今にも動き出そうとしていた。

 

 流石に契約者3人に勝てるはずもないだろうが、戦う意思がまだあることは喝采に値する。

 

「私は見学しますので、あれはお願いします」

「あなたは戦わないの?」

 

 フールの契約者が期待の眼差しを向けてくるが、この後のことを考えれば魔力を使うのは極力控えたい。

 

 それに、この姿で戦いに巻き込まれれば、簡単に死んでしまう。

 

 顔合わせだけしたし、後は任せて傍観しよう。

 

「それではまた後程お会いしましょう」

 

 空へと逃げ去り、戦いが始まった。

 

 案の定、戦いは一方的だった。

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