魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法……少女? グリント

「なんで……なんでよ!」

「お前が現れなければ!」

 

 魔女がやっている事はただの八つ当たりだからな。

 その気持ちは分かる。

 

 元を正せば魔女を追い詰めた人類が悪いのだが、それに巻き込まれた俺たちからしたら、たまったものではない。

 

 だが、もうそろそろだな。

 

 ふたりがアルカナを解放していられる時間はもう少し残っているが、次は確実に命まで剣が届くだろう。

 

 それに、アルカナもな。

 

 ふたりが動き出すのに合わせて前に出る。

 

 地面が裂けるのに合わせ障壁を出し、死角から飛んでくる魔法を纏っている魔力で弾く。

 

 更に魔法に込められている魔力を自分の魔力に塗り替え、お返しとばかりに撃ち返す。

 適応し、理解したからできる荒業。

 

 左の剣でアクマの契約者の心臓を貫き、爆発させ、イブの契約者に向かって蹴り飛ばす。

 受け止めた所を纏めて貫く。

 

「恨んでくれて構わないわ。さようなら」

 

 イブの契約者が最後の力を振り絞って何かしようとするので、首を絶っておく。

 

 彼女たちには何の罪もない。巻き込まれて殺された、ただの被害者だ。

 

『反応消失。確実に死んだよ。アルカナもね』

 

(そうか。態々魔力を流し込んだ甲斐があった)

 

 強いには強いのだが、最近戦った相手が桃童子さんだった事もあり、格落ち感が否めない。

 

 アルカナの方も俺のアクマと違い、まだ戦いに慣れていないのもあるのだろうが、全体的に固い印象を受けた。

 

 なにより、俺を殺すと言っておきながら、ふたりには迷いが見えた。

 魔女が憎く、殺したい相手ではあるが、人を殺すのに慣れていない。

 

 ふたりを殺すだけならもう少し早く出来たが、念のためアルカナも再起不能にしようとしたら、思いの外時間が掛かった。

 

 アルカナを逃がしたらゲームオーバー。なんて落ちがあっては敵わない。

 

『ハルナ……』

 

(なんだ?)

 

『私は……私のしてきたことは間違いではないと思っている。だけど、彼女たちの想いを、最後には裏切って逃げ出したんだ。そんな……卑怯な存在なんだ』

 

(感情があるのならば、仕方のないことさ)

 

 一度の勝利もなく、幾多の魔法少女を死に至らせ、自分たちは次の世界に逃げる。

 

 怨嗟の声を言われることもあれば、願われることもあっただろう。

 

 人に学び、人と生き、人に絆され。

 

 僅かに残った燃えカスを抱いて逃げ出したのだ。

 

『それが許されないのが、私たちなんだ。勝てれば……力があれば、違ったのかな?』

 

 掠れるような声。俺の中で泣くのは勘弁してほしいものだな。

 

(さあな。犠牲が無駄だったとは言わないが、過去は過去だ。滅んで無くなったモノは元に戻らないし、俺たちが戦ったのもただの魔法だ。今更気にしても仕方ない)

 

 前も今回も魔法で再現されただけで、既に終わった過去だ。

 

 あり得たかもしれない幸福な可能性と、これから起こり得るかもしれない可能性。

 どちらも、精神的ダメージは計り知れないだろう。

 

 問題は俺に対する攻撃のはずなのに、何故かアクマの方がダメージを受けている点だろうか。

 

 俺に対して戦う事の意味を投げかけてきているのだろうが…………そんなものは俺には無い。

 戦う事自体に意味があり、それ以外は付属品だ。

 

 相手が魔女だろうがアルカナだろうが、関係ない。

 

 フユネを解除して白いローブ姿に戻ると、空から崩壊が始まった。

 

 魔法が解けると、研究所のどこかの部屋にいた。

 

 部屋の中央には水晶が浮かんでおり、前と同じく点滅している。

 

 氷槍を撃ち出して水晶を砕くと、再び一冊の本が現れた。

 

(またこれか。今度は何が書かれていると思う?)

 

『魔女が魔女になってから思った事か、私たちへの当て付けかな?』

  

 どちらも可能性ついては大いにありそうだな。

 

 さて、何が書かれているかな?

 

『実験は成功した。だが、それと同時に追われる身となってしまった』

 

 ページを捲り、最初に書いてあった文字。

 

 どうやらアクマが言った事は的中したかもな。

 

『私は私の想いを否定する気はない。世界が私を殺そうとするならば、私が逆に殺してやる。そうすれば、私の様に悲しむ者が生まれる事は無くなる。それに、最初の頃は大変な相手だったが、今となってはあいつ等は良い試金石だろう。世界が正しいのか、私が正しいのか。元々時間の掛かる計画だ。彼らを全員倒す事も、計画の一つとして取り込もう。それと、幾多の世界を経験している内に協力者となってくれる者を発見できた。存在していた場合、この者が居ると雑務を代わってくれるので、私が遊べる時間が出来る。私が人としての生を忘れないためにも、破壊だけで終わらせてはならない。どうやら人である限り、神等と言った上位存在は私に手が出せないみたいだ。少しずつ目的の世界に近づいて行ってるのを感じる。滅ぼしてしまった世界には悪い事をしたと思っている。しかし、私が居なかったとしてもどうせ滅びていたかもしれない世界だ。私はもう、後には引けない』

  

 手記を読み終わり、アクマにしまってもらう。

 

 時期的に、アルカナたちとの戦いを始めてそこそこ経った頃みたいだ。

 

 一度引き金を引いた手は軽くなると聞くが、一度引き金を引いたならば、常にその責任が付いて回ることになる。

 

 魔女が殺してきた人は、既に数えるのも馬鹿らしい程だろう。

 ここまできて自らの行いが間違っていたなんて認めれば、さっきの魔法少女たちの死は無意味となる。

 

 それはあまりにも悲しいことだろう。

 

(全く、面倒な奴だな)

 

『人の選択を歪めれば、家畜と大差ないからね。自由意思に任せた結果ならばそれを受け入れ、人が起こした罪ならば人が裁かなければならない……筈なんだけどね』

 

 識別上魔女は人だが、その強さはこれまでの結果が示している。

 だからアルカナが居るのだが……実質敗退したわけだからな。

 

 俺はジョーカーでなければエースでもない。

 盤外の一手と呼べるような奇策でもないし、奇跡と呼べるような存在でもない。

 

 ただの寄せ集め。そんなモノだ。

 

 さて、次で結界が解除出来る。

 僅かに頭痛がするが、この程度なら問題ない。

 

(行くぞ……)

 

『うん』

 

 研究所の出口に向かって歩き出す。

 

 人骨の様なものが見えた気がするが、世界なんてこんなモノなのだろう。

 

 

 

 

 

 1

 

 

 

 

 

「それじゃあ行くよ」

「ああ。任せたよ」

 

 アロンガンテから依頼を受けたグリントとジャンヌは、グリントの魔法で出されたロボットであるリンドに乗り込んだ。

 

「乗るのは久々だが、これが魔法だって言うのだから驚きだ」

 

 リンドは魔法で召喚されたものだが、中は完全に機械であり、ファンタジーではなくSFの世界のものだ。

 リンドの全長は5メートル程であり、ふたりも乗れば窮屈そうであるが、搭乗部は魔法で拡張されており、ふたりでも問題なく乗る事が出来る。

 

「それは私も思うよ。それじゃあ起動するからしっかり座ってくれ。座標固定。接続開始。少し魔力の消費が激しそうだが、問題はなさそうだ。いくよ――次元跳躍」

 

 リンドの姿が消え、次の瞬間にはユーラシア大陸の上空に居た。

 

 空には魔物が溢れ、地上にも魔物と思われる黒い点が蠢いていた。

 

「成功だ……おや? どうやらレンが頑張ったみたいだね」

「タラゴンの采配だろうな。だが、やはりレンは凄まじい魔法少女だね」

 

 視界の端に映る海は波を打つことなく、その姿を水から氷に変えていた。

 

「先ずは魔法局に送ろう」

「頼んだよ」

 

 グリントはリンドをアメリカの魔法局本部に飛ばした。

 

「あなたは! よく来てくれました!」

「丁度良かった。ジャンヌを連れてきたから局長のところまで」 

 

 魔物を轢き殺しながら魔法局に着いたグリントは、たまたま居た魔法少女に声を掛けジャンヌを預けた。

 

「何かあったら呼んでくれ。直ぐに駆けつけよう」

「ああ。そっちもやりすぎないようにね」

 

 リンドが空へと飛び立ち、巻き起こった風がジャンヌと魔法少女の間を吹き抜ける。

 

「さて、ここからは遊撃だが、武装には注意しないとな……」

 

 グリントは魔法少女と呼ばれる人種の中で、最も変わった魔法少女だ。

 

 アロンガンテの様なSFチックな武装を持った魔法少女はたまに居たが、SFそのモノを装備するような魔法少女はこれまで現れなかった。

 

「ミサイル系は全て威力が高すぎるからカットだな。レールガンは運が悪いとまた衛星を壊してしまうか……」

 

 グリントの武器であるリンドは様々な武装を換装する事で様々な魔物と戦えるのだが、基本的に全て火力が高く、結界外で使う事を楓に禁止されている。

 

 今回の様な緊急時なら問題ないだろうが、それでも配慮しなければならないのが、大人としての配慮だろう。

 

「使えるのは通常弾のアサルトと拡散型のビーム兵器位か……爆発させてこそ戦いなのだがな」 

 

 グリントの能力は魔法少女してのリソースを大きく逸脱しているが、これには絡繰りがあった。

 

 見た目だけではなく、中身も他の魔法少女とは違う要素があるのだ。

 

「システム。戦闘モード起動」

 

『声紋確認戦闘モード起動』

 

 リンドの全身に緑色の光が走り、ツインアイに光が灯る。

 

「左手に実弾系のショットガン。右手に中口径のアサルト。それと、火力が低いのを適当に頼む」

 

『承知しました。換装します』

 

 リンドの周りに魔法陣が浮かび上がり、リンドに武器を装備させる。

 

 アサルトライフルとショットガンを手に持ち、両肩にはミサイルポットが装着された。

 

「これだけ弱いのを使うのは久々だが……暴れるとするか」

 

 グリントは初めて魔法少女になった時から規格外だったが、ランカーになるまでの間に、二度魔法少女の能力を継承していた。

 

 実質魔法少女3人分の強さがグリントにある。

 

 あくまでも普通の魔法少女3人分なので、規格外である楓やレンには一歩劣る。

 しかし魑魅魍魎が跋扈する日本で4位のランキングに居るのは、伊達ではない。

 

 空へと舞い上がったグリントは目に映る魔物をロックし、両肩のミサイルを全て撃ち出す。

 

 撃ち漏らしをアサルトライフルで処理し、近付いてきた魔物をショットガンで的確に仕留める。

 

「リロード」

 

『リロード開始……完了』

 

 ミサイルポッドに次弾が装填され、再びロックオンをしてミサイルを放つ。

 

 魔法局上空に居た魔物は殆どが塵に変わり、ミサイルの撃ち漏らしがなくて良かったと、グリントは思った。

 

 空だからと火力の高く爆風の強い武器を使っても良いと思われるかもしれないが、弾の当たる当たらないはグリントの技量に依存しているものがある。

 

 そのため、ロックオンしたからと言って間違いなく魔物にミサイルや弾が当たるわけではない。

 

 運悪く撃ったミサイルが建物に当たる。

 

 そんな事が昔あったのだ。

 

 魔法少女だからと、器物破損が許されるわけではない。

 勿論今の様な状況なら例外が適用されるが、後で頭を悩ませる事になるのはアロンガンテなので、建物へ配慮しておこうとしているのだ。

 

 ついでに味方である魔法少女を巻き込まないようにもしている。

 

 ただの魔法少女では、誤射に当たれば命に関わる可能性がある。

 

「後は任せるよ! 健闘を祈る」

「ご協力ありがとうございました!」

 

 粗方魔物を倒し終えたグリントは魔法局の防衛に当たっていた魔法少女に声を掛け、リンドに搭載されているレーダーを頼りに、強い魔力の反応がある方に向かった。

 

(魔力パックは3個か。強化フォームの制限は10分位に設定しておくか)

 

 強化フォームは単純に魔法少女が強くなった姿のため、魔力切れを起こすまでは何の問題もなく戦える。

 

 それが普通なのだが、能力が普通ではないグリントの強化フォームは、やはり普通ではないのだ。

 

 リンドの能力を大きく向上させる反面、魔力を際限なく消費してしまう。

 魔力をバッテリーとして保存しておき、いざと言う時に使う事も出来るのだがここ最近は出撃の回数が多く、あまりストックが無い。

 

 他の魔法少女なら魔力が限界ギリギリになったとしても多少無理が出来るが、魔力をリンドに吸われているグリンドは無理が出来ない。

 消費魔力が激しいため、直ぐに命に関わるレベルになるのだ。 

 

「おっと」 

 

 空に居る魔物を優先的に倒しながら進んでいると、地上の方からグリントに向かって魔法が飛んできた。

 グリントを狙ったものではなさそうだったが、その威力は当たったらただでは済まなさそうだった。

 

「距離はありそうだが……解析と参照をしてくれ」 

 

『了解しました……完了。リリウムナイトの魔力と、未確認の魔法少女の魔力を確認』

 

「ふむ」

 

 グリントが地上の方に視線を向けると、視界の端の方で再び魔法が空に向かって放たれた。

 都市部から少し離れた荒野だが、地上と平行に撃たれたら都市まで届きそうな程の威力だ。

 

 余波で魔物も塵となっているが、助けに向かうべきか魔物の殲滅を優先するべきか、グリントは迷った。

 戦っているのはアメリカの魔法少女ランキング1位のリリウムナイトだ。

 

 楓程ではないが魔法少女の中では最強に名を連ねる存在であり、そんな魔法少女が戦っている相手が、普通である訳がない。

 

 相手は破滅主義派の魔法少女と考えるのが妥当だ。

 

「――行くか」

 

 ブースターを数度吹かして進路を変え、リリウムナイトの所に向かう。

 

 魔法少女相手は苦手だが、今はそんな事を言っている余裕はないのだ。

 

 

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