魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法少女と目的探し

「うう……中々やるみたいね」

「この状態で命乞いをしない事だけは、褒めてあげるわ」

 

 第二形態になり、驚いている間に大剣を吹き飛ばした後、喉元に剣を突き付けて終了だ。

 呆気ない幕引きだが、思っていたよりも弱くて助かった。

 

「敵対したい訳ではないので、攻撃の意思がないなら剣を収めますが…………」

 

 少しだけ剣の切っ先を喉に当てる。

 

「わ、分かったわよ! 分かったから早くどかして!」

「その言葉を信じましょう。もしも嘘だった場合は容赦しないので」

 

 剣を下げ、第二形態を解く。

 

 若干涙目だが、俺に喧嘩を吹っかけてきたのが悪い。

 

「最初の質問ですが、此処はどの国ですか?」

「此処? 廃棄指定地区第5封鎖区画よ」

 

 …………ふむ?

 

(アクマ)

 

『私の記憶の中に、そう呼ばれていた地区がある世界は無いね。魔女が私やハルナが全く知らない世界を指定するとは思えないし……』

 

 まだ確証を持てる情報はないし、もう少し探りを入れてみるとするか。

 

「そうですか。人が住んでいる場所は此処から近いですか?」

「はぁ? 地上に人が住んでいる訳ないでしょう。宇宙か地下にしかまともに生活できないでしょうが。そんな常識も知らないなんて、まさかコールドスリープでもしていたの?」

 

 呆れ顔で馬鹿な事を言われたが、一発引っ叩いてやろうか?

 

 しかし、地上に人が住めないとはな。

 俺が居た日本でもこれだけ荒れた地は無かった。

 

 廃棄指定地区第5封鎖区画と言っているが、第五と付いている辺り、他もこんな感じなのだろう。

 

「そんなものです。因みに、あなたが帰る場所に私も一緒に行くことは出来ますか?」

「無理よ。生態情報を登録したICカードが無いと、都市に入ることは出来ないわ」

「無理矢理入った場合はどうなりますか?」

「未登録の人間は直ぐに見つかって、懲罰部隊に殺されるのが落ちよ。噂では地上で暮らしている人も居るらしいから、探してみるのはどう?」

 

 科学的に俺が生きていた世界よりも進んでいる感じがするが、人の住んでいる場所に行けないのは困るな。

 人が居るか分からない地上よりも、人が居ると分かっている場所に行きたいが、下手な事をして首を絞めるのはよした方が良いだろう。

 

 少し探索をしてみて、駄目なら侵入してみるのも一つの手かもしれない。

 

「そうですか。最後ですが、人が住んでいる地下にはどう行けばいいですか?」

「それを話す事は出来ないわ。下手な機密漏洩は死罪になるんだもの」

 

 まあ、そうなるか……仕方ないが、聞き出すのは諦めよう。

 

「色々と教えていただきありがとうございますした。私の事は黙っていて下さい。理由は……分かりますね?」

「大丈夫よ。私がランカーなら助けられたんだけど、ごめんね。事情は聞かないけど、味方として会えることを願ってるわ」

 

 これ以上聞いても意味は無さそうなので、赤い髪の魔法少女を解放する。

 管理社会の感じもするし、あまり拘束したままなのは不味いだろう。

 

 何かしらの魔法で監視されている可能性もあるが、こいつに助けが来ない辺りその点は問題ないはずだ。

 

 赤い髪の魔法少女が視界から完全に消え、溜息を吐く。

 

(どう思う?)

 

『多分だけど、此処はハルナが居た世界の未来だと思う。何かがあった、若しくはなかった結果の未来なんだと思う』

 

(その根拠は?)

 

『あの娘からタラゴンに似た魔力を感じたよ。それもハルナの世界のタラゴンのね』

 

 ああ。やはりタラゴンさんに近しい存在だったか。

 ふわりとしている赤い髪が、変身しているタラゴンさんそのものだった。

 

 目付きはかなりきつめだったが、やはりどこかタラゴンさんを感じさせるものがあった。

 

 しかし、あのタラゴンさんの子孫か。

 女性であるのだからおかしくないが、あの人が結婚をしたことが驚きである。

 

 まあ、あの魔法少女のことはおいといて、地上で暮らしているらしい人たちを探してみるか。

 

(地上で暮らしているらしい人を探してみようと思うが、どう思う?)

 

『それしかないんじゃないかな? これまでみたいに明確な目的も見つからないしね』

 

 何もない荒野に放り出して終わりなんて事はないだろうが、せめて道標的な物が欲しかった。

 

翼よ(フリューゲル)

 

 アクマの索敵が現実と同じ様に使えれば良いのだが、今は自分の足で探すしかない。

 

 此処と現実とでどれ位時間に差があるか分からないが、なるべく急いだ方が良いだろう。

 

 ギリギリまで高度を上げ、目印になりそうなものを探す。

 宇宙にも人が住んでいると言っていたが、そっちは流石に行くことは出来ない。

 

 しかし、見渡す限り荒野ばかりだが、本当に何があったんだ?

 

 アクマの予想が当たっていたとして、どれ位未来か分からないが、荒れたままの大地ってのは流石におかしい。

 時間が経てば草木などが生えても良いものだが、岩と砂くらいしかない。

 

 日本なんて雨や気候に恵まれているのだし、少しは回復しても良いと思うのだが……。

 

 おっと、今視界の端で何かが動いたな。

  

『ハルナ』

 

(ああ。とりあえず向かってみよう)

 

 

 

 

1

 

 

 

 

 20分程飛んで着いたのは、途轍もなく大きなクレーターだった。

 

 そこにはボロを纏った人たちがみすぼらしい生活を営んでいた。

 

 簡易な門と門番的な人も見えるが、飛んでいるおかげで、向こうはまだ俺に気付いてなさそうだ。

 

(正面から行くか、それとも空からこっそり行くか)

 

『結界は確認出来ないけど、さっきの話から推測するに認証とかもありそうだし、正面から行ってみる?』

 

 妥当ではあるが、門の所は地形により巧妙に隠されている。

 空を飛んでいるから見付けられたが、地上で探すのは難儀しそうだ。

 

 そんなところに小綺麗なローブを纏った少女が現れれば警戒されてしまいそうだが…………試してみる価値はあるか。

 

(そうだな。念のため第二形態で行くとしよう。そっちなら不意打ちにも対応出来るからな)

 

 低空飛行で近場の岩陰まで行き、第二形態になる。

 フユネさえ解放しなければ感情に吞まれることはないので、変装や奇襲に向いている。

 

 さてと、どう反応されるかな?

 

 岩陰から出て門に向かって歩き出す。

 

「ま、魔法少女だ! 魔法少女が現れたぞ!」

「対魔法少女の武器を早く!」

「糞! やっと手に入れた平和だっていうのに、また追いやられるのか!」

 

(…………アクマさん?)

 

『いやー。この反応は予想できなかったね』

 

 まるで街に攻めて来た魔物への反応だな。

 このままでは戦う羽目になりそうだが、魔法少女や魔法少女に準ずるような存在は確認できない。

 

 対魔法少女と言っていたことを考えると、此処に戦力は殆ど無いのだろう。

 

 なんか白旗的なものでも振れば大丈夫か?

 

(次元バッグから白い布とか出せるか?)

 

『ロックされててアクセス出来ないね。とりあえず両手を上げれば?』

 

 さっきと同じだが、魔法少女が両手を上げても魔法が使えるし、剣も手元に召喚することができるので、意味はないんだよな。

 

「止まれ! 少しでも動けば撃つぞ!」

「敵ではないですよ。このままで良いので、質問をしてもいいですか?」

「……なんだ?」

 

 10人程が銃らしきもの向けてくるが、俺がストラーフさんから貰った銃に似ているな。

 俺が持っているのと同程度ならば、千発撃たれても俺の障壁を壊すことは出来ない。

 

「魔法少女を敵対視している様ですが、どうしてですか?」

「……お前。アルカディアやエデンの者ではないのか?」

「そこら辺の事はさっぱりです。此方に敵対の意思はないので、せめて武器を下ろしてもらえませんか?」

「ふざけるな! そんな言葉が信じられるものか!」

 

 最初に話しかけてきた男の後ろに居た若い男が、怒鳴りつけてきた。

 周りに居る数人も同調して頷いているが、これは悪い流れだな……。

 

 こういう時は鎌をかけるのが一番か。

 

「敵対するつもりなら、とっくに殺していますよ。魔法少女ならその程度簡単に出来るでしょう?」

 

 威嚇はするが、手出しはしない。

 出来れば俺に立ち去ってほしいのだろうが、俺も情報を集めないといけないので、それは出来ない。

 

 下手にごねる様なら、身体に聞いた方が早いかもしれないな。

 

 周りが俺に向かってヤジを飛ばしてくるが、どうしたものか……。

 

「静かにしろ! 確認だが、本当に攻撃の意思は無いんだな?」

「ええ。あなた方が私に協力するのならば、私もあなた方に協力しましょう。ギブアンドテイク……って事でどうですか?」

 

 欲しい情報さえ手に入ればお暇する気だが、この事は伏せておく。

 

「――全員武器を下ろせ!」

「隊長!」

「二度は言わん。命令違反は極刑と思え!」

 

 しぶしぶといった感じだが、全員武器を下げ、門の中へと戻って行った。

 残ったのは俺と隊長と呼ばれた男。それと銃を俺に向けていた中に居た女性の3人だ。

 

「分かっていただけたようで助かります」

「……お前の言葉は全て本物みたいだからな。我々も無意味に死にたいわけではない。名前はなんだ?」

 

 一般人では魔法少女に勝つのは不可能だからな。

 賢明な判断だ。

 

「イニーとお呼び下さい。あなた方は?」

「防衛部隊の隊長をしているリカルドだ。こっちは元魔法少女だったフランだ。お前が下手なことを言えば直ぐに嘘と見抜ける」

「フランよ。面倒事は起こさないようにね」

 

 リカルドさんとフランさんね。

 話の出来そうな人が居て良かった。

 

「此処はどういった場所なんでしょうか?」

「それすら知らないのか……此処は魔力を持たず、奴隷として扱われていた人間たちが逃げ出して作った集落だ」

「奴隷?」

「……どうやら本当に知らないみたいね。一から説明するからよく聞きなさい」 

 

 フランさんの話を聞き、おおよそだがこの世界の在り方が理解できた。

 

 この世界は第一次魔法少女大戦と呼ばれる戦争を境に荒廃し、2つの戦力に分かれた。

 

 宇宙を開拓しながら、地球の資源を狙っている勢力であるアルカディア。

 人工的に魔法を使える人類を作り出す技術を持っており、自分たちを選ばれた人類だと言いふらしているらしい。

 

 もう片方が地下で生息地を広げて、地球再生を企てているエデンだ。

 

 こう聞けばエデンの方が正義の様に思えるが、限りある資源を分配している以上、内情はどちらも酷いものだ。

 

 一部の能力の有る者以外は奴隷のように扱き使われ、使い潰されている。

 

 そんな生活から逃げ出した者たちが集まって作ったのがこの集落だ。

 地上でもまだ人が住める場所に集まり、助け合いながら暮らしているらしい。

 

 慎ましやかに暮らしているだけ。

 それで済めばいいのだが、そんなうまい話はない。

 

 突如現れる魔物。魔法少女同士の争い。

 

 いたずらに襲ってくるアルカディアやエデンの魔法少女。

 

 ただ生きたいだけなのに、それすら叶わない現状。

 

 破滅を先延ばしにし、訪れない未来に託す。

 

 ここまでが、フランが教えてくれたことだ。

 

 殊勝な態度で聞いていたせいか、リカルドが表立っては言えない情報も教えてくれた。

 俺の反応から探りを入れようとしたみたいだが、何も知らない俺には通用しない。

 

「現状を良しとしない反勢力。アンヘーレンですか?」

「その反応からして、関係はないみたいだな。今の発言は忘れてくれ。互いにいい結果を招かないからな」

「分かりました」 

 

 反勢力ね。いわゆるレジスタンスって奴だろうが、あまりよく思われていないみたいだな。

 

 下手に寄与すれば、簡単に滅ぼされてしまうと考えているのだろう。

 

「色々と教えいただきありがとうございます。ついでですが、今年って西暦何年ですか?」

「西暦でか? 一度変わったから正確には分らんが、おそらく3500年位だと思う」

 

 俺の世界の未来だとして、最低でも1000年以上経っているのか……。

 

 魔女が見せているのは俺たちが勝った未来なのか、それとも俺や魔女が居なかった場合の世界なのか。

 

 どうせ壊れる世界なのなら、先に滅んだ方がマシ…………か。

 

「そうですか。色々と話していただいてありがとうございます」

「次はこちらからだが、イニーはどれ位強いんだ?」

 

 今の状態では結構困る質問だな。

 この状態では魔法少女には勝てるが、魔物は強さ次第では倒す事が出来ない。

 

「……ただのランカーなら倒す事が出来ますね」

「ランカー?」

「昔の魔法少女の強さを示す指数の一つよ。今だとエデンのナンバーズや、アルカディアのロイヤルナイツとかと同じ意味の筈よ」

「……このチンチクリンがか?」

 

 やはり呼び方も変わっているか。

 そして強い魔法少女が一定数居るのは確定だな。

 

 情報としてはこれくらいあれば十分だな。

 俺に去ってほしいみたいだし、立ち去るとするか。

 此方からあげられるものはないが、こればかりはしかたない。

 

「色々と教えていただきありがとうございました。私はこれで去ります」

 

 次はどうするかと考えながら、リカルドたちに背を向ける。

 

「……待て」

「はい?」

 

 呼び止められるとは思わず、少し気の抜けた声が出てしまった。

 

「イニーが無害なのは話していて分かった。だから折り入って頼みがある」

「なんでしょうか?」

「少しの間でいいから用心棒をしてほしい。最近エデンもアルカディアもきな臭いらしく、色々と手を打っておきたい。防備を堅め終るまでの間で良いので頼む」

 

 ふむ。此方としては全くメリットがないが、情報料位は払ってやりたい。

 しかし、時間の制限がある以上一つの所に留まるのは……。

 

(どうする?)

 

『うーん。前の二回とは毛色も違うし、体感の時間と現実の時間も、かなりズレが出ているみたいだよ』

  

(どう言うことだ?)

 

『此処で過ごした1時間は、現実の1秒位みたいだね。だから時間的な猶予はあるけど、その代わり此処を抜け出すのは時間が掛かるかも知れないってこと』

  

 確かにこれまでは主要人物以外居なかったのに、今回は結構な人を確認できている。

 パパっと戦って終わりとならない以上、拠点を持っておくのは必要か。

 

(なら一旦此処で過ごしながら変化を待つか。きな臭いと言っているし、その内動きがあるだろう)

 

「良いですよ。居る間は食事と寝床をお願いしますね」

「それ位は問題ない。フラン。世話を頼む」

「分かったわ」

「よろしくお願いします。最後にですが……」 

 

 第二形態を解き、白いローブ姿になる。

 

 第二形態に長時間なっていると精神を蝕まれるので、解けるなら解いておいた方が良い。

 

「そんな馬鹿なこと……」

 

 フランさんが驚きのあまり固まるが、この世界でも強化フォーム以外で姿が変わる魔法少女はいないのかもな。

 

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