魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法少女と人の弱さ

「これが魔法少女の力なのか……」

「私は特殊ですけどね。中々面白い余興だったでしょう?」

 

 多少魔力を消費したが、この程度なら問題ない。

 現実の時間とズレてる筈なのだが、魔力の回復速度はあまり変わらない感じがする。

 

 魔法とはよくわからない。

 

「私は門の辺りで引き続き適当にしていますので、よろしくお願いします」 

「分かった。こちらもなるべく早く情報を纏められるように努力しよう」

 

 人は目で見て分かるものを好む。

 

 嫌いな魔法少女だとしても、助けてもらったのならば少しは協力してやろう。

 なんて、考えてくれているはずだ。

 

「フランさん」

「ヒッ! ……いや、なんだい?」

 

 恐怖に染まった目をしていたフランさんは、俺の声を聞いて正気に戻ったようだが、魔法少女としての常識を学んでしまっている以上、この反応は仕方ないのかもしれない。

 

「お風呂の件はいつが良いですか?」

 

 目から恐怖の色が抜け落ち、迷いの色が強くなる。

 

「――今からで良いかい?」

「ええ。少し開けた場所に案内してもらえれば、小屋と浴槽も私が準備しますけど、どうしますか?」

「私の家にほとんど使っていない風呂場があるから、そこにお湯を出してくれればいいよ。付いてきな」

 

 恐怖が欲に負けたようだな。

 

 集まった人たちをリーダーとリカルドさんが捌いている間に広場から抜け出し、フランさんの後に付いて行く。

 

「ここだ。少し散らかっているけど、気にしないでね」

 

 突然の魔法により住民たちが混乱しているおかげで、俺やフランさんに声をかける人は現れず、スムーズにフランさんの家まで来られた。

 

 岩……レンガの様な物質で作られた家か。

 見た事のない材質だな。

 

 家の中は門番が持っていた銃や、よくわからない機械が転がっている。

 

 女性の家としては少々酷いものだが、男としては見て見ぬふりをするのが優しさだろう。

 

「風呂場はそこの扉の奥だよ。風呂に入れるとはありがたいね」

 

 歩いている間に心の整理ができたのか、初めて会った時と変わらない雰囲気になっていた。

 

 風呂場は汚いというよりは単純に使われていないため、埃が積もっている。

 ガラス戸ではないが、一応窓もあるので、軽く掃除をしておくか。

 

 風を起こして埃を窓から外に出し、風呂場全体を軽く火で炙る。

 

 浴槽にお湯を注ぎ、湯浴みするたように桶を作り、そこにもお湯を注いでおく。

 

 …………いったい何をやっているのだと自問自答したくなるが、これは対価を払っているだけだ。

 それに、魔法の技量を上げるいい練習にもなる。

 

 攻撃魔法以外の魔法は効果が下がり消費魔力も増えてしまうが、多少改善できるのは洞窟で確認済みだ。

 先々のことを考えれば、熟練度を上げておいて損はないだろう。

 

「準備出来ましたのでどうぞ」

「ありがとう。イニーも一緒にどうだい? ふたり程度は余裕で入れるしね」

「遠慮します」

 

 フランさんの言う通り、ひとり暮らしにしては随分と広かった。

 だからと言って俺が入るわけはないので、フランさんにさっさと入るよう急かす。

 

 水の約束もしているし、待っている間暇だな。

 

 そこら辺に転がっている銃を手に取り、軽く弄る。

 

(この銃って俺が持っているのとどっちが高性能なんだ?)

 

『断然こっちだね。解析した感じ結構雑な感じがするから、本物の模造品だろうね』

 

 そう聞くと持って帰りたくなるが、あくまで幻想であるこの世界の物は、持って帰ることは出来ないのだろう。

 

 少々惜しい気持ちが湧くが、諦めるとしよう。

 

(本物だった場合、俺にダメージはあるか?)

 

『生身で受ければ骨折は余裕でするだろうね。ハルナが持ってるのとは違い、殺すための武器だしね』

 

 骨折態度ならば問題ないな。貫通するなら流石に困るが、血さえ流さなければほとんど魔力も消費せず回復できる。

 なんなら第二形態になれば、障壁で簡単に防ぐ事も出来るだろう。

 

 グレネードやミサイルクラスになれば流石に無理かもしれないが、銃弾程度なら全く問題ない。

 

 魔法は科学に勝てるが、科学が魔法に勝つのは難しい。

 

 魔力が無ければなにも出来ず、個人に依存してしまっているが、ナパームや弾道ミサイルでも持ってこないと魔法少女を殺すのは難しだろう。

 

「出たわよー。久々の風呂はやっぱり良いわね。それじゃあキンキンに冷えた水を貰おうかしら」

「……その前に服を着たらどうですか?」

 

 昔だったら普通に動揺していたと思うが、マリンやらタラゴンさんやらのせいで女性に対して動揺しないようになってきたな。

 

 俺も変わってしまったものだ。

 

「今服を着たら汗かいちゃうでしょう? それにしても、こんだけ贅沢にお湯を使えるなんてね。それに治療まで出来るなんて……これじゃあホラ吹きなんて言えないわね」

「裸で言ってもカッコつかないですよ。どうぞ」

 

 魔法で作ったコップに水を入れ、フランさんに渡す。

 それを一気に飲んだフランさんはお代わりを要求してきたので、追加で水を出した。

 

 その後やっと服を着てくれたフランさんは、散らかっている机から数枚の紙を手渡してきた。

 

「これは何ですか?」

「私が覚えている限りの、エデンとアルカディアの戦争の記録だよ。本当にコールドスリープしてたってんなんら、読んでおいて損は無いだろう?」

 

 戦力を知る上では確かに重要だな。時代を考えれば俺が知らない何かがあってもおかしくない。

 だが、少し困った問題がある。

 

(これ読めるか?)

 

『大丈夫だよ。内容をそのまま頭に流すよ』

 

(頼んだ)

 

 字が読めないのだが、アクマのおかげでなんとかなったな。

 

 ふむふむ。最初と最後の年数からみて、ここ50年ほどで起きた事が書いてあるのか。

 

 特徴として、アルカディアは宇宙に進出しているだけあって科学が発達しているため、魔法少女に追加で装備をさせているそうだ。

 だが、資源が枯渇気味のため、技術レベルに比べて全体的に貧弱だ。

 ただ地球の物資を狙っている癖に、負けそうになると汚染を気にせずやばい兵器を使っているそうだ。

 

 普段は本気を隠しているが、追い詰められると後先考えずに暴れだす狂犬か。

 

 エデンの方は過去の妖精が残した技術を分析しているため、どちらかと言えば魔法よりだ。

 ただ、魔法と科学を融合させた魔科学が発達している。

 

 アルカディアみたいに科学物質による汚染はないが、エデンが使う一部の武器は魔力汚染を引き起こす物がある。

 

 結局、どちらも戦えば戦う程地球を駄目にしているのだ。

 妖精が去った経緯は分からないが、人間に嫌気が差したのだろうな。

 

 争う事しかできず、自ら破滅への引き金を引いた人類と一緒に居ては自分たちも同じ道を辿ると思ったのだろう。

 

 或いは楓さんと裏取引でもしたか……妖精界は魔法少女だけではなく、人間にとってもシェルター的な存在だったが、無くなったのは痛手だっただろう。

 

 しかしこの情報からだと、下手に時間をかけるのは悪手だな。

 

 馬鹿な真似をされる前に倒すのが理想だが……後は明日貰う情報を見てから考えるとしよう。

 

「此処へ来る前に、廃棄指定地区第5封鎖区画という名前を聞いたのですが、今の地球でまともに人が住める場所はどれ位あるんですか?」

「さあね。私が逃げてから移動は2回したけど、小さい集落の様なモノはいくつか見たけど、此処まで大きいのはそこまで多くないと思うよ」

「あなたが居るからですか?」

「まあね。戦力的にはカスかもしれないけど、生きる術だけなら色々あるからね」

 

 弱い者が生きるために知恵を振り絞るのは昔からの事だが、ギリギリとはいえよくこれだけの規模の集落を保っていられたものだ。

 

「色々と絶望的なのはよく分かりました」

「読んだから分かると思うけど、これ以上地球を汚されれば、星としての命が保てなくなると思うわ。だから、本当に勝てるとしても、戦い方に注意してね」

「そのようですね。どちらも地球を破壊出来る兵器を、隠し持っている可能性がありそうですからね」

 

 手に入らないなら壊してしまえ。たとえ自分たちが死ぬことになっても。

 そう考える人が居てもおかしくない。

 

 楓さんも下手に地球を残さずに壊してしまえば良かったのに……情を捨てきれなかったのだろうか?

 

「私はこれで失礼します。お湯と桶は後1時間もすれば消えるので、何もしなくて大丈夫です」

「そう。助かったわ。時間が空いたらまた会いに行くわ」

 

 フランさんの家から出て、少しだけ喧騒が収まった道を歩いて門の所に戻る。

 

 どんよりとしていた空気が少しはマシになり、少しだけ明るい声が聞こえる。

 

「戻ってきたのか。さっき降り注いだ光はお前がやったのか?」

「はい。身体が軽くなったでしょう?」

 

 門に戻ると、先程と同じ門番が話しかけてきた。

 

 少し表情が柔らかくなっている気がする。

 

「ああ。そこで不貞腐れているあいつも感謝はしていたよ。アルカディアの魔法少女に襲われた時、怪我をした足が治ったってな」

 

 全く気にしていなかったが、もうひとりは最初に来た時、リカルドの後ろで騒いでいた奴か。

 チラチラとこっちを見ているが、無視で良いだろう。

 

「そうですか」

「俺たちも頭では全ての魔法少女が悪いとは思っていない。けど、心が許容してくれないんだ。魔法少女だけでなく糞みたいな権力者なんかも居たが、俺たちを追い詰めたのはいつだって魔法少女だった」

 

 個人ではなく、種そのものが許せない。魔法少女であればどんな存在であれ敵である。

 気持ちは分かるが、それではまた同じことをこいつらがやるだけだろう。

 

 俺が勝ったとしても今度はただの人が魔法少女を虐げ、今度は魔法少女が反旗を翻すのだろう。

 もしくは先に人類同士が争い、破滅するか。

 

 俺とは相容れないが、この世界はお互いに手を取り合い、平和を目指さなければならないだろう。

 それが生き残るための、唯一の道だろう。

 

「だから自分たちが、魔法少女を追い詰めて殺せるなら殺したいと?」

 

 この世界での大体の目標は分かってきたが、念のため意識改革もやっておいた方が良いだろう。

 釘なんて刺すのは性に合わんが、やれることはやっておこう。

 

「あいつらは人の皮を被った化け物だ。ひとりとして生かさない方が人類のためだ。全ての魔法少女が居なくなれば……」

「今度は人同士が争う。どうせそうなりますよ。あなたの様な考えを持っている限りね」

「――ああ。だから隊長やフランさんが認めたお前に期待しているんだ。全てをぶっ壊してくれそうなお前にな。さっきの様な奇跡を見せてくれるなら、俺も変われるかもな」

 

 今のままならどうしようもないが、俺次第では変われるかもしれない。

 他人任せなのは癪だが、少しでも考えが変わるのならば悪くない。

 

 日が暮れるまで門の前で見張るが、魔法少女も魔物も現れる事は無かった。

 

 明日情報を貰ったら早速動き出すとしよう。

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