魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法少女と新たな組織

 ミトスに来てから三日目。

 シャワーなんてものは無いので自分に浄化の魔法を掛け、軽くお湯を浴びてから湯船に浸かる。

 

 自分で作った小屋で寝泊まりしているが、能力が属性魔法で良かったとつくづく思う。

 

 飯だけはどうにもならないが、逆に言えば飯以外は魔法でどうにかできる。  

 

『おはよう。調子はどうだい?』

 

(可もなく不可もなくだ。そっちは相変わらずか?)

 

『うん。解析しようにも完全にブラックボックスだし、何か抜け穴を探そうとしても、下手に突くとカウンターを食らいそうなんだよね』

 

(端から分かっていたことだが、正攻法で攻略するしかないか)

 

『だね。ハルナが死ななかったとしても、何をもって失敗判定されるかも分からないし、そうなった場合ハルナが死なないとも限らないもんね』

 

 そこがネックなんだよな。

 魔女が指定しているであろうクリア条件を満たせなかった場合、俺は一体どうなるのだろうか?

 戻されるのか、囚われるのか。それとも死ぬのか。

 

 なんにせよ悪い事しか起きそうにないので、アクマも色々と慎重になっている。

 

「起きてるかい?」

 

 風呂から出て着替えていると、外からフランさんの声がした。

 

「おはようございます」

「おはよう。エデンとアルカディアの資料だけど、もう纏め終わったそうだよ」

 

 中々早いな。

 

 時間を考えると夜通し頑張ってくれたのだろう。

 ただ、アロンガンテさんを知っているせいで、とても早いと思うことが出来ないのは仕方ない。

 

「それはありがたいですね」

「昨日の礼のために頑張ったらしいよ。これで少しは魔法少女に対する偏見も無くなればいいんだけどね」

「人は簡単には変わりませんよ。特に、弱ければ弱いほどね」

 

 何も出来ないからこそ、その恨みはずっと胸の奥底で燃え続ける。

 俺もそうだ。

 今だって忘れる事も、許す事も出来ないでいる。

 

「違いないわね。打ち合わせついでに朝食も用意してあるから、付いてきな」

 

 フランさんの後に続き、昨日リーダーであるバルバトスさんと話した部屋に向かう。

 

 昨日に続き若干活気があるようで何よりだ。

 

「来たか。とりあえず座ってくれ。おい。食事を頼む」

 

 部屋に入ると、リーダーが書類に何かを書いていたが、俺が入ってくるとペンを置いて部屋の端に居た女性へ食事を頼んだ。

 机の上にはそれなりの量の書類が置かれているが、全て紙媒体か……読むのが面倒そうだな。 

 

「昨日の魔法は助かった。おかげで暗い顔をする奴が少なくなった」

「大した労力ではないのでお構いなく。そこの山がエデンとアルカディアの資料ですか?」

「ああ。戦力は無いが、その分情報は集めているからな」

 

 どさりと置かれたので、上から順番に読んでいく。

 まあ俺は読めないので、アクマに解読してもらって頭に情報を流してもらうだけだがな。

 

「……それだけ早く読んで覚えられるの?」

「はい。慣れているので」

 

 さらりと噓を吐き、飯が来るまで紙を捲り続ける。

 

「集中しているところ悪いが、飯だ」

「……ありがとうございます」

 

 時間がズレているんだから腹も減らなければいいのに、なぜか腹が減る。

 飯の美味さは豊かさに比例する。

 

 こんな滅亡に向かっている様な場所の飯が美味しいわけないのだ。

 

 不味い飯を軽く食べ、再び読み進める。

 

 1時間程掛けて全てアクマに読ませ、情報を頭に流してもらった。

 

 先ずはアルカディアだが、拠点数は宇宙に4ヵ所と地上に4ヵ所。他にもあるだろうが、大きいのはこの合計8ヵ所だ。

 ロイヤルナイツと呼ばれる、12人魔法少女を筆頭にした組織となっている。

 

 名前や性格などはどうでも良いが、どんな魔法が使えるかくらいは覚えておこう。

 

 各拠点にはやはり結界や防衛システムがあるみたいなので、発見や侵入は難しいみたいだが、大まかな位置は特定できている。

 

 戦いの基本は()られる前に()ることだ。

 

 罪の無い人も居るだろうが、諦めてもらおう。

 

 そして昨日懸念していた化学汚染を伴う兵器は、全て宇宙にある拠点にある可能性が高いそうだ。

 

 地球での誤爆を恐れてだろうが、これは良い事を知る事が出来た。

 

 続いてエデンの方の分かっている拠点数は5ヵ所。

 

 だが、兵器を保管している場所は別にある可能性が高いらしい。

 どちらの汚染も人体に多大なる影響を与える。

 

 更に土壌は汚染されて生物は生きていけなくなり、植物も育たない。

 魔力汚染の方はそれだけではなく、人を変異させる。

 

 生活をしている拠点に置いておきたいとは思わないだろう。

 懸念材料は、兵器を保管している拠点を遠隔で操作できるかどうかだな。

 

 下手に拠点ごと爆発されたり、適当に撃たれたりしたら困る。

 

 エデン側は魔法少女と組織としての運営は分かれているみたいだが、その代わり完全に階層社会となっているみたいだ。

 これについてはアルカディアも似たようなものだが、低い地位。奴隷を酷使して他の人々の不満を和らげている。

 

 そして互いに争いあう事で、何とか組織としての体制を保っているみたいだ。

 

 最後にリカルドさんが少しだけ話した、アンヘーレンという組織についてだ。

 

 此方はエデンやアルカディア程情報が書かれていなかったが、どうやらカラーズと呼ばれる7人の魔法少女を主軸に置いた組織みたいだ。

 主に地球で生きているエデンとアルカディアに関係ない人々の支援を行っている。

 

 集落などに現れた魔物や、エデンやアルカディアの魔法少女と戦うのが、支援の一部だ。 

 

 アンヘーレンの一番の目的はエデンとアルカディアが持っている最も危険とされている兵器の破壊だ。

 某ゲーム風に言うなれば、核の発射阻止と言ったところか。

 

 そしてエデンとアルカディアを解体し、地上を復興させて再び人類が元の生活に、戻れるようにする。

 掲げている目標は素晴らしいものだが、あまり共感をすることは出来ない。

 

 紙に書いてある通りならば、自給自足をする手段をほとんど持っておらず、エデンやアルカディアから物資を奪っているのが現状だ。

 

 他の組織に比べればアンヘーレンの方が多少マシかも知れないが、動き次第では一緒に倒してしまった方が良いだろう。

 

「読み終わったようだが、これからどうする気だ?」

「そうですね……」

 

 俺から返された資料をバッグに詰めながらリーダーが聞いてきた。

 

 出来る事ならば一網打尽だが……少し踊ってもらって、その間に裏で動くとしよう。

 

「アンヘーレンの人間にアポを取ることは出来ますか?」

「一応できるな」

 

 それは助かる。ならば、取る手は決まった。

 

「分かりました。地図はありますか?」

「あるが、どうする気だ?」

「エデンとアルカディアの拠点を、超遠距離から攻撃し破壊します。おそらく互いが互いに攻撃されたと勘違いすると思うので、戦うのに良さそうな所に誘き出し、アンヘーレンの魔法少女たちに戦って貰います」

「どちらも索敵用のレーダーや魔法を使っているが、大丈夫なのか? それに、アンヘーレンが承諾しなかった場合は?」

 

 心配はごもっともだが、座標と距離が分かれば、後はアクマの調整でどうにかなる。

 現実みたいな広範囲での索敵は出来ないが、大雑把に攻撃するならば問題ない。

 

 それに、アンヘーレンを動かすのはおそらく簡単だろう。

 

「拠点への攻撃は問題ないです。座標さえ分かればどれだけ地中深くても破壊は可能です。アンヘーレンについては、回復魔法を交渉材料にすれば頷くはずです。居ないのでしょう? あの規模の回復魔法を使える魔法少女なんて」

「……確かにな。分かった。アンヘーレンの連中には連絡を取っておこう。それで、その後はどうするんだ?」

「アンヘーレンたちが戦っている間に、兵器の方を私の方で使用できないようにします。その後は、主要魔法少女全員に死んでもらいます」

「お前……」

 

 戦いのカギは、俺がどれだけ早く兵器を無効化できるかだろう。

 兵器を探している時に、ナンバーズやロイヤルナイツの魔法少女が邪魔してくるだろうが、いかに早く殺せるかが重要となる。

 

 外部からの通信機能を壊し、入り口を壊せば問題なくなるはずだ。

 

 その後は、主要魔法少女の全員の殺害だ。

 

 アンヘーレンの連中は迷いどころだが、一度会ってから考えれば良いだろう。

 駄目な連中なら、悪いが死んでもらうしかないだろう。

 

 俺の判断があっているか分からないが、甘い判断を魔女が許すとは思えない。

 

「アンヘーレンの方々については一度会ってから次第ですが、一度リセットした方が、この世界のためだと思います。全てが終わった後、私は居ないですからね」

「そこまでやっておいて、お前は終わった後どうするんだ?」

 

 希望を与えるか、絶望を与えるか。

 魔女の掌で踊り続けるのも癪だし、どうせ無くなる世界だが、釘を刺しておくか。

 

「また眠るとします。いつかの未来で、世界が続いていることを願ってね。それが、私が生きている理由でしょうから」

「……あくまでも、世界のため……か。それが本当の事だとは思わないが、俺たちの力となってくれるならそれで良いさ」

 

 ミトスの未来は俺次第だからな。リーダーがどれだけ俺の事を信用しているか分からないが、力の方は多少見せているので、多少は期待を持っていてくれているはずだと思いたい。

 

「フラン。アンヘーレンに連絡を取ってくれ。リカルド。一番詳細に書かれている地図を」

「分かったわ」

「取ってくる」

 

 ふたりが出て行き、少しすると戻ってきた。

 早いのはありがたい。

 

「1時間位したら来るってさ。連れてくる怪我人を治せたならば考えると言ってたよ」

「これが此処にある中では一番詳しく書かれている地図だ。1枚は世界地図で、残りの4枚は大陸ごとに詳しく書かれている。エデンとアルカディアの拠点も書かれている」

「ありがとうございます」

 

 流石に千年以上も時が経っていると地形が変わっているな。

 

 そもそも、最初は日本だと思っていたが、日本は完全に消滅していた。

 ならば何所だとなるのだが、地図上だと中国とインドの境目あたりとなっている。

 国の名前など書いていないので大体の位置となるが、千年も経つとこうなるのか。

 

 オーストラリアは小さな島になっているし、ユーラシア大陸もかなり小さくなっているように見える。

  

(この地図で大体の狙いを定めることは出来るか?)

 

『大丈夫だと思うよ。座標指定は出来ないから距離での指定になるけど、一番遠くても誤差は半径10メートル程度に抑えられると思う』

 

 数百メートルだと少々面倒だが、その程度なら影響はないな。

 使う魔法については詰めないといけないが、貫通力と誘爆性のある魔法を考えないといけない。

 

 今日一日に考えて、アンヘーレンの奴らと話して作戦の決行日を決めるとしよう。

 

 後は狙う拠点と、兵器が隠されている場所の捜索か。

 

 エデンは地中。アルカディアは宇宙。探す方法はあるが、流石に厳しいと言わざるを得ない。

 

 結界を解除してから潜入し、アクマによって内部の通信機器を壊してもらう事になると思うが、宇宙は流石に遠すぎる。

 更に言えば、どちらかを攻めた時点で気づかれるリスクが大幅に上がる。

 

 戦う事になるのは間違いないだろうが、待ち構えられるのは少々困る。

 

 やはりぱっと考えただけでは直ぐに粗が出てくるが、そこら辺もアクマやエルメスと考えれば良いだろう。

 

「……長々と黙っているが、大丈夫か?」

 

 おっと、思考の海に潜りすぎていたな。

 此処には俺以外にも人が居るのだし、注意しなければな。

 

「少し作戦について考えていました。アンヘーレンの人たちが来るまでは、いつも通り門の所に居ようと思います」

「そうか。何か必要な物が有ったら言ってくれ。出来る限り準備しよう」

 

 リーダーとリカルドさんに頭を下げてから部屋を出て、門に向かう。

 

「……何か用ですか?」

「アンヘーレンの出迎えだよ。私が居ないとあんたの時と同じ様に騒ぎになるからね」

 

 部屋を出るとフランさんも付いてきたのだが、そういう理由か。

 

 門番だけでは魔法少女が急に現れれば騒ぎになるし、早めに行って待っている事にしたのだろう。

 

「そうですか」

「一時間後に来るとは言ってたけど、先に待っていて損はないからね」

 

 一時間なんてあっという間に過ぎるだろうし、時間通りに来るとも限らない。

 

 アンヘーレン。一体どんな魔法少女たちなのだろうな?

 

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