魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法少女の惨劇

『予定時刻1時間前だよ。準備は大丈夫?』

 

(問題ない。仮とはいえこれからやるのは大量虐殺だ。そっちこそ大丈夫か?)

 

 リーダーやリカルドさん。フランさんに別れを告げて、指定した場所に来た。

 日が傾き始め、生ぬるい風がローブをはためかす。

 

 正直少しだけ気が滅入るが、これも一つの試練だろう。

 躊躇いは大きな隙を生むことになる。

 相手が悪人だろうが、一般人だろうが関係ない。 

 

『……やるしかないんだから仕方ないよ。それに、これが初めてって訳でもないからね』

 

(そうか。なら、結界を頼む。それと座標の指定もな)

 

 アルカディアに使うのは貫通力のある魔法。

 エデンに使うのは広範囲の魔法。

 

 拠点が宇宙にあるアルカディアは、ダメコンが出来ない程の損傷を与えればそれで終わりだ。

 

 エデンの方は地下にある以上、広範囲の魔法で一掃するしかない。

 

 多少生き残りが出るかもしれないが、多少なら誤差だ。

 

(――結界の展開完了。座標補正開始。いつでも良いよ)

 

 杖を取りだし、地面へと突き刺す。

 

 魔力を込めただけの魔法陣を作り出し、更に演算を肩代わりしてくれる魔法陣を足下に展開する。

 

「名も無き怪物よ。紅い月に吠え。夜を越え。闇を駆け抜ける哀れな怪物よ。月が欠け、繋がれた光と闇に抗う星々よ。認められぬ過去に抗い、朽ち行く悲しみよ。何人たりとも成しえなかった不運なる未来を切り開き、絶望の最中から過去を斬り裂かん。されど、血潮の如き涙が流れ夢を打ち砕こうと言うのならば、我は抗い、全てを喰らおう」

 

 魔法陣の展開に40分。詠唱に約10分。

 ふたつの魔法を同時に放つ関係で少し複雑となってしまっているが、時間を掛ける事が出来たので、負荷はあまりない。

 

 数万キロ先の巨大な物体を貫く魔法と、地面を穿ち地中を破壊する魔法。

 

 どれだけの人が死ぬのかなんてのは分からない。

 

 世が世なら歴史的犯罪者として名を残す事になっていただろう。

 

『魔法の補正良し。予定被害計算完了。時間も誤差の範囲内。いつでも大丈夫だよ』

 

(そんじゃあ、()るとするか)

 

そして死が(エンド・)最後にやってくる(オブ・デス)

 

 連なる魔法陣から放たれる二つの魔法。

 

 一つは空高く飛んで行き、もう一つは空中で折れ曲がり、流れ星の如く地面へと向かっていく。

 

『命中を確認。後は痕跡を残しておけば此処に向かってくるはずだよ』

 

(了解。それじゃあ先にエデンの兵器がある場所に向かおう)

 

 その前に、アンヘーレンの奴らに声を掛けておくか。

 

 アクマが視界に映してくれているマップには、それなりの量の赤い点が映し出されている。

 時間を考えれば、アンヘーレンの奴らで間違いないはずだ。

 

 空を飛んで赤い点のある方に向かうと、岩がくり抜かれた洞窟を発見した。

 位置的に隠れるのには丁度良さそうな場所だ。

 

 入り口にはブラックが立って居るので、その手前に降りる。

 

「予定通り此処に両陣営が押し寄せてくると思うので、後はお願いします」

「……分かった。先程の光の柱はお前が放った魔法か?」

「はい。直接確認してはいませんが拠点を滅ぼしました」

「――そうか。お前が味方で良かったよ。此方は任せてくれ」

「よろしくお願いします」

 

 腹の中では何を考えているか知らんが、此方の作戦が終わるまで問題を起こさなければそれでいい。

 

(行くぞ。先ずはエデンの方だ)

 

『了解』

 

 暗くなり始めた空を飛び、一直線に向かう。

 騒ぎが騒ぎのためエデンも兵器のある拠点に魔法少女を向かわせるだろうが、俺の方が先に着くだろう。

 

 着いてから破壊工作をやっている間に、追い付いてくるだろうから、先ずは通信設備だけを破壊し、エデンの魔法少女を殺してから拠点を破壊する方が良いだろう。

 

『あと少しだよ』

 

(了解)

 

 杖を取り出し、結界を破壊するために魔法を放つ。

 

 前方で光が弾け、拠点が姿を現した。

 

 ……思っていたよりも複雑な構造な気がするが、アクマが居れば大丈夫だろう。

 

(案内はできるか?)

 

『大丈夫だよ。そもそも、私じゃないとどこを壊せば通信を止められるか分らないでしょう?』

 

 それもそうなのだが、これまでの事を思えば不安になってしまうのも仕方ないだろう。

 

『金網に囲まれた小屋が見えるでしょう? その中に外部から電波を受信する設備があるから、先ずは中に入って。下手に壊すと兵器が自動で起動する可能性があるから、間違っても壊そうとしないですね』

 

(分かってるさ。破壊して終わりで良いなら、とっくにやっている)

 

 こういった兵器には安全装置や、いざという時の自動起動などの設定がされているのは当たり前だろう。

 

 ゲームの知識だが、大きく間違ってはいないはずだ。

 

 金網だけを吹き飛ばし、防犯設備と思われる銃を破壊する。

 

 扉は……少し時間を掛けて溶断して壊す。

 

 小屋の中は魔法局で見た、司令室を小さくした様な内装となっている。

 寄せ集めで作った感じもするが、新しく作るよりは強度や精度が良いのだろう。

 

『一番大きいパネルに触って。私が操作するから』

 

(了解)

 

 パネルに触れると大量のウィンドウが浮かび上がり、大量の数字が羅列していく。

 

 そんな状態が数分続いた後にブラックアウトし、聞こえていた電子音などが全て消えた。

 

『これで破壊しても問題ないよ。それと、お客さんが到着するよ』

 

 やっとと思えばいいのか、ついにかと思えばいいのか……。

 

(人数は?)

 

『確認できるのは二十人だね。その内アルカディアの魔法少女も来ると思うから、対処は早めにした方が良いと思うよ』

 

(そうだな。さっさと終わらせて、元の世界に帰ろう)

 

 第二形態になり、2本の剣を携えて外に出る。

 

 飛んできた魔法や銃弾を斬り裂き、現れた魔法少女たちを見る。

 その目は憎悪に染まっており、殺す気満々と言ったところか。

 

「エデンの魔法少女……で宜しいですか?」

「そうよ。どうやって此処を探り当てたか知らないけど、死んでもらうわよ」

 

 小屋ごと攻撃すれば勝率はあっただろうに、中の設備を壊すと兵器が発射されると知っているから出来なかったのだろう。

 

 今の所強化フォームにすらなっていないが、俺を舐めているのか、この後の戦いのために温存しているのか…………無益な戦いはさっさと終わらせてしまおう。

 

 一番端に居る魔法少女へと踏み込み、持っていた杖を左の剣で弾き、右手の剣で首を刎ねる。

 

 ワンテンポ遅れて血が噴き出る。

 

 感じていた殺意は憎悪となり、暴力となって俺の身に降り注ぐ。

 

「貴様! 絶対に許さない!」

「意気込むのは良いですけど、それでは足りませんわよ」

 

 フユネの能力である適応と吸収。

 名前ほど便利なものではないが、戦い、殺すことで俺は強くなれる。

 

 フユネを開放していなくてもランカーと渡り合える今の状態では、この世界の魔法少女は弱すぎる。

 

 それは強化フォームになったとしても変らない。

 十人中何人がナンバーズだか知らないが、タラゴンさんや桃童子さんに比べると物足りない。

 

 腕を斬り落とし、心臓を突き刺し、首を刎ねる。

 

 武器を弾き、魔法を斬り裂き、空を駆ける。

 

「何なんだこいつは!」

「アルカディア……ではないが……」

 

 ひとり殺し、ふたり殺し……。

 

「同じ魔法少女なの!?」

「誰でも良いから増援を呼んで! このままじゃあ!」 

「駄目です! 通信が繋がりません」

 

 血を被り、フユネの鼓動が強くなる。

 

 俺は魔法少女という存在が憎いんだ。

 人を殺す躊躇いはあるが、魔法少女を殺すことに対しては何も思っていない。思えない。

 

 左右から振るわれる武器を剣で受け止め、魔法を障壁で防ぐ。

 そして武器を弾き、ふたり同時に身体を半分に斬る。

 

 桃童子さんの時の様な高揚感は湧いてこず、淡々と殺していく。

 

 殺意や憎しみで染まっていた眼は次第に恐怖の色を帯び始め、果敢に挑んで来ようとする魔法少女が少なくなる。

 

「私たちが……負ける?」

「どうなってるのよ! なんでこれだけ居て戦えるのよ! こんなの化け物じゃない!」

 

 エデンの魔法少女たちには悪いが、この姿では魔力の消費はかなり少ない。

 

 しかもアルカナの魔力供給もあるので、魔力が尽きることもあまりない。

 

 フユネと正式に契約したせいか、第二形態での魔力消費は以前の四分の一以下になっているのだ。

 

「やだ……やだよう……まだ死にたくなんて……」

 

 ただ黙々と魔法少女たちを殺し続け、さいごのひとりとなる。

 血の海が出来上がり、その中で尻もちをついている。

 

 戦意は全くなく、ただ命乞いをする少女。

 なのに、俺の心は微塵も揺るぐことが無い。

 

 剣に付着した血を払い、最後のひとりの下まで歩く。

 

 「お願い……ゆ、ゆるして……私は……」

 

 水溜まりを歩くよりも少し粘着質な音が足元から聞こえるなか、無言で首を刎ねる。

 

「次が来るから、無駄に話さないでね。まあ、もう聞こえてないと思うけど」

 

『……上空から飛行物体が接近。中には三十人くらい反応があるよ』

 

(そうか。さっさと殺して、次の段階に移行しよう。アルカディアの奴らが自暴自棄にならないとも限らないからな)

 

『そうだね』

 

 今俺がやっている事は魔女よりも酷い事かもしれない。

 

 現実ではない事を良い事に行う大量虐殺。そうしなければここから抜け出せないとはいえ、この道を選んだのは俺だ。

 

 この戦いが全て無かった事になるとはいえ、俺の記憶の中には残る。

 

 髪から血を垂らしながら、アルカディアの連中が乗ってきた乗り物に向かう。

 

 先手として乗り物を斬撃で壊し、一気に距離を詰める。

 

「なっ! 敵襲! 総員攻撃開始!」

 

 1対1ではなくこんな多対1だと、剣が2本あるのはありがたい。

 奇襲や防御用に障壁もあるので、死角からの攻撃にもほとんど対応できる。

 

「アンヘーレンの奴か……武器の使用も許可する。確実に殺せ!」

 

 魔法少女として持っている武器とは他に、共通と思われる銃を持っている。

 

 白魔導師の時なら脅威だが、今なら問題ない。

 

 前面に障壁を出して銃弾を全て受け止め、驚きに固まっている内にひとり殺す。

 

「――効果無しです」

「数で攻めなさい! 反撃の隙を与えるな!」

 

 後方で指揮を執っている奴が居るが、あれは最後で良いだろう。

 

 口だけの奴なのか、それともエースなのかは知らないが、声を聞いていると俺の気が紛れる。

 

 なるべくダメージを受けないように立ち回り、一撃で確実に命を刈り取る。

 あるいは手足を斬り、隙をついて殺す。

 

 魔法少女が生き物である以上、首を取るか心臓を貫けば死ぬ。

 

 俺の場合心臓なら直ぐに修復できるので死ぬことは無いがな。

 

「あれだけの事をしておいて、あっちが囮だったか……こんな化け物をどこに隠していたんだ……」

「いまだ無傷です……。それに、動きが全く鈍りません」

 

 強さ的に言えば、強化フォームになっていないマリン程度だろう。

 

 一般的に言えば多少強いかもしれないが、あくまでも一般的ではだ。

 

 新たな血の海が出来上がり、命の重みが重なっていく。

 

 感じるはずの心の痛みは、ブルーコレットを殺した時に無くなってしまった。

 

 桃童子さんの時に感じたのは倒せたことによる歓喜と、勝ちを譲られた苦味だ。

 

 叫びや怒声はいつの間にか無くなり、立っているのは俺ひとりとなる。

 

 乱戦ゆえに仕方ないが、髪や服から血が滴っている。

 次はもっと綺麗に戦えるようにしなければな。

 

『エデンとアルカディアの殲滅を完了。次は……』

 

(戻ってエデンの兵器を使えないようにしてから、アルカディアの方も破壊する)

 

『うん。エデンはともかく、アルカディアの方はいつ発射されるか分からないから気を付けてね』

 

 送ったはずの魔法少女が全滅となれば、焦って使用する恐れはあるかもしれないが、そのためのアンヘーレンたちだ。

 

 向こうにエデンとアルカディアの魔法少女が残っていれば、兵器を使われる可能性は低い。

 

 第二形態を解いてから、先程の拠点に戻る。

 

 地盤を魔法で崩し、更に地中深く埋めていく。

 

 最後に巨大な岩で蓋をして終わりだ。

 

 これで、人の手で発掘するのはほぼ不可能だろう。 

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