魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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温泉でゆっくりしたいですね(´・ω・`)


魔法少女は故郷から逃げられない

『ヘイ! ハルナ! 朝だよ』

 

 アクマの声が頭に鳴り響き、目が覚める。気分的には、飼い猫に起こされてる感じだが、結構うるさい。

 

(起きたよ。今何時?)

 

 窓はあるが、妖精界で時間は時計を見ないと判断がつかない。壁にある時計を見れば分かるが、アクマに聞いた方が早い。

 

『8時だね、もう直ぐ診察にジャンヌが来るから、2度寝はだめだよ』

 

(了解。そう言えば聞き忘れてたけど、俺の本体はどうなったんだ?)

 

 昨日は無くなっちゃったとか言ってたけど、嘘だよな? こんなちんちくりんの少女として人生をやり直すなんて、嫌だぞ。

 

『詳細は話せないんだけどさ。最後にハルナは自分の存在を対価にして、魔法使ったでしょ? その時のハルナの存在を消費するを、榛名史郎に書き換えたんだ』

 

 何か完全にファンタジーだが、最後にアクマが何をしたかは分かった。

 だからと言って、存在はともかく命すら燃やしていたのに、何故ピンピンしてるんだ?

 

『肉体についてはどうしようもなかったけど、魂のやり取りは悪魔(アクマ)の範疇だからね。榛名史郎としての魂を、書き換えついでに補填しといたんだ』

 

 成程。理解は出来た。出来たが……。

 

(なら、あの時に俺を男に戻す事は出来なったのか?)

 

『戻した瞬間ショック死で良いならね。魔法少女だから生き残れただけで、普通の肉体じゃあ無理だよ』

 

 言いたいことは分かるが……折角頑張ったのに男には戻れなくなり、タラゴンさんの妹になる羽目になるとは。

 

 挙句にまた、学校に行かないと行けなくなるなんて……。

 

(男前だった昔が懐かしいよ)

 

『まあまあ、生きてられたんだから良いじゃないか! それにオーダー(契約)でしょ? 何時までも付き合ってもらうよ』

 

 それを言われると弱いな……うろ覚えだが、アクマと話したことは覚えている。

 確かにどんな姿になってもって、言ってた記憶があるな。

 

 過ぎてしまった事は仕方ないか……3度目の命とでも、思っておこう。

 

 朝から黄昏て現実逃避をしていると、扉を叩く音がした。

 

「どうぞ」

 

 白衣と眼鏡。分かりやすい恰好をした魔法少女。ジャンヌさんと、タラゴンさんが入って来た。

 助けてもらったのは確かなのだが、何か胡散臭いというか、嫌な予感をヒシヒシと感じる。

 

「やあ、イニーフリューリング君。一応初めましてだね。私がジャンヌだ。ご機嫌いかがかな?」

 

「助けていただきありがとうございました。イニーフリューリングと申します」

 

 ジャンヌさんは何回か笑顔で頷き、俺の頭を撫でる。

 悔しいが、結構上手い。

 

「ふむ。やはり私の魔法は完璧だね。見た目通り栄養状態に難はあるが、体調は問題なさそうだ」

 

 見た目通りとは身長の事なのか、それとも胸の事なのだろうか?

 胸はともかく、出来れば身長と筋力は欲しいんだが……まだ1カ月しか経ってないし、まだ先はある。

 

「大丈夫そうなら連れてくけど、良いかしら?」

 

「まあ待て、ちゃんと約束したじゃないか。本人にまだ言ってないのに、連れて行こうとするな」

 

 なんだがタラゴンさんが嫌そうな顔をしているが、何だろうか?

 

「直ぐと言う訳ではないのだが、偶に私の助手として働いてくれないかね? 回復魔法を使える人材は貴重でね、私1人では手が足りないんだ」

 

 助けられた恩もあるし、働くのは構わないが、妙に胡散臭いんだよな~……。

 

(どうする?)

 

『どっちでも良いよ? でも、顔はあまり晒さない方が良いからね』

 

 成程ね、回復魔法の練度や研究を考えるなら、ジャンヌさんの助手として働くのもありだが……。

 

「偶にでしたら、良いですよ」

 

 何かあったら何時も通り、アクマの転移で逃げればいいや。

 

「それは良かった、連絡先はタラゴンから聞いてるから、後日連絡を入れるよ。それじゃあまたね」

 

 去りながら手を振るのが様になっているが、うむ……、少しかっこいいな。

 

(あっ、服って何時ものローブになれる?)

 

『修復は終わってるから、何時でも大丈夫だよ。着替えさせとくね』

 

(ありがとさん)

 

 病人服から一瞬にして、元のローブ姿に変わる。

 やはり、こちらの方が落ち着くな。

 

「さてと、邪魔者も居なくなったし……って、イニーは器用な事するわね。普通は一旦変身を解除してから、また変身するものよ?」

 

 原理は分からないが、大体はアクマがやってくれるから、知らなくても良いだろう。

 どうせ当面は一緒に居るのだろうからな。因みにフードはちゃんと被っている。

 

 ベッドから出ると、タラゴンさんが手を繋いでくれるが、気恥ずかしい。

 

「これから私の家に行くけど、どこか寄っておく場所はある?」

 

 本当なら荷物を少しでも回収したいが、諦めるとしよう。

 金はあるから買い直せばいいし、そんなに大事なものは持ってなかったしな……身分証は置きっぱなしだが、考えるのは止めておく。

 

「大丈夫です」

 

 そのままタラゴンさんに手を引かれて、テレポーター室に向かう。執務室に楓さんは居らず、どうやら仕事みたいだ。

 

 周りの視線を無視したまま、タラゴンさんは場所の指定を妖精に伝えて、俺はタラゴンさんと一緒に転移した。

 

(ここは何所だ?)

 

『ちょい待ってね……ぶふぅ! 群馬県の水上だね』

 

 また群馬かい! しかも最北端の水上か……。まあ温泉もあるし、悪くはないか。

 

「ここがこれからイニーが生活する場所よ」

 

 ランカーが暮らしてるにしては、普通な感じだな。そこそこ広い庭に、二階建ての家。

 広すぎるよりはいいかな。

 

 家の評価をしていると、視界の端に光がチラつく。隣を見ると、赤が印象のタラゴンさんではなく、別の女性が立っていた。

 

「改めて、タラゴンこと早瀬真琴よ。宜しくね」

 

 魔法少女姿の、溌溂(はつらつ)とした姿ではなく、藤色の長い髪を伸ばした、お淑やかな女性が立っていた。

 

 ……いや、この人が俺を爆散したタラゴンさんだと? 完全に別人ではないか……。

 

(そう言えば、今変身を解くと恰好はどうなるんだ?)

 

『ランニングしてた時の、フード付きのジャージだね』

 

 それなら良いか。アクマチョイスの服なら考えたが、ジャージなら構わない。

 

 俺も変身を解き、髪の色が青から白に変わる。眼も青から黒に変わっているはずだ。

 

「変身してなくてもフード被ってるのね? 名前はなんて言うの?」

 

 偽名としてハルナは使ってたけど、苗字は考えてなかったな。まあ、親が居ない設定だしなくて良いか。

 

「ハルナです。苗字は無いです」

 

「そう……。なら、今日からは早瀬ハルナね。最低限のものは買ってあるから、足りないものは町か妖精界で買うと良いわ」

 

 家の中はこざっぱりとしており、埃などもほとんどない。

 女性の家と言えばもう少し物が溢れてたりするものだと思うのだが、綺麗なものだな。

 

「ここがハルナの部屋よ。雑貨と服は何着か買ってあるから適当に使って」

 

 最低限揃えたって感じだが、少女らしくなくて良いね。2階ではなく、1階に部屋があるのも好印象だ。

 

 その後もリビングや風呂場についても教えてもらった。リビングは普通だったが、風呂は源泉からお湯を引いている。

 

 温泉好きとしてはとても嬉しい。妙に奥まった場所に家があるなと思ったが、それが原因みたいだな。

 

 スーパーやコンビニは徒歩だと少々遠いが、行けなくはない。魔法少女に変身して移動すれば、距離などあんまり関係ないがな。

 

「とりあえず、家と近所についてはこんな所ね。そう言えば、魔法局には登録するの? それともまだ野良のまま?」

 

 登録する気は無いが、ここで登録する場合は北関東支部になるからな~。断固拒否だ。

 

 なので、首を横に振る。

 

「そう。ハルナの契約してる妖精に会う事ってできる? 出来れば少し話がしたいんだけど」

 

(どうする?)

 

『残念ながら駄目だね。私はまだ、姿を見せる事は出来ないね』

 

(そうか。なら、なんて言い訳をするか……)

 

「見せる事は出来ないです。ただ、悪い子ではないです」

 

「ふーん。まあいいわ。今日はゆっくりしていなさい。明日は学園の準備と、ちゃんと戦えるか確認しましょ」

 

 えっ……またタラゴンさんと戦うんですか? 嫌なんですけど。

 

「わっ、分かりました。早瀬さん」

 

 嫌と言いたいが、断れないのが社会人の性だな……。早い内にどれ位戦えるかは確認したかったし、割り切るとしよう。

 

 今の所分かっているのは、杖が行方不明な事だけだ。妖精界に居た時に呼び出そうとしたが、うんともすんともしなかった。

 

 自分に回復魔法を使った時の違和感の原因は、杖が無かったからだろう。

 もしこのまま杖が戻らなかったら非常に困る。

 

 原因があるとすれば、最後の魔法を使う時に杖を触媒として使ったのが原因だろう。ここら辺は後でアクマと話し合うとするか。

 

「あー。私の事はお姉ちゃんか姉さんとかで呼びなさい。一応妹になったんだから、呼び方はしっかりとしときましょう」

 

 ……タラゴンさんって俺に何か恨みでもあるのか? 爆散したり羞恥プレイだったり……。何故今更年下の人を姉と呼ばないといけないんだよ!

 

 あの、そんな期待した目で見ないでくれませんかね? えっ、本当に呼ばないといけないの?

 

(助けて下さいアクマさん!)

 

『別に呼び方位何でも良くない? 死ぬわけじゃないんだから』

 

 やはりアクマは悪魔だったか。仮に肉体は死ななくても、精神的に死んでしまうが……諦めるしかないのか。

 

 

「わっ、分かりました。お姉ちゃん」

 

「うんうん。良いわね。それじゃ私は夜まで出かけてくるから、留守番してるのよ」

 

 はいはい。行ってらっしゃい。さて確認作業をするために、部屋に戻るか……。

 

(それで、今の俺の状態はどうなんだ?)

 

「よっこいせと。いやー結構長い時間ハルナに憑依してたけど、肩が凝るね」

 

 時間で言えば5日位か? 結構長かったな。

 

「さて、今の状態だったね。ざっくり言えば、初期のお助けキャラが正式にパーティーに加入したって所かな」

 

(つまりどういう事だ?)

 

「よわよわって事だね。多分第二形態(闇落ち)は問題ないけど、第一形態(白魔導師)は杖がどうにかならないとだね」

 

 本当に杖はどうしてしまったのだろうか? あれが無いと戦力半減だからな。

 

(今は耐え忍んで、何かあったら第二形態なれば良い感じかな?)

 

「第二形態は第二形態で何か問題がありそうな気もするけど、M・D・Wを倒した後だし、しばらくは休む感じで良いんじゃないかな?」

 

(学園? にも通わないと行けないみたいだしな。タラゴンさんの庇護下に入ったこともそうだが、人生何があるか分からんな)

 

 ランカーみたいな力があれば良かったが、何とも中途半端な力しかないからな~。

 力……力があれば……か。

 

 何はともあれ、生きて帰って来られたんだ。今はそれを喜ぶとしよう。

 次の目標としては、行方不明となっている杖か、それの代わりを見つける事。

 

 第二形態で魔物と戦えるかどうかと、学園でどうやって生活するかも考えないといけないか……。

 後はタラゴンさんとはなるべく会わない様に、立ち回らないといけないな。姉と呼ぶ度に俺のSAN値がゴリゴリ削られる。

 

 後は……そうだな。

 

「なあアクマ」

 

「どうしたんだいハルナ? 話すなんて珍しい」

 

「これからもよろしく頼む」

 

「ふふ。うん。よろしくね、ハルナ」

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