魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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増えたキャラの管理をどうしようと悩む最近です


魔法少女学園に行く

 その日、魔法少女学園日本支部は朝からざわついていた……。

 それは前日の夜にランキング1位の楓が訪れ、1枚の紙を提出したことに起因している。

 

 紙自体は何の変哲もない転入届けなのだが、保護者の欄に楓とタラゴンの両名の名前が書かれていたのが、1つ目の原因だ。

 

 2つ目は転入生の名前だ。

 それは死んだと報告されている、イニーフリューリングの名前が書かれていたのだ。

 

 公式サイト(マジカルン)には18位だったイニーフリューリングが消えており、何故かnewマーク付きの新人となっていた。

 様々な憶測が飛び交うが、本当の事は誰にも分からないでいる。

 

 勿論討伐数は0で、プロフィール欄はほとんど非公開のままだ。

 登載されてる姿は、白いローブでフードを被ったもので、18位にいたイニーフリューリングと一緒である。

 

 そんなよく分からない彼女が今日、魔法少女学園日本支部に試験を受けに来るのだ。保護者同伴で。

 

「もうすぐ時間ですね」

 

 魔法少女学園日本支部の教員兼魔法少女ランキング21位の魔法少女プリーアイズが、学園の正門に立って呟く。

 

 彼女は妖精に騙されて魔法少女となり、ずるずると辞め時を失った結果、何故か教員をすることになった。

 

 ランキング的にも割と上位の方に居る為、学園の教員の中では凄腕に分類される。

 

 だが一時期とはいえ、今回試験を受けに来るイニーフリューリングは自分よりランキングが上だったことがある。

 

 更に保護者がランカーとなっており、プリーアイズはため息と共に胃が痛くなる。

 今担当している新人クラスは問題児が多く、これ以上の問題事は抱えたくない。

 

 どうか、イニーフリューリングが真面目な子であることを、祈るプリーアイズであった。

 

 そして、プリーアイズの視界に2人の人物が映る。

 片方は紅い髪が印象的であり、魔法少女ランキング5位である魔法少女タラゴンだ。

 

 燃えるような紅い髪は彼女のトレードマークであると共に、一部の魔法少女のトラウマである。

 

 プリーアイズは運良くタラゴンとシミュレーションで戦ったことは無いが、友人の1人にタラゴンと戦った結果、トラウマ持ちとなった者が居る。

 

 もう1人は白いローブ姿でフードを被っており、顔は見えないが、そのローブ姿が印象的な魔法少女である。

 

 その名は魔法少女イニーフリューリング。公表では死んだことにされている魔法少女だ。

 

 日本では久しくなかったイレギュラー(SS級~測定不能)に片足を突っ込んだ、準SS級の魔物であるM・D・Wを単独で撃破し、その代償に姿を消した魔法少女。

 

 その彼女が魔法少女学園日本支部に訪れたのだ…………タラゴンと手を繋いで。

 

 若干恥ずかしがっている素振りを見せるイニーフリューリングとは対照的に、上機嫌なタラゴン。

 先程まで胃が痛い思いをしていたプリーアイズは、首を傾げた。

 

 そんなプリーアイズの前に、2人が到着する。プリーアイズは自分に活を入れ、少しだけ深呼吸する。

 

「イニーフリューリングさんと、タラゴンさんでよろしいでしょうか?」

「ええ、合ってるわ。あなたは?」

「私はここで教員をしているプリーアイズと申します。イニーフリューリングさんが転入予定の新人クラスを請け負っています」

 

 プリーアイズはタラゴンに見定められる中、内心では出だしに成功したことを喜んでいた。

 

 人によっては出会い頭に難癖をつけてくる者もいるので、普通に自己紹介できないこともあるのだ。

 

「ああ思い出したわ。ランキング21位の人ね。まさか教員をしてるなんて思わなかったわ」

「よ、よく分かりましたね。私なんて無名の無名なのに……」

 

 よく自分なんかを知っているもんだと、プリーアイズから乾いた笑いがでる。

 プリーアイズは1度も10番台のランキングに入ることができず、20番台辺りをうろちょろしていた。

 

「まあ、あなたの見た目は印象的だからね……」

 

 大体150センチ程の身長に、ピンクと水色のグラデーションの髪をポニーテールで纏めている。

 ここまででも、結構印象的な魔法少女なのだが、これすらも印象に残らないようなものが、彼女にはある。

 

 そう、彼女の背中にはとても大きな翼が生えているのだ。

 

 この時イニーフリューリングは、やべー奴が担任になるんだなーと遠い目をしていた。

 

「コホン。えー本日の予定ですが、先ずは学力試験を行います。イニーフリューリングさんの年齢は11歳で間違いないですか?」

「長いのでイニーで大丈夫です。年齢は多分合ってます」

 

 プリーアイズはそうですか、ありがとうございますと返しながら、多分って何でしょうか? と首をかしげる。

 聞き返したいが、タラゴンからの圧力を感じるせいで、聞き返すことができなかった。

 

「学力試験が終わりましたら、戦闘能力の確認と、面談を行います。大体3時間から4時間程で終わる予定ですが、大丈夫でしょうか?」

 

 イニーは頷いて答える。

 

「一応保護者の方は試験が終わるまで学園の見学等が出来ますがどうしますか?」

「そうね。今日は1日空いてるし、見学して待つとするわ」

「分かりました。学園にいる間はこちらの証明証を首から下げておいてください」

 

 プリーアイズが指を鳴らすと、タラゴンの前に見学許可証と書かれた、紐付きのプレートが現れた。

 

 この現象は彼女の魔法(能力)で起きたものだ。

 彼女の魔法はドロップボックス(召喚)と呼ばれるもので、自分で指定した場所の物を、取り寄せることができる。

 

 因みに指を鳴らす必要はないが、彼女は指を鳴らした方がカッコいいと思っているので、鳴らしている。

 

「それでは……の前にフードは脱いでいただいても良いでしょうか?」

 

 少しの間の後、イニーは両手でフードを脱いだ。

 

 プリーアイズが最初に見たのは美しい水色の髪だ。その後に幼いながらも整った顔。そして最後にその眼を見た。

 

 その顔立ちからは想像出来なかった眼を見た時に、プリーアイズは思わず悲鳴を上げてしまった。

 

 どうすればこの歳で、ここまで暗く濁った眼ができるのだろうか? この子はこの歳でどんな経験をしてきたのだろうか?

 

 だが悲鳴を上げてしまったとは言えプリーアイズにも教員としての意地がある。

 

「あっ、すみ……ひぃ!」

 

 悲鳴の事を謝ろうとしたプリーアイズだが、今度はタラゴンの怒気に悲鳴を上げてしまう。

 どうして私ばかりこんなに目に遭うんだと、プリーアイズは嘆くのであった。

 

「えっと、その……とりあえずイニーさんを試験場に案内しますね」

 

 居心地悪そうに翼を少し羽ばたかせ、プリーアイズはイニーフリューリングを伴って、タラゴンから逃げる様に学園に向かう。

 

 そのままプリーアイズは学園の一室に入り、イニーを席に座らせる。

 既にテスト用紙が複数枚置かれており、準備は出来ていた。

 

「試験は国語、算数、理科、魔法学になります。時間は2時間となります。トイレや何か質問はありますか?」

 

 先程の失態を返上すべく、なるべくテキパキと話すが、動揺が翼に出ているのか、わさわさと動いている。

 

「大丈夫です」

「分かりました。私は端にいますので、終わるか、何かありましたら声を掛けて下さい」

 

 プリーアイズは軽く頭を下げて、部屋の端に寄る。

 指を鳴らさないで椅子を召喚し、そこに腰掛ける。

 

(先程は驚いてしまいましたが、イニーさんはあんな眼の割に、普通そうで良かったですね)

 

 魔法少女になったばかりの者は、優越感や自尊心のせいでわがままなものが多い。今の所は真面目そうなイニーにプリーアイズは安心する。

 

 それよりもタラゴンが見せた怒気の方が印象に残っており、まだ少し動揺が収まっていない。

 そう言えばと、プリーアイズは先日見たM・D・W戦の動画を思い出す。

 

 イニーフリューリングの戦いが映し出された時間は短かったが、そこから読み取れた情報ではイニーフリューリングがM・D・Wに勝つ事は不可能とされていた。

 

 それはマリンの様に覚醒したとしてもだ。

 

 黒と白の翼を羽ばたかせ、多種多様の魔法を使う様は凄かったが、相手が悪すぎた。

 そしてM・D・W戦で死んだと公表されたはずなのだが、今はプリーアイズの目の前で試験を受けている。

 

 一体何があったのか気になるが、下手な事を聞いてタラゴンを怒らせたくないので、プリーアイズは何も聞かない事にした。

 

 爆散されるのは嫌な、プリーアイズであった。

 

「終わりました」

 

 プリーアイズが現実逃避を開始して40分程経った頃、イニーフリューリングが声を上げた。

 

(おや? かなり早いですね)

 

「1度提出すれば終わりですが、大丈夫ですか?」

「大丈夫です」

「分かりました。採点は直ぐしますので、少し休んでいてください」

 

 プリーアイズはイニーフリューリングから用紙を受け取り、素早く採点を開始する。

 

(ほうほう? ほうほうほう?)

 

 採点を進めるにつれ、徐々にプリーアイズのテンションが上がっていく。

 何と今の所、全て満点なのだ。年齢は11歳の為、それより1歳上の12歳用のテストなのだが、全て正解してるのだ。

 

 国語は満点。算数も満点。更に理科も満点。最後の魔法学は……。

 

 点数自体は問題ない。問題ないのだが、最後の一問の答えにプリーアイズは悩んだ。

 最後の一問は記述式となっており、問題は【なぜ魔法少女になったのか】となっている。

 

(それしか選べなかったからです……か……)

 

 やはりイニーには何かあるのだろうとプリーアイズは考える。

 ここで色々と考えたいプリーアイズではあるが、イニーを待たせている手前、そうはいかない。

 

 この後も試験は続くのだ。

 

「学力は問題ありませんね。続いて戦闘能力の検査になりますが、このまま大丈夫ですか?」

「大丈夫です」

「そうですか……それでは学園にあるシミュレーターで試験を行うので、付いて来て下さい」

 

 学力試験を行う教室に向った時の様に、イニーを伴ってシミュレーターのある部屋に向かう。

 

 運が良いのか悪いのか、道中は誰とも会うことは無かった。

 学園にあるシミュレーターは、ランカーが使っている最新のものよりは型落ちとなっているが、イニーが使っていたヘッドギアタイプに比べれば何十倍も良い物となっている。

 

 2人はカプセルの様なものに横になり、シミュレーションを開始する。

 

「今回の能力試験はD級2体となりますが、大丈夫でしょうか?」

 

 本当ならF級で様子見をするのだが、元ランキング18位にいたイニーには簡単すぎるだろうと、内容を変更する。

 18位ならB級どころかS級も倒す事が出来るだろうが、一応学園の規則に乗っ取って試験内容は決めている。

 

「魔物の強さによって試験の点数には影響はあるんですか?」

「新人向けの討伐依頼が入った際に割り振られる、魔物の強さが変わりますね。転入後にも試験をするので、今回のは倒せれば、どの強さの魔物でも点数に影響はありません」

「そうですか、ならこのままで大丈夫です」

 

 プリーアイズはイニーに頷いて答え、シミュレーションを開始する。

 

氷よ。剣となり(アイスソード・)敵を貫け(ピアッシング)

 

 イニーは魔物が現れると同時に魔法を発動し、氷の剣で魔物2体を串刺しにして倒してしまった。

 

 プリーアイズとしてはですよねーとしか言えない所である。18位に居た魔法少女相手にD級程度では蟻を踏み潰すのと変わらない。

 イニーの戦闘を見ていたプリーアイズはふと、おかしな点に気づく。

 

 M・D・W戦やその他の動画でも持っていた杖を持っていないのだ。

 魔法少女の中でも魔法を主体として戦う者は杖だったり、本だったりを持っている。

 その杖や本を無しに魔法を使う場合威力が弱くなったり、場合によっては発動しない事もある。

 

 彼女は武器無しで魔法を使い、普通に魔物を倒しているのだ。

 その事にプリーアイズは若干引きながらも、将来活躍するであろう魔法少女の、将来の安寧を祈るのであった。

 

 だがこんな魔法少女が今更学園に来て一体何を学ぶのだろうかと、プリーアイズは不安になる。

 

 しかもイニーの担任になるのは自分なのだ。

 今更教員も魔法少女も、辞める事が出来ないプリーアイズは翼をそわそわさせて、世の不条理を嘆くのであった。

 

 プリーアイズは、シミュレーションを終えたイニーと合流し、最後の面談の為にタラゴンを呼ぶ。

 正直もう面談なんてしなくても良いではないかと思うプリーアイズだが、規則は規則なので、しっかりと守るのだ。

 

「タラゴンさんも来たので、最後の面談を行います。此方今回の試験の成績になります」

 

 プリーアイズはタラゴンにイニーの隣に座る様に促し、今回の試験結果を纏めた用紙を渡す。

 

「ふーん。戦闘能力はともかく、勉強も問題ないのね。これは良い結果を見れたわ」

「私としてはイニーさんが学園に来る必要性をあまり感じないのですが、どの様な理由で学園に?」

 

 そんな疑問に対してタラゴンは自分の眼を指さした後、イニーの方を見た。

 その仕草でプリーアイズは察する事が出来た。

 

 この年齢にそぐわない眼を改善させるために、学園に通わせるのか……と。

 ちゃんと理由があるのならば、自分が言う事は何もないとプリーアイズは頷く。

 

「そうですか。転入に伴って寮での生活を希望との事ですが、転入日からの入寮で大丈夫ですか?」

「その日までは家に住ませてるから大丈夫よ。寮って今は何人いるの?」

「新人クラスだと3人ですね。全体では15人ほどだったと思います」

 

 ついでに再教育(補習)があった場合、再教育(補習)中は寮での生活になるので、その間は人が増えたりする。

 

「それと、転入日は来週の月曜日からとなりますので、朝8時頃に、正門に来てくださいね」

 

 イニーはコクリと頷いて答える。

 

 ものの数分で面談は終わり、この日は解散となった。

 イニーは帰りもタラゴンに手を引かれ、試験内容を話す様に強要されながら、水上にあるタラゴンの家に帰るのであった。

 

 この日の夕飯は、タラゴンお手製のチーズ入りハンバーグであったのは、また別のお話である。

 

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