魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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多分まともな主人公ならしないと思います


魔法少女は闇討ちする

(今回はどんな状況だ?)

 

『前回とは違ってハルナだけなら何とかなるかもだけど、ジャンヌも一緒には難しいかな』

 

 途中で面倒臭くなった俺が、魔法陣を使って一気に回復したこと以外は何事もなく終わった治療会の帰りに、急に発令されたS級魔物の出現予報ののち、俺とジャンヌさんだけが結界に取り込まれてしまった。

 

 それと気になるのは今しがたジャンヌさんが言った言葉だ。

 巻き込んだのは自分だと言ったが、何か知っているのか?

 

「どういうことですか?」

「私をつけ狙っている指定討伐種(悪落ち魔法少女)達が居るんだが、その中の1人に厄介なのが居るのだよ」

 

『ああ、破滅主義派の魔法少女達ね。なるほど』

 

 俺は全くなるほどではないのだが?

 

 その後のジャンヌさんとアクマの補足を纏めると、人類の滅亡を目指す破滅主義と呼ばれる集団があり、そこにジャンヌさんは狙われている。

 詳細について今は関係ないので省いておくが、その中の幹部クラスに、空間系の魔法を使うものが居て、それが今回の犯人らしい。

 だが、ジャンヌさんの話の中で破滅主義派の名前は出てこず、若干アクマの補足と食い違ったりする。

 

 また、今回の犯人となる魔法少女の名前はロックヴェルト、と言うそうだ。

 

 しかも今回が初めてではなく、3度目らしい。

 その魔法少女の制約的にジャンヌさん1人を結界に取り込むことはできず、必ずもう1人魔法少女が取り込まれる。

 それが俺だ。

 

 そして今回はもう1つ問題がある。

 

「ジャンヌさんってS級に勝てますか?」

「魔力があっても無理だね。私は回復専門だから、倒せるのはB級がやっとだ」

 

 そう、この結界の中には魔物も居るのだ。

 アクマが感知したので間違いないだろう。

 問題は俺もジャンヌさんも、かなり魔力を消耗しているし、杖の無い俺ではS級はかなり厳しいってことだ。

 

 更に敵となる魔法少女も居るのだ。

 なぜこう何度も、詰んだ状態になるんだ?

 

『ハルナさんやハルナさん』

 

(どうしたアクマ?)

 

『ジャンヌを助けてあげられないかな?』

 

 アクマが誰かを助けろというのは珍しいな。

 一応ジャンヌさんには借りもあるし、1人で逃げようとは考えてないが、どうしてだ?

 

(それは構わないが、珍しいな)

 

『ジャンヌにここで退場されると、後々困るからね。頼んだよ』

 

 後々ね……とりあえず、方針を決めないとな。

 

「助けが来る可能性はあるんですか?」

「グリントだと厳しいな。ブレードなら結界など斬ってくれるのだが……これは年貢の納め時かな?」

 

 やれやれとジャンヌさんは首を振る。

 

 俺も魔力と杖があれば頑張れるのだが、今はどちらもないからな。

 

 結界の中はエジプトみたいな風景となっており、レンガで作られた家やテントが沢山あり、足場は砂地となっている。

 なので視界が悪いのだが、こちらとしては助かる。

 

 なんせレーダーとなるアクマがいるからな。視界が悪ければ、こちらが先制をとれる可能性が上がる。

 

「せめて先手を取れるように移動しませんか? 因みにジャンヌさんの戦い方は?」

 

 ジャンヌさんは虚空からビットを召喚し、操ってみせる。

 

「私はこれで射撃したり、障壁を張ったりすることができる。まあ程度は知れてるがね。そう言えば杖はどうしたのかね?」

 

 そう言えば、そのことをジャンヌさんに聞こうと思ってたんだ。

 出会いが汚部屋だったせいで、すっかり忘れてた。

 

「杖は壊れてしまったのですが、再び直すこととかできるんですか?」

 

「ふむ。武器が壊れるのは、魔法少女の心が折れた時と言われている。つまりは能力を失うということなんだが……」

 

 ジャンヌさんは俺を上から下に見た後、首を傾げる。

 

「なんで魔法少女になれてるのかね?」

「……さあ?」

 

 それは俺が1番知りたいよ。

 杖なくても一応戦えるし、第二形態ならランキング20位くらいまでなら負けることもなさそうだ。

 

「何はともあれ、私とイニーだけでこの状況を覆すことは難しい。先手を取れたとしても、相手と火力差がありすぎる」

 

『恐らく、魔法少女をハルナが倒せば、何とかなるかもよ?』

 

 ああ、今の結界は魔法少女によるものだから、その魔法少女をどうにかすれば、助けが来る可能性もあるのか。

 倒す前に魔物と会ってしまえばどうしようもないが、そこはアクマが居れば心配ない。だが……。

 

(それって俺が東北で戦ってた魔法少女ってバレるのでは?)

 

『頑張って!』

 

 こうやって上の無茶ぶりに、下は従わされるんだよな……。

 

「この結界はジャンヌさんを狙っている魔法少女を倒せば、解けるんですか?」

「恐らくね。過去2回は自ら結界を解いて逃げているが、今回は魔物も取り込まれているから、どうなるか分からないがね。倒せるか分からないが、やってみるしかないか」

「なら魔法少女を倒す方針でいきましょう。魔物さえ来なければ、手がないこともないです」

 

 いざとなれば、ジャンヌさんには気絶しててもらおう。

 殴って気絶させるのも、魔法を使って気絶させるのも慣れている。

 

 アクマの指示に従いながら歩くこと数分、アクマから待ったが掛かる。

 腕を横に伸ばし、ジャンヌさんにも止まってもらう。

 

(どうした?)

 

 『後5分程歩くと広場があるんだけど、そこに魔法少女と思わしき反応があるね』

 

 (了解)

 

「どうしたんだいイニー?」

「少し行ったところにある広場に、魔法少女と思わしき反応があります」

「なるほどね。なら、先制攻撃といこうか」

 

 軽くジャンヌさんと作戦会議をし、行動に移す。

 

 まあ作戦と言っても、ジャンヌさんが気を引いている内に俺が闇討ちするだけだが。

 

「それじゃあ頼んだよ。私も簡単には死なないが、早めにね」

「分かりました」

 

 広場に向かって行くジャンヌさんを見送り、広場を見渡すことの出来る屋根に上る。

 

風よ。声を届けろ(ボイスキャリー)

 

 補助魔法だが、これくらいなら魔力はほとんど使わない。

 後はタイミングを待つだけだ。

 

「あら?ジャンヌじゃない。自分から現れるなんて、面白いことするわね」

「君達みたいな他人の迷惑を考えない、馬鹿な事をしている方が、私は面白いと思うよ」

 

 俺の耳に2人に会話が聞こえてくる。

 当たり前だが、中々に険悪だ。

 

 ロックヴェルトと呼ばれる魔法少女は、灰色の髪と黒の髪が真ん中で分かれており、後ろから服装はマントしか確認できない。

 

「もう1人魔法少女がいるはずだけど、もしかして魔物にやられちゃったりして?」

「ふむ。もしかして、魔物はそちらが用意したものかな?」

「当たりでもあるけど外れでもあるわね」

 

 さて何時までも聞き耳立ててないで、準備をしよう。タイミングはロックヴェルトが攻撃を仕掛ける時だろう。

 

「絶えず流れる流浪の水。舞い上がりし風は春の音色。天空にて交わるは終焉を告げる万象の証」

 

 杖や補助用に魔法が使えれば、以下省略で魔法が使えるのに……歯がゆいものだ。

 

 ついでに少し恥ずかしい。

 

(ふと思ったけど、この結界って敵の物だから、中は放送されてないのか?)

 

『今はロックヴェルトの結界を妖精の結界が覆ってる状態だね。ロックヴェルトの結界が覆ってる状態の時は撮られてないはずだね』

 

(なるほど。ならこれに失敗したらジャンヌさんには寝てて貰おうか)

 

 すまないが、俺にも訳があるんだ。

 悪く思わないでくれよ。

 

「吹き荒ぶ水は全てを濡らし、集まりし水は全てを貫く氷となる」

 

 良い感じに、ジャンヌさんが時間を稼いでくれている。

 後は俺とロックヴェルトの仕掛けるタイミング次第だ。

 

「ジャンヌ1人だけなら容易いし、サクッと死んでもらおうか」

「そう上手くいくかな? 私も新たな力を手に入れてね。来るがいい」

 

 もうそろそろだな。

 

 ロックヴェルトの上空には徐々に魔法が形成され始めている。

 バレない様に隠蔽はしているが……どうなるかな?

 

「絶望を振り払いし轟雷。空を覆いし天雷。汝を葬る扉を開かん」

 

 ロックヴェルトが剣を振りかぶり、ジャンヌさんに突っ込む。

 予定通りジャンヌには出来る限りの障壁を展開してもらい、逃げてもらう。

 

「封縛の囲いにて冷徹なる世界の裁きを受けよ。白き世界の涙(ホワイト・オブ・ティアーズ)

 

 ロックヴェルトを囲むように8つの氷柱が空から降り注ぎ、瞬時に魔法陣を構築。ロックヴェルトを魔法陣の中に閉じ込める。

 突然の事に驚くロックヴェルトだが、どうか死んでくれよ。

 

 空から一滴の水が零れ、世界を白い光で包み込む。

 

 魔力を振り絞れるだけ絞ったので、俺もギリギリだが、倒せたか?

 

 

(反応はどうだ?)

 

『微弱だけどあるね。恐らく別空間に退避して耐えたのかな? 魔法陣の外には逃げられなくてダメージは受けたみたいだね』

 

 チッ。念には念を入れた魔法だったが駄目か。

 

(今の状態のロックヴェルトをジャンヌさんは倒せるか?)

 

『何とも言えないね……あっ』

 

 あっ?

 

 エジプト風の風景が塗り替わり、草原に変わっていく。

 つまり、ロックヴェルトは逃げたって事なのだが、後ろからヒシヒシと嫌な予感がする。

 

 俺は走り出した。

 

 遥か前方に居るジャンヌさんに向かって頑張って走る。

 だが魔法少女とはいえ、身体能力がゴミの俺ではそんなに速度がでない。

 

 チラリと後ろを見ると、ドラゴン型の魔物が火を吐こうとしている。

 今の俺ではドラゴンの防ぐだけの魔法を使うことはできない。

 何より、走っている状態で魔法を使うのは無理だ。

 

 何か避ける方法がないかと、思考を巡らしているそんな時だった。

 天から白いロボットが到来した。

 

 それはリンドを操縦するグリントさんだった。

 

「待たせたな。後はこちらで何とかするから、そのままジャンヌと合流してくれ」

 

 やだ、カッコイイ……。

 

 ……いや、これでは俺がヒロインではないだろうか?

 

 阿呆な事を考えてないで、今は逃げよう。

 

「よろしくお願いします!」

 

「勿論さ」

 

 グリントさんは手に持っている銃を掃射して、ドラゴンのブレスを中断させる。

 自分にヘイトを集め、俺たちから離れる様にして戦い始めた。

 

「やあイニー。さっきは助かったよ」

「ロックヴェルトは倒せず、逃げられてしまいました」

「それは仕方ないさ。今回は生きていられただけで儲けものさ」

 

 俺とジャンヌさんは草原に座り、グリントさんの戦いを見守る。

 ロボットVSドラゴンとは、見ている分には面白い。

 

「そう言えばイニーの武器についてなのだが、楓ならどうにか出来るかもしれない」

 

 何故楓さん?

 あの人の能力は確か召喚だったはずだ。

 それと何か関係あるのだろうか?

 

「それは何故でしょうか?」

「これはあまり知られていないのだが、楓の召喚は知っているものなら何でも召喚する事ができる。つまり、イニーの武器も召喚する事ができるだろう」

 

 召喚したとしても、それでは所持者は楓さんのままな気がするが、意味はあるのか?

 

「楓が召喚した杖の主導権をイニーが奪えれば、もしかしたらって話だ。あくまで可能性の話にはなるが、やってみる価値はあると思うよ」

 

 まあ他に良い方法も浮かばないし、やってみるだけの価値はあるのかもしれないな。

 学園の図書塔も欲しい情報は何も手に入らなかったし。

 

 ジャンヌさんに聞いても、何故魔法少女に変身できているのかを疑われる始末だ。

 

 おっ、グリントさんがドラゴンの翼を斬り落としてる。

 

「今度連絡を取ってみます。情報ありがとうございます」

「なに、今日手伝ってもらったお礼さ。まあ、こんな事に巻き込んでしまった負い目もある。恐らくイニーの事は奴らにバレていないと思うが、注意してくれたまえ」

「分かりました」

 

 グリントさんはドラゴンの口に銃身を突っ込み、トリガーを引いている。

 数秒するとドラゴンは塵となり、討伐終了となった。

 

 今回は少しだけ命の危険があったが、M・D・Wよりマシだったな。

 

「どうやら終わったようだね。さてと、帰るとしようか」

「はい」

 

 グリントさんは俺達の近くに来るとリンドを消して、俺達の前に飛び降りる。

 

「今回の相手はロックヴェルトだったのか?」

「ああ。私が囮になって、イニーが倒してくれたよ。また逃げられたがね」

 

 杖か、せめてもう少し魔力があれば倒せたと思うのだが、面目ない。

 俺がロックヴェルトと会うことは恐らくないだろうが、次会った時はサクッと第二形態で倒そう。

 

「急に2人が消えたと連絡を貰った時は焦ったぞ。関西の局長なんて胃が痛いとか言って倒れかけたからな」

「すまないね。とりあえず帰ろうじゃないか。イニーもお疲れだしね」

「それはすまなかった。ジャンヌを助けてくれてありがとうイニー」

 

 グリントさんのお礼に頭を下げて答える。

 本当に疲れたので早く帰りたい。

 

『とりあえずジャンヌとハルナが無事で良かったよ』

 

(本当に何とかなって良かったよ。恩が無ければさっさと逃げてしまいたかった)

 

『まあまあ。この結果は、何時か良い未来をもたらすはずだよ。私にも、ハルナにとってもね』

 

 確かにジャンヌさんの力はないと困るだろう。

 だが俺も回復魔法を使えるので、そうそうジャンヌさんの力を借りる事は無いと思うんだがな……。

 

 妙に意味有り気だが、アクマは何を知っているのだろうか?

 

 今日は疲れたし、帰って寝よう。

 

 妖精局の結界が解かれ、他の魔法少女達と合流する。

 泣きそうなスイープが抱き着いてきて押し倒されて地味に痛かったが、ジャンヌさんに回復魔法を掛けてもらって事なきを得る。

 

 何とかスイープを引き離し、打ち合わせの為に残るジャンヌさんとグリントさんを残して、俺は先に帰る。

 明日はしっかりと休み、来週はミカちゃんの件があるので、今度こそ何も起きない事を祈る。

 

 後で楓さんの空いてる時間を聞いておかないとな。

 

 はぁ、最近はこの身体に慣れてきた自分が恨めしい。

 

 戻れる日は……来るのだろうか?

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