魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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魔法少女アロンガンテ参上!

「それでは、今日は予定していました集団新人研修となります」

 

 予定ね……月曜日の朝に聞いたときは忘れていたと驚き、俺の顔を翼で殴打したよな……。

 

 楓さんから杖を奪い取った次の日の朝にプリーアイズ先生に確認を取ったところ、「忘れてましたー!」と驚いていた。

 

 その時の驚きで翼を広げ、俺は顔を翼で殴られて吹き飛ばされた。

 この身体は軽いからな……マリンが受け止めてくれなければ間違いなく怪我をしていただろう。

 

 怪我を治せるからって、進んで怪我をする気は無い。

 

「ランカーって誰か来るのですか?」

 

 委員長らしく、皆が疑問に思っているであろうことを、マリンがプリーアイズ先生に聞く。

 頼むからタラゴンさんではありませんように。

 

 ――待てよ。アクマに聞けば分かるのではないか?

 

(アクマは誰が来るか知っているのか?)

 

『知っているけど、教えるとつまらないから、ここは黙っておくよ!』

 

 ……まあ、そうなるよな。

 俺の反応を楽しんでいるアクマが、俺が気になる事を教えてくれるわけないか。

 

 因みに、日本でS級の反応が無い場合は他国での討伐になるらしい。

 移動は妖精界から一瞬だし、言語も妖精の魔法(謎技術)によって通じるので問題ない。

 

「既に廊下で待っていただいてるので、今お呼びしますね。お願いします」

 

 教室の扉が開き、茶色い髪をポニーテールに纏めている女性が入ってくる。

 服装はロボットの装甲を纏ったような恰好をしており、所々発光している。

 ああ、この人か。

 

 実際に見るのは初めてだが……何故隈がある?

 

(なんか疲れてるっぽいけど、大丈夫なのか?)

 

『実力の方は心配してないけど、仕事が忙しくて徹夜してたみたいだね』

 

 噂程度でしか知らないが、ランカーの中で書類や事務方の仕事を1人でしており、更に妖精局と魔法局との仲介などもしているとか。

 戦闘能力自体はかなり高いのだが、事務や交渉方面の力があるせいで、そちら方面で頼られている。

 その名は……。

 

「初めまして、ランキング9位のアロンガンテと申します。本日は皆さんの引率の任務を受けていますので、よろしくお願いします」

 

 そう、魔法少女アロンガンテ。異名(二つ名)はミーティア。

 グリントさんと同じく魔法少女なのかと疑われるような戦い方をする魔法少女だ。

 戦闘時以外は今の様に装甲服? パワードスーツ的な物を着ているが、戦闘時は武装を纏う。

 

 移動用に背中や腰、両足にもスラスターが付き、当たり前の様に空を飛ぶ。

 片手には振動する剣を持ち、もう片方には巨大なレールガンを携えている。

 

 昔見たアロンガンテさんとグリントさんの模擬戦は凄かったのだが……どう考えても出る世界を間違えていると思った。

 どちらかと言えばグリントさん派だが、アロンガンテさんも嫌いなわけではない。

 

 残光を残しながら飛ぶ様は、正に流れ星(ミーティア)と言った所だろう。

 

 問題は魔物との戦闘より、書類との戦いが多いって所だろうな。

 

 魔法少女もそれなりの年齢の人も居るが、稼ぐだけ稼いだら魔法少女を引退して結婚だの余生を謳歌するだので、事務方の仕事を出来る人間があまりいない。

 

 過労死しない事を祈るばかりだ。

 

「皆さんも知っての通り、アロンガンテさんはランキング9位ですので、とてもお強いです。何か聞きたいことがある方は居ますかー?」

 

 プリーアイズ先生が呼びかけると、数人の生徒が手を上げる。

 俺も聞きたいことがあると言えばあるが、この後の移動時間で良いだろう。

 

「えー、それでは暁さんどうぞ」

「はい。アロンガンテさんの武装には名前があるって聞いたのですが、本当ですか?」

 

 暁……俺が喧嘩を仲裁した魔法少女の片割れか。あまり話す機会は無いが、あれ以降現実の方で喧嘩はしていないみたいなので、ありがたい。

 2度目が有ったら気を失わすだけでは済まないからな。

 

「私が付けた訳ではありませんが、名前はありますね。AMOW(アンチモンスターオーバーウェポン)。通称ブリュンヒルデと呼ばれています」

 

 確か名前は姉が付けたんだったかな? 姉妹で魔法少女をやっていて、姉は既に引退して魔法局に勤めてるらしい。

 

 元々名前らしい名前は無かったのだが、姉がアロンガンテさんのスレで名前を募集すると爆弾を投下し、最終的にこの名前で落ち着いたとか。

 そして妹であるアロンガンテさんのプロフィールを無断で変え、そのまま定着したって話だ。

 

 この質問で暁とミカちゃん。それからアリスがテンションを上げているな。

 武器にかっこいい名前が付いてると、感動したくなる気持ちは分かるよ。

 

 でもそれは、どちらかと言えば男の子の思考だからな?

 

「ありがとうございました。次はマリンさんどうぞ」

「はい。質問と言うよりは伝言なのですが、ちゃんとご飯を食べて寝る様にと、会ったら伝えるように、アロンガンテさんの姉から伝言を預かりました」

「あの人は全く……。善処しますと言っておいて下さい。もうそろそろ移動を開始しますか?」

「そうですね。その前に、今日の流れをおさらいしましょう」

 

 そもそもプリーアイズ先生から今日の事を聞いたのが昨日だから、今更感があるよな……。

 俺が聞かなかったらどうなっていたことか……。

 

 楓さんには感謝だな。

 

 さて、プリーアイズ先生の話だが、そんなに難しい内容ではない。

 学園にあるテレポーターの待機室でA級ないしS級の出現報告を待ち、その後はテレポーターで移動。

 アロンガンテさんとプリーアイズ先生の指示の元、戦うか見学するかの判断をする。

 

 まあ新人の中にA級を単独で倒せる奴も居るので、そうそう問題は起きないだろうがな。

 俺も今は杖があるので、特殊な魔物さえ出なければ、A級や並みのS級に負ける事はないだろう。

 

「それでは移動しますので、騒がないで付いて来て下さい」

 

 プリーアイズ先生の話も終わり、学園にあるテレポーターの待機室に向かう。

 

 さて、念のための作業をしておくか。

 

 流石にあんな隈がある状態の女性を放っておくのはいたたまれないし、俺の糞運が何を引き付けるか分からない。

 なので、コソコソと後ろに近づき……。

 

「アロンガンテさん。疲れてる様ですが、良ければ回復しましょうか?」

「ッ! ああ、あなたがイニーですね。お話はタラゴンと楓から伺ってます。治せるならお願い出来ますか?」

「分かりました。精神に癒しよ(リカバー)

 

 傷ではなく、精神的な面で回復魔法を使う。

 アロンガンテさんの目元にあった隈が消え、少し痛んでいた髪に艶が戻る。

 ふむ。傷だけではなく、精神的な疲れも治せるみたいだな。

 良かった良かった。

 

「ふぅ、ありがとうございます。これは良いものですね……」

「これから戦っていただく人が、疲れているのは忍びありませんからね。今日はよろしくお願いします」

「年齢にそぐわず、しっかりしていますね。ありがとうございます」

 

 軽く頭を下げて、アロンガンテさんから離れる。

 これで憂いの1つが無くなった。

 

(こういう催し物だと何か起きそうな気がするけど、起きると思うか?)

 

『この前魔女に会ったばっかりだし、警戒しといて損はないよ』

 

(それは分かるが、今回アロンガンテさんが戦う予定の魔物の場所はランダムみたいなものだろ?

 流石に待ち伏せや、向こうが準備している魔物に当たるなんてことはないだろう)

 

『……ハルナ。それはフラグって言うんだよ』

 

 あっ。

 

 数分程アクマやミカちゃんなどと話していると、待機室に着く。

 紐付きじゃない俺がここに来ることはまずない。

 待機しないで、先に転移してから現地で魔物が出るのを待っているからな。

 

 東北支部に比べると広々としているが、それは学園の全クラスが使うことを想定してだろう。

 あるいは、いざという時の避難場所としてかだろうか?

 

 連絡が入るまではここで待っているしかない。

 

 無料の飲み物を自販機から受け取り、適当に座る。

 ちらほら他のクラスの魔法少女も居るみたいだが、時間までは自由なのでゆっくりと待つとしよう。

 

「のう、イニー」

「何ですか?」

 

 造血の魔法や高火力魔法について考えていると、ミカちゃんが隣に座り、話し掛けてきた。

 

「どうかしましたか?」

「何と言えば良いのか分からんのじゃが、妙に心がざわついてのう」

 

 あー成る程、これがアクマが言ってたフラグか。

 

「そうそうこの前の様な事は起きないでしょう。今回はアロンガンテさんも居ますから大丈夫ですよ」

「うむ。だと良いのじゃが、どうしても不安になるのじゃ」

  

 ロックヴェルトについては能力的にどうしようも無かったからな。

 結界に捕まったら最後、戦いに勝たないといけない。

 

 前回結構な大怪我を負わせたから、流石にそう何度も現れないと願いたい。

 

 もしロックヴェルトの結界の様な物を奴らが使えるのだとすれば、かなり面倒臭い事になるけどな……。

 このまま暗い表情をされているのもなんだし、慰めておくか……。

 

 ……いや、どう慰めればいいんだ? 

 

「もしもですが……」

「なんじゃ?」

「アロンガンテさん1人では対処できなかったとしても、今回は私も万全なので、安心してください」

 

 右腕を前に突き出し、杖を召喚する。

 長い間離れていた訳でもないが、やはり杖があると安心する。

 

「色々とありましたが、私も本調子となったのでこの前みたいな醜態を晒す事は無いでしょう」

「……もしかしてわらわを慰めようとしてくれてるのかえ?」

「……はい」

 

『ぶふぅ!』

 

 俺とミカちゃんの間に少しだけ間が開いた後、アクマが吹いた。

 分かっているさ、俺が不器用だって事くらい。

 どこまでいっても、俺の内面は男のままだ。

 

 女性の扱いなど全く分からないんだよ……。

 

「その、なんじゃ……ありがとうのう」

「――珈琲のお代わりに行ってきます」

 

 出していた杖を消して、珈琲のお代わりを取りに席を立つ。

 はぁ、マリンの時もそうだが、慣れない事はするもんじゃあないな。

 

 新しく珈琲を受け取り、ミカちゃんの隣に座る。

 苦い珈琲が染み渡る……。

 

「イニーはブラックで飲んでるみたいじゃが、苦くはないのかえ?」

「慣れるとこの苦みが心地良いんですよ。飲んでみます?」

 

 そう言えば、昔から珈琲はブラックで飲んでいたな。

 あれは小学生の時に、姉ちゃんが無理矢理飲ませたのが初めてだったな。

 

 一口目は苦さに驚いてペッ、と吐いてしまったが、二口目からその苦みが案外良くて、それ以降はずっとブラックだ。

 

「うーむ。では一口頂くのじゃ……」

 

 俺のコップを受け取ったミカちゃんが一口珈琲を飲んだ後、無言でコップを置き、自分の飲み物であるオレンジジュースを飲む。

 

「これは人が飲むものじゃないのじゃ」

 

 あっ、はい。

 

 まあ、12歳の少女にはブラックはまだ早いよな……。

 

 それから少しだけ時間をつぶしていると、プリーアイズ先生が集まる様に声を掛ける。

 

 どうやら、魔物が出現したようだな。

 

 さてと、出撃と行きますか。

 

 

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