魔法少女がいく~TS魔法少女は運が悪いようです~   作:ココア@レネ

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なろう側で総合1万ポイント記念で感謝回を投稿したので、良ければお読みください。


魔法少女たちの奮闘

 アロンガンテとイニーが飛び立った後、マリンたち新人クラスの生徒は、苦戦を強いられていた。

 

 最初の内はプリーアイズが指示を出していたが、ドッペルが範囲系の攻撃をするようになると、マリンたちから離れていった。

 

 新人クラスの生徒の中では茨姫とシモンの能力が広範囲に攻撃が広がりやすいので、時間が経つに連れて、皆が距離を取り始めた。

 

 相手はS級となる魔物だが、能力は化けた相手に依存するためマリンたちでも戦えているが、状況は良くない。

 

 いくら魔物とは言え、自分と同じ姿の者と戦うのだ。

 

 新人クラスの生徒たちがイニーの様に壊れていたり、アロンガンテの様に割り切る事などできないでいた。

 

 戦いによる消耗。雨によりぬかるんだ足場。遮蔽物の無い荒野。

 1つとしてマリンたちに有利な条件は無かった。

 

 新人クラスの生徒たちの中で一番問題があったのは、皆からアリス又はエルと呼ばれてる魔法少女だった。

 

 武器がライフルな為、離れていたとしても誤射の危険があるのだ。

 ドッペルたちと戦い始めて直ぐに、その危険性に気付いたプリーアイズにより遠くに飛ばされたが、時々生徒たちの方にも、流れ弾が飛んできているのだ。

 

 その為、生徒たちは自分のドッペルと戦いながら、常に周りに気を配らないとならないのだ。

 

 マリンはぬかるんだ地面を踏み込み、ドッペルに刀を振り下ろす。

 それをドッペルは刀で往なし、後ろに飛びのきながら弓に持ち替えて、矢を放つ。

 

 マリンは身体を横に向けて矢を避けようとするが、後方に他の生徒がいる可能性を考え、刀で矢を斬り落した。

 

 マリンが1対1で戦う場合ならば、弓で牽制をし、その後に刀での接近戦をする。

 

 しかし、今回はあちこちで戦いが行われている為、遠距離系の武器や魔法は、取り扱いに注意しなければならない。

 

 このままドッペルに弓を使われたままではいけないと考えたマリンは、攻めに出る。

 イニーに啖呵を切った手前、せめて生徒の中では1番最初にドッペルを倒そうと思っていた。

 

 だが、相手は最も強い状態の自分だ。

 疲労のあるマリン側が、どうしても不利となる。

 

 奥の手として強化フォームもあるが、もしも強化フォームになって倒せなかった場合、マリンは魔力が無くなって何もできなくなってしまう。

 

 また、ドッペルを倒した後の事もあるので、ここで全力を出す選択肢をマリンは選べなかった。

 

 そんなマリンとは違い、ドッペルは全力でマリンを攻撃してくる。

 そして、マリンは耐久戦が得意ではないので、状況は悪くなる一方だった。

 

 そんなマリンとは裏腹に、ミカは既にドッペルを倒すことを諦めていた。

 

 ……いや、正確には諦めるしかなかったのだ。

 ミカの使うチャクラムは攻防に優れているが、どちらかと言えば防御の方が優れている。

 

 最初の頃はミカもマリンに誘発され、ドッペルを早く倒してしまおうと考えていたのだが、ドッペルと戦う内に気づいてしまったのだ。

 

 ――自分で自分の防御を貫ける程の、魔法も技も無いことに。

 

(あっ、わらわ詰んだ)

 

 幸い避ける事と防御についてはイニーとの特訓により、比較的得意になっていた。

 いっその事誰かの手助けでもしようかと考えたのだが、ミカの魔法が雷の為、感電の恐れがあるのだ。

 

 魔力は多少消費しているが、まだまだ余裕はある。

 跳ねた泥で顔を汚しながら、ミカはマリンかイニーの助けが来るのを待つしかなかった。

 

 不利な状態で攻めるしかないマリンと攻める事が出来なくなってしまったミカたちと違い、空中で戦っているプリーアイズの戦いは壮絶なものとなっている。

 

 プリーアイズの魔法は召喚系に分類され、プリーアイズが指定した場所の物を、瞬時に召喚することが出来る。

 プリーアイズは公式で、場所を指定して召喚を出来ると書いてあるが、勿論奥の手がある。

 

 流されて魔法少女をやっているとは言え、伊達に21位を死守していない。

 プリーアイズの奥の手それは……。

 

召喚(サモン)! アロンガンテ!」

 

 プリーアイズの右腕にレールガンが現れ、それを発射する。

 撃ち終わるとレールガンは消え、プリーアイズは直ぐに回避行動をとる。

 プリーアイズが居た所には、ドッペルが放った魔法が爆発する。

 

 プリーアイズは他の魔法少女の魔法や、武器を召喚と言う形で、一時的に使う事が出来るのだ。

 無論、そんな強力な魔法にはデメリットがある。

 

 通常使う召喚より消費魔力が桁外れに多くなり、使う魔法や武器の威力は半減してしまうのだ。

 

 それでも、プリーアイズはこの能力を使い、早期決着を目指している。

 流されて教員となったプリーアイズだが、責任感は人一倍ある。

 

 鬼気迫る表情でドッペルを倒そうとするが、うまくはいってなかった。

 炎が舞い、銃弾が撃ち出され、閃光が走る。

 

 プリーアイズの奮闘もあり、ドッペルにそれなりの怪我を負わせているが、それはプリーアイズ側もだった。

 

 白くふわふわとしていた翼は雨と血によって濡れ、左腕からは雨と一緒に血がとめどなく流れていた。

 

(これがドッペルですか……自分の魔法がここまで厄介だとは思いませんでした)

 

 プリーアイズは濡れた髪を払い、最後の手段に出る。

 

「召喚! フリーレンシュラーフ!」

 

 ランキング2位である魔法少女の魔法を、プリーアイズは召喚する。

 フリーレンシュラーフは凍らせる事に特化した魔法少女だ。

 それは氷の魔法が使えるという事ではない。

 

 何もかもを凍らせるのだ。

 

 物や人だけではなく、空間や時間と言った概念すらも凍りつかせる。

 その代償として、フリーレンシュラーフはよく寝ている。

 

 普通に寝てることもあるが、イニーと図書塔で会った時の様に、自分を凍りつかせて寝ていることもある。

 

 その代償が無ければ、1位になっていたかもしれない魔法少女。

 

 それがフリーレンシュラーフだ。

 

 では、何故プリーアイズがフリーレンシュラーフの魔法を使ったのかは、言うまでもない。

 その強力な魔法で、決着を着けようとしているのだ。

 

 勿論強力な魔法には、それ相応の魔力を消費する。

 

 既に傷つき、魔力の減っているプリーアイズでは一瞬しか発動する事は出来ないだろう。

 

 だが、一瞬でもドッペルの隙を作る事が出来れば、何とかなるとプリーアイズは考えている。

 

 ドッペルの四肢が凍り付き、一時的に隙が生まれる。

 それだけだが、プリーアイズはかなりの魔力を消費してしまう。

 

 急激な魔力の消耗により、意識が飛びかけるが、それを気合で我慢する。

 

「召喚! アロンガンテ!」

 

 再びレールガンを呼び出し、狙いを付ける。

 

(これで!)

 

 引き金に指を掛け、引こうとしたその時だった……レールガンごと、プリーアイズの右腕が凍り付いたのだ。

 

 プリーアイズが出来る事はドッペルも出来る。そんな初歩的な事を、プリーアイズは忘れていたのだ。

 

 何より、ドッペルの方がプリーアイズより魔力があり、強力な魔法が使える。

 

 更に四肢と翼が凍り付き、プリーアイズは落下を始める。

 

 既にドッペルの四肢は動くようになっており、プリーアイズがした様に、レールガンを構えている。

 

(このままじゃ……動いて! 動いてよ!)

 

 ドッペルの構えるレールガンが光り始め、発射態勢に入る。

 無表情で見下ろすドッペルが一瞬笑った様に、プリーアイズには見えた……。

 

 プリーアイズは目を閉じて、来るであろう痛みに耐えようとするが、何時まで経っても痛みは訪れず、地面に叩きつけられる。

 

 呻き声を上げながら地面を転がり、その時に氷が砕けた。

 

(……一体何が?)

 

 痛む身体を起き上がらせ、空を見上げる。

 

 そこには杖でプリーアイズのドッペルを串刺しにしながら、落ちてくるイニーの姿があった。

 

炎よ。全てを(フレイム)焼き尽くせ(ラカム)!」

 

 イニーはドッペルを串刺しにした状態で炎の魔法を使い、焼き尽くしながら、ドッペルを地面に縫い付けた。

 

 少しの抵抗の後、ドッペルは塵となり、消えてしまった。

 

 最後の一部始終とはいえ、自分と同じ姿をしたドッペルが、串刺しにされて焼死させられる様を見たプリーアイズは、何とも言えない気持ちとなった。

 

「大丈夫でしたか?」

 

 白く光る翼を羽ばたかせ、イニーがプリーアイズに近寄る。

 

 イニーのローブには雨でも流しきれない程の赤い染みがあり、プリーアイズは驚く。

 

「私は大丈夫です。それよりも、イニーさんこそ大丈夫ですか?」

「ええ。一応ですが、アロンガンテさんも大丈夫です。治療しますね」

「いえ、それよりも他の生徒達の事をお願いします。私はもう魔力が無いのでどうしようもないですが、イニーさんなら……」

 

 出来れば怪我を治して欲しいプリーアイズであるが、プリーアイズの魔力は殆ど無く、怪我が治ってもこれ以上戦う事が出来無い。

 

 そんな自分にイニーの魔力を使わせる位なら、他に回して欲しい。

 

 それが、プリーアイズの思いであった。

 

「……分かりました。すみませんが、これで失礼します」

「皆を……あの子たちをお願いします」

 

 相変わらずの濁った眼を、プリーアイズは見つめ、生徒たちの事を託す。

 その眼と表情からでは、何を思っているかはプリーアイズは読み取ることが出来ない。

 

 だが、イニーの返事を聞いて、微かに笑みを浮かべる。

 

 そうして、イニーは翼を羽ばたかせて、飛んで行った。

 白く光る翼が、雨を反射して煌めく。

 

 

「ごめんなさい。イニーさん……」

 

 その様子をプリーアイズは、片腕を押さえながら見送るのだった。

 

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