オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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トブの大森林の奥地 2

 トブの大森林の草木を掻き分け、枯れた木々が立ち並ぶ広場のような場所に案内されたモモン達一行にドライアドのピニスンは悲しみを堪えるような声を上げた。

 

「ほら、ここだよ」

「アウラ、どうだ」

「はい、間違いありません、此処です」

「確かに此処から先、木が枯れ切っているな。無駄な仕事が一つ増えるが目的の仕事は失敗に終わるか」

 

 枯れ木の広場を前に立っていたモモン達は、これからどうするか決めかねているようだ。

 ピニスンがモモンの方を向いて何故今まで聞いてなかったのかと思いつつ尋ねた。

 

「あっそういえば聞いてなかったね。君は何をしに此処まで来たんだい?」

「あんたさー。アインズ様にその口の利き方」

「かまわん、此処へは、どんな病も癒すといわれる薬草を探しに来たのだよ」

 

 ピニスンが両手を胸の前で組んで、残念そうにモモンの方を向いて答えた。

 

「薬草ねぇ、でもそれってきっと、……難しいんじゃないかな」

「どうした、何か心当たりでもあるのか?」

「えっ、だって君が探してるのは」

「ああ、想像がついた。つまり薬草は魔樹のどこかに有るという事なんだな」

「うん、そう」

「はぁー、討伐決定ですかね。アインズ様」

「嫌な予想は大概当たるなあ。それで魔樹はどこにいる。全て枯れた木のようにしか見えないんだが」

「この枯れた場所の中央だよ」

 

 モモン達は枯れた木々の中央へと進んで周囲を調べた。

 周りには枯れ木だらけで生き物の姿はモモン達以外にいない。

 魔樹ザイトルクワエがどこに潜んでいるかが分からない、この地面の下にいるのか?

 

「ん-、それがしには何もいないようにしか見えないでござるな」

「あたしの感知にも引っ掛かりません」

「ならば、次の策と行こう。アウラ、お前の特殊能力にターゲティング出来る物があったな」

「射撃の為に使うアレですね」

「アレを範囲全体に発動させた場合、どうなる?」

「ん-、アレは敵の注意も集めますので範囲内の敵全員のヘイトを買うことになるとは思いますが。もし敵が隠れているなら何か反応があるかもしれません」

「えっちょっと待ってよ。それって、もしかして魔樹を目覚めさせる可能性もあるんじゃないかい」

 

 まー。そのつもりだったんだけど。

 うん、世界を滅ぼす存在か。情報も無い内に手を出すのは、まずいよな。

 アウラのスキルで魔樹のレベルだけでも測れないかな。

 

「確かにそうだな。今回はどこにいるのか、そして薬草を手に入れる事を最優先として……」

 

 その時、轟音と共に地面が盛り上がり樹の擦り合わせるような音と共に高さ100mは有りそうな巨大な魔樹ザイトルクワエが目覚め、起き上がろうとしていた。

 魔樹の天辺、いわゆる頭頂にボコボコしたところがあり、そこに万病に効く薬草らしき苔が生えてるのをアウラが発見したので、アウラに取ってくるよう命じた。

 魔樹は寝起きで腹が減っているのか周囲の枯れ木を300mを超える長さを持つ6本ある触手で次々と引き抜いては胴体にある牙の生えた口に持って行き食べているようだ。

 アウラは、魔樹ザイトルクワエの体を飛び跳ねて触手の攻撃の雨を避けつつ頭頂の薬草を採取して、なんなく帰って来た。

 モモンは前に出て、魔樹ザイトルクワエに声が聞こえるように大声で声を掛けた。

 

「おーい!、ザイトルクワエ!。話を聞いてくれ!」

 

 魔樹ザイトルクワエから五月蠅そうに、触手が1本押し叩くように飛んできたのをモモンは避けた。

 どうやら頭頂の薬草を採取するのとは無関係に話が通じなそうで、今も食欲のままに枯れ木を口に運んでいる。

 アウラから魔樹ザイトルクワエのレベルをスキルで計ってもらったが80から85くらいで特化しているのが体力で測定外だと分かった。

 レイドボス化じゃあるまいし、まあ一安心した。これで、いざとなれば本気を出して攻撃すれば倒せると分かったからだ。

 モモンは《メッセージ/伝言》でアルベドに連絡を取り、二グレドには、そのまま此方を監視、それからシャルティアにワールドアイテムを使用した者の影を発見した場合は決して見逃すなと伝えた。

 

「アウラとハムスケは、ピニスンを離れた場所で護衛しろ。私達は奴を討伐する」

「はい、わかりました。アインズ様」

「わかったでござるよ。殿、お任せ有れでござるよ」

「えっ、本当に倒せると思っているのかい?」

 

 黒宝珠の杖に嵌め込まれていた死の宝珠はモモンに補助魔法を掛けて強化した。

 

『《プロトタイプエクステンドマジック・ウォリアーレベルアップⅣ/魔法試作持続時間延長化・戦士職段位上昇Ⅳ》』

 

 モモンは、次から次へと《クリエイト・グレーター・アイテム/上位道具創造》で大剣を創り出し地面へと五芒星を描くように突き刺していき、レベルアップによって得た新スキル〈地球の再誕〉を発動させる。

 地面に突き刺した5つの大剣から〈根源の火精霊〉〈根源の水精霊〉〈根源の風精霊〉〈根源の土精霊〉〈根源の星霊〉の五体のモンスターが生まれた。

 〈根源の星霊〉は90レベル、他の高位精霊は87レベルを誇る巨大な人型精霊だ。

 魔樹ザイトルクワエのレベルは、アウラのスキルで見てもらったが高く見積もっても85レベル、こちらの戦力の方が上だ。

 だがモモンは戦士としての訓練の為に前線で戦う事にしている。

 攻撃されモモンの体力が半分を切れば、アインズのアンデッドの魔法使いの姿に変わり止めを刺すつもりだ。

 モモンの姿のまま戦い続ける為には、体力が半分以上あるように戦略を練らなければいけない。モモンは皆に指示を出した。

 

「ナーベ、ニニャは距離を保ちつつ魔法で攻撃せよ。〈根源の土精霊〉はナーベ、ニニャを守れ、〈根源の火精霊〉〈根源の風精霊〉は右側から、〈根源の水精霊〉〈根源の星霊〉は左側から攻めろ、第10位階魔法の範囲攻撃を使う際には互いに連絡して他の者達をザイトルクワエからできるだけ距離を取らせるのだ。」

 

 モモンは、ザイトルクワエに突撃しつつ戦技を唱え、セキフに指示を出した。

 

「〈武技・武器魔法付与:現断〉、〈武技・七彩強化〉、〈武技・黒曜石剣の円陣〉。セキフ、影から出てこい。セキフはザイトルクワエの前面から攻撃しろ、奴の目を釘付けにしろ」

 

 セキフがモモンの影から飛び出てくるとザイトルクワエを翻弄するようにザイトルクワエの目の前を飛び回りながら切りつけている。

 300メートルを軽く越えた巨大な触手が叩きつけるようにモモンに襲い掛かるが、モモンは此れを武技で切り裂いた。

 

「〈武技・双剣斬撃〉!」

 

 《現断》を付与された双大剣で見事に切り裂かれた触手を振り回しながら、ザイトルクワエは次の触手で攻撃を繰り出そうとしたが〈根源の火精霊〉が《ヴァーミリオンノヴァ/朱の新星》で触手を焼き切り、〈根源の風精霊〉が《コール・グレーター・サンダー/万雷の撃滅》でザイトルクワエ自身を雷で貫いた。

モモンは、ザイトルクワエに近づき双大剣を振り下ろしながら武技を放つ。

 

「〈武技・八光連撃〉!」

 

 本来、攻撃がばらける命中率の低い剣閃が近づいた事と相手が100メートルを超える高さを誇る巨体という事もあり、8度の斬撃全てに《現断》を付与された攻撃がザイトルクワエを切り刻む。

 ザイトルクワエは、植物系モンスターで痛みに強い種族の筈なのだが胴体の口から絶叫を上げて苦しんでいるようだ。

 怯んだザイトルクワエに対して〈根源の水精霊〉が《パーフェクト・デハイドレーション/完全脱水》で触手を干からびさせ、〈根源の星霊〉が《ブラックホール/暗黒孔》でザイトルクワエの胴体の一部を超重力の巨大な空虚な穴へ吸い込んでいる。

 ナーベとニニャは、遠くから《ファイアーボール/火球》や《ドラゴン・ライトニング/龍雷》でザイトルクワエを攻撃してダメージを与えている。

 

 魔樹ザイトルクワエは、残り4本の触手で一人ずつ攻撃していく事にしたのかモモンを狙ってきた。モモンは迫る触手2本を纏めて〈武技・八光連撃〉で斬り飛ばし、残り2本の触手による叩きおろしを〈武技・無敵〉を使い1本は凌いだが、もう1本の触手の攻撃を喰らい地面を転がり片膝を突いた。

 頭上を浮かぶ3つの黒曜石の剣が、叩きおろさんとする触手を切り裂いているが触手がでかすぎてあまり効果は無いようだ。

 その時、ニニャが持つ黒宝珠の杖に嵌め込まれていた死の宝珠が魔法を唱えた。

 

『《プロトタイプペネトレートマジック・ローカル・ディスインテグレイト/魔法試作抵抗難度強化・局所分解》!』

 

 モモンを押し潰そうとする触手を一筋の薄い緑色の光線が斜めに走り、斬り飛ばした。

 そしてモモンへ死の宝珠が《レイ・オブ・ネガティブエナジー/負の光線》を放ち、負のエネルギーが宿る黒色の光線がアンデッドであるモモンの傷を癒した。

 

「感謝する、死の宝珠よ」

『もったいなき御言葉です。モモン様』

 

 モモンは、魔樹ザイトルクワエを見上げていると、残りの触手を根源の精霊達が囲んで潰しているのが見える。魔樹ザイトルクワエは吠え声を上げると何かを打ち出そうとするかのように口を窄めて力を貯め始めた。

 

「触手が無くなって何か打ち出そうとしてるぞ。全員防御態勢を取れ」

 

 ザイトルクワエの口から頭ほどの大きさの種が、モモン達に向けて無数に打ち出された。

 

 種か?魔樹ザイトルクワエは、此処で倒すから種があれば、やがて若木になって万病に効く薬草を植え込んで栽培できるんじゃないか?

 モモンは双大剣を交差して防御態勢を取りながら、アウラにザイトルクワエの種の良い状態の物を回収するように言った。

 

 無数の種が、モモンの双大剣に弾かれ、〈武技・無敵〉を何回か使い無力化した。〈根源の土精霊〉が巨体の影に隠れたナーベとニニャを無数の種から守っているのが見え、他の根源の精霊達は防御態勢を取り砲弾のような種を捌いている。セキフは近くの影に隠れているようだ。

 

 モモンは、触手が無くなり相手の移動速度が落ちたことを見て大技を使う良い機会だと感じた。

 

「第10位階魔法を使え!、それ以外の者は距離を取りつつ攻撃せよ」

 

 〈根源の火精霊〉が《ストリーム・オブ・ラヴァ/大溶岩流》でザイトルクワエの足元の地面に亀裂が出き煮え滾る溶岩流を噴出させ、〈根源の星霊〉が《メテオフォール/隕石落下》で隕石を召喚してザイトルクワエにぶつけて巨大な胴体を砕いた。根源の精霊達が高圧水流、稲妻、様々な魔法で攻撃している。

 ナーベとニニャも〈根源の土精霊〉に隠れながら魔法を惜しみなく連射している。

 

「そろそろ終わりだ。スキル〈太陽の爆発〉!」

 

 モモンの双大剣に炎が上書き付与され、炎の双大剣を突き付けるとザイトルクワエを中心に攻撃範囲を示す真紅の円が浮かび上がり、数秒後、ザイトルクワエを包みこむような火柱が上がり燃え盛った。

 魔樹ザイトルクワエは叫び声を上げていたが火柱の炎に飲まれ、やがてその巨体が燃え崩れていく。

 

「どうやら魔樹は倒せたようだな。根源の精霊達よ、集まり元の武器に戻れ」

 

 根源の精霊達がモモンの廻りで五芒星を描くように集まったかと思えば地面に突き刺さった大剣へと姿を変えていた。モモンは次々に地面から大剣を引き抜き《クリエイト・グレーター・アイテム/上位道具創造》を解除して消去していった。その後、アウラに種の良いのが見つかったかと尋ねた。

 

「はい、10数個ほど見つけました。他のは割れてたり罅が入ってたりで使えそうも無いです」

「ほう、種が10数個ほど見つけたのか。第六階層で若木に育てて、万病に効く薬草を植え込んで薬草が増やせるか試すぞ」

「はい、わかりました。薬草は全部植えるんですか?」

「いや、半分は第六階層で育てて、半分は冒険者組合に持って行くつもりだ」

「了解です」

 

 魔樹ザイトルクワエを討伐したことでモモンは〈武技・八光連撃〉の上位武技が目覚めそうな気配を感じていた。もうしばらく訓練すれば上位武技を手に入れる事が出来るだろう。

 ニニャと死の宝珠は格上の敵を倒した事で2レベルほどレベルアップしたそうだ。死の宝珠は頼んでいた宝石や貴金属を創るために前提魔法と呼ばれる物を取得した。

 死の宝珠から時間的に薬草を冒険者組合に持って行くのが早すぎると、指摘を受けたのでナザリックで休憩してから冒険者組合に行くことにした。トブの大森林の〈西の魔蛇〉と〈東の巨人〉と話を付けるのは又今度にする事になった。

 死の宝珠は、レベルアップによって得た魔法で宝石や貴金属を創る魔法や様々な魔法を試作しているようだが中々完成しないようで苦労しているみたいだ。

 アインズは、午前中は〈武技・八光連撃〉の上位武技の訓練をしつつ、午後はソアの魔法による人形の歩行訓練を死の宝珠と意見を交換して見てやり、夜は執務をして、翌日の朝食後にモモン達は冒険者組合に初めてソアを連れ報告に行った。




・《パーフェクト・デハイドレーション/完全脱水》
 オリジナル魔法、第7位階魔法。
 第4位階魔法《デハイドレーション/脱水》の上位版、生物全般に大ダメージを与えることが出来る。

・《ローカル・ディスインテグレイト/局所分解》
 オリジナル魔法、第6位階魔法。
 D&Dの《ディスインテグレイト/分解》という魔法を改良した物。
 例えば腕を狙って《ディスインテグレイト/分解》を掛けると相手本人が分解されるが、この魔法では腕の極一部を切り取って崩壊させることで腕はその場で落ち、治療魔法を使えば治療できるなど、いわば剣の斬撃や突きに等しい効果が出せる。
 この魔法での抵抗判定は《ディスインテグレイト/分解》の抵抗判定よりも有利なので格上の相手にも使えます。

・〈武技・無敵〉
 オリジナル武技、以前に此処で紹介したオリジナルスキルの武技版
 上位物理無効化Ⅲと上位魔法無効化Ⅲの強化版のスキルを武技化した物で、発動すると一瞬だけ相手の攻撃を受けない無敵状態になる。ただしスキルなどで付与されたノックバックは防げない。
 魔力と集中力を消費して発動するため、スキルの時より魔力を消費しない。
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