モモン達がビーストマンの大軍勢を全滅させた後に街から遠くにいる残敵を掃討をしつつ、モモンと死の宝珠はハムスケに武技が身に付けられるか話していた。
「死の宝珠よ、ハムスケは武技を会得できると思うか?今まで戦っていても会得してないんだが」
『モモン様、会得できるとは思います。ですがハムスケは武技の前提である戦士職のレベルを取ってないせいで種族レベルのみが上がっているのでは無いでしょうか?ゆえにまずハムスケに戦士職の実地訓練をして戦士職のレベルを上げる事が重要かと』
「戦士としての実戦か、前足の爪で器用に戦って上がるのはモンク(修行僧)のレベルだろう。ゆくゆくはハムスケにも鎧を着せたいからモンクは却下するとして尾を使って戦うのが武器を使い戦う戦士っぽいな」
「うむ、ハムスケ!今度から敵と戦う時は戦士として戦い武器の代わりに長い尾を使い敵を切り裂くようにしてみろ。もしかしたらハムスケも戦士のレベルが上がって武技を会得できるかもしれないぞ」
「おお、某ももっと強くなれるのでござるか、わかったでござる。尾で敵を切り裂いてみるでござるよ。こう、尾の鱗を逆立てれば切れそうでござるからな」
「うむうむ、頑張れよ」
モモン達が残敵掃討を片付けてビーストマンの耳を剥ぎ、大軍勢の死体をアンデッドの軍勢が《ゲート/転移門》でナザリックに運び、死の宝珠がアンデッドの軍勢を送喚してから街に帰って来たところ、街から兵士が数人走って来た。
「モモン様、王城から使者が来ております。至急使者の方に街の貴賓館にて御会い頂きたいのですが」
「王城から使者が?はい、わかりました。戦の後で体が汚れているのですが構いませんか?」
「はい、大丈夫かと。使者の方は一刻も早く会いたいそうです」
街へ入ると街中の人々に歓喜の声で迎えられ、モモンは片手を上げてそれに答えている。
ふふふ、名声の上がる音が聞こえてくるようだ。
今回のビーストマンの大軍勢の撃退は、かなり名声を稼いだぞ。周辺国家に名前が鳴り響くのも時間の問題だな。
モモンは皆の声援に答えながら貴賓館に行き、使者に会った。どうやらビーストマンの大軍勢を壊滅させた事で女王は大変に感激しており直接礼を述べたいので王城に来て欲しいとの事だった。
「は?礼を述べるなら直接来るべきでしょう。このゴミ虫が」
「こら、ナーベ。そんな事を言う物では無い、王族というのは執務や外交などで忙しいのだから来られないのは仕方が無いのだ。ところで使者殿、今から王城に行っても宜しいのか?」
「え、ええ王城に来て頂いて結構です」
「では、戦いの汚れを落としてから向かいますので、これで失礼致します」
モモン達は、ニニャの範囲拡大化した《クリーン/清潔》によって汚れやほこりを消し去り、街から出て人目のつかない場所へ行って《ゲート/転移門》を使い城下町へ転移した。
竜王国冒険者組合に行きビーストマンの大軍勢を壊滅させた報奨金を受け取り、廃墟の街の解放の任務を請け負い、女王について聞いて回ると面白い事が幾つか聞けた。
曰く女王は幼女だ、女王は竜王が人間との間に作った子の子孫で曾孫だ、希少なタレントを持ち世界の始めから存在する魔法が使えるが生贄が大量に必要だ、等々が聞こえてきたので礼代わりに冒険者組合に併設された酒場の酒を全員に1杯奢ってやった。
その後、報酬振り込み用の口座を竜王国の銀行に作り、市場で消耗品等を物色したのだった。
よし、情報も仕入れたし報酬振り込み用の口座も作ったし王城へと向かうか。
竜王国の王城の謁見室は、質素ながらもどこか荘厳に感じられる部屋だった。窓には白いカーテンが掛かり天井には《コンティニュアル・ライト/永続光》が掛かった照明が光を放っていた。
謁見室にて冷や汗を搔きながら黒い大きな椅子に座った幼女の女王ドラウディロンと宰相が出迎えてくれた。
モモンは、旅の冒険者という事で立ったまま話を聞いて良いそうだ。
まあ、王に会うのだし兜は取っておくのが筋という物かと思い、モモンは兜を取って偽装された英雄の素顔を女王に見せたのだった。
「は、はやすぎないか。王城にきてといったが、はやすぎるぞ」
「転移できる魔導具を使いましたので、私達を呼び寄せた女騎士から報告を受けていないのですか?」
「うむ、なにやらてちがいがあったようだな。そのようなほうこくはうけてないよ。ところでお兄ちゃんってカッコウいいね、つよいし、あこがれちゃうなー」
モモンに死の宝珠から無詠唱化した《メッセージ/伝言》が届いた。
(モモン様、死の宝珠です。私の直感で竜王国の女王は自らの正体を隠している者と見られます。モモン様から聞いて貰えませんか?)
直感ねぇ、そういえば死の宝珠は、アインズの時に指輪の能力で力を隠していても部下にして欲しいと言ってたな。ある程度は直感というのも当てになるか?
「あー、おほん。竜王国の女王様、その姿も可愛らしいのですが本当の姿を見せては貰えませんか?私の直感なのですが女王様は姿を偽っておられるように感じたのですよ」
「なっ、ぐぬぬぬ。どうして分かったのじゃ直感だと、この姿を見破れた者など居ないぞ」
竜王国の女王ドラウディロンは白煙に包まれ、お子様のワンピース風ドレスから大人用ドレスへと変わり、姿形も天真爛漫な元気溌溂な幼女から大人の魅力たっぷりだがやさぐれたような女性へと変わっていた。
ぷらぷらと揺れていた小さな足もスラリとした生足へと変わり足を組んでいる。
「ああ、何という事でしょう。せっかくあの形態で保護欲を煽って少しでも報酬を負けさせようとしましたのに残念です」
「形態ゆうな、宰相。この格好が本来の私だ。まあ此の恰好の方が気が楽で良いわ、ところでよく戦ったなモモン、些少ではあるが褒美を用意した」
「いえ、当然の事をしたまで褒美は要りません。竜王国では物入りなのでしょう?私共は報酬さえ払って頂けるなら、それで十分です、褒美の代わりと言っては何ですが竜王国の図書を見せて貰えませんか?私共のチーム「漆黒」は魔法使いが多いので図書を見せて貰えれば知識を深める事もできますので」
「うむ、宰相。後で図書室に案内するように本の複製も許可するので存分に知識を深めると良い」
(モモン様、死の宝珠です。この女王様は大きな力を秘めているように感じます。レベルアップすると化けるのかは分かりませんが)
ふーん、竜王が人間との間に作った子の子孫だったか。
先祖返りか?で、本人は、それに気付いていないという訳か。セバスのように竜人系のスキルでも覚えるのかな?
……此処は更に竜王国に貸しを作っておくべきか。
「女王陛下、貴方は強大な力を秘めていると感じます。どうでしょう王としての一日の内、半分だけでも我々、アダマンタイト級冒険者と同行して自らを鍛え上げてみるのは。貴方が強く成れば滅亡に瀕している竜王国の民も多く救えることでしょう」
「……なに?私が強くなるだと、いやしかし政務が」
「大丈夫です。女王のする仕事なら私に掛かれば、あっという間に済みます。それよりも女王の事よろしくお願いしますぞ」
「宰相!話を勝手に進めるな」
「女王、今この国は滅亡するかどうかの所なんですぞ。覚悟を決めて下さい。あっ時間は午後からなら大丈夫です」
「ぐぬぬぬ……」
「まあ御返事は明日の昼で結構です。昼に迎えに来ますので、さて報酬の件ですが、竜王国が別途支払ってもらえると契約書にあります。ここにビーストマンの耳とその総数が書かれた紙がありますのでお渡しします。お確かめ下さい。支払いは後払いの分割払いで竜王国の銀行振り込みでお願いします。振り込み先と口座番号は、先程の総数の紙に書いてますので見ておいて下さい」
そう言って、〈インフィニティ・ハヴァザック/無限の背負い袋〉から別の袋に移し替えた耳と書類を渡して、モモンは頭を抱えている女王に別れの言葉と共に宰相の手配で図書室への案内役が図書室までモモン達を案内したのだった。
竜王国の図書室は古びた印象を受けるが整理整頓は、しっかりとしており埃一つ見当たらない。2階建てで蔵書がびっしりと並んでおり読みがいがありそうだ。
ニニャの考察によると永続化した《クリーン/清潔》が此の部屋には掛かっているのかもという事だった。
司書さんに女王様の許可を貰ったので魔術書の類の本を見せて欲しいと頼み、案内役さんの口添えも有り無事に見せてもらった。魔術書の蔵書だけでも結構な量があり、読書用の机には山のように本が幾つも積まれていた。
とりあえず片っ端から本を複写して後でニニャに読んでもらうか、それとも《読解》のアイテムを創った方が早いかな。
複写魔法に必要な紙束をアイテムボックスから取り出してニニャに渡して置いた。
ニニャの魔法で《コピー/模写》と《クリエイト・ブック/本作成》を使い死の宝珠が魔力を与える事で次々に複写された本が出来上がった。
複写された本は〈インフィニティ・ハヴァザック/無限の背負い袋〉の中に次々と入れていき机の上の本も複写した端から別の机へと動かしているので、短時間で全ての魔術書が複写できたのが確認できたのだった。
後は、本を次々に複写しているのを愕然とした顔で此方を見ていた司書さんに頼んで魔術書を棚に返してもらい、王城を後にしてナザリックに帰還したのだった。
ナザリックでアインズもニニャがワールドアイテム【強欲と無欲】で貯めていた経験値を使い、レベルは103となっていた。
ナザリック・キング(エクスキューショナー)の職業レベルがレベルアップしてスキルも新たに獲得していた。
獲得したスキルは〈土星の大流星〉、弓を構え矢の先端を頭上へ向け放つと、矢は空に突如広がった宇宙に消えていき、その後、宇宙から無数の流星が落ちてきて戦場全体に降り注ぐという物だ。
弓矢は《クリエイト・グレーター・アイテム/上位道具創造》で創り出しておけば良いだろう。魔法の《メテオフォール/隕石落下》が複数回発動するようなので大軍勢相手に効果的だが、単体の敵には流星自体が、ばらけて落ちるので効果が薄いだろう。
魔法は《ネーミング/命名》と《ウォリアーレベルアップⅠ/戦士職段位上昇Ⅰ》と攻撃用魔法を取っておいた。いいかげん死の宝珠頼りなのは問題だからな、これで自力でレベルアップと戦士用の武技が使えるようになるが、死の宝珠が《戦士職段位上昇Ⅴ》を使えるので戦士レベル上昇の効果が高いので頼りにはしよう。
ナザリックで死の宝珠とソアの幻術の出来を見てやり、幻術《パーフェクト・イリュージョン/完全幻覚》を獲得できたようだ。
幻術《完全幻覚》とは五感を騙す事が可能な幻術魔法で、此れによりソアの体やアインズの体に掛ける事で幻術を看破しないと本物にしか見えないし直接触っても肌の感触を感じる幻術なので此れからの冒険での偽装工作に役立つことだろう。
応用で武器を創り出して相手を攻撃もできるが、そんな事より魔法で攻撃した方が早いから使う機会は無いと考えて良い。生活に必要なハサミでも創って利用するとかが便利だろう。
その後、明日の昼までナザリックで用事を済ませていたアインズだったが、ニニャから竜王国の魔術書に興味深い物があったと聞いて大図書館の作業室まで来ていた。
「それで興味深い物とは、宝石を使うのだったか?」
「はい、《宝石形成》の宝石でも問題なく発動を確認しました。この魔術書〈宝石魔術大全〉には宝石の護符、宝石の呪符、魔力の蓄えられた宝石等の創り方が書かれています。この本の通り宝石は魔力の蓄えられた大きな宝石つまり〈魔宝石〉として使え、《マナドレイン/魔力吸収》で貯えられた魔力を宝石から吸収する事で魔力の回復ができます。魔力が空になった〈魔宝石〉は暫くすると空中から魔力を吸収して元の魔力の蓄えられた大きな宝石に戻ります。アインズ様は魔力の回復手段が無いのを気にしておられたので解消できるのでは無いでしょうか?」
「うむうむ、良い物を手に入れたな。他の魔術書、宝石の魔法についても研究を進めるのだ」
「はい、分かりました」
ふふふ、これは良い、ユグドラシルでは魔力の回復手段は自然回復しか無かったからな。これで魔法を撃ちまくれる可能性も出て来たという訳だ、夢が広がるな。
他にも探せば魔力回復の霊薬なんかもあるかもしれない。
後、ニニャは既に《リーディングⅤ/読解Ⅴ》まで獲得済みなので、データクリスタルを使った《読解》のアイテム作成についても頼んどくか優先度は低目にしておこう。
色々とナザリックで作業した後、約束した昼が近づいたので皆で王城へ転移した。
王城の城門前には変装して軽装鎧に刺突剣を身に着けた大人姿の女王と御付きの兵士二人が背嚢を背負い待っていた。
竜王国の女王は覚悟の決まった真剣な顔で怒鳴った。
「ええい、私を鍛えるのだろう?早く連れていけ!この御付きの二人も一緒だが構わないよな」
「ええ、もちろんです。さて、女王ドラウディロン・オーリウクルス陛下、これからは偽装の為にドラウと呼びます。まず竜王国冒険者組合で登録した後で転移しますので付いて来て下さい」
モモンは、そう言うと女王一行を竜王国冒険者組合に連れて行き偽名で登録した後に、街の外に出て人目に付かない所で転移擬装用の奇妙なランプに手を翳し、黒い靄が人が通れる大きさに浮かび上がった。黒い靄を通り抜けモモン一行と竜王国の女王一行は前線の街を囲う石壁の外側の目立たない場所に出て来た。
「ドラウ、まずその恰好で戦うのは御勧めしません。貴方は竜の末裔なのだから鉤爪などで戦う必要があります。ですからまず鎧を魔法で新調しますので鉤爪付きの指で敵を引っ搔いて倒して下さい」
「はぁ?そんな無茶な……」
「では魔法を掛けますよ。この者に竜に似せた鎧を与えたまえ《クリエイト・グレーター・アイテム/上位道具創造》」
ドラウを白い光が駆け抜けると黒い竜に似た全身鎧を着こみ、鋭いトゲが所々から突き出しており、漆黒のマントをたなびかせている。顔の部分が開いた兜は竜の角を生やし、手の指先は鋭い鉤爪が生えたようになっていた。
ドラウは諦めたような顔でモモンに声を交わした。
「モモン、お前は魔法戦士だったのか。これは魔法で用意した鎧か?頑丈そうだな、この鉤爪で攻撃するのか?」
「はい、私は魔法戦士としてチーム「漆黒」を率いています。今から私の部下がビーストマンの斥候を先に見つけ私達で奇襲を掛けて壊滅させます。ドラウにはビーストマンに止めを鉤爪で刺してもらいます。その時は自分が竜に成ったと想像しつつ攻撃して下さい」
「ニニャ、全員に《インヴィジビリティ/透明化》と《オーダレス/無臭》と《シースルー・インヴィジビリティ/透明化看破》を掛けるのだ。そうすれば透明化しても見える事で余計な事故を防げるからな。セキフ、影から出て来い。周辺を見つからないよう探索してビーストマン達を見つけるのだ」
ニニャに《透明化》を掛けてもらい、死の宝珠から無詠唱化した魔法《ウォリアーレベルアップⅤ/戦士職段位上昇Ⅴ》がモモンへ飛んできた。
セキフが影から出てくるとドラウ達一行が驚く一コマがあった物の、セキフが隠密で周辺を探索すると、ビーストマンの大軍勢が消えてしまった事を調べに来たのか5体のビーストマンの分隊が辺りを探しているのが見えたとモモンに報告があった。
モモン達一行はセキフの報告にあった場所の岩陰に《透明化》で潜んで様子を伺うと、ビーストマンの分隊が周辺を探して話し込んでいるのが見えた。
死体は耳を剥いだ後にナザリックに連れ去ったから幾ら探しても見つかる筈が無いのにな。
うーむ、こうゆう時に斬撃を飛ばせたら一方的に攻撃できるんだが後で訓練してみるか。
モモンはソア、ナーベ、ニニャに魔法で先制攻撃を掛けろと無詠唱化した《メッセージ/伝言》を飛ばして、無詠唱化した攻撃魔法が敵を燃やし、凍らせ、痺れさせて5体の内3体を滅ぼした後、ビーストマンが動揺してる内にモモンとハムスケが《透明化》した状態で強襲した。
「〈武技・双剣斬撃〉」
「斬撃でござるよ」
モモンは、ビーストマンに双大剣を振り下ろして手足を斬り飛ばし、ハムスケは鱗を逆立てた長い尾で敵の両手と片足を切り裂いて見せた、まだ武技は会得してないので言葉だけだが、その内〈武技・斬撃〉を覚えそうで楽しみだ。
ビーストマン2体は手足を斬り飛ばされ瀕死になったのだった。
「さあ、止めを!ドラウ」
「ええい、殺ればいいんじゃろ、殺れば!」
ドラウの鉤爪攻撃で瀕死だったビーストマン2体は喉を切り裂かれ何も抵抗できずに死亡してしまった。ドラウは初めて戦いで敵を討伐したのでへたり込んでいる。
まだまだビーストマンを倒してドラウの経験値に変えないと強くは成れない。
よし、次の廃墟の街まで《透明化》で探索してビーストマン達に不意打ちを仕掛けるぞ。
・《クリエイト・ブック/本作成》
オリジナル魔法。
文書の書かれた紙束を一冊の本にする。装丁等は魔力消費により変化する。
・《マナドレイン/魔力吸収》
オリジナル魔法。
死霊系の接触型魔法。相手のマナを吸収して自分のマナとして利用する。ただし吸収する際にマナが減少してしまう。
・〈魔宝石〉
オリジナルアイテム。
魔力の蓄えられた大きな宝石、宝石自体を《マナドレイン/魔力吸収》することで魔力を回復できる。
魔力が空になった〈魔宝石〉は暫くすると空中から魔力を吸収して元の魔力の蓄えられた大きな宝石に戻ります。
他にも魔導書には宝石の護符、宝石の呪符の創り方が載っており研究を要する。
元ネタは小説のスレイヤーズです。コメントくれた方ありがとうございます。