オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

15 / 80
竜王国の廃墟の街 1

 廃墟の街までの道のりで、ドラウも討伐に慣れたようで新たに会得した武技を使い纏めてビーストマン達を葬りながら経験値を稼いでいた。

 

「〈武技・竜爪〉!」

 

 ドラウの片腕が巨大な幻の竜の片腕に包まれたかと思うと、ビーストマン達に向かって跳躍して竜の鉤爪を叩き込んだ。ビーストマン達はある者は頭から潰され、ある者は下半身が潰され喉から臓物が飛び出る有様だ。

 生き残ったビーストマン達は慌てて武器を持とうとするが、そんな準備の時間は与えないとドラウは武技でビーストマン達の喉元を切り裂いた。

 

「〈武技・鉤爪〉、〈武技・鉤爪〉!」

 

 モモンはドラウの活躍を見て《透明化》での不意打ちは強力だなと感じていた。

 今までビーストマン達に気付かれた事なんて数十回の内の1回か2回でビーストマンは、どうやらだいぶ野生を失ってしまったようだ。

 《透明化》では視覚のみを誤魔化せるだけで、聴覚や気配などは誤魔化せないのだからだ。

 そろそろ夕方になる。一度ドラウにこのまま廃墟の街を解放するのか聞いておいた方が良いだろう。

 

「ドラウ、もうすぐ夕方になる。今日は此の辺で冒険は終えるかい?それとも廃墟の街の入り口まで、あと少しまで来たんだから廃墟の街の解放までやるかい?」

 

 ドラウは、御付きの者から体力回復の霊薬を貰い、不味そうに飲みながらモモンからの問い掛けに答えた。

 

「ここで冒険が終わったらビーストマンが居ないか前線の街から廃墟の街まで、また来ないといけないでは無いか。廃墟の街を解放して冒険者達を街に入れて防衛線を上げないと此の国は滅亡するかもしれない。私は、このまま廃墟の街を解放したいんだ。モモン、力を貸してくれ」

「わかりました。廃墟の街の解放まで付き合いましょう。ドラウは鎧を触らせて下さい、よしこれで尾を出せました。尾の攻撃の武技を覚えるかもしれないので今度は尾で、たまに攻撃するようにしてください」

 

 ドラウは体を捻って自らに着いた偽物の尾を動かしている。

 まあ鎧に付けた武器、鞭のような尾だ。自由自在に扱うのには修練がいるだろう事には違いない。

 さて、街に籠ったビーストマンの軍勢を始末するには、逃げられないように出入口を塞いで攻撃すべきだな、死の宝珠の《アンデス・ウォリアー・アーミー/不死の戦士の軍勢》を使うのも良いが戦場では無く街中だと我々が活躍できないから、私のスキル〈地球の再誕〉を使って精霊で街の出入口を塞げば丁度良いだろう。

 モモンは、次から次へと《クリエイト・グレーター・アイテム/上位道具創造》で大剣を創り出し地面へと五芒星を描くように突き刺していき、スキル〈地球の再誕〉の発動の準備をした。

 

「それでは私の奥義を使います。少し離れて下さい。我が5つの大剣から生まれ出でよ、スキル〈地球の再誕〉」

 

 地面に突き刺した5つの大剣から〈根源の火精霊〉〈根源の水精霊〉〈根源の風精霊〉〈根源の土精霊〉〈根源の星霊〉の五体の巨大な人型精霊が生まれ、腕を組み立っている。

 ドラウ達女王一行は巨大な人型精霊を見て腰を抜かさんばかりに驚いていた。

 

「空を飛べる〈根源の風精霊〉と〈根源の星霊〉は街の裏の入り口から出るビーストマンを倒せ、〈根源の火精霊〉と〈根源の土精霊〉は此処で正門入口を見張りビーストマンを倒すように〈根源の水精霊〉は私達に付いて来てビーストマンと戦うのだ」

 

 巨大な人型精霊が、それぞれ動き街の正門前を守るビーストマンの門番を〈根源の火精霊〉が魔法で燃やして〈根源の土精霊〉が叩き潰しているのが見えた。

 

「ニニャ、もう一度全員に《インヴィジビリティ/透明化》と《オーダレス/無臭》と《シースルー・インヴィジビリティ/透明化看破》を掛けるのだ。ソアとニニャは街中だから考慮した召喚をするようにせよ」

 

 ニニャに魔法を掛けられ死の宝珠から無詠唱化かつ持続時間延長化をした《ウォリアーレベルアップⅤ/戦士職段位上昇Ⅴ》を掛けてもらい、武技を唱えて準備を始めた。

 

「〈武技・漆黒付与〉、〈武技・七彩強化〉、〈武技・黒曜石剣の円陣〉」

「出てきてムーン・ボア!《サモン・ムーン・ボア/月光の猪の召喚》」

「死者達よ我らの剣と成れ、《サモン・アンデッド・6th/第6位階死者召喚 スケルトン・ヒーロー/骸骨英雄》」

 

 ソアが〈ムーン・ボア/月光の猪〉を2体召喚していて、〈ムーン・ボア/月光の猪〉は大猪だが門の幅に2体が並べるので十分に街中で使える召喚獣だろう。

 ニニャも死の宝珠の力を借りて〈スケルトン・ヒーロー/骸骨英雄〉を2体召喚したようで、立派な鋼鉄鎧を着込んだ〈骸骨英雄〉が剣と盾を持ってニニャの前に横列で並んでいた。

 

「〈根源の水精霊〉は、前に出て範囲拡大化した大魔法を撃ったら後ろに下がり後方から魔法を撃て、ソアは右側、ニニャは左側で魔法攻撃をしろ。女王一行は後ろの方でビーストマンが戦いから逃れて来たら此れを討伐するように。私とナーベとハムスケは〈根源の水精霊〉の後ろで待機、〈根源の水精霊〉が大魔法を撃ったら下がる〈根源の水精霊〉の代わりに前に出て戦うぞ」

 

 皆に指示を出し準備できた事を確認して、正門を塞いだ上位精霊達に一時退くように指示を出して、〈根源の水精霊〉を先頭にモモン達一行と女王一行は街中にビーストマン討伐に突撃した。

 廃墟の街とはいえ家や物見櫓全てが崩れてはいない、幾軒かは屋根や壁が崩れてたりはしたが大半は、まともに建ったままで、それらをビーストマン達は戦後利用していた。

 モモンが街中に入ると武装したビーストマンの軍勢が建物の中から現れ、こちらを威嚇するように雄叫びを上げていた。

 

 〈根源の水精霊〉が範囲拡大化した《ジャイアント・タイダル・ウェイヴ/大津波》で大津波を起こし辺り一面を大きな波がぶつかり家が波で崩れたりビーストマン達が流されたりして、波が引いた後はビーストマンの軍勢は波に洗われ地面に倒れ身動きができないようだ。

 〈根源の水精霊〉が後ろに下がったので、モモンとハムスケが前に出て倒れたビーストマン達を切り刻み、頭上の3つの黒曜石の剣が倒れた別のビーストマンに突き刺さり止めを刺している。

 ナーベは《マルチ・ライトニング/複数の電撃》で電撃を3本斉射して、のたうつ稲妻が3体のビーストマンを感電させて心臓を止めさせている。

 ニニャは、死の宝珠の力を借りて黒宝珠の杖を高く掲げ《ローカル・ディスインテグレイト/局所分解》と唱え、薄緑色の線の細い光線が地面に向けて横方向へ流れ、倒れたビーストマン達の胴体を切り裂き分断させていた。

 ソアは、範囲拡大化した《ナパーム/焼夷》を使ってビーストマン達を火柱が包み天空めがけて吹き上がった。黒焦げになったビーストマン達が骨が砕ける音と共に落ちて来ている。

 〈骸骨英雄〉達と〈ムーン・ボア〉達は、地面に倒れたビーストマン達に剣を突き立てたり牙で突き刺したりして止めを刺しているようだ。

 女王一行は、モモン一行が使う魔法に驚いていたが、自分の役目を果たすぞというドラウの言葉に目を覚まし辺りを見回して、止めを刺し忘れているビーストマンを見つけては御付きの者達が剣で刺したり、ドラウが〈武技・竜爪〉で止めを刺したり体を捻って自らに着いた偽物の尾で攻撃していた。

 

「くそっ、貴様ら好き放題しおって、出て来い戦術用ゴーレム8号機」

 

 勲章を付け偉そうに見える将軍ビーストマンとでも言える者がゴーレムを倉庫から呼び寄せた。

 大津波の被害にあってなかったビーストマン達が将軍ビーストマンの声により、何本もの縄をゴーレムに付け引っ張ている。

 ゴーレムは倉庫の扉の大きさ目いっぱいで幅が合わなかったのか擦って倉庫の壁が剥がれ落ちているのが見える。

 倉庫の中でゴーレムを組み立てたのか?

 

 ゴーレムは、戦術用ゴーレムというだけあって大きさは5メートル級で全体の色は緑色をしており拳の代わりに武器が取りつけられて巨大な剣と盾が付いていた、脚は8本で人と蜘蛛の合いの子を想わせる姿だ。

 目は頭の中央に横に細く隙間のように空いていた。頭の天辺には自動式のバリスタが付いているのが見える、弦を巻く歯車と弓をゆっくり弾き絞る音が聞こえていた。

 どうやら脚は8本で安定しているのを見ると転倒は期待しない方が良さそうだ。

 

「どうだ戦術用ゴーレム8号機の威容は、殺れ、戦術用ゴーレム8号機」

 

 戦術用ゴーレムが、《透明化》したモモンの方を向くと頭の天辺の自動式バリスタから大ボルトが大きな音と共に発射された。

 

「〈武技・無敵要塞〉!」

 

 モモンは、飛んできた大ボルトに対して武技を発動させ、双大剣を交差して巨大な鉄塊にぶつかったような音を立てて大ボルトを圧し折った、圧し折った大ボルトは天高く舞い上がる。

 モモンは、続けて戦術用ゴーレムの足元にいるビーストマン達に足元の地面に敷き詰められた煉瓦が罅割れる凄まじい踏み込みを見せて即座に近づき、〈武技・星光連撃〉を使い、双剣による一撃を振るう刹那に、周囲のビーストマンの集団に数え切れないほどの斬撃で切り込んで、命令を下していた将軍ビーストマンも体を千切れさせて絶命させた。

 

 これで邪魔なビーストマン達は排除完了っと。しかし将軍ビーストマンを倒しても、戦術用ゴーレムは命令を実行しつづけるか。街中だから派手なスキルは使えないんだよな、使うと街自体が無くなって拠点を取り返しても防衛戦ができなくなってしまう。

 戦術用ゴーレムは、《透明化》した敵を視認できるようで次の敵を探しているが、その隙に脚を破壊させてもらうぞ。

 

 〈根源の水精霊〉やナーベとソアとニニャが、魔法を使っているが、戦術用ゴーレムの巨大な盾によって防がれ、ほとんど効果が無いようで巨大な盾で防ぎきれなかった体が僅かに削れたのが伺えるだけだ。

 戦術用ゴーレムは、巨大な剣を振り下ろしナーベを断ち切ろうと狙うがハムスケの長い尾が剣の平の部分にぶつかり剣をナーベから逸らした。

 モモンは脚を破壊する為に〈武技・漆黒八連撃〉を使って右後脚に八連撃を叩き込み1本を破壊したが、まだ片側相当で3本残っている。

 

「皆、戦術用ゴーレムの片側の脚を使い物にならなくさせるんだ。そうすれば戦術用ゴーレムは身動きができなくなり敵本体にも攻撃が届く筈だ」

 

 戦術用ゴーレムの頭の天辺の自動式バリスタから発射された大ボルトを華麗に避けてドラウが右前脚に〈武技・竜爪〉を叩き込み膝関節部を破壊して、戦術用ゴーレムの巨大盾が叩きつける前に後ろに猛速度で下がった。

 戦術用ゴーレムの巨大盾が叩きつけられるがドラウの居ない地面を凹ませて衝撃でわずかに揺れるのだった。

 

「死、死ぬかと思ったわ」

 

 飛び出して攻撃を仕掛けたドラウが御付きの二人に諫めれている時にも他の者達の攻撃は続く、召喚された〈骸骨英雄〉達と〈ムーン・ボア〉達は残りの片側の脚を狙っているが踏みつぶされたり蹴とばされたりしている。

 〈根源の水精霊〉と魔術師達は、戦術用ゴーレムの目を引き付ける為に魔法を絶え間なく連射して時間を稼いでいるようだ。

 ハムスケは長い尾で巨大剣を捌いているようだ、捌いてなければ魔術師達に被害が発生していたかもしれない。

 モモンは残りの脚に近づき〈武技・漆黒八連撃〉を発動して、脚1本が八連撃を浴び切断はできなかった物の途中から折れたようだ、戦術用ゴーレムは既に片側の脚は1本しか無く支えきれなかったのか倒れてしまった。

 

 戦術用ゴーレムは、片側の脚がほとんど駄目になって移動できなくなった事が認めたくないのか、何とか立ち上がろうと藻掻いている。剣を地面に突き刺し杖代わりに立とうとして崩れる様は哀れにも見える。

 

 モモンは、戦術用ゴーレムが倒れたので戦術用ゴーレムの崩れた脚や体を足場に跳躍して戦術用ゴーレムの目の前まで来た。

 戦術用ゴーレムは、頭の天辺の自動式バリスタから大ボルトを発射しようと狙いをつけたが、モモンに顎を蹴られ空に向かって大ボルトを発射してしまった。

 

「これで終わりだ。〈武技・星光連撃〉!」

 

 モモンの背後のマントが広がり闇のように暗く見え、そこに剣閃が無数に星空のように光輝いたかと思うと数え切れないほどの斬撃が戦術用ゴーレムの頭を散り散りに斬り飛ばしたのだった。

 戦術用ゴーレムの頭は喉から上が無くなっており、体を弛緩させて大きな音を立て崩れ落ちた。

 

「戦術用ゴーレムは倒したが、まだ街中にはビーストマンがいるはずだ。気を抜かずにビーストマンを退治せよ!」

 

 夕暮れ時は過ぎ去り太陽が沈み切る寸前の黄昏時に、廃墟となった街の中心で、モモンは倒れた戦術用ゴーレムの体を足場にして、片腕を天高く上げ声高らかに宣言したのだった。




・〈武技・鉤爪〉
 オリジナル武技。
 自らの鉤爪(籠手の鉤爪でも可)で敵を引っ掻く武技。

・〈武技・竜爪〉
 オリジナル武技。前提武技:〈武技・鉤爪〉、竜の血を引く者である事
 自らの片腕に巨大な幻の竜の片腕を顕現させ竜の鉤爪で敵を引っ掻いたり叩きつけたりする武技。
 体力と集中力を消費する武技。消費量により威力が変化する。
 始原の魔法に近い武技です。

・〈武技・無敵要塞〉
 オリジナル武技。前提武技:〈武技・無敵〉、〈武技・不落要塞〉
 相手の攻撃を無敵で跳ね返す防御系の武技、受ける威力の完全無効化。
 発動のタイミングが非常にシビアとなっている。
 魔力と集中力を消費して発動する武技。

・《サモン・ムーン・ボア/月光の猪の召喚》
 オリジナル魔法。
 レベル40を超える〈ムーン・ボア/月光の猪〉を2体召喚する。
 大猪を召喚する。

・《ジャイアント・タイダル・ウェイヴ/大津波》
 オリジナル魔法、第6位階魔法
 元ネタはD&Dの第3位階魔法《タイダル・ウェイヴ/津波》
 大津波を作り出す魔法。
 大波で範囲内の敵にダメージを与え倒れさせる又火を消す、攻城戦などで火災が発生した時に一気に鎮火できるだろう。

・《マルチ・ライトニング/複数の電撃》
 オリジナル魔法。
 元ネタはD&Dの第5位階魔法《マルチ・ライトニング/複数の電撃》
 短い電撃を3本斉射する。
 この魔法による3本の電撃は、それぞれ別の方向に放つこともできるし、同一の目標にぶつけることもできる。

・〈スケルトン・ヒーロー/骸骨英雄〉
 オリジナルモンスター
 レベル30のアンデッド。立派な鋼鉄鎧を着込んで剣と盾を持っている骸骨。

・〈戦術用ゴーレム8号機〉
 オリジナルモンスター
 レベル50を超えるゴーレム。
 大きさは5メートル級で全体の色は緑色、拳の代わりに武器が取りつけられて巨大な剣と盾が付いている。盾は大抵の魔法ダメージを大幅に低減させる。
 脚は8本で人と蜘蛛の合いの子を想わせる姿をしている。
 目は頭の中央に横に細く隙間のように空いていて、《透明化》した敵を視認できる。
 頭の天辺には自動式のバリスタが付いている。
 なお作中では、まともにモモンと戦ったが、モモンが正門まで引き返して外に出れば愚直に命令を守ろうと外に出ようとして、〈根源の火精霊〉と〈根源の土精霊〉と〈根源の水精霊〉に囲まれて解体されます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。