モモンは冒険者組合に墓地でアンデッド騒ぎを起こした者達とそれを退治した事を説明し、墓地の兵士達の証言もありモモンとナーベはミスリル級冒険者へと異例の昇進を果たした。
その後、モモン達は死の宝珠への褒美を渡すのと依頼の達成を報告する為にバレアレ薬品店へ、ナーベと目を覚ましたンフィーレアと共に入っていた。
「おお!。ンフィーレア、よくぞ帰って来てくれた」
「……おばあちゃん」
二人は抱き合いンフィーレアの帰還に喜びを隠しきれないようで、店主のリイジーは泣き笑いの表情を浮かべている。
「依頼通りにンフィーレアを連れて来たぞ、『全てを差し出す』これが依頼の約束だったな。カルネ村へ移動し、ンフィーレアと共に新しいポーション作成に勤しんでもらおうか」
「ああ、分かった。荷造りが済み次第、カルネ村に行こうじゃないか」
「我々は死体を片付けよう。全てを差し出すのだから死体がどうなろうと良いだろう?」
「もちろんだとも、死体を片付けてくれるなら大助かりじゃよ」
薬品店の奥、薬草の保管庫に進むと冒険者の漆黒の剣達の死体が寝かせてあるのが見える。薬草の保管庫の扉を閉め、死体に近づくと寝かされたニニャは拷問を全身に受けて死体がひどく痛んでいるのが見てとれた。
モモンが中空に手を伸ばすと手が湖面に沈むように空間の中に入り死の宝珠を取り出した。
「ナーベ、他の死体をナザリックに運べ、その後、この部屋に誰も入らぬように外で待っていろ」
「はっ、承知しました」
モモンは、ナーベが《メッセージ/伝言》を使ってナザリックと連絡を取っているのを見て、死の宝珠に語りかけた。
「さて、死の宝珠よ、褒美のニニャの死体だ。これをどうするのだ?」
『はい、まずは《コープス・リペア/死体修復》の魔法を使いニニャの死体を修復します。アインズ様、協力をお願いします』
「死の宝珠よ、私達が冒険者の恰好でいる時はモモンとナーベと呼ぶように」
『はっ。申し訳ありませんでした。モモン様』
「うむ、《コープス・リペア/死体修復》の魔法だな。協力しよう、この魔法も初めて聞くな使うのが楽しみだ」
モモンは、ナーベが死体をナザリックに《転移門/ゲート》で運びこみ、モモンに一礼してから扉の外に行って扉を閉めたのを見てから、眼光が赤黒く光るアンデッドの魔法使いの恰好に戻った。この装備なら問題なく死霊系魔法への上昇効果が見込めるからだ。死の宝珠を握りしめ集中して魔法を使うため声を上げた。
「修復せよ、《コープス・リペア/死体修復》。なるほど、死体がみるみる修復していくな」
『アインズ様、ありがとうございます。どうやら一回で十分修復できたようです。後は儀式魔法でニニャをアインズ様の御力でより強力なアンデッドにできるでしょう』
アインズは片手を丸め顎に当て考える、なぜスキルや魔法でないのか?
「なぜ儀式魔法を使う?種族レベルや職業レベルから得られる特殊技能と呼ばれるスキルで召喚すれば良いだろうに」
『儀式魔法は魔力消費が足りない場合に多く用いられますが、私独自の儀式魔法で《エンハンスメントマジック/魔法増強》、《リミッテイションマジック/魔法限定》の魔法強化スキルを使い魔法を変化、強化したいのです。今回は単に魔法を使うのでは無く独自性を出したいので、《エンハンスメントマジック/魔法増強》、《リミッテイションマジック/魔法限定》の魔法強化スキルは儀式魔法や魔法開発にのみ使用できるので儀式魔法を唱えることが必要なのです』
その後、死の宝珠と《エンハンスメントマジック/魔法増強》、《リミッテイションマジック/魔法限定》の詳しい内容について聞き出したり、アインズがニニャを強力なアンデッドにできるスキル、魔法についても話し合った。死の宝珠と術の内容について決めて儀式魔法を詠唱することとした。
「さあ、ニニャよ。起きよ。《エンハンスメントマジック/魔法増強》〈スキルに適用、生前の姿と魂、種族・職業レベルを獲得、レベルアップする、暗黒儀式習熟によるアンデッド創造スキルを最大強化〉、《リミッテイションマジック/魔法限定》〈クリティカルヒット有効、精神作用有効、飲食必要、毒・病気・睡眠・麻痺・即死有効、酸素必要、能力値ダメージ有効、エナジードレイン有効、闇視なし、疲労する、デバフ系有効、初期低レベル、術者の魔力消費必要、契約が必要〉。上位アンデッド創造『アンデッド・ウィザード/不死の魔術師』」
この儀式魔法は上位アンデッド創造を改良する事で、<暗黒儀式習熟>を使用すると、上位アンデッド創造の1日4回の使用回数を4回分消費することで、最大90レベルを超えるアンデッドを作ることが可能となった。元々、上位アンデッド創造の素材に成り得る死体は見つかっていなかったのだが初期低レベルで創造し後々レベルアップさせることで回避したのだ。
アンデッドとはいえ魔法限定によってアンデッド特有の基本的な特殊能力は削除されたので、ネガティブエナジーでの回復、死霊魔法に耐性がある程度で生前の人間並みだ。アンデッド創造ではモンスターレベルを獲得するので、ニニャのタレント『魔法適性』が生きるよう〈種族・職業レベルを獲得〉するようにした。
魔法を掛けられたニニャは目を覚まして、こちらを見上げた。アンデッド化による赤い瞳は魔法増強の条件の〈生前の姿と魂〉によって元の青い瞳のままだ。
「アインズ様、アンデッドにしていただきありがとうございます。」
ニニャは起き上がり片膝をついて忠誠を誓っているようだ。
どうやら他のアンデッドの部下と同じく創造したアンデッドは術者と意思疎通ができる為、ある程度の事情は把握しているようだ。このままでも忠誠は捧げられているようだが魔法限定で〈契約が必要〉としたから今後どうなるかは分からない。まあ契約内容は生前に拘っていた物で良いだろう。確か姉を探していたな。
「さて死の宝珠よ、契約が必要なのだろう?契約内容は私が決めて構わないな?」
『お任せします』
「ニニャ。契約内容は、お前の姉をナザリックで探してやろう。見つけた後はナザリックにて休暇の時は、2人でゆっくり過ごすのを許可しよう。さあ、この条件で絶対の忠誠を誓ってもらおう」
ニニャは、それを聞くと大きく目を見開き体を震わせて喜びを露わにして声を上げた。
「はい、ありがとうございます。姉と暮らせるのなら、貴方様に絶対の忠誠を誓います」
「うむ、お前の忠誠を受け取ろう。さて、そのボロボロの恰好では目立つな、これに着替えると良いだろう。」
アインズは中空に手を伸ばすと、まるで湖面の中に手を入れているかのようにアイテムボックスの中を探して様々なアイテムを取り出した。籠手はイルアン・グライベル、筋力を増大させる無骨で鉄製の籠手。靴は私も履いている加速の靴。「アースガルズの魔術師」シリーズ装備のとんがり帽子とローブの色違いの漆黒版だ。
ニニャがそれらに着替えている間、死の宝珠がアインズに声をかけた。
『アインズ様、ニニャに私を渡してください。これからはアンデッドのニニャを経由して力を貸せます』
アンデッドを経由してか、杖先で魔法の発動先を移すようなものか?あれは杖が有機物の木だったり特殊な金属だったりで術者の肉体の延長として杖を使えるのだったな。アンデッド経由は、この世界独自または死の宝珠独自の技術の可能性があるな。アインズはニニャに死の宝珠を渡した。
「……そうか、さてニニャよ、お前の主は今から死の宝珠となる。私と変わらぬ忠誠を尽くすように」
「はい。死の宝珠様、一緒にアインズ様を御助けしましょう」
『様は要りません。死の宝珠と呼んでください、共にアインズ様の御役に立ちましょう』
アインズが《クリエイト・グレーター・アイテム/上位道具創造》の魔法を使うと白い光が駆け抜け、モモンの漆黒の甲冑姿に変わっていた。
「さて、ニニャは今後、私のパーティーの仲間に入れるとして注意点がいくつかある。まず冒険者の恰好の時はモモンさんと呼べ、ナーベは実際にはナーベラル・ガンマだが冒険者の時はナーベさんと呼ぶように。そして男の恰好をやめて女性の恰好をするようにせよ、もはや性別は偽らなくて良いだろう。死の宝珠は冒険の任務中に他の人がいる時は特別な事情が無い限り喋らないで欲しい、知性あるアイテムは珍しいはず故に混乱を避ける為でもある」
「はい、わかりました。モモンさん」
『承知しました。モモン様』
「ふむ、死の宝珠をこのまま持ち歩かせるのは冒険の時に面倒だな、ナザリックに帰ってから杖と一体化させるとしよう」
モモンはニニャを従って薬草の保管庫を出た、外ではナーベが誰も入らぬように見張っていたがモモン達を見て一礼している。
これで用件は済んだ。まず宿屋に戻ってニニャと死の宝珠を加えて今後の冒険者活動の方針を決めるか。
・《コープス・リペア/死体修復》
オリジナル魔法。第1位階魔法、死体が酷く損傷している時などに使われる魔法。この魔法を何回か使うと死体が修復され、まるで眠っているかのように見える死体にまで修復される。この魔法を使った後に死霊系魔法を使うと魔法の効きが良くなる。
死体修復は、あくまで修復なので食べられたりして欠損がある場合は直りませんし焼け死んだ場合も直りません。
現代の葬式での死体修復技術の凄い版だと思ってもらえれば良いです。
・《エンハンスメントマジック/魔法増強》
オリジナル魔法強化スキル。この魔法強化スキルは儀式魔法や魔法開発にのみ使用できます。様々な増強を魔法に加えることで全く新しい魔法になります。使い勝手が良くなったり威力が上がったり攻撃範囲が広がったりと様々な増強を加えることができますが魔力消費が増加します。
・《リミッテイションマジック/魔法限定》
オリジナル魔法強化スキル。この魔法強化スキルは儀式魔法や魔法開発にのみ使用できます。様々な限定を魔法に加えることで全く新しい魔法になります。魔法の仕様を限定することで魔力消費が減少します。
・アンデッド・ウィザード/不死の魔術師
オリジナルモンスター。ユグドラシルでは魔法使いの恰好をした赤い目をした人間型モンスターで初期の弱いモンスターとして登場している。主にゾンビに近く基本的な特殊能力は同じで炎が弱点なのも変わらない。他にアンデッド・ウォリアー/不死の戦士などが存在する。