リ・エスティーゼ王国の王都は、古めかしいだけのしょぼくれた都市だ。
なぜなら首都であるにも関わらず、本通り以外は碌に舗装道路が無く道は土が露出しており、雨の日なんかは靴やズボンが泥だらけになること請け合いだ。
都市自体も古いだけで建物や設備も碌に整備されていないようで、此の辺りは街中なのに《コンティニュアル・ライト/永続光》が掛かった街灯が無い有様だ。
モモンは、レエブン侯の護衛の3交替勤務の空き時間に王都を散策していて、此の国は駄目だなと感じながらナーベを見て昼間の一件の事を思い出していた。
リ・エスティーゼ王国の第一王子のバルブロが、レエブン侯の護衛に付き添ったナーベを見初めて強引にも自分の部下兼愛妾にしようとモモンに喧嘩腰でナーベを渡すように言ってきたのだ。
ギルドメンバーの子供にも等しい者に対する暴言に頭が煮え滾る思いがしたが、すぐにアンデッド化による強制的な鎮静化してしまい、逆に激高したナーベを抑える事が出来たのは不幸中の幸いだろう。
モモンは、第一王子のバルブロに条件を付け誘った。
「仲間を任せるなら、ある程度の強さを示して貰わないと困りますね。練兵場で貴方の実力を私本人が剣を交えて確かめたいので来て頂けますか」
その後、第一王子のバルブロはモモンのスキル〈絶望のオーラI〉を浴び、凄まじい恐怖の為に穴と言う穴から様々な汁を垂れ流し、腰を抜かして白目を向き気絶したのだった。
剣を交えるまでもなくバルブロが気絶してしまったので、此れでは仲間を任せる事など出来ませんという事でナーベを無事に王子の手から救う事が出来たのだった。
まあ、万が一にも馬鹿王子の手に落ちたら此の国を滅ぼしてたけどな。
「おう、そこの人。少し待たれよ、アダマンタイト級冒険者のモモンと御見受けするが如何か?」
モモン達一行が地面が露出した道を何となく散策していると、まるで時代劇から出て来たような浅葱色の道場着を身に付け、腰に刀が2本、胸当てを付けていて丸に隅立て角の家紋のような模様が入っている白髪の老人が話しかけて来た。
老人の脇には数人の暗灰色の道場着を着た御弟子さんが立っていて、老人の突然の物言いに済まなそうな顔をして頭を下げている。
「何ですか?何か御用でしょうか?」
「うむ、儂は、ヴェスチャー・クロフ・ディ・ローファンという剣道場をやっている者だが、どうだ儂に鍛えられてみないか?もっと強くなれるぞ」
「もっと強くですか?ふむ、面白そうですね」
モモンは、死の宝珠に無詠唱化した《メッセージ/伝言》で無詠唱化かつ持続時間延長化をした《ウォリアーレベルアップⅤ/戦士職段位上昇Ⅴ》を掛けるよう頼み、どうやら実行されたようで力が湧いて来た。
「皆、私は此の人に鍛えられてみるから好きな所で遊んで来なさい」
「いえ、モモンさーんの所が一番心が休まります」
「気になさらずに、モモンさん一緒に居ますよ」
「はい、気にしない!一緒にいるよ!」
「殿はモテモテでござるな。拙者は剣道場では新しい武技が閃くかもしれないので行くでござるよ」
モモン達一行はヴェスチャーに案内され、瓦が葺かれ漆喰が塗られた妙に和風に見える剣道場の屋外道場にやって来た。
剣道場では床を踏み抜いたり壁を切り裂いたりしてしまう為、強者が訓練する時は広い場所が取れる屋外道場を使用して武技の訓練をしたり、剣を学んだりするのだとヴェスチャーに聞いた。
屋外道場は整備されているようで小石なども落ちていない地面が広がっており、周囲には巻き藁を巻いた丸太が立ち並んでいた。剣道場の屋根の下に訓練用の刃を落とした剣や大剣や刀が鉄釘に引っ掛けられて落ちない様になっていた。
「うむ、まずはモモン、早速だが、お前の腕前を見たい。覚えている限りの武技を此処で披露してみてくれ」
「はい、良いですよ。訓練用の大剣を借りますね」
モモンは訓練用の双大剣でヴェスチャーや弟子が見守る中、次々と武技を披露し〈武技・無敵要塞〉や〈武技・星光連撃〉には驚きをもって感動の拍手を貰ったのだった。
「うむ、良い武技を見せてもらった。弟子の中には見せられた武技を使わせても良いかもしれんな。さて武技を教えよう、この武技は〈武技・閃光走破〉と言い、まるで閃光の如き目にも止まらない移動速度で敵に接近できる武技よ。まあ見ておきなさい」
ヴェスチャーが離れた位置に立って武器を構えた後に〈武技・閃光走破〉を唱えると、土煙を巻き上げ瞬時にして目にも止まらぬ速度で走り抜け、モモンの目の前で上段に刀を振り上げて止まっていた。
これは魔法の短距離瞬間移動や《ディメンジョナル・ムーブ/次元の移動》並みの移動速度としか思えないな、あくまで疾走だから障害物があると止まってしまうようだが、モモンは移動補助系の武技を会得してないし此れは当たりだな。
「ふう、この技は見ての通り凄まじい走り抜けが出来るのだが、集中力の消費が大きくてな。あまり此の年寄りには多用できんのよ。良し次は〈武技・光烈斬〉、これは光の力を剣に宿し敵を斬り飛ばす武技よ。闇の性質を持つアンデッドやモンスターに効果が高いが、通常の敵に対しても大きな傷を与えることができるのだ。この武技も威力は高いが集中力の消費が大きくてな。使ってみるぞ」
ヴェスチャーがモモンから離れた位置で上段に刀を構えて〈武技・光烈斬〉と声を出すと刀が光輝き、そのまま空気を切り裂く音と共に刀を振り下ろした。刀は空中で止められたが刀の風圧で周囲の土埃がヴェスチャーの刀を中心として吹き出され威力の高さを物語っている。
「この〈武技・光烈斬〉や先程の〈武技・閃光走破〉を組み合わせた〈武技・閃光烈斬〉という武技があるのだが、儂は年のせいか発動できないのだ。弟子の中には〈武技・光烈斬〉や先程の〈武技・閃光走破〉を片方使用できる者は居るのだが、両方を発動出来て〈武技・閃光烈斬〉を使いこなせるのはガゼフしか今の所は居ないな」
「ガゼフさんがヴェスチャーさんの弟子だったとは驚きました。今のガゼフさんの活躍はヴェスチャーさんの教えの賜物なんですね」
「かかかっ、ガゼフを鍛えて座学や剣の道を教えたのも懐かしいわい。さてモモン、稽古じゃ此の2つの武技の何れかを会得して貰うぞ」
モモンが〈武技・光烈斬〉の訓練をしていたが実は嫌な予感がして発動させずにいた、そこで此の武技は私に向かないですねと言い、別の武技を試したのだった。
モモンが次は全身鎧を着たままで〈武技・閃光走破〉の有様を思い浮かべながら突進を繰り返していたが、鎧が重いのか上手くいかなかった。
ヴェスチャーから全身鎧を脱いだ状態で走ってみろと助言を受けたのでモモンは、まず手袋を少しずらして幻術《パーフェクト・イリュージョン/完全幻覚》がきちんと発動していることを骨で無く肌が見えたことで確信して、兜を取り全身鎧を脱いでいった。
シャツとズボンだけの姿と成り、偽の英雄の顔を見たヴェスチャーと弟子達からは感嘆の声が漏れ聞こえてきたのだった。
モモンは、軽くなった体で何十回か〈武技・閃光走破〉を試して、ようやく数回に1回は成功するように成っていた。
「まったく今日で成功させるとはな、何十日か掛かる物と思っておったのに嬉しいぞ。今後は〈武技・閃光走破〉を繰り返して確実に発動できるように訓練したり、全身鎧の時でも発動するように訓練すれば良いじゃろう。〈武技・光烈斬〉の訓練もやるのだぞ」
「はい、ヴェスチャーさん。ありがとうございます」
もう辺りは、すっかり暗くなり始めているようで道行く人の数も少なくなっていた。
モモン一行は、ヴェスチャーに礼を述べ謝礼金として金貨を小袋に入れて手渡しして、人気の無い場所でナザリックへ転移したのだった。
良し〈武技・閃光走破〉は、だいたい会得できたな、後は〈武技・光烈斬〉か?
だけど私と相性が悪いんだよな、〈武技・光烈斬〉は光の力で闇の者に特に効果がありアンデッドなどに効くらしいが、武技を発動したら私の体が武技の光で焼けそうな気がするんだよな。
〈武技・光烈斬〉は会得しても使うのは、自傷ダメージを受けても極大ダメージが狙える大物アンデッドぐらいだが、此の世界には俺より強大なアンデッドが居るかもしれないので念の為に習得しておいて普段は別の武技で代用するかな。
レエブン侯の護衛までの待ち時間をナザリックの闘技場で過ごしながら、アインズは武技の訓練の準備時間の間に、どの武技と組み合わせるか新たな武技の開発は、どうしようかと楽しく妄想に耽るのであった。
・〈武技・閃光走破〉
オリジナル武技。
極短距離を走り抜ける武技、〈武技・疾風走破〉をより極端にした技で集中力を多く使用する。
この武技を使用すると、まるで閃光の如き目にも止まらない移動速度で敵に接近できる。
・〈武技・光烈斬〉
オリジナル武技。
光の力を剣に宿し敵を斬る武技、集中力を多く使用する。
付与された効果で敵に大ダメージを与える、闇の者に効果が特に大きい。
・〈武技・閃光烈斬〉
オリジナル設定、この小説では【オバマス】の武技をこのような武技に変えています。
オリジナル武技、前提:〈武技・閃光走破〉〈武技・光烈斬〉
複合武技であり、〈武技・閃光走破〉と〈武技・光烈斬〉を同時発動する技。
この武技を使用すると、まるで閃光の如き目にも止まらない移動速度で接近して、光の力を剣に宿し敵を斬り飛ばす武技。
ヴェスチャーは、あまりにも集中力の消費が大きい為、考案は出来たが年齢の為に集中力が落ちて発動できなかった。