オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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バハルス帝国の帝都

 バハルス帝国の帝都、それは帝国のやや西部に位置する。

 皇城が中央にあり、そこから放射線状に様々な重要機関がある帝国の心臓部であり、リ・エスティーゼ王国の王都より人口は少ないが、市民は活気に溢れていて笑い声や騒がしい声で溢れていた。

 帝都は、ほぼ全ての道路がレンガや石で覆われており、道の両側には《コンティニュアル・ライト/永続光》が掛かった街灯が並び、王都と比べ見違えるようだ。

 

 モモンが帝都に来たのは情報収集の為と噂をそれとなく広める為で帝都の大通りを歩きながら、先日のナザリックでの玉座の間でデミウルゴスの発言の「世界征服」についての話で困っていた所、死の宝珠から助言を貰い発言したのを思い出していた。

 

「うむ、デミウルゴス。私も世界征服して情報を集め、かつての仲間が此の世界に流れ着いていないか探ろうとは考えていた。だが、性急に事を進めなくても良いだろう。私もモモンとしての冒険者活動を楽しんでいる事だしな。我々、ナザリックに歯向かう国を征服していけば其れで良いだろう。良いな、謀略で敵を作るな。仲間に成りたい国がいれば属国にして保護しなさい。最早、王国での物資強奪で余裕が出来たのだから、今後は真っ当にナザリックと他国との関係を見直すのだ」

「は、畏まりました。先程、ナザリックに歯向かう国を征服していけばと仰っていましたが、此の周辺には強者は居ないようなのでナザリックの隠蔽を解き、我々に歯向かう国を釣り上げて見るのは如何でしょうか?」

「……ほう、釣り上げるのは王国か、もしかしたら帝国になるかもしれんな。我々に喧嘩を売ってきたなら叩き潰そう。許しを乞うてきたなら無条件降伏の上で属国にしようではないか。その作戦、許可しよう。王国と帝国に此処の場所をそれとなく情報を流すのも許可する」

「はい、王国と帝国にトブの大森林近くの平原に謎の地下大墳墓が出現したと噂を流します。愚かな国がナザリックの財を奪おうと群がって来るでしょう」

 

 それを聞いてナザリックの財を奪おうとするだなんて無謀だよね、叩き潰されて当然だ、との意見で騒がしくなった皆に対して静まれと命じて、その場は解散した。

 

 はぁー、あの時は、ああは言ったがナザリックに財宝を盗みに愚民を土足で踏み込ませるなんて嫌だなぁ。

 ナザリック地下大墳墓の偉大さも理解できない者に踏み込ませるなんてな。

 まだ、ユグドラシル時代なら魔王モモンガを倒すぞーって感じで攻めて来て、はぇー凄い作り込みだねぇって感じで褒めてくれて、打ち負かされて覚えてろよーって逃げ帰る勇者役に成り切った人達が楽しんでいたな。

 俺も勝って喜んだり、際どい所まで攻め込まれたりで焦ったりで楽しかったなぁ。

 

 アインズは、その後に最古図書館の作業室でタレントの移行に関して、死の宝珠の意見を汲み上げ試作の魔法を作り上げた。

 魔法《異能移行》は両者の魔法やスキルによらない同意の元に、タレントの受け渡しが出来るという物で、対価としてはナザリックのアイテムや財宝を渡せば良いだろうという事になった。

 最初はタレントを奪い取ろうと魔法《異能強制移行》を考えたが、死の宝珠からそれでは遺恨が残りますし、魔力の消費も膨大になりますと注意され、実際に魔法を仮に作ってみたら大儀式かつ日時を決めないと使うのが無理な魔力消費だったので此の魔法は没と成り今の魔法となったのだった。

 

 試しに使ってみようとして、カルネ村に引っ越した薬師ンフィーレア・バレアレに会って何を望むか聞いてみると「僕と僕の家族をナザリックが保護する」というナザリックでは既に決まっていたが伝えていなかった事を願われ、「あらゆるマジックアイテムを使える」というタレントを魔法により眩い光と共に譲り受けたのだった。

 

 うーむ、ンフィーレアにコキュートスから不可視化の使える〈エイトエッジ・アサシン/八肢刀の暗殺蟲〉を何体か護衛件報告役として派遣して貰うか、後はプレアデスで村に派遣されているルプスレギナ・ベータに今回の取引の事を話して、より一層の警護を頼むとするか。

 

 ニニャのタレント「魔法適正」は強力なタレントだがレベルの低いニニャが持っていた方が経験値が溜まりやすいので諦めた。

 まあニニャが最大レベルになったらニニャに褒美と引き換えに貰える事は確認済みなので良いだろう。

 

 最後に竜の使う始原の魔法の前提条件を得ようとしたが魔法では上手くいかず、結局〈シューティングスター/流れ星の指輪〉を使って始原の魔法の前提条件を満たそうと指輪を取り出した所、死の宝珠に声を掛けられた。

 

『アインズ様、その指輪が超位魔法《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》を発動できる指輪なのでしょうか?超位魔法は、どのように願いを聞き届けるのですか?』

「指輪の効果は、“望んだ願いを実現するもの”へと変化していて、経験値消費なしで3回発動可能だが、その場で経験値を追加消費することで願いを大きく出来るようだな」

『そうですか、その場で願いを決めるのですね。それなら願いを聞き届ける範囲と経験値の消費を調べる魔法を創りましょう。ゆっくりと願いを吟味できます』

 

 アインズと死の宝珠で超位魔法《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》専用の分析魔法を試作開発して試しに魔法《ウィッシュ・アナライズ/願い分析》を使ってみると、様々な願いと経験値を追加消費することで願いを大きくする事を吟味でき、指輪を使って始原の魔法の前提条件をアインズが獲得するのも追加消費なしで獲得できることが分かった。

 始原の魔法の前提条件を満たした場合に、アンデッドになった時のように精神の変容が起こるかもと死の宝珠に言われたので多少文面を弄って超位魔法を唱えた。

 

「〈シューティングスター/流れ星の指輪〉よ、我が願いを聞き届けよ。我のままで我に始原の魔法の前提条件を満たすのだ。超位魔法《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》!」

 

 発動に掛かる時間もゼロという最高の課金アイテムの〈シューティングスター/流れ星の指輪〉の御蔭でアインズには、瞬時に始原の魔法の前提条件である「真なる竜王の血を引く者」という項目がタレント欄に追加され、「プリミティブキャスター」と「ワールドコネクター」という職業が職業レベル0で追加されたことがニニャの魔法《パーフェクト・ロアー/完全なる伝承》で判明して、前提条件を満たした事が分かった。

 後はレベルを上げて、どんな始原の魔法が使えるのか実に楽しみだ。

 

 モモンがナザリックでの事を思い出しながら帝都の曲がり角を曲がると10代中盤の少女にぶつかった。

 少女は、金髪の艶やかな髪は肩口あたりで切られ、顔立ちは気品溢れているが少々痩せぎすのようで、硬質な皮を使用した厚手の服を着用して、ゆったりとしたローブを纏っているのが分かる、今は尻餅を突き、腰を摩っているようだ。

 

「あいたた、もう、ちゃんと前見て歩きなさい。ああっ魔導書が解れて破れてる。ど、どうしよう」

「前を向いてなくて、すみませんでした」

「モモンさーん、このような者に謝らなくても良いでは無いですか、そちらも前を向いていなかったのでは?」

「お前は黙っていなさい。すみません連れが失礼な事を言ってしまって申し訳有りませんでした。えっと魔導書ですか少し見せて貰っても」

「……ええ、いいですよ」

 

 第3位階の低位階の魔導書でナザリックでは低位階過ぎて最古図書館では揃えてない書物だった。

 だがニニャの《クリエイト・ブック/本作成》なら、多少の本の解れや破れでも修復が可能なのでニニャに頼んで直して貰おう。

 たちまちの内にニニャの魔法で魔導書が元の姿に戻っていくのを少女は、ポカンとした表情で見ながら拍手していたが驚きも冷めたのだろう、私達に話しかけて来た。

 

「ふぅ、魔導書も元に戻ったし、良かった。古い本だったから貴方にぶつからなくても何れ破れていたかもしれない。私の名前はアルシェ・イーブ・リイル・フルト」

「私の名はモモンだ、で此方がナーベ、ニニャ、ハムスケ、ハムスケに乗っている子がソアだ」

「……よろしくお願いします」

「よろしくお願いします。アルシェさん」

「よろしくでござるよ、アルシェ殿」

「よろしくです!アルシェさん!」

「ふふふ、よろしく。魔獣が喋るなんて珍しい」

「まあ、こんな所で挨拶も何ですし、ぶつかってしまった無礼を詫びる為に食事でも奢りましょう。どこの店でも良いので案内して貰えませんか?」

「じゃあ、私が拠点にしている歌う林檎亭に案内する」

 

 歌う林檎亭は、かつて林檎の木から作った楽器を奏でる吟遊詩人が集まったことが店の始まりで、経営としては汚れ仕事を請け負うワーカー御用達の酒場兼宿屋で、隙間風の吹き込む壁は無く床もピカピカに磨いてある清潔感のある飯の美味い店なのだそうだ。

 

 歌う林檎亭に着くとアルシェさんの仲間に怪訝な顔で出迎えられ、アルシェさんが説明して事なきを得たのだった。

 

「この度はアルシェさんに御迷惑を掛け申し訳ありませんでした。その迷惑料代わりにアルシェさんの食事は私共の奢りです。沢山食べて下さい。お仲間の皆さんにも酒の一杯は奢ります。今後ともお付き合いが出来たら嬉しいです」

「おう、ありがとよ。まず自己紹介だ。俺の名はヘッケラン・ターマイト、ワーカーチームのフォーサイトのリーダーをやってる。二刀流の軽戦士だ」

「私の名はロバーデイク・ゴルトロン、神官をしております」

「私はイミーナよ。レンジャーをしているわ。アルシェに迷惑掛けないでよね」

 

 モモンは情報収集の一環としてワーカーについて聞いてみると、冒険者と違い多くの仕事が汚れ仕事で危険度も高い反面、冒険者よりも多く金銭を稼ぐことが出来るが冒険者組合などに属さないために依頼の調査や仲間探しは自分たちでしないといけない、又、依頼人は自分の伝手で契約を結びたいワーカーを探す必要があるなど色々と不便な職業だが金が稼げたり、既存のルールに縛られたくない者、モンスターを殺しまくりたい者がワーカーに成るのだと言う。

 

 アルシェさんは、単純に家の都合で金が必要だから、ヘッケランは御金好きで何時の間にかワーカーに成っていたし、ロバーデイクは神官の仕事の都合上、只で民衆に回復魔法を掛けていけないというルールに縛られるのが嫌で後、神殿に頼れないので金が必要で、イミーナは言動の所為で冒険者を続けられなくなりワーカーに成ったと聞いた。

 まあメンバー全員が「ぶっちゃけ金がほしい」という理由で集まったのだそうだ。

 フォーサイトとして幾多の依頼を達成し、帝国でも指折りのワーカーチームとなったとヘッケランは自慢げに語った。

 

 帝都では冒険者の仕事が少ない事もあるのかも知れない、騎士が街道警備やモンスター退治をしており、帝国では冒険者の地位は低いが、希少品の入手や凶悪なモンスターの討伐を依頼される程度だと話を聞いて、此れはワーカーが増える訳だ。

 

 イミーナは、耳の長さが森妖精エルフの半分程度まで伸びていて不思議なので聞いてみると〈ハーフエルフ/半森妖精〉だと分かった。

 人間とエルフのハーフか、同じ人間種で近い容姿を持つ者同士なら子供が作れると言う事か。

 

 モモンは他者との食事の際に飲食しないのもどうかと思うので兜を外し幾つかの食事をしてみた。

 兜を外した顔を見て、アルシェさんは顔を赤くしてイミーナは口笛を吹いている、男性陣も兜で顔を隠していたので不格好だとでも思ったのだろうか少し驚いていた。

 幻術《パーフェクト・イリュージョン/完全幻覚》で食べたように見えているが食感は、ともかくとして、もちろん味がしないので粘土を食べたようで、食べた物は幻術《完全幻覚》により創られた幻の胃の中に送られていて、後で幻術《完全幻覚》を解いた時に床に落下してしまうだろう。

 

 そういえばシャルティアも食事が出来ないアンデッドのせいなのか、食べられず飲み物系なら大丈夫だと言ってたな。他者の血を嗜好品とする吸血鬼だからアンデッドでも飲み物が飲めるのか?

 はぁー、後で食事を処理するのが面倒だな、穴を掘って其処で処理するか?

 

「アルシェさん、実は帝都に来たのは今回が初めてで色々見所を教えて頂けませんか?勿論、報酬は些少ではありますが払います」

「報酬!、ごほん、モモンさん一行は魔法使いが多いみたいなので魔法関係で説明します。まず帝国魔法学院で、此処では必修である魔法の知識を始め、様々な知識を学べる所で、受付で御金を払えば図書館に入ることもでき本が読めます。帝国での様々な知識が詰め込める場所です。北市場ではマジックアイテム中心の市場で店主は冒険者だったりワーカーだったりで中古品が多いです。戦闘用以外にも、生活用のマジックアイテムが販売されているので冒険者だけでなく一般の人も買いに来る場所です。闘技場は帝都の庶民たち最大の娯楽の1つで、毎日戦いが繰り広げられ試合に金銭を賭ける事ができる場所です。私達、フォーサイトもモンスター相手に闘技場で戦った事もあるんです。後は冒険と関係ないですが帝国美術館、中央市場、……奴隷市場です」

「リ・エスティーゼ王国では表向きは奴隷が禁止されていましたが、帝国では公然と奴隷売買がされているんですね」

「ふん、奴隷市場では身売りした帝国民や、エルフなどを扱ってんのよ。エルフは、エルフと戦争してる法国が売りにきてるらしいわ。奴隷のエルフはね、法国に丹念に心が折られているの。奴隷を買った主人に歯向かわない様にね。ワーカーチーム「天武」のリーダーのエルヤーがよくエルフの奴隷を連れ歩いているのを見るわ」

 

 モモンが尋ねるとイミーナが吐き捨てるように答えてくれた。

 皆で食卓を囲み、様々な話をしていると「噂をすれば影が射す」の言葉通りに歌う林檎亭に「天武」のエルヤーが項垂れたエルフ達3人を連れて現れた。

 

「おやおや、フォーサイトの皆さん初めまして。噂は聞いてましたが、まだ活動していたとは驚きが禁じえません」

「ああ、初めましてだな。こっちは元気にやってるよ」

「ふん、からかいがいの無い人達ですね、うん、そこの子供、何故杖を持っている。まさかフォーサイトと食卓を囲んでいるという事は、ワーカー、いや冒険者か?まったく世間ではこんな子供にも冒険者証を発行するとは世も末ですね」

「むー!」

「貴様、無礼な!」

 

 「天武」のエルヤーが此方のソアをあからさまに馬鹿にしてきて、ソアやナーベは怒り心頭だが勝手に戦闘をしないようにとのモモンの言葉を守って唸り声を上げていたり無礼な発言を咎めるだけに留めていた。

 

「困りますね、此方の仲間のソアを馬鹿にしないで頂きたい。ソアに謝罪をして下さい」

「謝罪?する訳無いでしょう。子供を仲間にしているだなんて自分は弱いと言っているようなものだ。もっと仲間は選びなさい、この私のように奴隷を連れていくのも良いですよ」

「謝罪はしないのですね。では貴方と決闘して、どちらの主張が正しいかをはっきりさせましょう。貴方が勝てば謝罪金として装備品を売り払って全財産を渡しましょう。私が勝てば謝罪してもらいましょうか」

「へぇー、決闘ねぇ。では闘技場にて夕方戦いましょう。決闘は闘技場というのが帝国での決まりのような物なのでね、ところで貴方の名前は?」

「リ・エスティーゼ王国のアダマンタイト級冒険者チームの「漆黒」のモモンだ。この名を聞いて逃げるような真似はしないでしょうね。さて酒場の皆!、私、「漆黒」のモモンと「天武」のエルヤーが闘技場で決闘するので是非見に来て頂きたい!」

 

 モモンが、酒場の皆に決闘を宣言した事で「天武」のエルヤーに逃げ場は無くなった。

 これで、モモンを倒さなければ帝国で決闘から逃げた者として蔑まれるだろう事は間違いない。

 

「ぐっ、貴様。……では闘技場で会いましょう。行くぞお前ら」

 

 ビクついたエルフ達3人を連れ、「天武」のエルヤーは逃げ出すように歌う林檎亭を出て行った。

 モモンは酒場の皆に声援や歓声を受けて手を上げて其れに答えているが、やがて席に座った。

 

「あの糞野郎、死んだほうがいいと思うんだけど。モモンさん、決闘は生死問わずだから殺してよ」

「噂には聞いていましたが、下劣な男ですね」

「……最悪、モモンさん、決闘の自信は、……あるか、アダマンタイトの冒険者なのだし」

「……王国戦士長に匹敵するのは剣の腕だけか。人間性でも匹敵してくれれば最高なんだが、モモン、決闘なんだからド派手にぶちかましてやれ」

 

 イミーナが奴を悪し様に貶し、ロバーデイクは神官だがあの男の品性は救いようが無いと言い、アルシェさんは此方の安否を気にしたがアダマンタイトの冒険者という事を聞いて大丈夫かと胸を撫でおろし、ヘッケランはモモンに声援を送った。

 

「食事が台無しになりましたね。アルシェさん、此方の小袋に金貨が入っています。貴方の情報料と今日の食事代です。皆さんに一杯奢ると言う話でしたが、このくらいはさせて下さい。今から闘技場に手続きに行きますので此れで失礼させて頂きます」

「待って、闘技場には私も行く。手続きなど分からない事もあるだろうし任せて欲しい」

「俺達も応援させてもらうぜ」

 

 モモンが別れを告げると、アルシェさんは闘技場の手続きをやってくれると言うのだ。

 歌う林檎亭での会計を済ませ、アルシェさんに闘技場まで案内され手続きをして貰った。

 

「その、すみません。こんな事までさせてしまって」

「いいんです。私が好きでやってることですから、モモンさん「天武」のエルヤーをガツンとやっつけて下さい。客席で見てます」

 

 モモンは闘技場での決闘の勝敗でどちらが正しいか決めようと言ったので決闘の始まりの言葉にその文面を入れて貰った。

 

 ふむ、魔法は飛行や転移などは厳禁、現在は試合中は、ともかく勝敗がついたあとで死ぬことは無いね。

 後、奴が死んだ場合に奴隷のエルフ達は勝った者の所有物となるか要らないのだけど、そうなると奴隷小屋に逆戻りか、……しょうがない、奴が死んだらエルフ達の面倒見るか。

 

 今回の決闘でモモン一行の魔術師達の力を借りると、あまりにも一方的な戦いになってしまう為に一人で戦う事にして夕方の決闘まで控室で待った。

 

「そろそろ時間です。モモンさん」

 

 という係りの者の声が掛かりモモンは闘技場へ出場した。

 闘技場の対戦門を潜り、対面を見るとエルヤーは逃げ出さず闘技場に出場したようで3人のエルフを従え、こちらを怪訝そうに見ている。

 どうやらモモン1人で登場したのが不思議だったようだが、自分はモモン1人で十分だと思われたのが勘に触ったのか怒りに震え始めた。

 

 魔法の拡声器で声が闘技場内に響き渡る。 

 

「さあ決闘です。今回の戦いは二人の意見の対立が元になっており、ソアという仲間を馬鹿にされたアダマンタイト級冒険者チームの「漆黒」のモモンが謝罪を求め、決闘を「天武」のエルヤーに挑みました。負ければモモンは「天武」のエルヤーに自らの装備品も含めた全財産を渡すと約束しています。では両者、始め!」

 

 エルヤーは自らの武技を叫びと共に発動させた。

 

「〈武技・空斬〉!」

 

 刀を振った延長線上に現れるは風の刃、それは空気を歪ませ揺らめきを残しつつ、モモンに高速で飛来する。

 モモンは、その場を動かず武技を発動させる。

 

「〈武技・領域〉、〈武技・漆黒付与〉、〈武技・七彩強化〉」

 

 武技・空斬により風の刃を飛ばして来たが、モモンは先日覚えた〈武技・領域〉により圏内に入った風の刃を把握して片手の大剣で武技を使い、高速で飛来した刃を弾いた。

 

「〈武技・パリィ〉、行くぞ〈武技・閃光走破〉、……〈武技・剛閃撃〉」

 

 瞬く間に土煙を上げ、エルヤーの前まで来たモモンがブレイン・アングラウスとの訓練で〈武技・瞬閃〉を見て閃いた〈武技・剛閃撃〉を唱えると双大剣が目にも止まらぬ剛剣でエルヤーの右手首、左足首を切り飛ばした。

 そしてやけに水っぽい音と共に地面に手首と足首が落ちる。

 血の吹き出す音と共に大量の血が地面を叩く中、エルヤーは倒れつつ自らの右腕や左脚から血飛沫が飛ぶのを呆けた様に見ていた。

 

「さて決着は着いたでしょう。謝罪をしてください」

「うでが、あしが、ち、ちゆだ。ち、ち、ちゆをよこせ!!はやくしろ!」

 

 エルヤーは落ちた手首を切断面に合わせ胸ポケットから霊薬を取り出し、慌てて霊薬を掛けて白煙と共に再生を促し、足首も治った白煙を上げる片手を使い切断面を合わせてエルフの回復魔法で治していた。

 

 ふむ、肉体を欠損しても近くに欠損した肉体、手首や足首などが有れば切断面を合わせる事で回復魔法の効きが良くなるようだ。

 ユグドラシル時代は欠損したら部位破壊状態で戦っていたから、落とした手首、足首を利用するというのは新鮮だな、何事にも新たな発見はあるということか。

 

 エルヤーは、奴隷エルフ達に強化魔法を次々と掛けさせ戦いを挑んできた。

 

「……さすがはアダマンタイト級冒険者のモモンです。戦うのに強化魔法を上乗せしないと失礼に当たる。では〈武技・能力向上〉、〈武技・能力超向上〉、〈武技・縮地改〉!」

 

 能力を向上させたエルヤーは、まるでホバー移動のように足を動かさずモモンの側面に滑り込み、体の幾つかの血管を千切れさせ武技を詠唱した。

 

「輪切りになれぇ!〈武技・超空斬〉!!」

 

 〈武技・空斬〉を超えた巨大な風の刃とも言うべきだろう、陽炎のような揺らめきを残しつつ超高速で巨大な風の刃がモモンに飛来するが、〈武技・領域〉を唱えていたモモンには側面からの攻撃だろうと全てを把握していた。

 モモンは、素早くエルヤーに向き直ったかと思うと武技を唱え、双大剣を交差して巨大な風の刃に対応してみせた。

 

「〈武技・無敵要塞〉、……〈武技・国震脚〉」

 

 モモンが片脚を激しく叩きつけると周囲の地面を激しく揺らし地面が罅割れ、石筍が飛び出してエルヤーの脚を削り、エルヤーを空中へと打ち上げた。

 地面へと激しく落下したエルヤーに対して、モモンが再度、降参を迫り謝罪を要求した。

 

「降参しなさい。ソアへ謝罪してください」

 

 エルヤーは震える体で奴隷エルフに声を上げ、腰のポケットから、とっておきの危険な副作用がある肉体強化の霊薬を取り出し呷るように飲んで瓶を地面に叩きつけた。

 エルヤーの体から白煙が立ち昇り、みるみると再生が始まったようで脚が削られたのが治っている。

 

「奴隷ども、もっとだ、もっと強化魔法を掛けろ」

 

 エルヤーの体は一回り大きくなり、上半身の鎧が裂け体のいたる所に太い血管が浮き出ているのが分かる。

 奴隷エルフ達が更に強化魔法を掛け続け、次々に魔力欠乏により倒れていく、エルヤーの肉体は巨人と戦えるほどにまで強化されていた。

 

「馬鹿が! 余裕を見せたな! お前が勝つにはとっとと攻撃するしかなかったのにな!〈武技・能力向上〉、〈武技・能力超向上〉、〈武技・超空斬〉!〈武技・超空斬〉!!」

「〈武技・閃光走破〉」

 

 エルヤーの攻撃は、大きくなった体での力任せの大振りな攻撃だった。

 モモンの〈武技・閃光走破〉でエルヤーが連発した〈武技・超空斬〉による巨大な鎌鼬も、斜め前に駆け抜ければ避けるのは容易い。

 そのまま〈武技・閃光走破〉を駆使してエルヤーの眼前まで行き、エルヤーが武技を放って刀を振り抜いた所をモモンが武技を唱え双大剣で切り裂いた。

 

「〈武技・星光連撃〉!」

 

 まるで天空に輝く星空のように剣閃が輝いたかと思うと無数の斬撃がエルヤーの体を切り裂き続け、エルヤーの足首から上は血煙となり細かな肉片が辺りに散らばるのみだった。

 

 あーあ、エルヤーの奴が降参しないから殺すほか無かったな。

 奴隷エルフ達は私が面倒みるか、とりあえず後でナザリックに送ろう。

 

 魔法の拡声器が闘技場内にモモンの勝利を知らせ、声が響き渡る。 

 

「アダマンタイト級冒険者チームの「漆黒」のモモンの勝利です!残念ながら降参を認めない「天武」のエルヤーに対して大技が炸裂しました。エルヤーは即死でしょう。モモン選手の謝罪を求めるのは失敗に終わりましたが闘技場のルールでは勝ちなのでモモンに賭けた方は受け取り所にて現金を受け取ってください」

 

 闘技場内は興奮の坩堝で辺りから歓声や喜びの声、エルヤーに賭けた者の悲嘆の声などが聞こえる。

 モモンが、闘技場内を見渡すと観客席にモモン一行のソアにナーベにニニャとフォーサイトの皆さんが揃って手を上げ歓声を上げているようだったので、モモンは歓声に答えるために片手の大剣を高く掲げ、雄たけびを上げ自らの勝利を誇示したのだった。

 闘技場内の観衆は、モモンの雄たけびに更なる興奮が巻き起こり、国中に響き渡るような喧騒が沸き上がった。




・《タレント・トランジション/異能移行》
 開発中のオリジナル魔法
 両者の魔法やスキルによらない同意の元に、タレントの受け渡しが出来る魔法。

・《タレント・エンフォースメント・トランジション/異能強制移行》
 開発中のオリジナル魔法
 タレントの受け渡しを強制出来る魔法。
 アインズでも大儀式かつ日時(満月時、玉座の間など)を決めないと使うのが無理な魔力消費なので没となった魔法。

・《ウィッシュ・アナライズ/願い分析》
 開発中のオリジナル魔法
 超位魔法《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》の願いを聞き届ける範囲と経験値の消費を調べる魔法。
 〈シューティングスター/流れ星の指輪〉の指輪を使った場合の超位魔法も調べられる。

・〈武技・剛閃撃〉
 武器による目にも止まらぬ速さで剛力の一撃を出す武技。
 オリジナル設定、この小説では【オバマス】の武技をこのような武技に変えています。

・〈武技・超空斬〉
 オリジナル武技
 〈武技・空斬〉の上位武技、敵に対して巨大な風の刃が超高速で飛来する。

・プリミティブキャスター
 元ネタ:元々はツァインドルクス=ヴァイシオン(ツアー)の職業の一つです。
(最大レベル10)
 オリジナル設定
 直訳すると「根源的な詠唱者」。
 始原の魔法を使えるようになる職業。

・ワールドコネクター
 元ネタ:元々はツァインドルクス=ヴァイシオン(ツアー)の職業の一つです。
(最大レベル10)
 オリジナル設定
 世界と繋がる職業、ワールド系の存在に成れる。(ワールドアイテムが効かない)
 レベルが上がると世界との接続が強化され始原の魔法の威力、範囲、効果時間が強化される。
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