オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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バハルス帝国の練兵場

 帝都の中心部近くの皇城、その城の横に多くの騎士達や兵士達が訓練する練兵場があった。

 モモン一行が皇帝ジルクニフに部下にならないかと誘われ断った所、帝都に居る間だけでも帝国四騎士を鍛えて貰えないか謝礼金は出すと言われて、帝国四騎士を鍛えて幾日が過ぎただろうか。ようやく武技を確実に発動する者が現れ出した。

 「雷光」のバジウッド・ペシュメルがニニャが召喚した的代わりのスケルトンに武技を唱えた。

 

「おらぁ、〈武技・剛腕剛撃〉、〈武技・雷撃斬〉!!」

 

 轟音が鳴り響き斬撃と共に雷光が迸り、スケルトンに雷撃を伴った大剣による唐竹割が炸裂し、スケルトンは黒焦げに成りながら真っ二つに分かれ、黒い靄を切り裂かれた体から吐き出しながら倒れて行く。

 

 「雷光」のバジウッドの大剣にニニャが魔法で雷を付与し、スケルトンに攻撃させることで雷を付与された大剣で攻撃する感覚を掴んで貰い、後は、ひたすらに〈武技・雷撃斬〉と叫びつつ敵に剣で切った際に雷撃を落とす感じを考えつつ訓練して貰い、武技が獲得できたのだ。

 

 「激風」のニンブル・アーク・デイル・アノックには、ステータス上昇の魔法をニニャに掛けてもらい、何度か体に能力が上昇する感覚を掴んでもらって、訓練当初は数回に1回の割合で武技が成功するようになっていたのが、今では確実に成功するようになっていた。

 

「いくぞ。〈武技・能力向上〉、〈武技・能力超向上〉!!」 

 

 向上した能力でスケルトン相手に全身鎧を着ているとは思えないほどの疾風の如き足捌きで何度も斬撃を片手剣で与え、スケルトンは体を八つ裂きにされ滅びてしまった。

 

 「重爆」のレイナース・ロックブルズは、大槍での突進力を活かす為、ニニャから移動力上昇の魔法を掛けて貰い感覚を掴んだら、ひたすらスケルトンに武技を唱えつつ突進して、その重い攻撃は、スケルトンの盾を2撃目で貫いてスケルトンは体を四方八方に散らばせている。

 

「いきますわ。〈武技・疾風加速〉、〈武技・穿撃〉!……〈武技・突撃〉!!」

 

「不動」のナザミ・エネックは、2つの大盾でスケルトンの攻撃を武技で弾き返しつつ、バランスを崩したスケルトンを大盾で叩きつけ、スケルトンは吹き飛び砕け散った。

 

「〈武技・重要塞〉、……〈武技・盾強打〉!」

 

 「不動」のナザミはモモンから〈武技・要塞〉系の武技を直に見せて貰い、〈武技・重要塞〉まで獲得できたが〈武技・不落要塞〉、〈武技・無敵要塞〉は獲得できなかった。

 

 〈武技・不落要塞〉は今後の修練で獲得できるかもしれないが、〈武技・無敵要塞〉はスキル〈無敵〉を会得してない状態だと感覚が掴めず無理だろう。

 まあ「不動」のナザミはよくやってる方だ、「重爆」のレイナース同様に武技を短期間で数多く獲得できたのだからな。

 やはり死の宝珠から提案された魔法で感覚を掴んで武技を覚えるのに応用するとか見稽古で武技を覚えさせるというのは、一般人にも有効なようで帝国四騎士は次々に武技を覚えて強くなっていく。

 

 モモンは、午前は帝国四騎士を鍛えて午後は闘技場で勝利の戦績を積み上げていた。

 モモン一行の魔術師達は、モモンが闘技場で戦っている間にモモンの言いつけに従ってカッツェ平野で延々とアンデッド退治をして経験値を貯めている。

 

 そろそろニニャと死の宝珠もレベルアップする頃だろう。

 モモンは、戦い続け闘技場では勝ちすぎて賭けが成立するのが難しくなり、最近では何分何十秒で勝てるのかというのが賭けに加わったのだそうだ。

 此処まで勝利を積み上げれば闘技場の覇者、武王に挑んでも良い頃合いだと判断されるだろうか?

 闘技場で戦っていない空いた時間で、北市場で珍しいマジックアイテムの冷蔵庫や扇風機も複数買って、1つずつをパンドラへの土産にしたら喜んでたな、いやぁ子供に玩具を買う父親の気持ちが分かるような気がする、なんだか気恥ずかしいような嬉しいような感じだ。

 北市場で珍しい品も無くなったし、そろそろ帝国では見る物もなくなったな。

 

 「重爆」のレイナースが汗を拭きつつモモンに近づき話しかけて来た。

 

「モモン先生と仲間の魔術師の皆さん、折り入ってお話があります。後で話せますでしょうか?」

「後と言うのは難しいですね。皆に聞かれたくないなら練兵場の隅で話しましょう。さあ此方へ」

 

 レイナースは、渋々といった感じでモモン一行と練兵場の隅に移動し話始めた。

 

「モモン先生と仲間の皆さんは様々な冒険を経て、此処まで来られたのですよね。でしたら私の此の顔の呪いを解く方法が何かありませんでしょうか?冒険の途中での些細な話でも構いません。私は此の顔を直したい。その為なら何でもします」

「ふむ、何でもですか?」

「はい、この顔が治るなら、この体を好きにされても構いません。皇帝を殺せと言われても実行します。全財産が欲しいなら差し上げます。ですから何か無いでしょうか?」

 

 レイナースは、右顔を髪で隠しながら美しい顔立ちを歪めて、懸命に自らがいかにモモンに利益をもたらすかを話していた。

 その時に無詠唱で《メッセージ/伝言》が入った。

 

(モモン様、死の宝珠です。レイナースの提案は受けるべきかと、確か貴族出身なので此の国周辺の貴族の振る舞い、歌に踊りに食事作法など貴族生活の知識も何かの役に立つかもしれません。呪いは〈万病に効く霊薬〉か先日頂いたマジックアイテムを使えば良いでしょう。霊薬の方は、使えば無くなってしまうので目減りしないマジックアイテムが宜しいかと、使う際にはフールーダ殿に声を掛けて魔法を見物させると良いのでは無いでしょうか?)

 

「ははは、上司を裏切るのは減点ですよ。今のは聞かなかった事にします。……何でもですか、それなら貴族の作法でも教えて貰いましょうか。冒険中に手に入れた杖を使えば1日1回限定で神の領域と言われる第8位階の魔法が使えます。それで治してみましょう。ただし貴方が獲得した呪いによる力は失われ、弱体化してしまう事は覚悟して下さい」

 

 レイナースは以前にニニャに調べてもらった時にカースドナイトの職業を得ていたのが分かった。

 呪いの所為でカースドナイトの前提条件を見做したと此の世界に判断されたのだろう。

 もちろん前提が無くなればカースドナイトの職業を失うので注意を促しておいた。

 

「呪いによる力ですか。確かに呪われた時に力が湧いて来たような感覚がありましたが、家族に自分を否定されて怒りで力が湧いて来たのかと思っていましたわ。構いません、呪いが解けるなら力は要りません」

「失った力を回復する為にカッツェ平野でアンデッド退治をしてみては如何でしょう。その時に神聖系の職業、例えばパラディンやホーリーナイトに成れるかもしれないので、その事を頭に置いてアンデッド退治をすれば良いでしょう。後、治ったからと言って帝国四騎士を辞めるのは良くないです。きちんと帝国への義理を返す為に次の帝国四騎士を鍛え上げ、引継ぎをきちんとしないといけませんよ」

 

 皇帝に「重爆」のレイナースの呪いを解いたら辞めてしまったのは貴方のせいではないか、なんて言われても困るし、きちんと筋は通して関係各所に連絡、引継ぎを済ませないといけないよな。

 

 モモンは、先日パンドラに渡されてアイテムボックスの底に眠っていた黒い丁の字の形をした杖であり大鎌にもなる〈吸生の大鎌〉を中空から取り出し、戦闘用の杖だとバレないように〈願いの杖〉だと言ってレイナースの目の前に出した。

 

「……〈願いの杖〉。これが有れば顔の呪いも消える?」

「さて使う前に、この杖の魔法は素晴らしい物です。皇帝陛下や主席宮廷魔術師であるフールーダさんにも見て貰いましょう。レイナースさん、貴方の呪いを解くために見物の人を集めて下さい」

「はいっ、今から集めて参ります。お待ちになってて」

 

 一時間後、帝国魔法省の塔の一室、いわゆる魔法実験室に皆が集められた。

 実験室には中央の机の代わりに白いシーツの掛かったベッドが据え置かれて部屋の外周には魔法を見物する為の椅子が多く置かれていた。

 皇帝陛下、皇帝の護衛のレイナースを除く帝国四騎士と護衛騎士達、主席宮廷魔術師であるフールーダとその高弟たち、学院に復学したアルシェも高弟たちに混ざっているようでモモンに対して小さく手を振っているのが見えた。

 レイナースは全身鎧を脱ぎ、簡素な衣服を身に纏いベッドに横になり、不安そうな顔でモモンを見ていた。

 

「では今から私が冒険で見つけた杖、〈願いの杖〉の力をレイナースさんに使用します。……《ウィッシュ/願い》、私は此の女性の右顔の呪いを解こう《リムーブ・グレーター・ワード・オブ・カース/上位呪詛除去》」

 

 横になったレイナースの右顔に光が集まり暖かな光が収まった頃、右顔の膿を吹き出していた黒ずんだ肌は奇麗な肌と成り、横に立っていたニニャから濡れタオルを受け取るとレイナースの右顔の膿を拭って美しい顔が現れた。

 

「レイナースさん、魔法は掛け終わりました。成功です、呪いによって膿が噴き出すことは、もう無いでしょう」

 

 レイナースは、がばりと体を起き上がらせると右顔を何度も触って膿が噴き出てないのを確かめて、感極まって泣き出し始めた。

 フールーダと高弟たちは畑違いの治癒魔法とは言え高位魔法を見て興奮して互いの顔を見て話し始め、皇帝陛下は驚くべき魔法の力で瞬く間に治ったレイナースの顔を見て、杖の魔法を何かに使えないか考えているのだろう、顔を顰め思考の海に潜ったかのように顎に片手を当てている。

 

 モモンが魔法の発動を終え、願いの杖を中空へと片付けていると、モモンの方へアルシェが歩いて来た。

 

「モモンさん、魔法の成功おめでとう」

「ありがとう、成功の公算はかなり高かったが、どうなるかは試してみないと分からないからね」

 

 アルシェは、頬を染めて顔を赤らめながら頭を下げ、モモンに礼をした。

 

「モモンさん、フールーダ様への口利きをしてくれて本当にありがとう。貴方の御蔭で学院に復学できた。両親も貴族に戻れたのは感謝している。……その貴方に何を返せば良いのだろう教えて欲しい」

「ふふふ、帝国の案内を酒場で聞かせてもらい、闘技場での手続きもして貰いましたから口利きした事に対する見返りは気にしません。そもそもアルシェさんの実力をフールーダさんが高く評価していたから御両親も貴族に戻れたのでしょう?」

「父親は、私の御蔭で戻れたというのが少し不満みたい。自分達が貴族的な振る舞いをした所為じゃ無かったから、私も再三、両親に無駄な金の使い道はするなと言っていたのに聞かないから。結局、私への家督継承と言う形で家族は全員貴族に戻れたけれどね」

「そうなんですか、御両親は酷いですね。アルシェさんが復学したのは良かったですが、フォーサイトの面々はどうされたか聞いてますか?」

 

 アルシェは、嬉しそうに両手の掌を胸の前で当て答えている。

 

「みんな、モモンが闘技場に出た時に大金をモモンの勝利に掛けて大勝ちしている。もちろん私も勝たせて貰った。その後もモモンが闘技場に出た時に大金をモモンの勝利に掛けて何回か勝ってたけど、モモンの勝利の時間制の賭けが出来た所で、皆で相談して危ない橋は渡らないようにした。御蔭で時間制の賭けで今までの勝ちを失うような負け方をせずに済んだ。他の冒険者達やワーカー達は時間制の賭けに挑んでみたけど負けが込んでるみたい。早すぎたり遅すぎたりで中々当たらないってぼやいてたのを酒場で小耳に挟んだ。フォーサイトの皆は今は「漆黒」の魔術師チームと組んでカッツェ平野でアンデッド退治をしたり、私に時間の余裕がある時はワーカーとして討伐任務に参加してる、その時は安全に安全を重ねた討伐任務に就いたりしてお金を貯めているそう。充分お金が溜まったら引退しようかって話してる」

「引退ですか、王国のカルネ村で村人を募集しているので行ってみては如何でしょう。良い所ですよ」

「王国の村、……皆に会った時にでも話してみる」

 

 モモンは、魔法実験室の片付けをモモン一行としながら、アルシェと楽しく御喋りを楽しみ、近況を報告し合っていた。

 

 それから数日後、モモンは闘技場で勝利を積み重ね、興行主の中で最も力を持つ人物であるオスクから闘技場の覇者、「武王」ゴ・ギンと戦わないかと打診が来たのだった。




・〈武技・雷撃斬〉
 オリジナル武技
 武器に雷を呼び、斬り下ろすことで凄まじい雷撃を発生させる武技。
 武器に纏わせた雷は、しばらく継続する。
 元ネタはエルデンリングの戦技・雷撃斬。

・〈武技・突撃〉
 オリジナル武技
 腰だめに武器を構え、一気に前進する武技、その勢いのまま、最後に突きを放つ。
 元ネタはエルデンリングの戦技・突撃。

・《リムーブ・グレーター・ワード・オブ・カース/上位呪詛除去》
 オリジナル魔法、第7位階。
 第7位階の上位呪詛又は、それに近い解きにくい呪いを解呪する魔法。
 
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