オーバーロードと死の宝珠   作:NEBUSOKU

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カッツェ平野の合戦  2

 少し時を戻して、漆黒の戦士モモンが黒い渦に身を潜らせた時、モモンの影武者の黒騎士モモンとでも呼べるパンドラは片膝をつけた状態から立ち上がり、皆に向けて言った。

 

「さあ、これから大忙しだ。皆の力を合わせて乗り切るぞ。まず先程の円卓で話し合った場所、軍用大天幕へ行こう。ハムスケ、入口を守ってくれてありがとう。もう、どいていいぞ」

「分かったでござるよ。えっと殿、それがしにお任せでござる」

 

 ハムスケは気をきかせてパンドラを殿と呼んでいた。

 黒騎士モモンにハムスケは付いて行き軍用大天幕の外に辿り着くと、ハムスケには其処で待って貰う。

 軍用大天幕の中では皇帝ジルクニフとリ・エスティーゼのランポッサⅢ世と第2王子ザナックとレエブン侯が円卓を囲み、帝国四騎士と護衛騎士達にガゼフ殿とクライム君とブレインさんと戦士団は天幕の外で皇帝と王族が何やら打ち合わせているのを護衛していた。

 帝国四騎士とガゼフに緊急の要件があるといって中に入れて貰う。

 

「突然の訪問お許しください。今、仲間の直感で危機が迫っていると出たのでお救いに来ました。皇帝ジルクニフ殿は今すぐに宮廷魔術師フールーダと高弟達を集めてください。レエブン侯は貴方の派閥の貴族達を至急集めて頂きたい。集まり次第、帝国四騎士と護衛騎士達、ガゼフ殿とクライム君とブレインさんと戦士団を護衛として、ソアに魔術師達の力を集めて大儀式により防御結界を張って貰います」

「……信じるしか無いか。早馬を出せ、宮廷魔術師フールーダと高弟達を軍用大天幕に集めるのだ」

「私も自分の派閥の貴族達に早馬を出して集めましょう」

 

 軍用大天幕の外のナザリック地下大墳墓軍本陣近くの空高くには、蒼白い球状の立体魔法陣が展開され、周囲の兵士達が騒めいている。

 

「あれは何だ?」

「そんなの知るかよ、花火か何かじゃないのか」

 

 軍用大天幕に主要な人々が集まりだした。

 黒騎士モモンはソアに向かって指示を出す。

 

「ソア、いますぐ儀式の準備を。魔術師達はソアに触れて魔力を分け与えて下さい。ソアは魔法強化スキル《オーバーマジック/魔法上昇》を使い、幻術魔法《ミラー・ワールド/鏡の世界》を範囲拡大化して唱えるんだ。《ミラー・ワールド/鏡の世界》の周囲を《ベール・オブ・ムーン/月光の帳》で囲んで魔法攻撃に対する防御を固めるのだ」

 

 ソアが、宮廷魔術師フールーダと高弟達とモモン一行の魔術師達に廻りを囲まれ、体を触れられて大儀式を始めた。

 

「鏡の世界よ、我らを隠せ《オーバーワイデンマジック・ミラー・ワールド/魔法上昇効果範囲拡大化・鏡の世界》!皆を魔法から守れ!《トリプレットマジック・ベール・オブ・ムーン/魔法三重化・月光の帳》!」

 

 最高位幻術魔法である《ミラー・ワールド》とはドーム状に膜を展開して、膜の内側から外を見る分には問題無いが、膜の外側からでは膜の中にいる者が透明化して景色だけが映って見え、外からの攻撃を鏡の向こうの世界に流して防御する魔法だ。

 その外側を囲むように魔法《ベール・オブ・ムーン》で七色に輝く薄い布のような壁のような物が3重に立ち上がり、攻撃魔法を防御して《ミラー・ワールド》への負担を減らしている。

 

「皆さん、屈んでください。此れから何が起こるか分かりませんが立って居られないほどの魔法攻撃が来ると思われます。少しでも被害を少なくする為にも重要な事なのです」

 

 そう皆に言って、黒騎士モモンは、ハムスケやモモン一行の魔術師達と共に屈みこみ、マントを体に巻き付け、兜のみが出た格好と成った。

 皆が屈んで頭を低くして、しばらく待つと、外から軍用大天幕が揺れるほどの大風が吹き抜け、吹き抜けた直後に雷鳴の如く声が響きわたる。

 

 「「私は、アインズ・ウール・ゴウンだ!ナザリック地下大墳墓統治者である!さあ連合軍の諸君!私の魔法に、何人耐えられるかな? 《トリプレットマキシマイズワイデンマジック・ニュークリアブラスト/魔法三重最強効果範囲拡大化・核爆発》!!!」」

 

 詠唱直後に軍用大天幕の近くに魔法が幾つも炸裂し、眩い光と共に爆炎と衝撃波による大嵐が天幕や隊列を組んだ兵士達を纏めて燃やしながら吹き飛ばした。

 魔法の防御結界は地面に描かれた魔方陣が歪み、魔法のベールは揺れ動き、魔法のドーム状の膜は絶えず波紋を広げていた。

 

「これは何という。素晴らしい、なんと素晴らしい魔法なのだ。《核爆発》だと、こんな威力、範囲で放てるとは凄まじいな!」

「師匠、立ち上がっては駄目です。モモンさんに言われたように屈まなくては、いけません。さあ屈みましょう」

「むう、仕方ないか。しかしアルシェよ。この魔法を見なさい。爆炎と物理的な力となって押し寄せる嵐の如き衝撃波、防御結界も歪ませるほどの威力、いつかは此の魔法を使ってみたいものだ」

 

 帝国のフールーダと高弟アルシェが話して、魔法のあまりの威力に興奮して立ち上がったフールーダをなんとか屈ませようとしている。

 しぶしぶとフールーダは屈むが、外で新たな魔法が発動する度に立ち上がり、歓喜の声を上げて高弟アルシェが半ば泣きながら屈ませようとしていた。

 

「くそっ。神話の戦いじゃないか。神が人間の戦いに出て来るとかおかしいだろ」

「陛下、文句言ってても魔法は打ち込まれますぜ。ここは、じっと我慢した後に逃げましょうや」

 

 皇帝ジルクニフは、膝をついて軍用大天幕が吹き飛んで、暴風と爆熱が吹き荒れ、燃え盛る兵士達が空に吹き飛ばされるのを眺めながら、ナザリック地下大墳墓軍の本陣の上空の大部分をその姿で埋める、巨大な神の如き漆黒の後光を背負ったアインズ・ウール・ゴウンが魔法を次々に発動させているのを見て文句を吐いた。

 帝国四騎士の一人、バジウッドは、皇帝に対して砕けた物言いで文句を言うのをやめるよう注意している。

 

 皇帝が文句たらたらだと外聞が悪いからな。

 帝国四騎士の仕事の一環とはいえ御愁傷様です。

 

「ガゼフ、戦士団の皆は無事か?」

「はっ、国王陛下。皆無事です。陛下は御身体の方は大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。ザナックは、多少取り乱したが今は大丈夫だ」

 

 ランポッサⅢ世とガゼフが互いの無事を確かめ合っている。

 第2王子ザナックは、魔法《核爆発》が撃ち込まれた時に驚いて立ち上がろうとして、国王に抑えられていたが今は、おとなしく膝をついて周囲の光景を眺めるくらいには落ち着いていた。

 

 黒騎士モモンの頭に無詠唱化した《メッセージ/伝言》が届いた。

 どうやらアインズは既に《パーフェクト・アンノウアブル/完全不可知化》で姿を隠して近くに来ているようだ。

 

(パンドラよ、アインズだ。今は姿を隠し防御結界の外に立っている所だ。外は魔法遅延化した魔法が幾つか発動して時間を稼いでいる事だろう。最後にでかい音と光で埋め尽くされるような魔法が発動するので、その時にソアに防御結界を解いてもらうように此れから《メッセージ/伝言》でソアに頼むつもりだ。《タイム・ストップ/時間停止》でパンドラと私以外の此の辺り一帯の時間を止める。その止まった時間で我らは互いに入れ替わるのだ。パンドラは見つからないよう姿を隠してナザリック地下大墳墓軍の本陣に向かえ、後の指揮は私が取る)

 

 黒騎士モモンは、大きく頷き、次々に防御結界の外で大魔法が発動して地響きをたて、空が裂け、暫く経った後に大きな轟音と眩いばかりの激しい光が炸裂したと思ったら、ソアの幻術魔法《ミラー・ワールド》は、鏡が割れるような音と共に砕け散り、辺りを怒号と悲鳴が響き渡った。

 《タイム・ストップ/時間停止》により周囲の時間が止まり、時の止まった灰色の世界で、黒騎士モモンことパンドラは姿を現したアインズと入れ替わる為に立ち上がった。

 アインズは、パンドラと場所を入れ替わると瞬時にして白い光が全身を包み、漆黒の全身鎧を着たモモンの姿と成り、パンドラが取っていたようにマントを体に巻き付けて屈みこみ、パンドラは、姿を隠してナザリック地下大墳墓軍の本陣に向かったようだ。

 《タイム・ストップ/時間停止》が切れると周辺は轟音と光が収まり始めていた。

 

「どうやらナザリック地下大墳墓のアインズの魔法攻撃は、終わりのようです。防御結界がギリギリ持って良かったです。良くやったな、ソア」

「はい!頑張りました!」

「皆さん立ち上がって下さい。此れから敵による掃討戦が始まると思われます。全力で逃走しますので陣形を組みます。貴族の方々や王族の方、皇帝陛下は中央、その外側に魔術師達、私のような戦士達は更に外側で敵と戦いつつ、カッツェ平野を抜けヴァディス自由都市を目指して行きます」

 

 モモン達戦場脱出組は、速やかに陣形を組み上げ最寄りの都市であるヴァディス自由都市を目指して進軍した。

 辺りは、魔法による爆発によって至る所が大きく陥没して人の姿ではない肉屑が其処彼処で燃えている。

 急いで此の場所から抜け出ようとした、だが冷気による濃霧の中から現れたナザリック地下大墳墓軍の掃討部隊にモモン達戦場脱出組は捕まってしまう。

 カマキリとアリを融合させたような直立歩行する青白い外骨格を有した2.5mの巨大な蟲が、御伽噺で伝わる雪女のような女性達を連れて現れた。

 直立歩行する巨大な蟲は、背中には氷柱のような鋭い刺が無数に飛び出して、口に該当する場所には、虫特有の大きな下顎があり、そこを使ってモモン達に告げた。

 

「私ハ、アインズ・ウール・ゴウン様配下、ナザリック地下大墳墓第五階層「氷河」ノ守護者、コキュートス。オ前達ノ輝キヲ見セテクレ」

「ほう、輝きを見せれば此の場を見逃して戦場脱出組を通してくれるのか?」

「輝キヲ見セテ貰エタナラ見逃ソウ。イザ尋常二、一騎打チヲ」

「これから私が一騎打ちをします。皆さんは、離れた場所で流れ弾に当たるといけませんので、しゃがんで下さい。コキュートス殿、一騎打ちなのだから彼方の観戦組には一騎打ちが終わるまで手を出さないで頂きたい」

「了解シタ、其方モ我ラノ観戦組二ハ手ヲ出サナイヨウ二セヨ。デハ、始メルゾ」

 

 コキュートスは、腕は四本あり、2本の腕で白銀のハルバードの〈断頭牙〉、残り2本の腕で、メイスとブロードソードを持って戦いに臨んだ。

 

 どうやら武人建御雷の武器でもあった神器級アイテムでもある刃渡り180cmを超える刀、〈斬神刀皇〉は、モモンとの対戦の為に封印したようだ。

 コキュートスの青白い外骨格には何も装飾品の類は見当たらず、何も装備しない状態の素のステータスで勝負するつもりだ。

 装飾品を身に付け様々な上昇効果を手に入れ、〈斬神刀皇〉を装備したコキュートス相手だと、成長中のモモンの武器や戦士としての技量では負けてしまう。

 あっさりと双大剣ごと切り捨てられて終わりだろう。

 コキュートスを相手にどこまでやれるか、この戦いは、コキュートスへのハンデ付きとは言え真剣勝負だ。

 まあ、相手の体力を半分にした時点か魅せる大技で勝負は御開き、どちらが勝とうとも「輝きを見せた」という事でモモン達戦場脱出組は、此処を通して貰える事は打ち合わせ済みなのだけど。

 

 モモンは、すかさず奥義(スキル)を唱え、炎が纏わりつく片手の双大剣を振りコキュートスを指した。

 

「スキル〈太陽の爆発〉!」

「ムウ、スキルカ。小癪ナ、ナラバ斬リ捨テルマデ」

 

 コキュートスの廻りを中心に、攻撃範囲を示す真紅の円が浮かび上がる。

 コキュートスは、スキル〈太陽の爆発〉の真紅の円を気にせず、モモンに突っ込むがモモンが次々に武技を唱え、コキュートスを中心とした円を描く様に回避した。

 

「〈武技・閃光走破〉!〈武技・完璧戦士化〉、〈武技・戦士職段位上昇Ⅴ〉、〈武技・武器魔法付与:朱の新星〉、〈武技・領域〉、〈武技・七彩強化〉、〈武技・黒曜石剣の円陣〉」

 

 数秒後、コキュートスを包みこむような火柱が上がり燃え盛り、辺りの冷気の霧は吹き飛んだ。

 だがコキュートスは、冷気を纏い口から冷たい息を吐き出しながら火柱の中から歩み出る。

 コキュートスの外皮鎧には炎耐性があり、スキル〈太陽の爆発〉の火柱を耐えきったのだ。

 コキュートスは、自らの外周を走るモモンに手を向け、その動きを妨害する為に次々と魔法を唱える。

 

「《アイス・ピラー/氷柱》、《アイス・ピラー/氷柱》、《ピアーシング・アイシクル/穿つ氷弾》!」

 

 魔法《氷柱》で地面から人の大きさ程の2本の氷柱が突き出るが、モモンは此れを利用し魔法で出来た氷柱の影に隠れて、魔法《穿つ氷弾》による人間の腕ほどの数十本の鋭い氷柱を耐えきった。

 動きを止めたモモンにコキュートスは、跳躍して近づき白銀のハルバードの〈断頭牙〉を交差するように斬撃を放ち、魔法《氷柱》で出来た氷柱ごとモモンを切り捨てる。

 

 「見える、〈武技・無敵要塞〉!〈武技・星光連撃〉!!」

 

 〈武技・領域〉により、氷柱の向こう側からのコキュートスの白銀のハルバード〈断頭牙〉の交差する斬撃を見切ったモモンは、〈武技・無敵要塞〉により白銀のハルバードの〈断頭牙〉を受け切り、上に向かって跳ね返した。

 切り捨てられた氷柱を駆け、炎が付与された双大剣による〈武技・星光連撃〉がコキュートスに向け放たれる。

 マントが広がり、暗がりの中から無数の炎が迸る星の光のように煌めき、数え切れない程の炎の斬撃と〈武技・黒曜石剣の円陣〉による黒曜石の3本の剣が宙を飛び、コキュートスを切り刻む。

 

「ムッ、躱シ切レヌカ。ナラバ!」

 

 コキュートスは呟くと、残った2本の腕のメイスとブロードソードを交差して防御を固めつつ、数歩下がった。

 防御を固めたメイスとブロードソードを削る斬撃が鳴り響き、2本の腕も無傷とは、いかず外皮鎧の籠手部分は炎の斬撃により切り刻まれて燃えている。

 〈武技・黒曜石剣の円陣〉の黒曜石の剣は、〈武技・星光連撃〉の斬撃に巻き込まれ、黒曜石の剣による数回の攻撃の後に消滅した。

 コキュートスは、口から冷気を吐き出しながら燃えた手を冷やして鎮火させ、4本の腕の武器を構えなおし奥義(スキル)を使う。

 

「スキル〈アチャラナータ/不動明王撃〉、……スキル〈くりからけん/倶利伽羅剣〉!」

 

 コキュートスの背後に不動明王が浮かんだように見えた時、すかさず敵のカルマ値がマイナスになればなるほど破壊力を増すスキル〈くりからけん/倶利伽羅剣〉をモモンに両手で袈裟斬りを放った。

 モモンのカルマ値は、アインズの時で属性:極悪のカルマ値-500だ。

 スキル〈くりからけん/倶利伽羅剣〉の斬撃は、天空の雲を立ち割り大地を斬り分ける巨大な一撃、まともに受ければ只では済まない。

 〈武技・領域〉の効果でコキュートスのスキル〈くりからけん/倶利伽羅剣〉の巨大斬撃による攻撃を見極め、〈武技・無敵要塞〉で受けようとするモモン。

 だがコキュートスのスキル〈くりからけん/倶利伽羅剣〉の巨大斬撃では無く、残りの腕2本のメイスとブロードソードがモモンに向け、スキルを唱えるより素早く投擲されていた。

 

「〈武技・無敵要塞〉!……しまった!!」

 

 メイスとブロードソードの人を容易く吹き飛ばす投擲を〈武技・無敵要塞〉で防いだモモンは、遅れて届いたコキュートスのスキル〈くりからけん/倶利伽羅剣〉の巨大斬撃を肩口にもろに受けてしまった。

 肩から反対側の腰まで袈裟斬りに斬撃を浴び、血が噴き出して地面を叩いている。

 此れは幻術《パーフェクト・イリュージョン/完全幻覚》により、血が自然に見えるよう斬撃を受け鎧が切り裂かれたら血が飛ぶようになっているのと、予め血糊を用意して鎧下に忍ばせておいたからだ。

 幻術による血飛沫は自然に見えるが地面に着いて暫くすると消えてしまう。

 此れを防ぐ為に血糊を用意して切り裂かれた時にばら撒いたのだ。

 コキュートスは、中空の闇から投擲した代わりのメイスとブロードソードを取り出し、残りの腕2本に装備しなおして構えを取る。

 

 痛い、これは効いたな。

 体力に余裕はあるが、実に魅せるコキュートスの大技だ。

 だが巨神に変身した事とコキュートスの大技を見て閃いた武技が有る。

 それをコキュートス相手に試すのも悪くない。

 

 袈裟斬りされた部分から血を噴き出しながら、モモンは片方の大剣を背中に担ぎ、武技を唱え、コキュートスに急速接近する。

 片手で噴き出した血糊から掬い取り、コキュートスの目元に向け投げて、背中に担いだ大剣を取り出し、双大剣で上段の構えを取り武技による斬撃を繰り出した。

 コキュートスのスキル〈くりからけん/倶利伽羅剣〉の様に天空の雲を割り、大地を裂く、空間を歪ませる巨大な斬撃がコキュートスに襲い掛かる。

 

「〈武技・閃光走破〉!……〈武技・巨神斬〉!!」

「ヌウ、……防御ガ」

 

 コキュートスは、投げられた血糊を武器を盾にして凌いだが、凌いだ事で次の武技を避ける隙が無くなり、防御を固める他に無くなった。

 モモンの武技を全ての腕で武器を重ね防御を固めたが、防御の構えを巨大斬撃に崩され、右肩から右脚まで真っ向斬りに切り裂かれ青い血を吹き出していた。

 巨大な斬撃は、アインズの魔法で天候が崩れて曇り空だったが、空の雲を綺麗に切り裂き、其処だけ青空が見えている。

 大地が双大剣に切り裂かれ、大きな地割れと成って斬撃後に双大剣の剣身が埋まっていた。

 

 両者共に良い魅せる大技の一撃を決めた所で、此処で疲れた風を装っても良さそうだし、武技を解除して無詠唱化した《メッセージ/伝言》でコキュートスに勝負は終了という事にして貰うか。

 

 モモンは、剣身が埋まった双大剣を引き抜き、ふらつきながら構えを取り、袈裟斬りされた部分から血が地面を叩き、肩で息をするようにコキュートスを睨んでいる。

 コキュートスは、肩を切り裂かれ青い血が噴き出していたが、巨大斬撃によって構えが崩れた武器を構え直して、口から盛んに冷気を吐き出しながら呼吸を整えて疲れを取ろうとしている。

 コキュートスは、じっとモモンを見ていたかと思うと構えを解き、4本の腕に身に付けた武器を次々に地面に突き刺した。

 

「ウム、見事ナ輝キヲ見セテ貰ッタ。私二痛撃ヲ与エルトハ敵ナガラ天晴ダ。見逃ソウ、此処ヲ戦場脱出組ト共二行クガ良イ」

「ありがとう、コキュートス殿。皆、すまないが治療を頼む。その後に陣形を構築して此処を逃げ切るぞ」

 

 コキュートスの廻りにフロスト・ヴァージン達が集まり、〈武技・星光連撃〉により削られて燃えた2本の腕や〈武技・巨神斬〉による巨大斬撃によって肩から脚まで切り裂かれた大怪我を癒している。

 治療の為に半裸に成ったモモンの廻りでもモモン一行のソアやニニャやナーベが霊薬に似せた偽物でモモンを治したように見せていた。

 モモンが実はアンデッドだと知られては、いけないからだが、幻術《パーフェクト・イリュージョン/完全幻覚》の血は他者からは治療を受けたように見えた為に止まったので、包帯を巻いて誤魔化して包帯には血糊が付き、其れらしく見えるだろう。

 

 両者の治療が終わり、守護者コキュートスと御付きのフロスト・ヴァージン達に見送られ、ヴァディス自由都市を目指してモモン達戦場脱出組は逃げ切った。

 その後、リ・エスティーゼ王国とバハルス帝国は、ナザリック地下大墳墓に対して無条件降伏の条件を飲み、終戦を迎えたのだった。 




・〈武技・完璧戦士化〉
 オリジナル武技。
 《パーフェクト・ウォリアー/完璧なる戦士》の魔法を武技化したもの。
 使用者の魔法詠唱者としてのレベルをそっくりそのまま戦士レベルへと移し替える武技。
 戦士化の武技を維持しているとほかの維持魔法と重なり合って、アインズの場合は消費MPとMP自然回復力が拮抗してしまってMP回復ができない。
 魔力と集中力を消費して発動するため、魔法より発動時の魔力を消費しない。

・〈武技・戦士職段位上昇Ⅴ〉
 オリジナル武技。
 《ウォリアーレベルアップⅤ/戦士職段位上昇Ⅴ》の魔法を武技化したもの。
 戦士系の職業レベルを5上昇させる。
 魔力と集中力を消費して発動するため、魔法より魔力を消費しない。

・〈武技・巨神斬〉
 オリジナル武技。前提:〈武技・武器魔法付与:現断〉、〈武技・双剣魔空斬〉
 上段の構えから天空の雲を割り、大地を切り裂く巨大斬撃を繰り出す。
 空間を歪ませて、ありとあらゆる物を切り裂くといわれる。
 弱点は攻撃を繰り出す際に若干の力の溜めが必要な点、防御を固めた敵か避けられないほど弱った敵への攻撃が有効だ。
 魔力と集中力を消費して発動する。
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